※この作品はR-18です。

水滸伝艶義   作:ドン・ドナシアン

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40  王進、殷天の受虐調教に染まりだす

「ああ、あっ、あああ……」

 

 王進(おうしん)は、自棄になったように腰を振っていた。

 両手首は枷で嵌められ、それぞれ左右の足首と繋がれている。膝を割って立ち、腰を前へ突き出したまま、その体勢のまま身体を揺らす。

 前へ、後ろへ。左右へと、腰が大きくに動くたび、股間に喰い込んだ縄の瘤が神経をかすめる。そもそも、この窮屈な体勢では、かなり腰を動かさないと、縄で刺激を受けるまでいかない。

 だが、絶頂までやり遂げられなければ、痛点棒の罰だ。

 屈辱も自尊心もなにもかも捨てて、恥を晒すしかない。

 

「うっ、くっ、くっ」

 

 女としての肉が、繊細な刺激に敏感に反応していく。鋭い感覚が背筋を伝い、腹の奥へと込み上げてくる──。

 

「ほら、時間がないよ。もっと激しく腰を振りな。股ぐらがぐっしょりになるまで、やりきるんだよ」

 

 殷天(いんてん)がしゃがみ込んだ姿勢の王進の様子を見下ろしていた。

 そして、縄の瘤に自ら身を擦りつける王進の尻に、殷天が痛点棒の先端を当て、なぞるように動かしてくる。

 

「ひっ」

 

 恐怖が思わず、王進を反応させてしまう。

 いつ閃くかもしれぬ痛みの予感が、王進の意識を蝕んでいく。

 

「へっ、見ものだな。かつて禁軍の鬼師範とまで呼ばれた男が、自分の尻を振って喘いでるとはよ」

 

「いやあ、立派な女になったじゃねえかい、あいつは。全身が赤くなって、熱に浮かされてやがるよ」

 

「まちがいねえ。でも、短い時間でここまで堕ちるとはな……。骨の芯まで色で染まってるぜ」

 

 王進のまわりに、三人の高俅(こうきゅう)の兵が集まっていた。

 にやにやと笑みを浮かべたまま、彼らは言葉を浴びせてくる。

 その嘲りは、いま自分がどれほど滑稽で、惨めな姿に堕ちているかをいやでも思い知らせた。

 胸の内に冷えた感覚が生まれ、羞恥が身体の奥に沈んでいく。

 

 彼らは殷天の命を受け、あえて侮辱の言葉を浴びせるよう指示されている。

 その目的は、王進の心に、快感と屈辱を重ねて刻みつけることにあるのだという。

 

 ──調教と呼ぶには、あまりにも陰湿で、残酷だった。

 だが、それを指示された兵どもは、命令に従っているというよりも、獲物を嬲ることに快楽を見出しているようだった。

 

 だが──。

 尊厳を踏みにじられ、己という存在を地に伏させられるほど、王進の胸には、被虐のような感覚が芽生えていく。

 人としての誇りを削られるたびに、なぜか、背筋に震えるような快感が忍び込んでくる。

 

 いったい、自分はどうなってしまったのか。

 男として生きてきた。誇りもあった。

 それがいま、女の肉を持つ身体として、縄に身を任せ、悦びに震えている──。

 この行為を、快感として、受け入れつつある自分がいる。

 

「あっ、だ、だめだあっ、ああっ」

 

 思った瞬間、身体が裏切った。

 疼きが突如として全身を貫き、王進は首を反らせ、喉を鳴らした。

 

「ははっ、情けないねえ。こんなざま晒して、もう立派な女だよ、お前は」

 

 殷天が笑いながら、王進の尻を痛点棒で叩いていた。

 乾いた音が響くたび、王進の顔が強張る。だが、その尻は、叩かれるたびに微かに震え、わずかにうねるように動いていた。

 縄の瘤が、肉の奥に触れているのだ。

 そこが抉られるたび、背骨の奥から甘く痺れるような感覚が込み上げてくる。

 ──これが、女という身体に刻まれた快感なのか。

 

 視線の端で、砂時計が目に入る。

 残りは、わずかだった。

 殷天も、兵どもも、視線を逸らさずにこちらを見ている。

 かつて禁軍の武術師範と呼ばれた男が、いま、自ら腰を揺らし、身体を悦びに委ねている。

 その惨めさを、わかっている。

 だが──。

 もう、止められなかった。

 恥辱に塗れたその行為を、どこかで快感として受け入れている自分がいた。

 その存在が、王進の内側から、抑えを外していく。

 

「あっ、あああっ……ち、畜生──」

 

 王進は叫んだ。

 突き上げてくる気配に、身体が痙攣する。

 そのまま、頂に達しかけた瞬間だった。

 

「馬鹿たれがあ──」

 

 殷天の声とともに、縄の傍らに激痛が走った。

 肛門の脇を鋭く突かれた痛点棒が、鋭い電流のように身体を貫いたのだ。

 

「ぐああああっ──」

 

 快感は一瞬で霧散した。

 代わりに、あまりに苛烈な痛みが全身を覆い尽くす。

 王進は仰向けに転がり、床に叩きつけられた。

 尻を軸に身体が裂かれるような感覚に、しばらくの間、声もなく転げ回るしかなかった。

 

「忘れたのかい──。昨夜、言い聞かせたろう」

 

 殷天の声が冷ややかに響く。

 

「お前の身体は、もうお前のもんじゃない。高俅様のものだ。全部、許しが要るんだよ。勝手に達するなと、言ったはずだろうが」

 

 怒声が、頭上から叩きつけられた。

 だが、すぐには意味がつかめなかった。

 あまりにも強烈な痛みに、王進の意識は途切れがちだった。

 ようやく、身体を走る激痛が薄らいできた頃、昨夜のことがじわじわと記憶に浮かびあがってきた。

 

 ──そうだ。

 これからは、絶頂に達するにも、許可が必要だと言われたのだった。

 理由は、いま殷天が喚いたとおり。

 王進の身体は、もはや高俅の所有物なのだと。

 その身体が快楽に達するにも、持ち主の意志がなければならない。

 ──いまはその高俅は不在で、代わりに殷天が判断するという理屈だ。

 

 馬鹿げた話だと思った。

 だが、逆らえばどうなるかは、すでに知っている。

 気を失おうが容赦はない。

 痛点棒で意識の奥まで貫かれ、何度でも引き戻される。

 ──だから、あのとき、王進は口惜しさを噛み殺し、情けない声で許しを乞うしかなかった。

 それが、昨夜の調教だった。

 

「いつまで寝てるつもりだい。さっさと極めな。──もう一度だよ」

 

 殷天が、王進の脇腹を足先で蹴り上げた。

 同時に、手にした痛点棒が局部へと迫る。

 

「うわっ……や、やめてくれ──」

 

 王進は跳ね起きた。

 全身が汗に濡れている。

 恐怖による冷や汗だけではない。縄の瘤がぎりぎりまで追い詰めてきた肉の奥の熱も、身体から溢れさせていた。

 

「──時計をひっくり返しな」

 

 殷天が短く命じた。

 兵のひとりが無言で砂時計を持ち上げ、上下を反転させる。

 いつのまにか、砂はすべて落ちきっていた。

 静かに、再び砂が流れ始めた。

 

「くっ……」

 

 王進は、枷で繋がれた手足を無理に動かし、再び膝を立てた姿勢をとった。

 歯を噛みしめ、やけになったように腰を振る。

 縄瘤が食い込んだ腰が、前後に揺れる。

 

「あっ……くうっ……あああっ……」

 

 繰り返される動きが、肉の奥に刺激を刻みつける。

 変えられた身体──胸の膨らみが、揺れに合わせて跳ねる。

 その感覚すら、王進には快感としてのしかかってきた。

 

 ずいき縄の疼きと痒みは、夜を通して王進の身体を蝕んできた。

 それを鎮めるには、快楽に身を投げるほかなかった。

 

「またいきそうになるんじゃないか?」

 

「いつ見ても、感度のいい身体だな」

 

 男兵たちが、冷笑を浮かべながら嘲る声をかけてきた。

 この半月のあいだに、王進は数えきれぬほど、女の快感を無理矢理に刻みつけられてきた。

 そのたびに、殷天は男兵たちに命じて、王進をからかわせた。

 繰り返されたそれが、いまや身体に染み込んでいる。

 

 ──だから、声を浴びせられるだけで、肉が熱を持つ。

 侮辱が、かつての自分なら怒りに変わったはずの言葉が、いまは、快感の引き金になっていた。

 

 どうしようもない。

 浅ましい身体だ。

 情けない。だが──その惨めさすら、どこかで快感に変わっている。

 

「ああっ、い、いくうっ、いくうう──。きょ、許可を──。いってもいいでしょうか──。あああっ」

 

 王進は、全身から汗を滴らせながら、必死に腰を動かし、叫んでいた。

 視界が白む。

 自分が、また極みに達しかけているのが、はっきりとわかる。

 

「ははは、まだだよ。我慢しな──。でも、腰は振りな。ぎりぎりまで頑張れば許可を与えてやる。そうやって、快楽でさえも、勝手にはできないことを頭に刻み込むんだ」

 

 殷天が、笑っていた。

 

「そ、そんなあ、ああ……」

 

 王進は呻いた。

 悔しさに歯を食いしばりながらも、目前に迫っていた絶頂を避けるため、腰の動きを緩めるしかなかった。

 

「なにを勝手に、腰を止めてるんだい──。腰は振り続けろと言っただろう──」

 

 殷天の声が冷たく響く。

 次の瞬間、縄瘤の奥に向けて、痛点棒が鋭く貫いてきた。

 

「ほごおおおっ」

 

 王進の身体が激しく跳ねた。

 拘束されたまま、限界まで反り返り、痛みに突き上げられて仰向けに転がる。

 全身が痙攣し、喉の奥から苦鳴が漏れた。

 

「やり直し──。もう一度だよ」

 

 殷天の声は冷えきっていた。

 だが、痛点棒の衝撃を受けた直後の身体は、すぐには言うことをきかない。

 王進は仰向けに倒れたまま、身動きが取れなかった。

 

「せめて、立ちあがろうとする態度を見せないかい、この家畜──」

 

 言葉とともに、痛点棒が下腹部に押し当てられ、電撃のような衝撃が肉の奥へと走った。

 

「んぐうううっ」

 

 喉の奥から、圧し殺された声が漏れた。

 どれだけ味わっても、この痛みだけは身体が覚えることがない。

 武術で鍛えた体躯も、この内部から突き上げてくる痛みには耐えきれない。

 王進は、仰向けのまま、悲鳴をあげるしかなかった。

 

「やり直しの命令が聞けないのかい──」

 

 まだ身体が弛緩しきっていないうちに、さらにもう一度、痛点棒が同じ箇所を穿つ。

 王進の身体が、再び跳ねた。

 

「あがあああっ、いやあああっ」

 

 王進は絶叫した。

 股間を裂かれるような激痛が、全身を貫いた。

 突き出されている女の股間から、ぶしゅっという水音とともに、ずいき縄を通して、水流が噴き出した。耐えられない激痛に、王進の女の身体が失禁をしてしまったのだ。

 

「情けないねえ。それでも元の禁軍の武術師範かい──。たった数発の痛点棒でおしっこを漏らしたかい」

 

 殷天の声は、冷たさというより、呆れを含んでいた。

 屈辱が、皮膚の下まで染みこんでくる。

 だが、一度流れ出したものを、止めることなどできなかった。

王進はあまりもの情けなさに、股縄越しの放尿を続けながら、身体を震わせた。

 

 殷天は、痛点棒を手にしたまま、わずかに笑みを浮かべていた。

 その棒をちらつかせながら、王進に命じる──腰を動かせと。

 

 王進は、震える身体をどうにか動かし、言われたとおりに膝を立てた。

 関節がぎこちなく軋む。

 痛みと羞恥とで、全身が固まっていた。

 やっとの思いで身体を起こす。

 そのとき、視線の先──自分の足元に広がっている自分の失禁の痕に気づいた。

 瞬間、身体の奥底に、鋭く羞恥が突き刺さった。

 

「始めな」

 

 殷天が痛点棒で王進の脇腹を勢いよく叩いた。

 鋭い衝撃が皮膚を突き抜け、王進の神経に焼きつく。

 

 恐怖が、背骨にこびりついている。

 王進は無言で頷くと、再び腰を動かし始めた。

 縄瘤が股間を抉るたび、情けないほど速く、快感が全身を包んでいった。

 

「ああっ、いきます──。許可を──。許可をください、いぐううっ」

 

 歯を喰いしばり、喉を振り絞るようにして声をあげる。

 腰は止まらない。止めることなどできない。

 

 殷天は沈黙したまま、わざと何も言わなかった。

 許可は出ない。

 だが、王進は動きを緩めることすらできない。

 さっきの痛みと恐怖が、身体の芯に残っている。

 

 一方で、腰の芯に火が灯ったような灼けつく感覚が走り、痺れが背骨へと這い上がる。

 その刹那、愉悦の衝撃が脊髄を貫いた。

 

「んぐううっ、あぎゃあああ──」

 

 だが、その瞬間を狙ったように、痛点棒が下腹部に突き立てられた。

 絶頂寸前の感覚が、激痛に掻き消される。

 

「立て──。もう一度だよ」

 

 殷天が、笑い声をあげた。

 それは、愉しんでいるというよりも、見下す者の嗤いだった。

王進は二度目の失禁をしながら、意識が薄れるのを感じた。

 

「あぎゃあああ──」

 

 叫びも、断ち切られた。

 意識が沈みかけたその瞬間、痛点棒の衝撃が王進の身体を無理矢理に現実へ引き戻す。

 

「もう一度と命令しているだろう──」

 

 殷天の声が鋭く響いた。

 王進は、這い起きるようにして身体を起こす。

 のろのろと膝を立て、腰を振る。

 もう、何も考えられなかった。

 考えるという行為自体が、遠いものになっていた。

 

 ただ、命じられたことを、ただ繰り返す。

 それしか、頭には残っていなかった。

 

 殷天は、許可を出さない。

 王進が極みに近づくたびに、痛点棒でそれを断ち切った。

 その繰り返しだった。

 許されることなく、寸前で絶たれ続ける苦痛が、じわじわと王進の心を蝕んでいく。

 

 やがて──。

 五度目にして、ようやく王進は縄瘤によって極みに至った。

 殷天の痛点棒が止まり、初めて最後まで妨げられることなく、絶頂を迎えることを許されたのだ。

 

「はは、なんとか絶頂できたかい。だが、これでお前の身体がお前のものじゃないということがわかっただろう。さあ、調教前に食事だよ。時間は半刻だ。ひと欠片も残すんじゃないよ。すでに、時間以内に気をやることに失敗したのが五回だからね。懲罰をこれ以上に増やさないことだね」

 

 殷天が王進の長い髪を鷲掴みにし、うつ伏せに引き倒した。

 顔を床に押しつけられたまま、その前に皿が置かれる。

 中には、野菜のくずと安物の肉片が混ざり合った、冷えた餌。

 ──これが、毎日与えられる食事だった。

 

 人の口に運ばれるものではない。

 それでも、口をつけねばならなかった。

 食らわねば、待つのは痛点棒の罰だ。

 

 いや、それ以上に──。

 いまの王進には、食うことも戦いの一部だった。

 少しでも体力を維持しなければ、いつか訪れるかもしれぬ逃走の機会に立ち向かうことさえできない。

 王進は、床を這いながら皿に顔を近づけていった。

 

「待ちなよ。王進先生、これは頑張っている先生に贈り物だ」

 

 いきなり皿の上から水流が落ちてきた。

 驚いて顔をあげる。

 すると、王進の前に兵がひとり立っていて、男根を下袴から出して王進が口にしようとしている皿に向かって放尿をしているのを見た。

 

 王進は、ただ茫然とした。

 兵の放った小便が止むと、皿に盛られていたものはすっかり浸かりきっていた。

 床の周囲も、同じだった。

 

 王進の肩がわずかに揺れる。

 思わず身体が後ずさる。

 

「制限時間は半刻だよ」

 

 殷天は、部屋の隅にある椅子に向かい、ゆっくりと腰を下ろした。

 王進は、呆然としていた。

 これまで、調教という名のもとに、あらゆる辱めを受けてきた。

 だが──これを、口にしろというのか。

 

「さっさと食べな。言っておくけど、皿にあるものだけじゃないよ。折角の贈り物だ。床に濡れた小便も舐めつくんだよ。お前が失禁で汚した床もだ。全部合わせて、半刻だ」

 

 殷天は、無表情のまま兵のひとりを手招いた。

 そして、王進が少しでも躊躇すれば、即座に痛点棒で罰を加えよと命じる。

 

 背筋に寒気が走る。

 逃げ道は、なかった。

 

 王進は、目の前の皿を見下ろした。

 異臭が鼻を突く。

 目を閉じ、舌を伸ばす。

 

「王進先生、食事のあいだ、退屈だろうから、いつものように尻を犯してやるぜ。女の性器はだめだが、尻は男のときにもあったものだから、犯していいと言われてるしな」

 

 背後から近づいた男兵が、王進の尻に手をかけた。

 冷たい指先が、腰まわりを這う。

 次の瞬間、王進の股間に絡んでいたずいき縄が外されていく。

 拘束が解かれるたびに、背筋がこわばった。

 そして、怒張を王進の肛門にあてがうと、ずぶずぶと中に沈めだした。

 

「あひいっ、いやあっ」

 

 この半月で、王進のお尻は信じられないくらいに鋭敏な官能の器官となり、しかも、いまのように抵抗なく男を受け入れることができるくらいに調教により柔らかくされてしまっている。

 男に後ろを犯される──それは、本来ならば屈辱と嫌悪の象徴でしかない。

 だが、男の性器を後ろに受け入れるなど、おぞましいことでしかないのに、どうしても脳天まで貫くような喜悦を感じてしまうのだ。

 

「ああっ、あああっ、あひいいっ」

 

 奥まで貫かれて、王進は喜悦の悲鳴を迸らせてしまった。

 

「ほら、先生、喰わねえか。さもないと痛点棒だぜ」

 

 王進の背後にいた丁元(ていげん)は、低く笑いながら動きを続けていた。

 呼吸が荒くなる。

 逃れられぬ快感の奔流に抗いながら、目の前の皿に顔を近づける。

 王進はたちまちに駆けあがる快感に耐え、小便に浸かった平皿に再び舌を伸ばした。

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