4 林沖、酒屋の納屋で朱武美を抱く
「はううっ」
怒張を押し込む刺激に、
「い、いいわあっ」
朱武美の強い力が、林冲の筋肉質の背中に加わる。
感極まると朱武美は、必ず林冲の日焼けした肌に思いきり爪を立てる。
あとで我に返ってから申し訳なさそうに謝るのだが、それもまた、悪くない。
林冲は、朱武美の股間を怒張で突きあげながら、朱武美のぴんと張りだした乳房をわし掴みにして揉みあげた。
剣技で鍛えている朱武美の乳房は、鋭く上を向いている。
その張りと弾力を味わうように、林冲は力を込めた。
「き、気持ちいい。はあ、ああっ、はああっ」
朱武美が声をあげ、次第にその動きが淫に狂いはじめる。
林冲は、さらに深く突きあげながら、朱武美の腕を取り、自分の口元へと導いた。
「おい、朱武美。袖を噛め。そりゃあ、声がでかすぎる」
だが、朱武美はかぶりを振る。
「いやよう。声を出した方が気持ちいいのよ。それに、あんたとやっているのを知られても、少しも恥ずかしくないわ。そ、それで、あんたはわたしのものだって宣伝できるもの。さ、さっきも酒場の女があんたに色目を使っていたわ。ああっ、あはああっ……。り、林冲は……、林冲は、わ、わたしのものなのにいっ。はああっ」
朱武美の声がさらに高まり、再び林冲の背に爪が立った。
どうやら、わざとやっている節もあるが、その嬌声はまるで戦場の雄叫びだった。
林冲は、苦笑いを漏らした。
ここは、奥州と呼ばれる辺境の入口、
その納屋の片隅、飼葉の山に毛布を敷いて、林冲と朱武美は抱き合っている。
夕餉のかわりに酒を飲んでいた。
酔いが回るにつれ、朱武美が抱いてほしいと誘ってきた。
店の女が林冲に色目を使ったのが癇に障ったのだろう。
いつものことだ。
酒場には娼婦も多い。
誰の視線が火をつけたのか、林冲には見当がつかない。
だが、それでいい。
林冲は、怒張の先で朱武美の子宮を押し上げるように責めた。
引いては押す。押しては引く。
ただの快楽ではない。
朱武美との時間は、生きている実感そのものだった。
こいつは最高の女だ。
以前、傭兵をしていたときに見つけた最高の相棒がこいつだ。
単に美人で淫乱な身体をしているだけじゃない。
林冲と同じように傭兵になるくらいで、女ながら剣技にすぐれた戦いの玄人だ。
なによりも頭がいい。
用兵に関しては非凡なものを持っていて、最初に会ったときには五十人ほどの傭兵隊の女隊長だった。
国境軍でともに戦ったときも、彼女には将としての素質があった。
軍からは正規将校として残るよう望まれていた。
だが──。
林冲が軍を離れ、旅に出ると決めたとき、朱武美も軍を捨ててついてきた。
傭兵隊を解散し、肩書きをかなぐり捨て、林冲の隣に立つことを選んだ。
あれから、もう五年が過ぎる。
ふたりは、戦場を越え、国境を越え、異国の地をさまよった。
一年前、その旅にもうひとり加わった。
北の異国で出逢った、異民族の血を引く少女戦士。
奇妙な武器を使い、年若いながらも戦場では使える。
いま、林冲、朱武美、李姫。
三人で放浪している。
林冲の武勇──。
朱武美の知略──。
そして、李姫の技──。
この三人がそろえば、どこであろうと戦える。
生き残れる。
勝てる。
林冲は、すべてを任せられるこの女の身体を抱きながら、熱く、深く、そう思った。
「あ、あはああっ」
「うっ」
林冲は顔をしかめた。
朱武美がひと際高い声をあげ、身体を弓なりに反らせた瞬間、膣が林冲の怒張を締めつけた。
強烈な快感が、林冲の全身を貫いた。
そのまま、欲望の衝動を朱武美の腰へ叩きつける。
無意識に、朱武美の尻を掴んでいた。
手のひらに伝わる体温が熱い。
律動を速めながら、林冲の意識はますます燃え上がっていった。
──と、そのときだった。
納屋の戸が、控えめな音を立てて叩かれた。
鍵はしていない。閉まってはいるが、開けようと思えばすぐに開く。
店の主人かもしれない。
納屋を勝手に使っているのが見咎められたか──。
「……ね、ねえ、林冲、朱武美……。声、漏れているよ……」
小さな声が聞こえた。
李姫だった。
その声に、林冲は安堵の息をついた。
年は十五。
自分たちよりも若いが、いまでは欠かせぬ旅の仲間だ。
「うるさい、あっちに行ってろ、李姫。気が散る」
林冲は、朱武美の股間を責め続けながら怒鳴った。
「あうううっ、はああっ」
朱武美ががくがくと腰を振り出す。
その反応からして、そろそろ絶頂が近い。
林冲は彼女の膣襞に強く擦るように怒張を動かした。
この刺激に朱武美は弱い──それを知っている。
案の定、朱武美の乱れはさらに激しくなり、声も大きくなった。
「ね、ねえ……。あたしらに隊商の護衛の依頼をしたいっていう商人がいるんだよ。兵はいるんだけど、その兵たちの指揮のできる用兵屋を探しているんだって……。林冲と朱武美の名を出したら話をしたいってさ。ねえ、出て来てよ……」
扉越しに李姫の声が届いた。
隊商の護衛──。
それならば朱武美の出番だ。
この時世、各地で盗賊が横行している。
商人たちは商品と金子を護るために兵を雇うが、兵だけではどうにもならない。
必要なのは、兵を動かす指揮官だ。
その多くが不足していた。
賄賂なしでは動かぬ地方軍、腐った役人ども。
高い税に苦しみ、土地を捨てた農民が山にこもり盗賊となる。
守るべき軍は盗賊と結び、護るべき民を食い物にする。
だからこそ、雇われ隊長──つまり林冲や朱武美のような傭兵に需要があった。
経験がものを言う。
林冲たちは実績を積み、名も知られるようになっていた。
信頼は金よりも価値がある。
その信頼が、仕事を呼ぶ。
「いいから、待たせておけ」
林冲は朱武美を抱いたまま怒鳴った。
「はあ、だめ、だめ、だめえっ」
不意に朱武美の動きが速くなる。
うなじを反らし、膝をがくがくと震わせた。
達したのだ。
林冲は、その感触を身体で感じ取る。
「俺は、まだだからな……。まだまだ、終わらんぞ、朱武美」
唇の端をつり上げて、林冲が笑う。
「ああん、次は一緒にいってぇ」
朱武美が甘ったるい声を出す。
その声音に、林冲の内側にあった熱がさらに燃え上がった。
「うううっ、そ、そんなあ──。いきすぎて死んじゃうよう、林冲。わたし、死んじゃうわあ──。はあああっ──」
「女がいきすぎて死ぬかい……。ましてや、お前が─」
林冲は喉の奥で笑った。
そのとき、また扉が叩かれた。
さっきよりも少し強く、切迫した音だった。
「……ねえ、でも、ほかにも商人に声をかけている組もいるんだよ。あたしじゃあ、子供扱いされて相手にされないんだよ……。ねえ、出て来てよ」
扉の外から、李姫の声が響く。
林冲は眉をひそめた。
「お、お前、まだいたのかよ? いいから、あっちに行ってろ」
苛立ちを込めて怒鳴る。
「そんなあ、林冲。でも、今度は結構、大きな仕事なんだよ。なんか、この辺でも有数の大商人の依頼でね……。
「あっちに行けと言ってるだろう、李姫。気が散るんだよ」
さすがに、腰の動きを止め、林冲は言い放った。
「でも……」
なおも食い下がる李姫の声。
林冲の苛立ちはさらに強まっていく。
そのとき──。
朱武美の手が、何かを探るように動き、木切れを掴んだ。
次の瞬間、その木切れが唸りをあげて扉へと飛んだ。
「後にしろって、言ってんでしょう──、李姫。頭、引き抜くわよ──」
怒気を孕んだ叫び声が、納屋の中に響いた。
しばらくして、李姫が舌打ちしながら立ち去る気配がした。
「ああ、もっとして、林冲。もっとようっ」
何事もなかったように、朱武美が林冲の背にしがみついた。
甘く、ねっとりとした声音で……。
■
傭兵上がりの剣士。齢二十六。
各地を渡り、戦場にのみ身を置いて生きてきた。
その剣筋には、技ではなく、体が覚えた殺気がある。
言葉は少なく、怒りもまた深い。だが、無闇には刃を抜かぬ。
過去に何を捨て、何に敗れたかは語らぬが、戦場に立つその背は、どの将よりも静かで強い。
現在は朱武美、李姫とともに流浪の旅を続けている。
※原典:梁山泊第六位。「豹子頭 林沖」。元禁軍師範代の武人。忠義に篤く、無実の罪で流され梁山に加わった猛将。
■
朱武の名を持つが、性は女。齢二十五。
かつては女傭兵隊長として名を馳せた。
戦術と判断においては群を抜き、どんな劣勢も冷静に打破する。
剣を執るとき、その切っ先は感情ではなく、理のうえに置かれている。
林沖とは恋仲にありながら、戦場では常に互いを独立した兵と見做す。
言葉にせず、背で示す──そんな関係である。
※原典:梁山泊第三十七位。「神機軍師 朱武」。智将にして副軍師。戦場の動きを読む眼に長け、少華山より入山。
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異国に生まれ、戦の中で育った。
歳は十五。
だが、年齢で侮る者はすぐにその刃を喉に喰らう。
戦士としての矜持を、異国の血に刻み込まれている少女。
林沖・朱武美に従い行動しており、ふたりに対してだけは深い忠誠と信頼を見せる。
※原典:梁山泊第二十二位。「黒旋風 李逵」。蛮勇無双の豪傑。粗暴だが義に厚く、宋江に私心なき忠を誓った男。