「……ミオ……」
名前を呼んだだけで、身体の奥が疼く。
彼の手が、わたしの髪を梳いた。
甘やかで、慈しむような手つき。
それに頬を預けると、もう抑えきれなかった。
わたしは、彼の胸に額を寄せ、囁くように言った。
「今夜は……わたしの番よ」
奉仕するのではない。
求めるの。
喉の奥から、身体の奥から、心の奥から、——全部、欲しい。
それを、彼に読まれてもかまわなかった。
いや、読まれたくて、たまらなかった。
わたしは唇を重ねた。
一度だけ、柔らかく。
そして、枕に頭を預けると、膝を曲げたまま脚を拡げた。
彼の目には、アルファベットのMの字のように映るだろう。
「好きにして……全部、あげるから……」
だけど、ミオは——すぐには来なかった。
太腿の内側。
そこに、唇が触れた。
「んぁ……ッ」
熱い痺れが、一瞬で腰にまで駆け上がる。
けれど——
まだ、そこまで。
“そこ”には、触れない。
舌先が柔らかな肉をなぞるだけ。
ああ、もう……だめ。
わたしは、シーツを掴み、身を捩る。
「やぁ……お願い……ミオ……」
震える声が漏れる。
でも、彼は焦らす。
じらしながら、甘く、しつこく太腿を舐める。
それだけで、身体がじんじんと火照ってくる。
そして——
「……っ、あッ……!」
舌が、花弁の先端、一番敏感な核に触れた。
ぴくん、と跳ねたそこに、彼の唇が吸いつく。
ちゅぷ、ちゅ、くちゅ……
音が、いやらしく響くたびに、頭が白くなる。
「ミオ……ッ、だめ……それ……ぁっ……!」
快感が、言葉を破壊していく。
思考が溶ける。
腰が跳ねる。
身体の芯が、ぞわぞわと熱に包まれていく。
「も、もう……いっちゃ……う、の……ッ!」
——一度目の絶頂。
けれど、ミオは止めない。
その舌は、さらに深く、尖って、敏感な蕾を転がし始める。
ちゅう、ちゅぷっ……吸い上げるたびに、脳が震える。
「あっ、あっ、やっ……またっ、きちゃ……うぅ……!」
脚が、勝手に彼の背に巻きついてしまう。
腰が逃げようとして、でも舌が離さない。
二度目。
三度目。
絶頂の波が、重なり合って押し寄せる。
「ダメダメダメッ!!……そんな、はぁ、ずっと……舐められたら……ッ」
息もまともにできない。
手は彼の髪にしがみつき、胸は上下に大きく揺れる。
なのに、身体は……熱を増すばかり。
わたしは、自分の指で恥丘を押し広げ、泣きそうな声で叫んだ。
「ミオの……、ちょうだい……もう、我慢できないの……!」
膣口が、彼の先端に触れた瞬間——
身体が、小さく跳ねた。
「あっ……」
花弁はすでに、何度もの絶頂で濡れきっている。
触れただけで、熱が染み込む。
それでも、入ってこようとするそれは、別格だった。
「……ねえ、お願い……早く……ッ」
そして——
ぬぷっ……
「——ぁああっ……!」
柔らかい肉が、ぐちゅりと押し広げられながら、彼を迎え入れていく。
熱い。重い。
けれど、心地いい。
満たされている感覚が、脳まで届く。
「あっ……すごい……ミオが……奥に……っ」
脚が、勝手に彼の腰を締めつける。
指が背中を掻くように這い、引き寄せる。
「もっと……全部、ちょうだい……全部、入れて……!」
ミオが腰を打ちつけるたび、膣内が掻き混ぜられる。
「んあっ、あっ……だめっ、そんな深くぅっ……!」
けれど、止まってなんて欲しくなかった。
「もっと、ミオ……突いて……!深く……わたしの奥、ぜんぶ、掻き回してえ!」
今のわたしは、すべてを晒している。
心も、身体も、隠せるものなんて何もない。
「好き……好きっ……ミオぉ……!」
愛しさが、熱と共に押し寄せる。
膣がきゅうっと締まり、彼のものを離そうとしない。
「ミオの……気持ちよすぎて……わたし、また……!」
絶頂が、さらに波打つように来る。
「いっ……ちゃうっ、イっちゃうのぉ……っ!!」
腰が跳ね上がり、背が仰け反る。
絶頂の瞬間、ミオと深く結ばれたまま、わたしは声にならない叫びを飲み込んだ。
膣の奥がぴくぴくと脈打ち、彼の先端を吸い上げる。
「ミオ……いっぱい出して……わたしの中に……全部、ちょうだい……っ」
ミオの動きが、最後の一撃のように深く沈む。
「さとり……いく……っ……!」
彼の熱が、どくん、と飛び込んできた。
目の裏で、ばちばちと火花が散る。
部屋に轟く悲鳴のような絶叫が自分のものである実感が無い。
その瞬間、心と心が直結した。
言葉ではない。
思考でもない。
ただ、「愛してる」と、
彼の魂が、わたしの最奥に刻まれた。
どれほど震えていたのか、わからない。
ただ、ミオの腕の中にいるだけで、身体がとろけていく。
「……ミオ……どこにも、行かないで……」
呟いたその声に、彼は何も言わず、そっとわたしの髪を撫でた。
目を閉じる。
世界が静かになっていく。
けれど、ひとつだけ確かに——
わたしは、今夜、愛された。
読まれて、読ませて、貪り合って。
そして、ようやくひとつになれた。
ミオの腕の中で、わたしは微笑んだ。
朝はまだ、遠い。
汗と熱に包まれた身体を、ミオの腕が静かに抱いている。
わたしはその胸に額を預け、ぬくもりを吸うようにして、そっと目を閉じた。
心の奥まで、満たされていた。
もう、何も恐れることはない——そんな風に、思っていた。
……けれど。
その平穏は、長くは続かなかった。
扉の向こうから、微かな足音。
床板が、きぃ、と軋む。
わたしは思わず眉をひそめた。
「……お燐?」
次の瞬間——
控えめに扉が開いた。
顔をのぞかせたのは、火焔猫燐。
「あらら……」
その声には驚きと、そしてわずかな好奇心が混じっていた。
お燐の瞳が、ベッドの中を見つめる。
まだ互いに汗ばんだ肌を重ね合い、抱き合ったままのわたしたち。
「……ついに、ですねぇ?」
からかうような笑み。
わたしは、一気に顔が熱くなるのを感じた。
理性を手放し、声を上げ、何度も名を呼んだ自分の姿が——
あの子に、どこまで見られてしまったのか。
「お、お燐……なぜ……」
言葉を探しても、まともな言い訳が浮かばない。
お燐は口元に手を当て、楽しげに笑った。
「夜中に叫び声がしたから、心配で。そしたら……ふふ」
ミオもまた、羞恥に身を固くしている。
けれど、お燐の態度は軽やかだった。
「安心してくださいな、さとり様。見なかったことにしてもいいんですけど……」
わざと溜めてから、
「……でも、どうせすぐバレるでしょう?」
わたしは額に手を当てて、深いため息をついた。
「お燐……からかわないで」
「はいはい。じゃ、今夜のことは内緒にしときます」
そう言って、お燐はウィンクすると、くるりと背を向けた。
扉がそっと閉まり、足音が廊下の奥へと遠ざかっていく。
部屋の中には再び、二人だけの空間が戻っていた。
けれど、先ほどまでの熱とはまた違う、妙な空気が流れている。
羞恥と、照れと、そして……安堵。
わたしは、そっとミオの胸に顔を埋め、小さく呟いた。
「……これで、もう隠し事はできないわね」
ミオは、苦笑したように息を吐き、わたしを抱き締め直してくれた。
その腕の力強さに、もう一度、静かに目を閉じる。
闇の奥に沈んでいくように——
けれど、今夜はもう、ひとりじゃなかった。