※この作品はR-18です。

水滸伝艶義   作:ドン・ドナシアン

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27  王進、淫紋で発情し高俅に恋情す

「ひあっ、痛いいっ、ああっ、あっ」

 

「どうだ、王進(おうしん)? 本物の女になった感想は?」

 

 高俅(こうきゅう)が王進の女の性器に怒張を突き立て、激しい抽送を繰り返している。

 苦痛に身をよじる王進の裸身に、高俅の身体が荒々しい浮き沈みを繰り返していた。

 

「あっあっ、いやだあっ、いやああっ」

 

「まさに女そのものだのう。だが、やはり武人でもあるのだな。鍛えている筋肉の名残りはあるぞ。締めつけが強くて、長くは持ちそうにないのう。そのまま子宮に私の精を注いでやる。私の子を孕むというのはどうだ?」

 

 腰を執拗に叩きつけながら、高俅が上機嫌に言った。

 その声が、王進の耳をえぐる。

 破瓜の苦しみに呻きながら、王進は凍りついたように恐怖する。

 まさか、女体化の呪術がそこまで──。

 高俅の子を宿して産むなど、想像しただけで悪寒が走る。

 拒絶の感情が、脊髄を逆流した。

 

 だが、逃れられぬ現実があった。

 怒張の律動と共に、背後から乳房を揉みしだかれる。

 掌がそこにあるだけで、肌が溶け出すような感覚が広がっていく。

 そんなはずはないと、心が否定しても、身体が裏切る。

 

 王進は、狼狽していた。

 怒りと恥辱が、皮膚の内側で蠢いている。

 それでも、どうしても快感を切り離すことができなかった。

 

「や、やめてくれ──。そんなことは許して──。あっ、ああっ、あっ」

 

 王進の苦しみとは裏腹に高俅の抽送はますます激しさを増す。

 それは、灼けるような苦痛のはずだった。

 だが、その奥で、王進の意識は崩れかけていた。

 信じたくはなかった。

 自らの内に、妖しげなものが広がっていくなど。

 

 女として犯される──その言葉の意味は、これほどまでに深いのか。

 そう思いかけた瞬間、かつての記憶が脳裏をよぎった。

 あのときも、男たちに蹂躙されたときも、同じような感覚があった。

 あれは、錯覚だったはずだ。

 だが、今、王進の心は否応なく揺らいでいた。

 

 必死に否定する。

 身体が覚えかけている快楽を、自分のものではないと突き放す。

 だが、その反発すら、身体の反応に追いついていなかった。

 

「ふふふ、高俅様、だんだんとよくなってきたみたいですよ。お手伝いしますね」

 

 背後で王進を責めている殷天(いんてん)が顔を宙吊りで引きあげられている王進の脇の下に舌を這わせてきた。

 

「ひあっ、あああっ」

 

 ねっとりと唾液を塗りつけるように肌を舐められて、王進は思わず声をあげた。

 だが、股間を貫かれて、六本の鎖で全身を宙に浮かべられている王進には、そのおぞましい舌の動きから身体を避けさせることさえできない。

 

「んんんっ、あああっ」

 

 舌による脇への刺激が王進の意識を脇に集中させる。

 だが、そのせいか、怒張を埋め込まれている花唇が熱を帯びたようになり、だんだんと息苦しいさ快感に変わってもいく。

 

「ううっ、くうっ、ああっ」

 

 吐き出される声が、苦悶だけではなかった。

 その変化に気づいたのは、高俅のほうが早かった。

 

「悲鳴が悲鳴ではなくなってきたのう。しかも、一気に濡れてきおったわ」

 

 王進の顔を覗き込むように、にやりと唇を歪めた。

 その笑みに、王進は戦慄した。

 

「ひああっ、な、なんで……。なんでだ……。ああっ、ああっ」

 

 狼狽が理性を吹き飛ばす。

 王進は、激しく首を振るしかできなかった。

 だが、自らの喉を突いて出る声が、女のそれであることに気づいてしまっていた。

 高俅に指摘されずとも、わかってしまっていた。

 声の質が変わっている。

 嬌声──それは、自分とは無縁だったはずの響きだった。

 

 我に返った王進は、必死に口を引き結ぶ。

 しかし、それすらも嘲るように、背後の声が冷たく告げる。

 

「無駄よ、雌犬。自分がただの淫乱な雌であることを自覚しなさい」

 

 殷天の後ろからの愛撫がさらに激しさと巧さを増す。

 快感が一気に増幅する。

 

「んんんっ──。ああっ、だ、だめえ、ああああっ」

 

 膨れあがる快感が高俅の怒張の抽送により王進の身体に一気に拡がる。

 おぞましく、痛いだけのはずの高俅の陵辱が王進の総身を強張らせる愉悦になっていく。

 

 いやだ──。

 いやだ──。

 

 その声が聞こえたのは、すぐそばだった。

 

「ふふ、淫紋がいよいよ活性化しようとしているわ。苦痛も、恥辱も、淫紋を刻まれた者にとっては快楽の餌にしかならないわ。そろそろ精を放ってやって、高俅。それで王進はお前に逆らえない犬になるわ」

 

 高廉の声だった。

 その言葉は、冷たい刃のように空気を裂いていた。

 

「わかった、兄上──。ならば、精を放ってやる。孕め──」

 

 高俅がとどめだと言わんばかりに、力強く王進の股間の最奥を突きあげた。

 

「ああああっ、あああっ」

 

 限界まで身体を仰け反らせた王進は、甲高い悲鳴をあげてがくがくと身体を震わせる。

 絶頂感が全身を駆け抜け、ついで灼けるような熱の衝撃が身体を貫く。

 

「くっ、おうおっ」

 

 高俅が顔をしかめて小さく呻いた。

 王進の股間の奥にだくだくと高俅の放った精が迸るのをはっきりと感じた。

 

「もしかして、破瓜でいきおったか? まさかとは思うが、王進、お前はいま極めてしまったのか」

 

 高俅が王進から男根を抜きながら嘲笑の声をあげる。

 

「ええ、しっかりと。これは調教のしがいのある雌犬ですわ」

 

 殷天の愛撫の手を離して耳元でくすくすと笑っている。

 

 王進は、それどころではなかった。

 高俅に貫かれ、体内に精を注がれた──その現実が、頭の奥を鈍く叩く。

 だが、それ以上に異変が起きていた。

 

 快感の余韻が、あまりにも長く、深い。

 昇り詰めたと思った瞬間から、さらに何かが膨れあがっていく。

 熱がある。

 身体の芯が、焼けるように熱を帯びていた。

 

 違う──これは、ただの絶頂ではない。

 

 全身が、異常なまでに鋭敏になっていく。

 皮膚の上を撫でる空気すら、刺激としてのしかかる。

 

 おかしい──。

 変だ──。

 

 思考の隙間を、灼熱が塗りつぶしていく。

 まるで全身が性感帯そのものになったような感覚。

 風が触れるだけで、息が乱れる。

 

「ひあっ、ああっ、なに、なに、なに? ああっ、熱い……、熱いわ……。身体が熱い……」

 

 王進は呻いた。

 頭が、熱をもって霞んでいる。

 まともに考えることができなかった。

 思考が糸を結ばず、ただ空回りしていた。

 

 ──なにかが、おかしい。

 

「これはなんですか? この雌犬の下腹部の紋が真っ赤になってますよ。しかも動いてます」

 

 殷天の声が、耳の奥で揺れていた。

 けれど、その意味を捉えることすらできない。

 

 だめだ。

 なにもわからない。

 ただ──。

 

 それよりも身体が疼いて仕方がない。

 秘奥も、乳房も、なにもかも、さっきのように激しく愛撫して欲しい──。

 そうされれば、どんなに素晴らしいのだろう。

 

「ああっ、だ、だめえ。犯して──。か、身体がおかしいの──。も、もっと犯して──。やめないで──。やめないで──」

 

 王進は本能のまま声をあげた。

 頭が霞む。

 狂ったような性欲が王進の中で暴れている。

 

「ほほほ、それが淫紋の発作よ。全身の性感という性感が沸騰して、男に犯されないと我慢できない欲情に身体も心も支配されていくのよ。こうなってしまえば、もう誰でもいいから、股間に精を注いでもらうしかない。それまで理性を失った淫魔になって、男の精を強請る淫欲に冒されるの。これが淫紋の発作よ」

 

 遠くで、誰かが笑っていた。

 だが、言葉の意味はもう、王進の耳に届かない。

 すべてが濁流のように流れていく。

 

 なにもわからない。

 ただ、ひとつだけ、王進の中に焼きついていた。

 目の前に、誰かが立っている。

 だが、なぜか触れてくれない。

 そのことだけが、鋭く刺さっていた。

 

 頭の芯が焦げついているようだった。

 熱が噴き出す。

 股間が、焦がれるほどに疼いていた。

 

「だ、だめ……。お、犯して──。わ、わたしを犯して──。貫いて──。お、お願い──。お願いします──」

 

 王進は、喉を裂くような声で哀願していた。

 宙吊りの身体を、わずかでも前に──と腰を突き出す。

 目の前の男の腰、その怒張に、どうにかして触れようとした。

 だが、鎖がそれを許さない。

 

「へえ、これが淫紋の発作……。とても王進とは思えません。まるで色狂いの狂人ですわね」

 

 背後から、女のくすくすという笑い声が落ちてきた。

 その直後、指先が、股間を下から上へと撫であげる。

 

「んひいいいっ」

 

 王進はそれだけの刺激で全身から脂汗を撒き散らしながら激しく裸体を痙攣させた。

 股間からまとまった体液が噴き出したのがわかった。

 

「うわっ、いきなり潮を噴きおった。なんだ、こいつ」

 

 男が呆れたように声をだす。

 

「淫紋の発作の間は、ただでさえ敏感な身体が、その十数倍は感じやすくなるわ。ちょっとした愛撫でも、男根で犯されても馬鹿みたいに絶頂を繰り返すはずよ。それでも精を受けない限りは、理性を戻せないけだもののままよ」

 

「なるほど、では、もう王進はこのままですか、高廉様?」

 

 背後からの問いかけだった。

 

「いいえ、さっきも言ったけど、男の精を放ってもらえれば、とりあえず理性は戻るわでも、発作のあいだの自分の狂態は、はっきりと記憶に刻まれるの。誇り高い武門の出だったらしいけど──それは、こいつにとっては耐えがたい屈辱になるでしょうね」

 

「なるほど」

 

 女の声が低く応じる。

 

「でもね、その発作は十日に一度は必ずやってくる。そのたびに淫欲で気が狂い、理性を失い、男を求めて彷徨う。ようやく我に返っても、思い出すのは自分の哀れな姿だけ。屈辱に狂いそうになる。でも、王進には、狂うことも、自ら命を絶つことも許されていないのよ」

 

 今度は、正面だ。

 椅子にゆったりと腰掛け、杯を傾けながら誰かが笑っていた。

 女か、男か──もはや判別すらどうでもよかった。

 王進の中で、欲求だけが残っていた。

 

 欲しい。

 男の精が欲しい──。

 それ以外は、どうでもいい。

 狂いそうだった。

 

「ああ、お願い。犯して──。わたしを犯して──」

 

 王進は懸命に哀願した。

 

「ははは、ならば、私に口づけをしてみろ。我に返って、そのことを思い出して、惨めさに泣くがよい。舌を私の口に差し入れ唾液を飲みふけるのだ」

 

 男の顔が近づいてくる。

 王進はためらいもなく、舌をその口へ差し入れた。

 唾液をすすり、貪る。

 理性など、とうに失っていた。

 

「まあ、可愛いこと」

 

 背後から、女の爆笑が響いていた。

 だが、王進の耳には届いていない。

 ただ、目の前の男の舌を吸い、唾液を呑むことしかできなかった。

 舌を絡め、唾液を交わす──それを何度も繰り返す。

 すると、口づけをしている相手の男が王進の股間に指を挿入し、抽送しながら肉豆を揺さぶってきた。

 

「んんんんっ」

 

 王進は口づけを続けながら、ぶるぶると身体を震わせてしまう。

 軽く絶頂したのだ。

 

「破瓜で苦しめてやったのに、もう興奮してやがる」

 

 男が唇を離し、面白そうに声を漏らす。

 

「それが淫紋の発作よ。たっぷりと遊んであげるといいわ」

 

 別の声が、くぐもった笑いと共に響いた。

 

 だが、王進にはもう区別もつかない。

 羞恥も、怒りも、すべてがどこかに消えていた。

 ただ、この苦しさを癒して欲しかった。

 この灼けるような疼きから、救われたかった──それだけだった。

 

「ああ、お願いどうにかして……」

 

「どうにかか?」

 

 男が笑っている。

 

「ああ、い、意地悪を言わないでよ……。だ、だめえ……。もうだめよ。だめだ。お、願いよ……」

 

 王進は切羽詰まった声で訴えた。

 

「だったら、おまんこしてと言いな。禁軍武術師範の王進のおまんこを犯してくれとのう」

 

「ぶ、武術……し……しひゃん……王進のおま……んこ……お、おかひて……」

 

 舌がうまく回らない。

 思うように言葉が出てこないことに、王進は身を震わせ、呻いた。

 それでも、諦めることはなかった。

 

 いまはただ、この焦燥を、渇きを、満たして欲しかった。

 熱に焼かれたような身体を、癒やしてくれるのなら──

 

 どんな言葉でも口にできる。

 どんな命令にも従える。

 なんでも、していいと思った。

 

「ははは、これが兄上の淫紋の発作か。まるで別人だな。あの王進が、こんなふうになるとはのう」

 

 男の声音には、あきれと興味が入り混じっていた。

 

「だからこそ、我に返ったときの口惜しさが大きいのよ。ふふふ……」

 

 女の声が続く。

 

「ああ、お願いよ──。もう犯して──」

 

 王進を放って会話を続ける男に苛立った。

 

「いいだろう。王進、狂え──。これがお前が欲しがったものだ」

 

 男が王進の両腿を抱き抱え、再び怒張を貫いてきた。

 

「あああっ。ああああっ」

 

 痛いくらいに薄く花芯に、男の男根の先端が当たって一気に奥まで貫く。。

 

「ひああっ、ああああっ」

 

 王進は凄まじい快感に狂乱した。

 

「すごいのう、兄上の淫紋は──。だが、これだけ赤恥をかかせれば、とてもじゃないが、二度と外に出ようとは思うまい」

 

 男が律動を始めた。

 その声が耳に届いても、意味は抜け落ちていた。

 

 王進は、ただ、快楽に呑まれていた。

 灼けつくような疼き。

 股間から噴き出すような快感に、溺れていた。

 

「いいいっ、いいいいっ」

 

 真っ白い衝撃が貫き、王進はがくがくと身体を震わせた。

 

「いくと言え、王進──。高俅様、気持ちいいと叫べ」

 

 律動しながら笑われる。

 

「こ、高俅様──気持ちいい──いぐうううっ」

 

 王進はあっという間に快感を極めてしまった。

 だが足りない。

 巨大な疼きの飢餓状態は続いている。

 いや、むしろ焦燥感は大きくなった。

 

「あああっ、もっと──、もっとしてええ」

 

 王進は訳もわからずに叫んだ。

 

「ははは、好きなだけ気をするといい。だが、まだやらんぞ……。殷天、こいつを床におろせ。跪かせるのだ」

 

 すると、男が王進の股間から男根を抜く。

 びっくりして王進は悲鳴をあげた。

 

「ああ、いかないでよ──。な、なんで──なんでえ──」

 

「いかないでか……。王進、精が欲しければ、口で奉仕せよ。お前の淫蜜で汚れた私の一物を舐めしゃぶれ。そうすればもう一度犯してやろう」

 

 鎖で吊られていた身体が床までさがり、王進が両手を天井にあげたまま、跪いた体勢になっていた。

 その王進の顔にねっとりと濡れている男の性器が擦り付けられる。

 

「ああっ、んんんっ、んんっ」

 

 王進は躊躇わずに目の前のものを咥え込み、懸命にそれを舌で舐めた。

 これを舐めれば犯してもらえる。

 頭にあるのはそれだけだ。

 

「ほほほ、淫紋の発作といえ、この雌犬はどうやら本物の受虐狂でもあったようですわ、高俅様。あたしの予想以上でした。調教はお任せ下さい」

 

 女の声が冷たく笑った。

 だが、その言葉は、王進の耳には届いていない。

 ただ、目の前の欲望を満たすために、ひたすらに奉仕を続けていた。

 思考は抜け落ち、身体だけが勝手に動いていた。

 

「ははは、愉快だ──。堪らん──。王進、そこに寝て脚を開け。それそろ我に返らせようか。次は醜態を思い出して屈辱に狂うお前を犯してやろう」

 

 男が王進の口から男根を抜く。

 鎖が緩み、男の命令のとおりに床に仰向けになれる状態になった。

 王進はすぐに床になり、脚を開く。

 

「き、来て──。来て──」

 

「いいだろう。王進、精を放ってやろう」

 

 男が再び王進の女芯を貫く。

 

「んあああっ、いいいいっ」

 

 挿入が開始され、王進はそれだけでまたもや達してしまう。

 

「すごいものだな。兄上の淫紋は」

 

 男が感嘆ともあざけりともつかぬ声を漏らした。

 

「ほほほ、発作はいつ発生するかわからないわ。王進、覚えておきなさい。いまのお前には意味がわからないと思うけど、もしも逃げれば、その淫欲と一生付き合うことになるわ。高俅がお前に飽きて娼館に売りとばすときには、発作が起きないようにしてあげるから、それまでは逃亡しようなんて考えないことね」

 

「そういうことだ。王進、わかったか──」

 

「ああ、わ、わかった──。わかったわ──。だ、だから早く──」

 

 王進は挿入しただけでなかなか動いてくれない男の男根を股間で必死に締めつけながら叫んだ。

 周りからどっと一斉に笑い声がした。

 

「ならばいくぞ。欲しかったものだ」

 

 男は抽送を開始する。

 絶頂の波が次々に押し寄せ、王進は吠えるように泣きながら連続で達していく。

 

「あああっ、いぐううっ、いくううっ、ああああっ」

 

 王進は腰を振り続ける。

 気持ちいい──。

 これがあれば、もうなにもいらない。

 なにもかもどうでもいい。

 心からそう思った。

 

「それ、喰らえ──」

 

 ついに男の精が王進の股間の奥に貫く。

 凄まじい快感が全身を貫き、身体が硬直した。

 

「ひあああああっ、またいぐうう──」

 

 激しく痙攣しながら、王進は身体を弓なりして絶叫する。

 そして、白い霧が晴れるように頭がはっきりとしてきて、だんだんとたったいままでの王進の狂乱が記憶に呼び覚まされる。

 王進は我に返った。

 

「な、なに──。なんで──。ええええっ──。く、くそおおっ──。ど、どうしてええ──」

 

 王進は、高俅の方へ身を翻した。

 逃れるように後ずさり、次の瞬間、怒りが全身を貫いた。

 咄嗟に、相手の首を絞めようと腕を伸ばす。

 

「おっと──。とんだ雌犬ねえ──」

 

 殷天の声とともに、鎖が鋭く巻き上げられた。

 その操作によって、王進の身体は宙に引き上げられる。

 両腕も、両脚も、再び床から切り離された。

 

「殷天、次に来るのは、五日後だ。なにしろ、忙しいのでな。禁軍の金庫から軍資金を盗んで出奔した王進の捜索の指揮をしておってな。五日後に来るときには、今度は発作なしに、この王進が私の一物を悦んで奉仕するように調教しておけ」

 

「わかりましたわ」

 

 殷天は、従順に頭を垂れた。

 

 王進は、声もなく泣いていた。

 屈辱が、全身の力を奪っていく。

 気づけば、頬を伝って落ちる涙を止めることすらできなかった。

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