クラスの陰キャ美少女の弱みを握ったので、脅してエロいことをさせまくる! 作:真喜屋五木路
「あー……だっる……」
今日の体育はマラソンだった。
校庭をぐるぐると回らせるだけの恐ろしいほど生産性のない授業だ。
浩人は悪態をつきながらできるだけゆっくりと脚を動かし、走ってますよアピールをしながら全力で手を抜く。
といってもやはり一定以上のペースが出てないと不自然だし、かといって歩く訳にもいかない。
なにより一番面倒なのは休める時間がないことだった。持久力のない浩人にとってはこれが一番辛い点だ。
例えば球技なら、自分の手番や周りにボールがある時だけ集中して、後はガチ勢に任せてのんびりしていればいい。短距離走や棒高跳びとかなら自分の番が来るまでは暇して待っていればいい。
それに対して、マラソンは常に走っている状態が求められるのだ。最早拷問と言って差し支えないだろう。
絶対世の中の体育嫌いの何割かはこの授業のせいで嫌いになったと断言してもいい。
(というか、マラソンって体育教師にとって究極の手抜きだろ……)
特に何か指導する要素もなく、よーいスタートで後は走らせとくだけ。しかも自分も一緒に走るでなくただ立ってみてるだけで、遅れてる奴を指摘するだけ。おまけに校庭ぐーるぐる。
ちらりと体育教師である根津の様子を伺い、男子の方を真剣に見ているわけではないと確認する。
(はー、教師がやる気ないんだから生徒もやる気なんてなくっていいだろ。何週しろとか言ってた気がするけど、この様子だと根津もカウントなんてしてなさそうだし。適当に他の奴らがそこそこ上がったところで俺も切り上げるか)
浩人がそうやってなんとなーく走っていると、背後から「よっ」と軽やかな声がかかった。
「んぁ? ああ、岩永か」
息を切らすどころか上がった様子もなく、岩永は浩人の隣へと肩を並べる。できるだけ適当に走ってるのに若干息苦しさを感じている浩人とはえらい違いだ。
(つっても、こいつは運動も万能だからな……)
しかも遅れている訳ではなく、既に浩人と一周差でこれである。ここまでくるともう悔しいとか追いついてやろうとか考える気も失せるというものだ。
岩永はまるで教室で絡んでくるぐらいの緩さで話しかけてくる。
「本ッ当に体育の根津ってクソだよな、見ろよ向こうの方」
顎をしゃくる先は浩人が先ほどちらりと見た根津の――女子がバレーをしているのを指導という名目で眺めているハゲ頭の教師。
「男子は適当に走らせて放置プレイで、自分は女子を視姦だぜ?」
「放置プレイ言うな、視姦とか言うな……いや、あいつ女子見てる時の目線ねっとりしてる時あるしあんま否定できねぇけどさぁ」
「だろー!? ぜってーバレーにしたのも、女子がジャンプした時おっぱいがバインバインするのを見るためだぜ?」
「いやそんなことは……あるかもな……」
実際女子からの評判もあまりよろしくないらしく、今日も朝から「はぁ、本当に体育ないわ」とか「今日キてるからってことにして休もうかな」などの会話が普通に聞こえてくるほどだ。
因みに男子からも今日みたいなことをしてくるので好感度は低い。球技とかの時は特にうるさく言ってこず適当に見ているだけだからまだマシ、という意見があるぐらいか。
「どうせ俺達の方なんて見てないんだから軽く流して切り上げようぜ、じゃ」
そう言いながら岩永は軽やかな足取りで前の方へと駆けていく。
「はぁ、同じ軽く流すって言っても、レベルの差ってあるんだな……」
分かっているとはいえ、こうも目の前で見せつけられると、流石に多少思う所がないわけではない。
(にしても女子はバレーねぇ……)
確かにそれなら持久走よりもだいぶマシというものだ、ちょっと女子がうらやましい。
ちらりと再度そちらに視線をやると、黄色い声を上げながら女子がボールと跳ねまわっているのが目に入る。確かに胸部が豊かな女子の胸は、ジャンプする度、レシーブでボールを受ける度にゆさっと揺れているのが遠目にも見えて――
(って、いかんいかん! これじゃあ俺も根津と同レベルになる!)
女の子の胸部装甲を凝視してしまうのは男の性とはいえ、さすがに同列で語られたくない存在というのはいるのである。
意識をおっぱいから別のことに向けようとして、ふと来島のことが思い出された。
(正直運動神経良くなさそうだし、あいつも体育は苦労してるのかね)
この間も片足立ちして倒れそうになっていたし。いやアレは精液パンツ履かないとって緊張してたせいか?
一度気になると確かめずにはいられなくなって、女子の方に近づいたタイミングで更に速度を緩め、来島の姿を探す。
(ああ居た……ってやっぱりな)
来島は案の定というかふらふらしながらコートの中をさまよっており、ゲームに絡めているとはとても言えない様子だ。
一応ボールは見ているようだが、逆に上空のボールを見過ぎて足元がお留守というかなんというか。
(……にしても、流石にちょっとふらつき過ぎなきもするけど……)
ただ、いくら来島が運動不足っぽいと言っても、バレーはマラソンと違ってそこまで持久力を求められるものでもないはずだ。にもかかわらず来島の足元は覚束なささえ感じるほどふらふらとしているし、何よりも顔が赤い気がする。
(もしかして、体調が悪いのか?)
今朝顔を見た時にはそんなことなかったと思うのだが……と、丁度そこへ来島の方へボールが飛んでいく。
来島はわたわたしながらも何とかトスを繋ぎ――そこでぺたん、と座り込んでしまった。
浩人が思わず立ち止まって様子を見ていると、他の女子も集まって「大丈夫?」などと声をかけている。
「あー……来島、だっけか? 立てそうか?」
根津が呼びかけるも、来島は力なく首を振った。
「うぅん、これは保健室に連れてった方がいいな。女子の保健委員は誰だ?」
一人の女子が「来島さんです」と彼女を指さす。
「そうか、なら仕方ないな……私が保健室まで連れて行ってあげるとしよう。肩を貸せば立てるかな?」
根津の口元が嫌な感じに歪んだ気がした。
来島も同じように感じたのだろうか、きゅっと体操着の胸元を握り込んで視線を彷徨わせ――目が合う。
段ボールの中に捨てられて、雨に晒され、助けを求める仔犬のような目。
自然と体が動いていた。
「あー、先生、丁度良かったです! 俺、保健委員なんで来島さんのこと連れていきますよ!」
偶然ですという風を装って根津を追い抜き、来島の方へと手を差し伸べると、彼女はほっとしたような表情を浮かべる。
「いや、だが男子が女子をというのはだな……」
「ははは、流石に心配しすぎですよ。来島さんも大丈夫だよな?」
「は、はい……!」
手を取った来島の体を引っ張り起こし、膝を屈めて肩を貸す。
「だ、だがな……」
「来島さんは熱っぽいですし、それなら氷嚢とか薬のある場所は俺の方が詳しいと思うんで。それに先生は女子も男子も見ないといけないでしょうし大変そうですから、これぐらいは任せてください」
にっこりと裏表のない、男子にだけマラソンをさせていることなど気にも留めていない、という風を装った笑みを浮かべて先生を労わる。根津もそこまで言われては、周囲の視線もあるし折れざるを得なかったのか、僅かに苦々しさを眉根に浮かべながらも「それじゃあ頼んだぞ」と道を譲った。
「あ、あの……ありがとうございます……」
校舎の玄関に近づいたあたり、他の人からは声が聞こえない距離まで離れたところで、来島がお礼を言ってくる。
「いや、礼を言われることじゃないだろ。俺が保健委員なのは事実だし」
「け、けどわたし……根津先生のこと苦手で……さっきもちょっといやらしい目してたし……だから、助けてくれてありがとうございます」
肩を貸しているせいですぐ真隣に顔を寄せた来島が、心底嬉しそうな表情を浮かべる。
「いや、別に……助けたとかそういう訳では……」
確かに来島に肩を貸しに行ったのは、助けを求める視線を向けてきたというのが決め手だ。だが実際の所、根津に対する対抗心のようなものも多分にあった。
正確に言うなら対抗心というより独占欲とでも言うべきか。俺の来島に勝手に触るんじゃねぇとでも言うような、自分勝手な我儘に突き動かされて来島の下へと向かったのだ。
それにいやらしさで言っても、浩人の方がよほど来島に対していやらしい視線どころか行為まで強要しているわけで。
なのにお礼を言われるというのはいささか居心地が悪かった。
「あー……ともかくだ。それで、結局来島は風邪でも引いてたのか? だったら本当に氷嚢作って風邪薬出すけど――って流石にこの時間はあの保険医もいるだろうし、任せればいいよな」
「あ、あのそれなんですけど……保健室じゃなくて、教室に連れて行ってもらえませんか……?」