※この作品はR-18です。

水滸伝艶義   作:ドン・ドナシアン

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50  王進、当て馬責めに錯乱し泣き狂う

「わひゃははは、ひゃはははは、く、苦しい──。も、もう……ゆ、許して、ひゃははははあ……」

 

 王進(おうしん)は、果てる気配もなく狂ったように身体を跳ねあげ続けている。

 四肢は厠にしゃがむ形のまま、縄と鉄輪でがんじがらめに括りつけられている。どれほど腰を振ろうが、背を逸らそうが、五人がかりの手と羽根の先から逃れる道はなかった。

 

 ただただ、刹那の苦しみを紛らわせようと、無様に身を暴れさせるしかない。

 媚薬で鋭敏になった皮膚が、くすぐりのたびに針のように疼き、喉の奥を裂いて笑いと泣き声を無理やり混ぜ合わせる。

 

「あはははは、いひゃはははは、い、息が……わはははは、はははは──」

 

 喉が潰れかけても、声だけは絶えなかった。

 誰かが合図を送るたびに、脇の下、腿の付け根、肋の隙間をひたすらにくすぐられる。

 肉の奥に潜む羞恥が、細く針を突き立てられるように目を覚ます。

 

 王進は暴れた。

 息が詰まるたびに、腹の底が痙攣し、笑いと呻きが同じ声に溶けていく。

 どれだけ抗おうとも、締めつけていた下腹の力はすでに失せている。

 またもや、尿の滴る音が、くぐもった笑い声の底に落ちていった。

 

「うわっ、また、漏らしやがった」

 

「服が汚れちまったぜ」

 

「だが、どれだけ小便袋に溜まってんだよ。こんなにも失禁が続くものかあ?」

 

 くすぐりの組だった男たちが手を止めて、腹を抱えて笑った。

 王進は精も根も尽き果て、がくりと首を垂れた。

 だが、間を置かずに新たなくすぐりが始まる。

 

「いやああっ、ひいいっ、ひっ、ひっ、ひゃはははは、やめてえ、な、なんでもする。なんでもするから……。ふはぎゃははは──」

 

 殷天(いんてん)の命令で始まったくすぐり責めは、もう一刻は続いているだろう。

 苦しい。

 だが、その底には訳のわからぬ快感が渦を巻いていた。

 どこまでが苦痛で、どこからが快楽か、もう見分けがつかない。

 王進の意識は、完全に乱れていた。

 

 この屋敷に囚われて以来、殷天の性奴調教は執拗だった。

 責めが残忍であればあるほど、受虐の血が膚の奥を暴き、媚肉は自ら蜜を垂れ流す。

 いまや、股間から溢れるのは失禁ばかりではない。

 淫蜜が糸を引いて床に滴り落ち、内腿を伝って膝までも濡らしていた。

 

 笑い声の合間に、その惨めな姿を指摘され、嘲られる。

 だが、王進にそれを恥じる余力は残っていない。

 ただ、望まぬ笑いを引きずり出されるだけだった。

 

「もういいだろう。懲罰は終わりだ。痒みも限界だろうし、もう一度訊ねてやるよ。雌犬、そろそろ、犯して欲しいかい? だったら、恥知らずにお強請りしてごらん。そうすれば、次のあて馬責めに移行してやろう。ちゃんと強請れなければ、くすぐり責めをもう一周するよ」

 

 殷天の声が落ちてきた。

 ようやく、くすぐりの責めが止む。

 王進は朦朧としたまま一瞬だけ呆けたが、慌てて顔をあげた。

 

「み、皆さん、どうか、わたしを犯してください──。ま、前にも、後ろにも、皆さんの太いのを……入れて。入れてください。お願いします。お願いいたします──」

 

 半ば狂乱した叫びだった。

 あの苦しみを、もう一度味わうなど冗談ではない。

 しかも、くすぐられながら受けていた胸や局部の刺激を、いま手放されたことで、あの狂うような掻痒感がぶり返している。

 滝のように流れる汗で多少は痒み剤を洗い落とした気もするが、汗の届かぬ局部と尻の奥は、なお深く疼いていた。

 

 とにかく、もう王進には恥も外聞もなかった。

 男であるかなど、どうでもよい。

 羞恥も屈辱もない。

 ただ、この苦しみから逃れたい。

 一刻も早く犯され、爛れた痒みを掻きむしられたい。

 頭にあるのは、それだけだった。

 

 なにを口にすれば、この責めから解放されるのか。

 どんな恥辱的な言葉を吐けば、自分を突き崩してもらえるのか。

 それ以外のことは、もはや考えられなかった。

 

「わたしのつつしみのない……ま、まんこに……。く、くずまんこです。男もどきの……成れの果ての……女まんこです。皆さんの太い……立派な……ものを……ここに突っ込んで……。お願い……。お願いいたします……」

 

 王進はぼろぼろと涙をこぼしながら、できるだけ惨めな言葉を探して口にした。

 自分の中のなにかが崩れていく気がしたが、もういい。

 この苦しみから逃れられるなら──。

 周囲の男兵たちが一斉に爆笑する。

 

「じゃあ、あて馬責めだ。最初の組から順番だ。ただし、十回だよ。それ以上はだめだよ」

 

 殷天の声が響く。

 あて馬責めという意味はわからなかったが、どうやら犯してくれるらしい。

 喉の渇きに投げ込まれた一滴の水のように、いまの王進にはそれが欲しかった。

 

 待ち望んでいたものが与えられる。

 心の底から歓喜が滲み出る。

 また、二つの台のそれぞれに左右の足を載せ、厠にしゃがむ格好のまま拘束されている王進の前後に、新たな台が運ばれてきた。

 

「俺が最初だ。もう我慢できねえ」

 

 前に出てきたのは、丁元(ていげん)だった。

 他の男を押しのけ、運ばれた台に飛び乗ると、王進の両腿を抱えて腰を突き出してくる。

 すでに下袴と下帯は外され、怒張したものを臆面もなく晒していた。

 

「ほわああっ、ああああっ」

 

 一息で、奥まで怒張が貫いた。

 屈辱だとか惨めだとか、そんな感覚はどこにもなかった。

 やっと犯してもらえる。

 それだけだった。

 腰の律動が始まると、身体の芯をえぐられるような快感が突きあげてきた。

 

「あっ、ああ、ぎ、ぎもぢいいっ──」

 

「ははは、俺もいい気持ちだぜ、先生。これが男の摩羅(まら)だ。気持ちいいかい。感想を言いな」

 

 丁元が前後に腰を揺すり、奥を突きこねながら笑った。

 

「はああっ、あああああっ」

 

 絶頂の大波はすぐに這い上がってきた。

 

「いぎいいっ、いぐうううっ、いかせて──。いかせてくださいいい」

 

 王進は必死に絶頂を堪えながら哀願した。

 許可なく果ててはならない。それだけは、頭の奥に焼きついていた。

 

「おう、いきな──。いくらでもな」

 

 丁元は王進の股間を容赦なく突き続けた。

 そのときだった。

 王進は、丁元の背後に何人もの男が近寄り、肩を掴んで引き離そうとしているのに気づいた。

 「終わり」だとか「交代」だとか怒鳴り声が飛び交う。

 だが、丁元はそれを無視し、腰を止めようとしない。

 

「ふがあああっ」

 

 次の瞬間、丁元が王進の目の前で絶叫し、崩れ落ちた。

 なにが起きたのかはすぐにはわからなかった。だが、殷天が倒れた丁元の背後で、憤怒を顔に滲ませ立っていた。

 手には痛点棒を握り締めている。

 どうやら、背後から突きつけて作動させたらしい。

 

「な、なにをしやがるんだ──」

 

 丁元はひっくり返り、仰向けのまま、眼を剥いて声をあげた。

 

「なにをするじゃないよ。十回だと言っただろう。言いつけは守りな──。ひとりにつき十回の律動だ。あて馬責めだと告げただろうが。お前らを満足させるためじゃない。この雌を高俅(こうきゅう)様に差し出すため、色情狂の娼婦に仕立てる調教だ」

 

「そうしてんだろうが──」

 

「やかましい──。ひとり十回で止めて、生殺しにして淫欲を溜めさせる。それが狙いだ。欲を吐き出したいなら、自分の部屋でせんずりでもしてな」

 

 殷天がまくし立て、痛点棒の先端を丁元の股間近くへ押しつける。

 

「ほごおおおっ──」

 

 丁元が巨体を突っ張らせ、獣のような声をあげた。

 次いで、脱力する。

 口の端から泡を噴き、完全に意識を失ったのがわかった。

 だらしなく開かれた股間では、なおも勃起した男根が隆々と脈打っている。

 

「外に運びだしな──。高俅様の留守を預かっているのは、このあたしだ。あたしの言葉は、高廉(こうれん)様と高俅様の言葉だ。従えないなら、高俅様に言いつけて追い出すよ──。とにかく、次だ。次は尻の穴を犯しな。十回だよ」

 

 殷天が、ずらりと並ぶ男兵たちを見渡し指図した。

 気を失った丁元は、五人がかりで抱え上げられ、部屋の外へ運ばれていく。

 

 王進は、はっと息を呑んだ。

 後ろから、二人目の男が尻の肉を両側から鷲掴みにしている。

 肛門に熱い怒張が触れたと思った瞬間、それがずぶずぶと尻の奥へ沈んでいった。

 

「ほおおおおっ」

 

 掻痒感で焼ける尻を貫かれるのが、途轍もなく気持ちよかった。

 悲鳴のような嬌声が喉を割って迸る。

 

「ああっ、んわっ、あんっ、あっ」

 

「くっ、し、締めつけやがるぜ……」

 

 だが、王進が快楽に我を忘れかけた瞬間、呆気なく怒張は引き抜かれた。

 

「ああっ、そんな──」

 

「今度は前だな」

 

 前から別の男が腰を埋める。

 律動が始まると、快感が一気に駆けのぼる。

 だが、またすぐに抜かれる。

 

「ああっ、いやああっ」

 

 王進は錯乱した。

 やっと、この「あて馬責め」の狙いが腹に落ちた。

 これだけ媚薬とくすぐり責めで、骨の芯まで煮えたぎるほど性欲を沸かされながら、与えられるのは、ひとりにつき十回の律動だけだ。

 最後まで果てることなどできはしない。

 そして、またすぐに次の男に交替させられる。

 

 発散できぬ欲の飢えだけが、底なし沼のように増えていく。

 それが、殷天の狙いだった。

 

「次は俺だ。今度は尻穴だ」

 

 背後から股を押し開かれ、熱い怒張が肛門を貫いた。

 堪えきれず、快感が沸きあがる。

 

「ああっ、ああああっ、ああああ──」

 

 声を裂いて泣き叫ぶ。

 だが、またしても、怒張はあっけなく抜かれた。

 

「ああっ、もう許して──。やめないで──。やめてはだめええ──」

 

 王進は泣き喚いた。

 刺激を求めて狂いそうだ。

 

「随分と女っぽくなったじゃないかい。今日は夕方までこれを続けるからね。達したければ頑張って、男たちのちんぽを締めつけてみな。そうすれば十回までに満足できるかもね。だけど、ちゃんと許可を受けるんだよ」

 

 殷天がせせら笑う。

 王進は絶望した。

 この狂女はどうなっても、王進を満足させるつもりがないのだとわかったのだ。たった十回で達することができるわけもないし、できたとしても、許可を受けているあいだに終わってしまうだろう。

 結果として、寸止めだけが延々と続くことになる。

 これは性の地獄だ。

 王進はすでに半狂乱だ。

 

「じ、焦らさないで……。お願い……。お願いよお……。あああっ」

 

「ははは、もっと狂いな。夕方までこれを繰り返したら、今日の夜は貞操帯の革帯で股を封印するからね。ちゃんと張形は挿してやる。この油剤を塗ってからね。今夜からは夜中に勝手に自慰もできないよ。なんだかんだで、お前がこれまで縄瘤で自慰をしていたのは知ってんだ」

 

 殷天が狂女のように笑った。

 王進は次の十回を受けながらそれを聞く。

 

「ああっ、ああっ、あっ、ああ──」

 

 まるで電撃でも浴びたように、凄まじい勢いで快感がせり上がる。

 しかし、またもや愉悦の途中で終わって抜かれてしまう。

 

「あああっ、ひどいいっ」

 

 王進は泣き出してしまっていた。

 狂う──。

 もはや、感情が制御できない。

 この快感と焦燥の地獄に耐えきれない。

 身体も心も、男たちに犯され尽くすことを求め狂っている。

 

「次は前だな」

 

 また別の男──。

 

 十回だけの律動……。

 

 そして、寸止め──。

 

 性の地獄が繰り返される。

 

 次の男に交替──。

 

 同じことが、また繰り返される。

 

「いかせて……。いかせてください──。もっと、もっとよお──」

 

 いつしか王進は、完全に錯乱して泣き叫んだ。

 もう許して欲しい。

 狂うほどに犯し尽くして欲しい。

 

「まだまだ、半分だ。一周もいっていないよ。でも、どんどんと色情狂らしくなっていくじゃないかい。そのうちに、心の底から男に犯されたくて仕方がなくなる。この苦しみが脳に刻まれるんだ。いや、もうそう成りかけているかもね。そうなれば、もう元には戻れないよ」

 

 殷天が満足げに、高らかに言い放った。

 一方で、また幾度目になるかもわからない十回の律動が終わり、怒張が抜かれる。

 

 十回だけでも、いまの王進は絶頂寸前まで容易に攀じ登る。

 それほどまでに、肉体の疼きは沸き返っている。

 だが、最後の壁だけは崩せない。

 寸止めで終わる。

 

 下がりきらぬ快美感が、天井だけを引き上げていく。

 ぎりぎりの際まで、何度もせり上げられる。

 それでも寸止め──。

 

 また絶頂を許されないまま、悦楽だけが身体を焼き尽くす。

 王進は、淫欲の発散を求めてひたすらに泣き吠えた。

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