「ああ、痒い──。痒いいいっ」
両腿をねじり、爪先立ちのまま吊られた足元には、脂汗がしたたり落ち、床に小さな水たまりを作り始めている。
その名の媚薬が、前後の穴に塗り込まれていた。
妖しい薬剤は、香蘭の女陰と肛門に、耐えがたい痒みを刻みつける。
逃げ場はなかった。
その痒みは、肉体の芯から湧き出し、意識のすべてを飲み込もうとしていた。
「そんなに身体を振り乱すのは目の毒ですな。もう少しつつしみを持たれてはいかがかな、夫人?」
「左様、左様。声ももう少し抑えるとよかろう。店の者どころか、他の部屋の客まで何事かと覗きたくなるような吠え声ではないか」
香蘭を左右から眺めながら、あざ笑うように言葉をかけてきた。
だが、香蘭の耳には、もはや届いていなかった。
彼女は、ただ痒みによって追い詰められていた。
「ああ、もう許して、もう、もう……」
香蘭は、汗と涙で霞む眼を閉じる。
ただ呼吸を荒く繰り返し、よじるように身体を動かすしかできなかった。
「そろそろ、休憩はよいのではないか。すでに半刻が過ぎておるぞ。一刻の勝負の真っ最中なのだがな」
その冷たい声が、香蘭の意識を引き戻した。
そうだ──これは勝負だった。
一刻という時間のあいだ、三度の気を達すれば敗北。
香蘭は、いまその只中にいるのだ。
冤罪で捕らわれた夫を救いたい一心だった。
それだけの想いで臨んだ酒席。
だが、裸にされ、拘束され、愛撫と痒みに耐えさせられる賭けへと引きずり込まれていた。
もちろん、そんなことは承知できることではなかったが、全裸にされ拘束さえされている香蘭には、受け入れるしかなかった。ましてや、賭けを受け入れなければ、夫を県軍の地下牢で拷問死させると脅されたのだ。
だが、いざ始まるとその直前に、もしも三度の気をして賭けに負ければ、夫を助けないだけでなく、香蘭を陵辱して大勢の県軍の兵に輪姦をさせると告げられた。
なんという卑怯なふるまいだろうと思ったが、香蘭にはなにもできず、しかも、大量の媚薬を飲まされて狂ったような身体の火照りに襲われているうえに、ふたり掛かりの愛撫を受け、あっという間に一回目の気をさせられてしまったのである。
そして、次いで始まったのが、彼らが
放置されること自体は時間を稼ぐことになり、「賭け」をさせられている香蘭に都合がいいともいえるのかもしれないが、魂まで溶かされるような痒みにの苦しみの前には、香蘭はもうどうしていいかわからないほどの極限に追い詰められてしまっていた。
「なるほど。確かに、そろそろ休憩は終わりでいいだろうな。白文よ、すでに香時計は半分を超しておるし、香蘭殿も待ちくたびれて焦れきっているようではないか」
笑いながら口を開いたのは祝朝奉だ。
また、香時計というのは、線香を燃して時間を計るという道具であり、この賭けが始まるときに目安とされた一刻用の線香は、すでに半分の長さになっていた。
随分と長い時間放置されたと思っていたが、まだ半刻の残り時間があることを知り、香蘭は愕然とする気分に襲われた。
「このまま痒み責めを続けても高俅様に愉しんでいただける余興としていいかもしれないが、確かに勝負の真っ最中であるしな。我らも精一杯に責めなければ、負けるかもしれないということか。ならば、次はこれで責めさせてもらうぞ、香蘭殿」
白文が、台の上の箱を開けた。
その手にあるのは、黒光りする張形。
表面にはいくつもの突起が並び、付け根には枝状の小器具がついていた。
香蘭の視線が、それに釘づけになる。
「ま、まさか……。ご無体はおやめください。これ以上はお許しを──。あまりにも惨めでございます」
「ははは、何事も経験だぞ、香蘭殿。これは皇都の
白文が張形の根元を握った。
次の瞬間、張形が唸るように振動を始めた。
先端がうねり、根元の小枝が細かく震える。
それは、ただの淫具ではなかった。道術を込めた“宝具”だった。
「
高俅が笑った。
「お気に入りいただければ、まだ未使用のものがありますので、閣下に献上させてください。だが、いまは
「ならば、是非に香蘭殿の頑張りを見物させてもらおう。香蘭殿も、存分に愉しむがよい」
高俅が声をあげて笑う。
「いやあ、いやです──。それだけはお許しを──」
白文が
そして、その先端が下腹部に当たる。
香蘭は必死に拘束されている身体を振って、淫具から逃れようとした。
「どうやら、香蘭夫人はまだ痒み責めが足りぬようだ。喜んで淫具を受け入れたくなるように、痒炎の油を塗り足そう。たっぷりとな」
すると、祝朝奉が信じられないことを口にした。
しかも、台の上から、あの怖ろしい掻痒剤の油剤の容器を手に取る。
「ま、まさか、もう香蘭には耐えることはできませぬ」
「つべこべ言わぬことだ。わしらとの勝負の真っ最中ということを思い出すとよい」
祝朝奉が口元を歪め、容器からたっぷりと油剤をすくい取り、香蘭の下腹部ににじり寄らせた。
「ああ、あああっ」
香蘭は悲鳴をあげた。
全身を貫く激烈な痒みに耐え続けている脂汗まみれの香蘭に、さらにおぞましい油剤が足されていったのだ。
「ゆ、許してください──。もう許して──」
「ははは、ならば淫具を挿入してくれと、白文にお願いせよ。観念した証としてな」
「確かに、確かに──。この痒炎の滴は、ただの掻痒剤ではないぞ。重ね塗りのたびに痒みが倍増する。いまの痒みなど可愛いものだと思い知ることになるぞ」
香蘭が抵抗できないように、香蘭の腰を押さえつけている白文も笑い声をあげる。
それが偽りでないことは、塗り足されることでさらに激しい痒みが股間に発生したことで悟った。
「あがああっ、痒いいい──」
香蘭は喉を突きあげるようにしながら絶叫した。
それでも必死に耐えようと、せめて腰を振って少しでも痒みを逃そうとする。
だが、そんなものでは、とてもじゃないがなんの刺激も受けられない。
発狂するような痒みの地獄が香蘭を苛む。
「ああ、後生でございます。許して──。許してください──」
「ならば、震張形の淫具を女陰に挿入してくれと頼むことだ。そうすれば痒みは癒えるぞ」
白文が手に持っている張形の宝具の先で、ほんの少しだけ香蘭の股間に挿入してきた。その瞬間、激烈な痒みが一瞬癒えて、狂いそうに熱い身体が甘く溶けるような凄まじい快感が沸き起こった。
だが、白文はそれを嘲笑うように、すぐに淫具を引きあげてしまう。
「あああっ、殺生でございます──。もっと、もっと深く──、強く──。お願いでございます」
もはや、自分がなにを口走っているかどうかもわからない。
香蘭は本能のまま哀願の言葉を口走った。
「ははは、そろそろよかろう。このままでは本当に狂ってしまうぞ」
高俅の笑い声が耳に届く。
すると、白文が大笑いした。
「わかりました、高俅様。ならば、そろそろ、この淫夫人殿に引導を渡しましょう」
白文の声──。
そして、次の瞬間、香蘭の股間の奥深くまで一気に淫具が挿入された。
「ああああっ、はああっ──」
香蘭は全身を突っ張って、嬌声を口走った。
淫具の先端が子宮の先まで到達した途端に、淫具が激しく振動を開始したのである。しかも、どんどんと強くなる。地獄のような痒みが一気に癒えていく。
稲妻のような快美感が突きあがり、背骨まで響き渡って、目の前が真っ白になる。
耐えようとも思うが、それを嘲笑うかのように、張形の根元の小枝の部分が香蘭の勃起している肉芽に触れ、ぶるぶると快感を膨れあげさせていく。
凄まじい程の快感だ。
「ひあああ、あああっ」
香蘭は拘束されている全身をさらに突っ張らせた。
「ははは、香蘭殿、申したであろう。その震張形の宝具は締めつければ、激しく振動して香蘭殿の気持ちのよい場所を徹底的に刺激するのだ。達したくなければ、締めつけるのをやめることだ」
白文がなにかを喋っているが、もうなにもわからない。
全身が痺れきり、拘束されている身体が断末魔のように痙攣する。
「いぐううっ」
香蘭はついに絶息するような呻きと友に、快楽の絶頂に到達してしまった。
その瞬間、なにかが子宮に注がれる。
おそらく、張形の淫具に仕込んである掻痒剤の油剤なのだろう。膣深くで強い痒みが発生する。
「おやおや、これで二回目ですな、香蘭殿。勝負に負けるまで、あと一回しかありませんぞ」
白文が揶揄をする声をかける。
だが、香蘭にはそれに応じる余裕はない。
絶頂をしても淫具は抜かれず、さらに激しく振動を続けているからだ。
痙攣は終わらず、すぐに三度目の気を香蘭はしてしまった。
そして、またもや痒炎の滴が子宮に注ぐ。
激烈なほどの痒みが下腹部の奥で暴れ回りだす。
「これで勝負は夫人の敗北と決まったか。賭けは終わりだ。白文、仕方がない。夫人の夫は牢で死んでももらうしかない。残念なことであるな」
高俅がせせら笑った。
「そうですな。すぐに部下に命令いたしましょう」
白文が香蘭の股間から淫具を引き抜いた。
たちまちに痒みが復活するが、香蘭は我に返り、一気に絶望に陥った。
「お、お待ちください──。お待ちくださいませ──。お慈悲を──。お慈悲をお願いいたします──」
必死に泣き叫ぶ。
一方で香蘭の正気を失わせる痒みが再び身体を苛み始める。
「ならば、私を愉しませよ。賭け事の結果は結果であるが、夫人が私を愉しませているあいだは、白文に夫人の夫には手を出さないように口はきいてやろう」
「ま、真でございますか」
高俅の言葉に、香蘭は藁をも縋る気持ちになり、必死の視線を向ける。
「約束してやろう。白文、縄を解いてやれ。ただし、腕の縄はそのままでよい。どんな風に私を愉しませるのか、必死になるがよい」
「ああ、ありがとうございます。懸命に高俅様のお相手をさせていただきます」
「ならば励むがよい。まずは私の一物に奉仕せよ。夫人の本気がどの程度のものなのか試してやろう」
高俅が一度立ちあがり、卓に面する椅子から部屋の一画にある別の椅子に座り直すと、下袴の腰紐を緩めて男根をさらけ出した。
そのあいだに、膝の拘束と後手縛りの両手を吊っていた縄が解かれる。
香蘭は後手縛りの裸身をすり寄せ、小さな口を精一杯に開いて高俅の股間を咥え込む。
口の中で大きくなる圧迫感に耐え、両膝を床につけ、懸命に舌を高俅の男根に這わせていく。
「ははは、くすぐったいぞ。夫人の本気はそんなものか? それでは慈悲はやれんな。私の魔羅の奉仕が終われば、次は祝朝奉、そして、白文が待っておる。三人から精を搾り取ってみせよ。そうすれば、寝室に連れて行ってやる。そこで三人の相手をするのだ」
「頑張ることですな。気合いが入るように、肛門に痒炎の滴を塗り足して上げましょう」
祝朝奉が香蘭の背後にまわり、突き出している香蘭の尻に新たな油剤を足していく。
「んんんっ」
新たな油剤の追加のおぞましい感触に、香蘭は高俅の一物を咥えながら必死に込みあがるすすり泣きの衝動を我慢する。
だが、気持ちがいい。
いまだに解決されないただれるほどに痒みが襲っている尻の穴を祝朝奉の指でいじられるのは、口惜しいが凄まじいの快感だ。
「夫人、今度こそ、死ぬ気で頑張らねば旦那様のお命はなくなるのですよ。ご主人のお命は、一重に夫人の努力にかかっているのです。しかし、三人への口吻の奉仕の後は、今度は三人との相手をしなければならないが、不甲斐なくも気を失うようなことがあれば、今度こそ、高俅閣下の慈悲はなくなると思わなければなりませんよ」
祝朝奉が油剤を塗る指を抜きながら揶揄をする。
刺激がなくなると、たちまちに発狂するほどの痒みがぶり返し、香蘭は悲鳴をあげたくなる。
「なんの。そのときには、とっておきの淫毒の媚薬を準備している。気絶したくてもできなくなるほどに、身体が覚醒する微毒の薬粉だ。もっとも、中毒性が強いのでそれを服用すると、薬が切れたときに、強い禁断症状が起きるのが欠点ではあるのですがね」
白文だ。
「また、あれを使うか、白文。まあ、確かに、禁断症状で狂わせるのは調教としては効果があるがな」
高俅が笑う。
「なあ、夫人の場合はご主人の命がかかっているのであるから、多少の中毒症状など気にはしておられんでしょう。それこそ、せめてもの慈悲というものでございます、高俅様」
白文が応じた。
香蘭は、どうやら明日の朝まで自分が正気を保つことはないのだと悟って絶望した。
このまま大量の媚薬を服用させられて、責め殺されることは間違いない。
沸騰するほどに疼きの走る興奮剤──。
股間と肛門に塗られた
そして、どうやら、さらに中毒症状を発生させる淫毒とやらも服用させられるらしい……。
香蘭は心からの絶望感に襲われながらも、いまは一心不乱に高俅の股間に舌を動かす。
気が狂うほどの痒みに襲われながら……。