「わひゃははは、ひゃはははは、く、苦しい──。も、もう……ゆ、許して、ひゃははははあ……」
四肢は厠にしゃがむ形のまま、縄と鉄輪でがんじがらめに括りつけられている。どれほど腰を振ろうが、背を逸らそうが、五人がかりの手と羽根の先から逃れる道はなかった。
ただただ、刹那の苦しみを紛らわせようと、無様に身を暴れさせるしかない。
媚薬で鋭敏になった皮膚が、くすぐりのたびに針のように疼き、喉の奥を裂いて笑いと泣き声を無理やり混ぜ合わせる。
「あはははは、いひゃはははは、い、息が……わはははは、はははは──」
喉が潰れかけても、声だけは絶えなかった。
誰かが合図を送るたびに、脇の下、腿の付け根、肋の隙間をひたすらにくすぐられる。
肉の奥に潜む羞恥が、細く針を突き立てられるように目を覚ます。
王進は暴れた。
息が詰まるたびに、腹の底が痙攣し、笑いと呻きが同じ声に溶けていく。
どれだけ抗おうとも、締めつけていた下腹の力はすでに失せている。
またもや、尿の滴る音が、くぐもった笑い声の底に落ちていった。
「うわっ、また、漏らしやがった」
「服が汚れちまったぜ」
「だが、どれだけ小便袋に溜まってんだよ。こんなにも失禁が続くものかあ?」
くすぐりの組だった男たちが手を止めて、腹を抱えて笑った。
王進は精も根も尽き果て、がくりと首を垂れた。
だが、間を置かずに新たなくすぐりが始まる。
「いやああっ、ひいいっ、ひっ、ひっ、ひゃはははは、やめてえ、な、なんでもする。なんでもするから……。ふはぎゃははは──」
苦しい。
だが、その底には訳のわからぬ快感が渦を巻いていた。
どこまでが苦痛で、どこからが快楽か、もう見分けがつかない。
王進の意識は、完全に乱れていた。
この屋敷に囚われて以来、殷天の性奴調教は執拗だった。
責めが残忍であればあるほど、受虐の血が膚の奥を暴き、媚肉は自ら蜜を垂れ流す。
いまや、股間から溢れるのは失禁ばかりではない。
淫蜜が糸を引いて床に滴り落ち、内腿を伝って膝までも濡らしていた。
笑い声の合間に、その惨めな姿を指摘され、嘲られる。
だが、王進にそれを恥じる余力は残っていない。
ただ、望まぬ笑いを引きずり出されるだけだった。
「もういいだろう。懲罰は終わりだ。痒みも限界だろうし、もう一度訊ねてやるよ。雌犬、そろそろ、犯して欲しいかい? だったら、恥知らずにお強請りしてごらん。そうすれば、次のあて馬責めに移行してやろう。ちゃんと強請れなければ、くすぐり責めをもう一周するよ」
殷天の声が落ちてきた。
ようやく、くすぐりの責めが止む。
王進は朦朧としたまま一瞬だけ呆けたが、慌てて顔をあげた。
「み、皆さん、どうか、わたしを犯してください──。ま、前にも、後ろにも、皆さんの太いのを……入れて。入れてください。お願いします。お願いいたします──」
半ば狂乱した叫びだった。
あの苦しみを、もう一度味わうなど冗談ではない。
しかも、くすぐられながら受けていた胸や局部の刺激を、いま手放されたことで、あの狂うような掻痒感がぶり返している。
滝のように流れる汗で多少は痒み剤を洗い落とした気もするが、汗の届かぬ局部と尻の奥は、なお深く疼いていた。
とにかく、もう王進には恥も外聞もなかった。
男であるかなど、どうでもよい。
羞恥も屈辱もない。
ただ、この苦しみから逃れたい。
一刻も早く犯され、爛れた痒みを掻きむしられたい。
頭にあるのは、それだけだった。
なにを口にすれば、この責めから解放されるのか。
どんな恥辱的な言葉を吐けば、自分を突き崩してもらえるのか。
それ以外のことは、もはや考えられなかった。
「わたしのつつしみのない……ま、まんこに……。く、くずまんこです。男もどきの……成れの果ての……女まんこです。皆さんの太い……立派な……ものを……ここに突っ込んで……。お願い……。お願いいたします……」
王進はぼろぼろと涙をこぼしながら、できるだけ惨めな言葉を探して口にした。
自分の中のなにかが崩れていく気がしたが、もういい。
この苦しみから逃れられるなら──。
周囲の男兵たちが一斉に爆笑する。
「じゃあ、あて馬責めだ。最初の組から順番だ。ただし、十回だよ。それ以上はだめだよ」
殷天の声が響く。
あて馬責めという意味はわからなかったが、どうやら犯してくれるらしい。
喉の渇きに投げ込まれた一滴の水のように、いまの王進にはそれが欲しかった。
待ち望んでいたものが与えられる。
心の底から歓喜が滲み出る。
また、二つの台のそれぞれに左右の足を載せ、厠にしゃがむ格好のまま拘束されている王進の前後に、新たな台が運ばれてきた。
「俺が最初だ。もう我慢できねえ」
前に出てきたのは、
他の男を押しのけ、運ばれた台に飛び乗ると、王進の両腿を抱えて腰を突き出してくる。
すでに下袴と下帯は外され、怒張したものを臆面もなく晒していた。
「ほわああっ、ああああっ」
一息で、奥まで怒張が貫いた。
屈辱だとか惨めだとか、そんな感覚はどこにもなかった。
やっと犯してもらえる。
それだけだった。
腰の律動が始まると、身体の芯をえぐられるような快感が突きあげてきた。
「あっ、ああ、ぎ、ぎもぢいいっ──」
「ははは、俺もいい気持ちだぜ、先生。これが男の
丁元が前後に腰を揺すり、奥を突きこねながら笑った。
「はああっ、あああああっ」
絶頂の大波はすぐに這い上がってきた。
「いぎいいっ、いぐうううっ、いかせて──。いかせてくださいいい」
王進は必死に絶頂を堪えながら哀願した。
許可なく果ててはならない。それだけは、頭の奥に焼きついていた。
「おう、いきな──。いくらでもな」
丁元は王進の股間を容赦なく突き続けた。
そのときだった。
王進は、丁元の背後に何人もの男が近寄り、肩を掴んで引き離そうとしているのに気づいた。
「終わり」だとか「交代」だとか怒鳴り声が飛び交う。
だが、丁元はそれを無視し、腰を止めようとしない。
「ふがあああっ」
次の瞬間、丁元が王進の目の前で絶叫し、崩れ落ちた。
なにが起きたのかはすぐにはわからなかった。だが、殷天が倒れた丁元の背後で、憤怒を顔に滲ませ立っていた。
手には痛点棒を握り締めている。
どうやら、背後から突きつけて作動させたらしい。
「な、なにをしやがるんだ──」
丁元はひっくり返り、仰向けのまま、眼を剥いて声をあげた。
「なにをするじゃないよ。十回だと言っただろう。言いつけは守りな──。ひとりにつき十回の律動だ。あて馬責めだと告げただろうが。お前らを満足させるためじゃない。この雌を
「そうしてんだろうが──」
「やかましい──。ひとり十回で止めて、生殺しにして淫欲を溜めさせる。それが狙いだ。欲を吐き出したいなら、自分の部屋でせんずりでもしてな」
殷天がまくし立て、痛点棒の先端を丁元の股間近くへ押しつける。
「ほごおおおっ──」
丁元が巨体を突っ張らせ、獣のような声をあげた。
次いで、脱力する。
口の端から泡を噴き、完全に意識を失ったのがわかった。
だらしなく開かれた股間では、なおも勃起した男根が隆々と脈打っている。
「外に運びだしな──。高俅様の留守を預かっているのは、このあたしだ。あたしの言葉は、
殷天が、ずらりと並ぶ男兵たちを見渡し指図した。
気を失った丁元は、五人がかりで抱え上げられ、部屋の外へ運ばれていく。
王進は、はっと息を呑んだ。
後ろから、二人目の男が尻の肉を両側から鷲掴みにしている。
肛門に熱い怒張が触れたと思った瞬間、それがずぶずぶと尻の奥へ沈んでいった。
「ほおおおおっ」
掻痒感で焼ける尻を貫かれるのが、途轍もなく気持ちよかった。
悲鳴のような嬌声が喉を割って迸る。
「ああっ、んわっ、あんっ、あっ」
「くっ、し、締めつけやがるぜ……」
だが、王進が快楽に我を忘れかけた瞬間、呆気なく怒張は引き抜かれた。
「ああっ、そんな──」
「今度は前だな」
前から別の男が腰を埋める。
律動が始まると、快感が一気に駆けのぼる。
だが、またすぐに抜かれる。
「ああっ、いやああっ」
王進は錯乱した。
やっと、この「あて馬責め」の狙いが腹に落ちた。
これだけ媚薬とくすぐり責めで、骨の芯まで煮えたぎるほど性欲を沸かされながら、与えられるのは、ひとりにつき十回の律動だけだ。
最後まで果てることなどできはしない。
そして、またすぐに次の男に交替させられる。
発散できぬ欲の飢えだけが、底なし沼のように増えていく。
それが、殷天の狙いだった。
「次は俺だ。今度は尻穴だ」
背後から股を押し開かれ、熱い怒張が肛門を貫いた。
堪えきれず、快感が沸きあがる。
「ああっ、ああああっ、ああああ──」
声を裂いて泣き叫ぶ。
だが、またしても、怒張はあっけなく抜かれた。
「ああっ、もう許して──。やめないで──。やめてはだめええ──」
王進は泣き喚いた。
刺激を求めて狂いそうだ。
「随分と女っぽくなったじゃないかい。今日は夕方までこれを続けるからね。達したければ頑張って、男たちのちんぽを締めつけてみな。そうすれば十回までに満足できるかもね。だけど、ちゃんと許可を受けるんだよ」
殷天がせせら笑う。
王進は絶望した。
この狂女はどうなっても、王進を満足させるつもりがないのだとわかったのだ。たった十回で達することができるわけもないし、できたとしても、許可を受けているあいだに終わってしまうだろう。
結果として、寸止めだけが延々と続くことになる。
これは性の地獄だ。
王進はすでに半狂乱だ。
「じ、焦らさないで……。お願い……。お願いよお……。あああっ」
「ははは、もっと狂いな。夕方までこれを繰り返したら、今日の夜は貞操帯の革帯で股を封印するからね。ちゃんと張形は挿してやる。この油剤を塗ってからね。今夜からは夜中に勝手に自慰もできないよ。なんだかんだで、お前がこれまで縄瘤で自慰をしていたのは知ってんだ」
殷天が狂女のように笑った。
王進は次の十回を受けながらそれを聞く。
「ああっ、ああっ、あっ、ああ──」
まるで電撃でも浴びたように、凄まじい勢いで快感がせり上がる。
しかし、またもや愉悦の途中で終わって抜かれてしまう。
「あああっ、ひどいいっ」
王進は泣き出してしまっていた。
狂う──。
もはや、感情が制御できない。
この快感と焦燥の地獄に耐えきれない。
身体も心も、男たちに犯され尽くすことを求め狂っている。
「次は前だな」
また別の男──。
十回だけの律動……。
そして、寸止め──。
性の地獄が繰り返される。
次の男に交替──。
同じことが、また繰り返される。
「いかせて……。いかせてください──。もっと、もっとよお──」
いつしか王進は、完全に錯乱して泣き叫んだ。
もう許して欲しい。
狂うほどに犯し尽くして欲しい。
「まだまだ、半分だ。一周もいっていないよ。でも、どんどんと色情狂らしくなっていくじゃないかい。そのうちに、心の底から男に犯されたくて仕方がなくなる。この苦しみが脳に刻まれるんだ。いや、もうそう成りかけているかもね。そうなれば、もう元には戻れないよ」
殷天が満足げに、高らかに言い放った。
一方で、また幾度目になるかもわからない十回の律動が終わり、怒張が抜かれる。
十回だけでも、いまの王進は絶頂寸前まで容易に攀じ登る。
それほどまでに、肉体の疼きは沸き返っている。
だが、最後の壁だけは崩せない。
寸止めで終わる。
下がりきらぬ快美感が、天井だけを引き上げていく。
ぎりぎりの際まで、何度もせり上げられる。
それでも寸止め──。
また絶頂を許されないまま、悦楽だけが身体を焼き尽くす。
王進は、淫欲の発散を求めてひたすらに泣き吠えた。