※この作品はR-18です。

読まれる日常   作:昼間寝音

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【第21頁:証明しなさい】

朝の空気は、昨夜の熱をすっかり冷ましていた。

 

けれど、それはあくまで外気の話だ。

このベッドの中には、まだ肌の温もりと、甘い匂いが残っていた。

 

私はぼんやりと、天井を見上げていた。

その隣で、寝台の端に腰をかけていたお燐が、

ゆっくりと尾を伸ばしながら、髪を整えている。

 

「……そろそろ、行くね。

朝ごはん、またあたいが作るにゃ。さとり様、まだ寝てると思うし」

 

振り向いたお燐が、昨夜と同じく、やわらかく笑った。

けれどその目元には、どこか“終わった”ことを悟っている静けさがあった。

 

私は何も言えずに、ただうなずく。

 

お燐は立ち上がり、そっと手を伸ばして、私の頬に指を添える。

 

「またね、ミオ」

 

その言葉とともに、扉が閉じた——

 

——はずだった。

 

カチリ、と再びドアノブが回る音。

 

「……お見送り、ごくろうさま」

 

現れたのは、さとりだった。

 

まっすぐにこちらを見ていた。

その口元には、かすかに笑みのようなものが浮かんでいて——

しかし、どこにも“温度”がなかった。

 

私は視線を逸らすこともできずに、ただ見つめ返すしかなかった。

 

「“また”は、無いわよ」

 

私は、一瞬、何のことを言われたのか分からなかった。

けれど——すぐに理解する。

 

「またね」と言って出ていったお燐に。

それを、受け入れた私に。

そして、お燐を煽ったという妖怪に。

さとりは、釘を刺したのだ。

 

「……さとり」

 

呼びかける声に、自分の喉が思ったより乾いているのがわかった。

彼女は何も言わず、部屋の中へと静かに足を踏み入れる。

 

乱れた寝具、昨晩の情事の痕跡が、とても気まずいものに思えてきた。

 

さとりが、裸のままの私の隣に、座る。

第三の目がこちらを見ているのに、彼女自身の視線は天井の方を向いている。

 

「怒ってる?」

 

「怒ってなど、いないわ。ほんとうに」

 

……その言い回しが、一番こわい。

 

「でも相手がお燐だったから、許しただけ」

 

視線は逸らしたまま、唇だけが言葉を紡ぐ。

 

「もし——他の誰かと、あんなことしてたら。

……わたし、あなたを壊してたと思う」

 

背中に、ぞわりと冷たいものが這った。

けれど、奇妙なことに、嫌悪ではなかった。

むしろそれは安堵に似ていた。

妖怪たるさとりが、ちゃんと嫉妬してくれていることに、どこかで私は安心していた。

 

だから私は、問いかけた。

 

「……じゃあ、どうすればいい?」

 

彼女の視線が、ようやくこちらに戻る。

第三の目が静かに脈動し、私の心に直接触れてくる。

 

「ミオが、わたしだけのものだってこと。

——証明しなさい」

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