※この作品はR-18です。

読まれる日常   作:昼間寝音

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【第18頁:読まれたくない熱、嗅ぎつける影】(火焔猫燐視点)

あたいはすぐに地霊殿を飛び出した。

 

地底の岩道を、つま先だけで歩く。

 

歩くほどに、空気はじっとりと肌にまとわりつくようになり、息が詰まりそうになる。

いつもならへっちゃらなのに。

いくらここが灼熱地獄の名残りといっても、あたい、火車だぞ。

 

岩の奥底から、湿り気を帯びた熱がじわじわと伝わってくる。

それが、身体の芯を、ゆっくりと、だが確実に温めていく。

 

汗が首筋を這い、耳の裏に張り付いた。

腰の奥が、鈍く重くなる。

足の付け根から、じわじわと疼きがせり上がってくる。

 

尻尾が自然と巻きつくように揺れる。

胸がせり上がり、息が、熱を含み始める。

 

「……もう……」

 

焦りではない。

けれど、どこか破れかぶれのような気分だった。

こんなふうに、発情の衝動に振り回されるなんて、何年ぶりだろう。

 

そして、見つけた。

 

岩壁のくぼみ——大きな岩が庇のように張り出していて、奥まった影ができている。

誰の気配もない。

 

あたいは、その岩陰に身を滑り込ませた。

 

うずくまって、しばらく目を閉じる。

 

だが、鼓動が止まらない。

息が浅く、そして速くなる。

尻尾の根元がむず痒く、腰の内側がじんじんと疼く。

 

「……ここなら、誰にも……」

 

ささやくように言ってから、ワンピースの裾を、そっと持ち上げた。

 

「……はぁ……っ……」

 

誰にも聞かれていないはずの吐息が、自分の耳にさえ艶めいて聞こえる。

ショーツの上から、そっと指を添えた。

 

「……や……あっ……」

 

そこはすでに、濡れていた。

ショーツの布地越しに指先をなぞると、ぬるんとした感触が伝わってくる。

指の腹で円を描くように撫でるたび、腰がぴくりと跳ねた。

 

「はぁ……ばかみたい……こんなの、ひとりで……」

 

ぼやく声は、誰に向けたものでもない。

けれど止まらなかった。止められなかった。

 

おまんこが、熱い。

 

ショーツが擦れるたび、粘ついた感触がまとわりついて、肌の奥をくすぐってくる。

 

「んっ……ふぅ……」

 

身体が勝手に震える。

耳が熱い。尾が、無意識に揺れている。

岩陰に充満する、メスの匂い。

 

あたいは、ショーツの上からさらに強く押し当てた。

ちゅ、という音が布地を通して響いた。

 

「……だめ、ほんとに、やば……」

 

震える脚。尻尾の根元から火がついたような熱。

 

でも、まだ。こんなんじゃ全然足りない。

 

この熱は、もっと深いところから来ている。

そんな気がしていた。

 

あたいは、ごくりと喉を鳴らした。

そして、震える指でショーツの端をそっと引いた——

やがて足先から脱ぎ捨てると、むわりとしたものが太腿の内側に溜まる。

 

あたいは四つん這いになり、両肘を地面に突く。

尾が自然に持ち上がる。腰が、自分の意志とは無関係にくねる。

これは“交尾の姿勢”——本能だ。

猫の、名残。

妖怪になってからは抑えられていたはずの衝動が、灼熱の中でじりじりと暴れ出す。

 

「っ……ふ、うぁ……」

 

中指が、おまんこの割れ目を割く。

熱を帯びた粘膜が、ぬるりと歓迎する。

少しだけ差し入れると、きゅっと反応し、なかに引き込もうとする。

 

「うそ……こんなに……」

 

中指に、薬指も添える。

背筋がぞくぞくと痺れて、腰が勝手に前後に揺れ始める。

自分で、自分を突きながら、おまんこの内側を擦るように動かすたび、じゅぷ、じゅぷと濡れた音が狭い空間に響いた。

 

「あ……やば……ふっ、ん、んんっ……!」

 

岩に手をついたまま、腰が小さく跳ねる。

尾が痙攣するように左右に揺れ、全身が発情の震えに包まれていく。

 

「もう、だめ……止まんない……っ」

 

喉が鳴る。

猫のように、ふぐふぐと息が漏れる。

目尻には、もう潤みが滲んでいた。

動きを止めたくなかった。

 

「気持ち……いい……もっと……っ♡」

 

腰の奥が熱い。おまんこの内壁が、指を待っていたみたいに収縮する。

その感触に、指がさらに深く潜っていく。

 

理屈も羞恥も、岩の奥に流れ落ちていった。

今この瞬間、あたいの身体は、ただ“満たされる”ことを欲していた。

 

自分の指で。自分の腰で。

自分の快楽で、身体の奥を掻き混ぜながら——

あたいは、猫のように甘く、ひとり、身を揺らし続けた。

 

っ♡……ふ、あっ、あぁっ♡

 

んっ……やぁっ……くちゅ、ぢゅっ♡……あっ……♡

 

ぅ……ふぅっ♡……ん、んんっ♡……!

 

ひっ……ここ、いい……んぅ♡……やだ、はっ……

 

ずぷっ……じゅぷ♡……じゅちゅ、ぬぷっ♡……ぁぁ……♡

 

ぅ、うあっ……ふっ♡……あ、あ♡……も、むり……

 

とまん、ない……とまんないのぉ……♡

 

きもち、いっ……あっ、あ♡♡……

 

ぬちゅ、ぬちゅっ♡……くちゅ、ずちゅ……♡……♡

 

ふぁぁっ……は、はぁ……っ、んんっ♡……あぁ……っ♡

 

ひゃっ……ふ、ひぅっ♡……ぴくっ、ぴくぅ♡……♡

 

だめ……もう、なか、ぐちゃぐちゃで……♡

 

じゅっ……ちゅっ……♡ん、あっ♡……

 

ふぐっ……ふぁ……やぁ、もう……むりぃ……♡

 

ぴちゃ、ぴちゃ……ずぶっ、ぬぷっ♡……♡

 

とろけちゃう……あたい、……とろ、とろになって……♡

 

もっと……もっとほしい……♡

 

かきまわして……なか、もっと、かきまわしてぇ……♡♡

 

いっちゃう……いっちゃ……♡♡♡

 

びくっ……!

 

その瞬間、尾が高く跳ねた。

背中が反り、指の奥で膣がぐぐっと締めつける。

脳の奥まで焼けるような閃光が走り、思考が白く弾け飛んだ。

 

「ひっ……くぁ、あぁあっ♡……ッ!!」

 

腰が勝手に跳ねる。

おまんこが脈打ち、指を呑み込んで離さない。

何度も何度も痙攣しながら、熱い蜜をあふれさせる。

 

「やっ……んんっ、あぁ……♡」

 

絶頂の波が引かない。

しばらく、ただ四つん這いのまま、肩で息をしていた。

汗と蜜で濡れた太腿が震えて、尻尾は先だけがかすかに揺れていた。

 

ふと、指を抜いたとき——

 

ぬちゅ、といやらしい音がして、

その拍子に、とろりと透明な雫が太腿を伝って落ちた。

 

その雫を、目で追った。

 

そして——

 

なぜか、涙がこぼれた。

 

ぽろり、と一滴。

それは、発情や快楽とはまるで無縁の、

もっと深くて、説明のつかないものだった。

 

「……なんで……こんな……」

 

ただの本能。

ただの処理。

 

……なのに、どうして、こんなに苦しいのかな。

 

その問いに答える声は、どこにも——

 

ぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱる……

 

どこにも——?

 

岩壁の奥から、無数の呟きが這い寄ってくるような気配だった。

低く、湿っていて、いびつな響き。

それはまるで何十もの声が同時に喉を震わせ、同じ呪詛を唱えているかのような——

 

「な、なに……っ……?」

 

あたいは尻尾の毛を逆立て、反射的に後退る。

その直後、ぎらりと光る“ふたつ”の目。

 

深い、深い緑。

その眼差しが、あたいの全身を貫いた。

 

「ぎにゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

思わず絶叫した。

腰が抜け、尻餅をつきそうになるのを、どうにか爪で踏ん張る。

そのまま、ばふっと音を立てて——

あたいの身体が変じた。

 

漆黒の毛並みに、二又に裂けた尾。

耳は鋭く尖り、背中がぐぐっと丸くなる。

本能的に「化け猫」としての姿へと戻っていた。

 

だが、音は止まない。

 

ぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱる……

 

その呪詛の渦の中から、ひとつの影が、ぬるりと這い出してきた。

 

「驚かせたなら、ごめんなさいね。

でも——覗き見てたわけじゃないのよ?」

 

音が止んだ。

影の中から現れたのは、金髪を編み込んだ女。

尖った耳と、白地に緑の模様が施された衣。

 

水橋パルスィ。

嫉妬心を操る程度の能力を持つ、橋姫の妖怪。

 

その目は、淫らなものを見たときの興味ではなく、

“感情の裂け目”を嗅ぎつけた者の目をしていた。

 

「見てないわよ。……あの、腰を振ってたところは」

 

「ぎにゃっ……! い、い、い、言うにゃぁあああっ!!」

 

あたいは耳を塞ぐように前足をばたつかせた。

だが、パルスィは笑わない。

むしろ、しんとした口元のまま、視線を逸らさずに告げる。

 

「でも、感じたわ。

その奥にあったもの。

——ねえ。あなた、誰かに“嫉妬”してるでしょ?」

 

言葉の刃が胸に突き刺さる。

 

ぱるぱる、という音はもう消えていた。

今そこにあるのは、ただひとつの力——

感情の毒を喰らい、生きる者の、無慈悲な洞察。

 

「本当は、羨ましくてたまらなかったんでしょ?」

 

「……ちがっ、そんなんじゃ……!」

 

「ふうん?」

 

パルスィは、ニィィと口元を歪めた。

その表情には感情を煽る毒がたっぷりと盛られている。

 

「ずるいと思ったんでしょお」

 

「や、やめ……言わにゃいで……!」

 

「止めてあげるわよ?

その代わり……その気持ち、私にもちょうだい?」

 

あたいは息を呑んだ。

 

「羨望でも、屈辱でもいい。

あなたのその黒い感情、わたしが……もらってあげる。

きっと楽になるわよ?」

 

その声は、まるで甘い飴玉。

けれど口に含めば、必ず喉の奥を焼く毒になる。

 

地底の闇に、ふたつの影が重なる。

 

ひとりは化け猫、羞恥と発情の余韻に濡れたまま。

ひとりは橋姫、妬み嫉みを知り尽くした眼差しで、感情の“裂け目”を食べようとする。

 

物語は、ここから新たな火種を孕んでいく——。

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