※この作品はR-18です。

水滸伝艶義   作:ドン・ドナシアン

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32  史春、調教始めの浣腸で苦悶する

「お、お願いですから、剃毛してください……」

 

 李吉(りきつ)らに囲まれ、陰毛を手で引き千切られる苦痛に、史春(ししゅん)はついに口を開いた。

 瞬間、こみ上げてきた涙を、どうにか堪えた。

 あまりの激痛に、先ほど一度、涙をこぼしてしまっていた。

 そのことが悔しくてならなかった。

 泣くのは一度きりでいい。

 どれほど恥を晒そうが、せめてこの顔だけは、歪ませまいと心に決めた。

 

「ついに言いやがったか……。よし、みんな、支度しろ」

 

 李吉が鼻を鳴らし、得意げに言った。

 小屋の奥にいた男たちがざわめく。

 「剃刀だ」、「石鹸は?」、「刷毛を持ってこい」──それぞれが勝手な声を上げ、どやどやと準備に取りかかっていく。

 史春は、拘束されたままの身体を震わせていた。

 身を任せるしかない。だが、決して心までは折れまいと、奥歯を噛みしめていた。

 

 それにしても、なんという男なのか──。

 卑劣な手で、かつての許嫁をさらい、こうして裸にし、手足を縛って晒す。

 しかも、それを仲間とともに笑いながら、女の毛を毟って嘲るとは。

 あれほど一途に信じた相手だったと思うと、情けなさが胸に迫り、史春は堪えきれずに目元を濡らしそうになった。

 そのとき、山小屋の戸が、がらりと音を立てて開いた。

 

「李吉さん、来ましたよ……。おおっ? もう、始めてるんですか?」

 

 声のした方を見やると、李吉にさらわれた夜にいた男たちのうち、残っていたふたりが姿を見せていた。

 その背後には、新顔の男がひとり、五十ばかりの年嵩の男がついてくる。

 声を発したのは、案内役の若い男のひとりだった。

 

「いや、責めを始めようと思ったがな、こいつが陰毛の一本すら素直に剃らせねえ。仕方なく、こうしてみんなで毟っていたところよ。ほら、ここ見てみろ。禿げちまって、腫れが出てるだろうが」

 

 李吉は言いながら、史春の股間の一部を指先で指し示した。

 

「さ、触るんじゃないわよ、このひとでなし──」

 

 史春は叫び声をあげ、腰を跳ねさせて男の指を振り払った。

 怒りと屈辱が、声に滲んでいた。

 

「こんな調子でね」

 

 李吉が、肩をすくめて笑った。

 

「まあ、かなりの鉄火娘って話だったからな。そりゃあ、簡単にはいかねえさ。けどな……」

 

 案内役のひとりではない。口を開いたのは、あとから来た中年の男だった。

 年の割には身なりも言葉もぬかりなく、なにかを背負ったまま、荷を下ろし始めていた。

 

「……気の強い女ってのはなあ、自尊心さえ砕いてしまえば、案外あっさりと屈服するものだ。だからこそ、最初は徹底的に恥をかいてもらう。その工程から始めるとしようや」

 

 なんの準備かはわからない。だが、史春の胸に、不安がぐらりと揺れた。

 震える声が、ついに口をついた。

 

「な、なによ、こいつ──」

 

「おう、お前を調教してくれるお方だ。名を鬼丸(おにまる)さんってな。なんだかんだ言っても、お前みたいに血の気の多い女は、俺ひとりじゃ手に余る。だから、この人たちに手を貸してもらうことにした。挨拶しろよ、史春」

 

「ちょ、調教師……?」

 

 史春の声が、思わず高くなった。

 

「ああ、その通り。こいつは普段、叩き売られてきた娼婦や奴隷女を相手に、躾けってやつを生業にしてる男だ。お前みたいな素人を扱うのは珍しいらしいがな、今回は桁違いの手当を払ったからよ。そりゃあもう、腕によりをかけて、従順な奴隷女に仕上げてくれるって話さ」

 

 鬼丸と呼ばれた男が、薄笑いを浮かべながら言った。

 その眼差しに、情けや遠慮といった色は、ひとかけらもなかった。

 

「く、くそうっ──。あたしが……、あたしが、そんな風に調教なんかされてたまるか──。いい加減にしな──」

 

 史春は、怒鳴り声を上げた。

 

 だが──。

 天井から両腕を吊られ、両脚のあいだに棒を通されて開かされている状態では、どれほど啖呵を切ったところで、空しく響くだけだった。

 史春の言葉は、本来なら男どもを黙らせるだけの迫力を持っていた。

 だが、この場にいる連中は違った。

 彼女の気の強さこそが、むしろ嗜虐の悦びを刺激するものとなっていた。

 男たちの目に浮かんだ光は、あまりに薄気味悪く、冷たい。

 

「さすが、名高い史華村(しかそん)の若き女名主といったところですな。気が強いのも、なるほどと納得できますよ」

 

 鬼丸が、史春の目前に立ち、腕を組んだまま冷ややかに言った。

 言葉の端に、ねじくれた嗤いが滲んでいた。

 

「まずは、ひとつ。立ったままで糞でも垂れてもらいましょうか。大抵の女は、それで黙るものですからな」

 

「はっ……?」

 

 あまりにも突飛な言葉に、史春は思わず聞き返した。

 

「糞だよ、糞。う・ん・ち──ってな。いまから、あんたの尻に“浣腸器”って道具を使って、薬剤をぶち込む。その意味、わかりますよな、史春さん? 動けないまま、どうなるか──。お察しの通り、浣腸ですわ」

 

 鬼丸がいやらしく笑った。

 李吉をはじめ、男たちは一斉に笑い声をあげる。

 その中でただひとり、史春だけが、なにが起きているのか理解できずにいた。

 目の前の現実が、信じられなかったのだ。

 

「か、浣腸……?」

 

 言葉は口に出たものの、史春の頭は、すぐには意味を結ばなかった。

 だが、その語が持つ響きだけで、正気ではいられぬ仕打ちであることは、肌で悟った。

 血の気が、一瞬で引いた。

 頬から、喉元から、胸のあたりまで、冷たいものが流れた気がした。

 

「これだけ綺麗な女でも、出すものは臭いんですよ。悪いが、見物だけのつもりの連中は、我慢が利かんなら外に出ててくださいな。この場に残るというのは、その臭気と混乱を、始末も含めて受け入れるという意味ですんで。……ああ、李吉さんは別ですけどね。何と言っても、史春さんを屈服させる相手なんですから。我慢してもらわないと」

 

 鬼丸が、笑いながら言った。

 視線は冷ややかで、わずかの情も感じさせなかった。

 

「おう、鬼丸、そんな心配は無用だ。糞だろうが小便だろうが、史春が垂れ流すもんだったら、汚ねえなんて思わねえ。俺が、木桶でも鍋でも持って、手ずから受け取ってやらあ」

 

 李吉が笑う。

 他の男たちも次々に口を開き、嬲るような笑い声が、小屋の中に満ちていった。

 

「顔にかかったって構わねえ」

 

「こんな上玉が汚すところなんざ、金払ってでも見てえよ」

 

 史春は、なにも言えなかった。

 あまりのことに、言葉を失っていた。

 身体の芯が冷え切ったように、動けなかった。

 

「さて──。じゃあ、さっそく誰か、この小瓶の油剤を使って、尻をほぐしてくれませんかね」

 

 鬼丸が手にしていた小瓶を差し出した。

 その意図は、言葉にしなくてもわかるほど露骨だった。

 

 それを受け取ったのは李吉だった。

 顔に貼りついたような笑みを崩さずに、史春の背後へと回る。

 

「あっ、なにすんの──? ば、馬鹿なこと、やめて──」

 

 背後から迫る気配に、史春の声が跳ね上がる。

 その声にかまわず、李吉の指先が、尻の割れ目をなぞるように近づいてきた。

 

「動くんじゃねえよ。余計にやりづらくなるだろうが」

 

 李吉は左手で腰を押さえ、逃げ場を封じた。

 そのまま、油剤を指先につけ、強引に史春の身体へとねじ込んでくる。

 抵抗を試みたところで、吊られ、拘束された身では、意味をなさなかった。

 

「い、いやだ──。や、やめて──」

 

 史春は声を振り絞り、身体を震わせる。

 尻の奥へと滑り込む異物の感触が、全身の皮膚を逆撫でるような不快感を呼び起こす。

 混乱と恐怖がない交ぜになった感覚が、腹の底から沸き上がった。

 

「そんなに身体を硬くするもんじゃないよ、史春さん。ほら、鬼丸が準備しているのが見えるか? あれが“浣腸器”だ。先端に管がついてるだろ? あれを、お前の尻に差し込むんだよ。ちゃんと緩めておかねえと、傷になる。切れるってことだ」

 

 鬼丸が、愉快そうに笑った。

 

「い、いやだって言ってるでしょう──。あ、ああっ……。ち、畜生……っ」

 

 史春は、なおも左右に身体を振って抵抗を示した。

 

「まったく、やりづれえ女だな。おい、手を貸せ。この身体、ほぐしてやれ。少しはおとなしくなるだろうさ」

 

 李吉の声に、小屋の中の男たちがどっと動いた。

 拘束された史春に、複数の手が伸びる。

 押さえつけ、揉みほぐすように、無遠慮な動きが身体を這った。

 李吉による尻への責めに加えて、ふたつの乳房と股間に五人もの男の手による愛撫が始まった。

 

「やめないか──。いやあああっ」

 

 はらわたが煮え返るような恥辱に、史春の全身の血が沸騰しそうになる。

 だが、やはり、それは女体の悲しさなのか、六人がかりのしつこい責めを受けていると、やがて情念の疼くような官能が身体を支配してきた。

 身体から力が抜け、なにかの上に乗せられて、ゆらゆら浮かべられているような錯覚が起きる。

 史春はわけがわからなくなり悲鳴をあげ続ける。

 不思議な恍惚感が生じ、史春はいまがどういう状況なのかさえ、わからなくなりそうになった。

 

「もう、そんなところで十分でしょう」

 

 鬼丸が、脇にあった器具を手に取った。

 筒型のそれには、先端に細長い管が取り付けられている。

 軽く押せば中の液体が流れ出る構造になっており、既に液体で満たされていることは、外からでもわかるほどだった。

 

「よし──。こうなったら、この俺が、史春に引導を渡してやる。任せてくれ」

 

 李吉が、尻に塗り続けていた油剤の指をようやく引き抜き、満足げに言った。

 一方で、史春の身体に群がっていた男たちの手は、まだ離れようとしなかった。

 

「はあっ、はっ、あっ、も、もうっ……や、やめ……ああっ……」

 

 史春は、喘ぎ声をあげながら悶えた。

 口惜しいが自分の口から出る甘い声をとめることができないのだ。

 全身がかっと燃えあがりどうしようもなくなる。すべての抵抗力が削ぎ落されていく。

 

「ちょっと、史春を抑えておいてくれ」

 

 李吉が言うと、ようやく男たちは愛撫の手を止めた。

 だが、その手は別の形で史春の身体を押さえつけた。

 胴と腰に回された腕が、骨が軋むほどに力を込めてくる。

 

 ──そして、次の瞬間だった。

 

 冷たく、異物の感触を持つ嘴管が、背後から肛門に押し当てられた。

 

「あっ、いやっ──」

 

 史春は、声を振り絞った。

 だが、その叫びも、木壁に鈍く反響するだけだった。

 そして、生ぬるい液体が、じわりと尻の奥から腸の中へと流れ込んでくる感覚──。

 史春は、それを身体の芯で感じていた。

 逃れようと身体を揺すったが、男たちの手がそれを許さない。

 その手は、躊躇も緩みもなかった。

 

 やがて、奥から疼くような痛みが襲い始めた。

 だが、それでも李吉の手は止まらない。

 管から送り込まれる液体はなおも続き、腹の内側に重たく沈んでいった。

 史春は、全身を汚されていくような感覚に、奥歯を噛み締め、首を仰け反らせた。

 その顔には、怒りも、屈辱も、入り混じっていた。

 

「ざまあみろ、ついに、浣腸されやがった。俺を足蹴にした恨みだ。思い知ったか」

 

 やっと管を抜いた李吉が勝ち誇ったような声をあげた。

 男たちが史春の身体が手を離す。

 

「さあ、あとは待つだけですが──それじゃあ、史春さんも退屈でしょうからね」

 

 鬼丸が笑みを浮かべたまま、声を落とした。

 

「一気に引導を渡しましょう。李吉さん、まずは一度、気をやらせてやってください。それで、心も折れるはずですから」

 

 低く、冷ややかに言い切ったその顔には、微塵の情もなかった。

 

「そうだな……。じゃあ、俺は史春の股ぐらを責めるとするか。そのあいだ、誰か胸を揉みほぐしてやれ」

 

 李がそう言うと、すぐさま左右から別の男たちが動いた。

 史春の胸に、無遠慮な手が伸びていく。

 拘束された身体は抗えず、快苦のはざまで震えるようにのたうった。

 

「り、李吉、あ、あんた、こんな恥知らずなことをやって満足なのかい。し、しかも、仮にも復縁をしようと考えている女をこんな風にほかの男にもけしかけさせるのかい?」

 

史春は、狂おしく叫んだ。

 

「言ってなかったがな──実は、こういう趣味なんだよ、俺は。それにな、お前と婚姻して史華村に入り込むってのも、表の話に過ぎねえ。妻にしてからは、きっちり“奴隷”として扱ってやる。安心しろよ」

 

 李吉は肩を揺らして笑い、すっと膝をついた。

 そのまま史春の身体の前に進み出る。

 なにをするのかと思ったら、驚いたことに、史春の股間に唇を触れさせて、ぺろぺろと舐め始めたのだ。

 

「な、なにすんのよ──。やめてっ」

 

 股間に李吉の舌先を感じるや、全身におこりのような悪寒を覚えた史春は絶叫した。

 だが、李吉は史春の狂態にさらに興に乗ったように、舌を史春の股間に這わせ始める。

 一方で左右の乳房と乳首を男たちから、いいように揉まれ抜かれる。

 史春はだんだんと自分の喘ぎ声がはっきりとしたものになっていくのを知覚しないわけにはいかなかった。

 こんな卑劣な連中に、身体をいたぶり抜かれるのだと思うと、全身の毛孔から血が吹き出しそうだ。

 

「こうなったら、うんと気分を出しな、史春──。昔みたいにな」

 

 李吉が唇を離し、ねめつけるような目つきで言った。

 その声音には、過去を捻じ曲げ、女を貶めようとする悪意が滲んでいた。

 

「こ、こんなことしたって、なんの意味もないよ……。李吉……、あ、あたしが、こんなことで……お前の言いなりになるなんて、あるわけないだろ。あ、後で、覚えておきな──。八つ裂きにしてやるからね──」

 

 史春は狂ったように首を振り、怒声をあげた。

 怒りは鋭く、目には焰のような光が宿っていた。

 だが、両手をあげらさせられて無防備な乳房を包み込むように柔らかく押したり、あげたり、あるいは乳頭に指を這わせられたりするたびに、史春の口からは嬌声が迸る。

 また、太腿の内側を撫でさすりながら、舌を肉芽の周りに動かされ、史春はどうにも堪らなくなって、拘束された四肢を激しくうねらせた。

 

 史春の身体は、怒りと羞恥の中で火照り、逃れようともがくたびに、縄が軋んだ。

 全身の筋肉が強張り、目の奥が滲むような感覚だけが残る。

 声にならない声が喉に詰まり、ただ、全身でこの屈辱を拒絶し続けていた。

 

「李吉さん、これを使うといい」

 

 鬼丸が、何かを手にして李吉の前へ差し出した。

 それは、一見して異様な形状だった。

 張形の幹に、黒くて細い縄のようなものが巻きつけられている。

 

「なんだ、こいつは?」

 

 李吉が問いかける。

 

「“ずいき巻き”の張形です。芯をこれで責めれば、縄に染み込ませた液が女の股間を刺すように刺激する。激しい痒みと疼きで、理性を奪うにはうってつけの道具ってわけですよ。女を落とすには、手っ取り早い」

 

 鬼丸の説明に、李吉は喉を鳴らして笑い、ずいき巻きの張形を受け取った。

 

「あふうううっ」

 

 史春は身体を仰け反らせて吠えた。

 李吉の操るずいき巻きの張形が史春の股間に突き挿さったのだ。

 すでに官能の汁をたっぷりと滲み出させていた史春の女陰は簡単にその太い張形を受け入れた。

 李吉が張形を操って抽出を繰り返す。

 じんじんと痛みのような激しい疼きを感じた史春は、全身を振りたてて悶えた。

 

 だが──。

 その瞬間、史春の身体には別の異変が起きていた。

 便意だ。しかも、一気に大きな波として襲いかかってきた。

 それは、今までの愛撫とは異なる、根源的な苦しみだった。

 ひとたび兆したその感覚は、これまでの責めや刺激を、一気に押し流すような重さと熱を伴っていた。

 

「あ、ああ……ま、待って……厠に……。厠に連れて……はあっ……いって……。はああ……」

 

 史春は、叫んだ。

 身体を嬲られながら、喉の奥から絞るように漏れ出た声だった。

 腹の奥で暴れ出した衝動──それはさきほど注がれた液の効力が、本格的に作用し始めた証だった。

 腹の底から突き上げるような便意の痛みが、史春を襲った。

 それは容赦のない波のように、臓腑を締め上げ、全身の力を奪っていく。

 

「厠ですか? わかりましたよ、史春さん」

 

 少し離れていた鬼丸が、木桶を手に近づいてくる。

 その無表情な足取りと道具に、史春の顔が強ばった。

 

「ば、馬鹿なことは……や、やめて……そ、そんな……ああっ」

 

「なにしろ、あんたは名高い女ですからね。男勝りの、史華村の若き名主。多少のことじゃ、音を上げんでしょうから──まずは“立ち糞”とやらを、やってもらいますか。そのまま、みんなの前で、遠慮なくどうぞ」

 

 鬼丸の声は静かだった。

 その静けさが、かえって史春の頭を沸騰させた。

 

「そ、そんなこと……、で、できるわけない……。ふ、ふざけるな……」

 

 史春の声は震え、絞り出すような響きだった。

 立ったままで排泄させられるなど、正気の沙汰ではない。

 しかも、それを木桶で受けるなど、屈辱以外のなにものでもない。

 

 だが、口での抵抗が通じるような相手ではなかった。

 李吉とその仲間たちは、史春の言葉をあざ笑うように、さらに責め立ててきた。

 その手は、抗議の声すらも押し潰すように容赦がなかった。

 

「俺たちが木桶を当ててやるぜ」

 

 今まで黙って見ていた男たちのうちふたりが、鬼丸から桶を受け取り、史春の背後へと回る。

 

「いよいよ我慢できなくなったら、言ってくれ、史春。ちゃんと尻の下に置いてやるからよ」

 

 ふたりの男が、せせら笑うように言った。

 

「気をやるのと、糞をひり出すのと、どっちが先だろうな?」

 

 李吉の声が、ねじれた嗤いを含んで響いた。

 史春は、のっぴきならない状況に追い込まれていた。

 前では、男たちの卑劣な手が身体を抉り、胸を揉みしだく。

 その恥辱の只中で、嬌声を漏らすことさえ拒みきれないという屈辱──。

 背後では、浣腸の影響が容赦なく効いている。

 腹の奥から湧き上がる、凄まじい便意。

 いまにも、内側から破裂しそうな圧迫と苦痛が、肛門を軋ませていた。

 

 責めと苦痛が、同時に襲いかかっていた。

 ふたつの異なる苦しみが、身体の前後から挟み込むように容赦なく押し寄せてくる。

 

 史春は──。

 死んでも、こんな姿を晒したくはなかった。

 歯を喰いしばり、どうにかして堪えようとしたが、もう限界が迫っていた。

 そして、全身に走るのは、官能による痺れだった。

 骨の芯まで軋むような激烈な波が、腹の底から突き上げてくる。

 その一方で、堪えきれぬ衝動が背後から迫り、肛門を苛む鋭い痛みが、意識を焼くようにせり上がっていた。

 

 史春の呼吸は乱れ、目の奥が霞んでいった。

 羞恥と苦痛が、理性を寸断し、心を削っていく。

 

「は、早く……木桶を──」

 

 史春は、もはや理屈ではなく叫んでいた。

 限界だった。

 身体の奥底で溜まりに溜まった衝動が、押し寄せる波のように出口を求めていた。

 男たちは笑いながら、史春の脚のあいだに木桶を差し入れた。

 

「く……口惜しい……っ」

 

 史春は絞るような声で叫び、顔を歪めた。

 

次の瞬間、ついに肛門が崩壊し、まずは汚水が史春の肛門から噴き出した。

 

「はうううっ、ぐううううっ」

 

 便意の崩壊とともに、身体の内側から突きあがった官能の衝撃に史春は身体をがくがくと震わせた。

 

「こいつ、糞を垂れながら、気をやりやがったぜ」

 

 汚物が跳ね返ってくるのを顧みず、史春の股間を責め抉っていた李吉が大きな声で嘲笑った。

 

 羞恥と痛み、そして抗いがたい何かが混然一体となり、史春の身体を突き上げた。

 理性が焼かれ、声にならない声が喉を裂いた。

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