さとりの寝室に連れてこられたのは、いつのことだっただろう。
時間はまだ昼のはずだが、分厚いカーテンがぴたりと閉じられていて、外の光は一切入ってこない。
部屋の灯りも点けられておらず、ほんのかすかに揺らめく妖力の明かりだけが、空間の輪郭を辛うじて浮かび上がらせていた。
明暗の曖昧なその空間で、彼女の表情はよく見えない。
ただ、第三の目だけが、じっとりとこちらを見ている気がした。
そんな中で、小さな盃の中で琥珀色の液体が微かに揺れた。
月光に似た光を受け、ガラスの縁が淡く輝いている。
さとりはその器を片手に持ち、私の目の前へと差し出した。
自分の直感は、それがただの飲み物ではないことを告げている。
器を受け取って鼻先に近づけると、すぐにむせかえるような香りが立ち昇った。
熟した果実と、土を這うような薬草の青臭さ。そこにわずかに混じる、鉄に似た金属臭。
嗅いだだけで舌がざらつく気がして、反射的に息を止めた。
「……飲みなさい、ミオ」
さとりの声は、ただ静かだった。押しつけがましさも、脅しもなかった。
なのに、それがもっとも“逃げ場を奪う声”に感じられた。
私は、器を唇に傾けた。
一滴目が舌に触れた瞬間、じん、と痺れが走る。
苦い。甘い。熱い。冷たい。
複雑に交錯する味の波が、一斉に味蕾を撃ち抜いてくる。
飲み下すたび、喉の奥に熱が走った。
液体というより、何かが生き物のように這い下っていく感触。
食道をなぞるその感覚が、胃に落ちる頃には、もう私の体の内側に巣を作り始めていた。
「……っ」
腹の奥がきゅう、と疼く。
灼けるような熱が、丹田のあたりを中心に、じわじわと広がっていく。
血が騒ぐ。皮膚の裏側で、何かが泡立つ。
そして——
明らかに異常な脈動が、下腹部に発生した。
どくん。どくん。
心臓とは別の拍動が、股間へ、背骨へ、腰椎へと伝わっていく。
指が微かに震える。喉が渇く。
思考の端が白くぼやけていく感覚が、恐ろしくも、どこか快かった。
——これは、体の内側から壊されていく快楽だ。
そう理解したときには、すでに遅かった。
「さとり……これ、いったい——」
震える声で問いかけたとき、彼女は小さな瓶を手に取り、そのラベルに視線を落とした。
そして、まるで読み聞かせるように、静かに言葉を紡ぐ。
「“鬼哭草精煎液(きこくそうせいせんえき)”。
調合責任者:八意永琳。……ふふ、地上で手に入れるのは難しいはずよ」
一拍置いてから、彼女は読み上げを再開する。
「内容量:二両六匁」
「使用法:一服、盃にて服用。摂取後三十秒以内に効果発現」
「適用対象:鬼族、その他高妖力生種」
「禁忌:人間、妖精……あらあら。あなた、該当してるわね」
「効能:性交衝動の異常増幅。性器への血流集中および分泌作用の活性化。
男女問わず、性的応答が加速し、絶頂回数が通常比で二〜五倍に達することがあります」
ラベルをゆっくりと裏返す。その音すらも、異様に生々しく響いた。
「副作用:羞恥心の鈍麻、呼吸浅化、快楽対象への執着傾向。
絶頂反復による中枢快感回路の再活性」
「警告:本品使用中は性的接触を中断しないこと。欲求残留により、精神的不調をきたす恐れあり。
信頼できる者の監視下で服用のこと。……ええ、わたしほど信頼できる相手はいないわね?」
彼女は瓶とラベルを静かに伏せると、こちらに向けて、ようやく微笑んだ。
その表情は薄暗がりの中で輪郭が曖昧で、それでもはっきりと分かった。
それは、愉悦の笑みだった。
「これから半刻……いえ、人間だからもっとかしら?
あなたの身体は、わたしを求めることしかできなくなる。
——さあ、始めましょうか。ミオ」
「首、出して」
気づけば、私はベッドの端に座らされていて、さとりは衣装棚の引き出しから何かを取り出していた。
それは、艶のある黒革の首輪だった。
金具は銀色。小さなプレートがついている。……そこには、はっきりと刻まれていた。
——「Mio」。
私は一瞬だけ目を見開いた。
だが、それを拒むことなど、できなかった。
彼女の指が、私の喉元に革の輪を添える。
その瞬間、皮膚が一枚、外気から遮断されたような感覚があった。
ぐ、と首が圧迫される。
冷たい金属の感触が、喉仏のすぐ上でかすかに震えていた。
「……ぴったりね。ふふ、やっぱりあなたは“わたしの子”だわ」
バックルが、“契約”の音のようにカチリと鳴る。
喉元に絡みついた革の存在が、皮膚の下へ、内臓へ、心の最奥へと染み込んでくる。
呼吸はできる。けれど、それすら“許されている”だけのことのように思えた。
私の中で、何かが静かに屈服した。
だが、それは恥ではなかった。
むしろ、嬉しかった。
自分の名前が、誰かの所有物として存在する。
——こんなにも、満たされるものなのか。
「はい、次は……仰向けになって。脚を開いて、ちんちん♡のポーズ」
命令と共に、さとりが指を鳴らす。
それは当然であるかのように感じられた。
床に仰向けになり、脚を少しだけ上げる。
すると、下腹部につーっと冷たい感触が走った。
その正体は、私の剛直の先端から溢れた、先走り液であった。
暗がりの中でもはっきりとわかるほど、赤く肥大化した欲望の塊。
それは栓を締め損ねた蛇口のように、粘液を垂れ流し続けている。
「いい子ね。うちの子の“ちんちん”、立派♡」
続いてさとりは、細い革紐のようなものを取り出した。
それが、何なのか理解するより早く——彼女の指が、私の昂ぶりの根元へと伸びてくる。
「これはね、“リング”よ。……ご褒美を、ちょっと先に延ばすための道具」
彼女の手つきは、やさしく、けれど容赦がなかった。
陰茎の根元に、それが締めつけられる。
ぴたりと嵌った瞬間、脈動が強調されるように鼓動が増した。
「これで、まだイっちゃダメ。
どれだけ気持ちよくても、わたしが“いいわよ”って言うまで、絶対に」
彼女の口元が、ゆっくりと綻んだ。
その笑みは、優しさと支配の混ざり合った、極上の檻だった。
さとりは、静かにベッドに腰を下ろした。
私の脚の間に座る形で、自然と視線の高さが逆転する。
薄暗がりの中で、その双眸だけが、わずかに光を反射していた。
「まずは……ご奉仕の時間よ。足から始めましょうか?」
彼女は片足を持ち上げると、白いフリルのついた靴下をゆっくりと、妖艶に脱ぎ始めた。
すべらせるように下ろされた布が、彼女のふくらはぎと足首の曲線をなぞり、
最後にはひらりと床に落ちた。
現れた素足は、透けるように白く、指先まで丁寧に整えられていた。
その足が、私の頬にすっと添えられる。
しっとりとした感触が、肌に広がる。
思考が鈍る中、さとりは足の指先を私の唇に押し当てる。
「ほら……舌、使って」
声は優しい。
けれど、それは命令だった。
私は、仰向けのまま首を起こし、そっと舌を伸ばす。
さとりの足は、汗の塩気と、仄かな石鹸の香りが混ざり合っていた。
それはどこか、舌の上に甘く残る。
不思議と嫌悪はなく、むしろ、何度も確かめたくなる味だった。
第一趾——親指のふくらみに、やや厚みを感じる。
そこを舌で撫でるたび、彼女の足がわずかに反応して揺れる。
第二趾、第三趾……。
一本ずつ、私は愛おしむように唇でくわえ、舌で裏側をなぞる。
とくに第四趾と第五趾の間には、やや蒸れた体温が残っており、そこに舌を差し入れたとき、自分がさとりの排熱すら慈しんでいることを実感する。
「ふふ……そこ、くすぐったいわ」
声をかけられるたび、私はさらに熱心に奉仕した。
舌の動きを変える。巻きつけ、吸い、弾く。
足指が濡れていくのが分かる。
それが、自分の唾液であることが嬉しかった。
「あら……こんなに丁寧に舐められたの、初めてかもしれないわ」
その言葉に、胸が跳ねる。
まるで、“選ばれた飼い犬”のような誇らしさが込み上げた。
舌先で指と指の間をなぞり、爪の際をぺろりと掬い上げる。
足裏の膨らみを吸い上げ、甲の筋を沿って舐め上げていく。
舌がしびれる。唾液が溢れてくる。
息が荒くなり、喉の奥が熱を持つ。
けれど、やめられなかった。
舐めれば舐めるほど、“飼われる悦び”が濃くなっていく。
それは快楽というより、陶酔だった。
「よしよし……いい子。
舐め方まで、わたし好みに育ってきたわね」
その言葉に、背筋がぞくりと震えた。
まるで、尻尾をちぎれるほど振ってしまいそうなほどの、喜びの奔流。
奉仕することが、ここまで満たされることだとは、知らなかった。
私は止まらず、最後の指をくわえる。
口の中に収めて、ぬらぬらと舌で転がし、時折、吸い上げる。
しゃぶるたびに、足指がくちゅ、と音を立てた。
「ん……ふふ、いいわよ。
でも恥ずかしいとは思わないの?
ああ、そうか。もう、“羞恥心”なんて、溶けちゃったのよね」
その言葉が、なぜか心地よかった。
言われている内容が屈辱的であることすら、どこか遠くのことのように思えた。
「次は……こっちね」
そう囁いたさとりは、私の両脚をそっと抱え上げた。
太腿の裏に柔らかな手が回され、自然と腰が持ち上がる。
「……ここ、見せて」
肛門に触れる——その予感だけで、腰がびくんと跳ねた。
「ふふ、反応がいいわね。触ってもいないのに」
さとりの指先が、指の腹で何度か優しく円を描いた。
膣ではない。射精するための出口でもない。
けれど——感じてしまう場所。触れられたくないのに、触れてほしい場所。
舌がそっとそこに触れたとき、私の脳裏に火花が散った。
「あ……っ、う……っ」
柔らかく、湿った舌が、外縁をなぞる。
円を描くように、ゆっくりと、執拗に。
肛門のしまりが反射的に動くたび、舌がじゅるりと押し返される。
触れられるはずのない場所に、愛撫が与えられるという倒錯。
舐められるたびに、恥ずかしさが皮膚の裏にじわじわと沁み込んでいく。
でも、止まらない。いや、止めてほしくない。
舌が蠢くたび、肛門の筋肉がひくひくと収縮し、奥の感覚がむず痒く膨張していく。
「あら、奥がいいの? 贅沢なこと。
でも、そうね。……あら、これがちょうどいいわ」
さとりの視線が、私の下腹部を一瞥した。
腹の筋に溜まっていた透明なべとべとの液。
私の肉棒が垂れ流したそれを、指先で丁寧にすくい取る。
そのまま、指は肛門へと触れる。
少しずつ、慎重に、けれど確実に、押し広げ、奥へ奥へと進んでいく。
「力を抜いて。いい子……そう、そうよ」
第一関節。
第二関節。
ゆっくり、ゆっくりと侵入してくる指に、体が適応していく。
いや、迎え入れてしまっている。
「奥、触ってもいいかしら?」
返事など必要ない。すでに心も身体も、彼女に開かれていた。
指先が、ある一点に触れる。
ぴく、と腰が跳ねた。
「……ここね」
前立腺——男の奥のスイッチ。
一瞬、目の裏で火花が散った。
「ん……ひゅっ、あ……っ!あっ、そこっ……!」
指の動きが変わるたび、快感の波の質が変化する。
ゆっくりとした責めには陶酔が。
一点を突かれるときには衝撃が。
揉み解されると、もう声にならない声が漏れていく。
肛門の中が、指を押し出すのではなく、“吸い込む”感覚に変わっていた。
「あら……イきそう? でも、ダメ」
彼女の声はどこまでも冷静で、どこまでも甘くて、どこまでも意地悪だった。
私の前立腺が、もう“存在してはいけないくらいの快楽源”になってしまったことを——
彼女は、完全に知っている。
そして、その上で、許さない。
それがたまらなかった。
さとりの細い指が、前立腺を——
撫でる。擦る。叩く。押す。
「このまま射精したい?
射精したい。したいわねえ?」
軽薄で表面的な、共感の響き。
私の心の中には、もはや小さな爆発の連鎖とでもいうべき快感が渦巻いている。
それを読んでいてなお、さとりは。
「まだ、ダ~メ♡」
心臓はどっかんどっかんと大太鼓を叩くような衝撃に合わせ、血液を送り出している。
その殆ど全てが集まっているであろう、陰茎では。
根元に嵌められた革のリングによって、睾丸からこみ上げる精液を堰き止められていた。
もう何もかもが破裂寸前。
それなのに、彼女の指の動きは止まらない。
ときに優しく円を描き、ときに唐突に突き上げる。
その動作ひとつひとつに対応するように、私の喉は悲鳴にも似た喘ぎ声を上げた。
「あら……こんなにナカが良いなんて。まるでメスね」
言葉の一つ一つが、甘く、鋭い。
責められているのは身体だけじゃない。意識ごと、弄ばれている。
「……うふっ、うふふふ。かわいい。まだイかせてないのに、泣いてる」
ぐり、と強く押し上げられた瞬間。
ひときわ大きな快感の爆発に合わせて、身体が大きく跳ねる。
肛門が強く収縮し、さとりの指をひり出すそれが、第二波であった。
「ふうん。お尻だけで、イっちゃったのね。勝手な子。
首輪だけじゃ、足りなかったかしら」
彼女は枕元に手を伸ばし、革製の細い帯を取り出した。
その端を首輪の金具に、カチリと取り付ける。
犬の散歩に用いるような、リードであった。
「これでようやく、“本当にわたしのもの”って言えるわね。
もう勝手にどこにも、イっちゃ、だめよ?」
さとりはそう言って、軽くリードを引いた。
「……あら、あなたのせいで指が汚れちゃってるわね」
その声は、嘆息のようで、どこか楽しげだった。
「責任もって、——綺麗になさい?」
目の前に差し出されたその指に、私は何の疑問も持たず、口を開ける。
舌を出し、ねっとりと指を包み込むように舐めとる。
「ん、上手。やっぱり、飼い主の言うこと、よく聞くのね」
さとりは微笑んだ。
尻穴から指が抜かれたあとの、なんと空虚なことか。
それでも、陰茎の熱はまったく衰えなかった。
いや、それどころか、ますます疼いている。さとりに触れてほしくて、仕方がない。
目の前にいるのに、彼女は手を伸ばせば届く距離にいるのに、触れることができない。
「ダメよ。勝手に動いたら——減点。
でも……見ていて、いいわよ」
その一言だけで、喉が鳴った。
さとりの指が、衣の留め具にかかる。
上着の第一ボタンが、はずされる。
ついで、二つ目、三つ目と、滑らかな動作で下に向かって順に解かれていく。
暗がりの中でも、彼女の肌は白く、ほのかに輝いて見えた。
露わになっていく鎖骨、胸元の谷間、下着のレースがかすかに浮かぶ柔らかな膨らみ。
そのたびに、私の陰茎はびくびくと震え、痛いほどに熱を帯びて跳ね上がる。
「わたしに触れてもいいのは、“よし”って言ったときだけ。
……ちゃんと、“待て”ができるかしら?」
彼女は笑って見せた。
上着が肩から滑り落ち、ぱさりと床に落ちる音が耳を打つ。
続いてスカートに指がかかる。
ゆっくりと左右の腰骨をなぞるようにして、布が下へと引き下げられていく。
太腿が、膝が、ついには細い足首までもがあらわになる。
「ミオの目……こんなに潤んで。可愛いわ」
何もしていないのに、いや、“見せられているだけ”なのに、私の肉棒は限界を訴えている。
「わたしの身体、そんなに欲しいのね。……でも、まだ、ダメ」
さとりは下着越しの胸元をわざとらしく押さえ、脚を組み直す。
その仕草ひとつひとつが、焦らすように計算されている。
「……ほら、暴れないで。読めてるわよ。そんなに疼かせて……ふふ、見せつけてるのはどっちかしら?」
喉が渇く。
息が詰まる。
それでも——触れてはいけない。
首輪が、喉の奥でじわりと熱を返していた。
さとりは、私の視線をじっと受け止めながら、ふと唇の端を上げた。
「……ねえ。お燐とのとき、あなた、ある言葉に強く反応していたわよね?
覚えているかしら。自覚はあったみたいだけど……」
まさか。いや。でも。
さとりは私の狼狽を気にも留めない様子で、耳元に唇を寄せ、囁いた。
「“おまんこ”」
その声音は甘く、無邪気にすら聞こえた。
けれど、その単語が耳に届いた瞬間、意識の奥がざわりと波打つ。
「ふふ……やっぱり、効くのね。一つの単語でここまで心が動揺するなんて、可笑しいわ」
軽くリードが引かれる。
喉元がまたきゅっと締まり、陰茎がびくりと反応した。
「わたしの“おまんこ”……見たい?いいわよ。
だって、今、あなたの身体は髪の毛の一本からつま先まで私が管理しているの。
見えたところで、指一本触れることは叶わないんですもの」
言うが早いか、指を下着の縁にかけると、するりと下ろした。
「はい。今あなたがバッキバキにしているそれを、突っ込みたくてたまらない、
古明地さとりの、“おまんこ”よ♡」
卑猥な衝動は、彼女の口で言語化されることで、より大きく膨れ上がっていく。
「もっとよく見えるようにしてあげる。
あなたが、何を、欲しがっているのか」
さとりはゆっくりと近づき、仰向けのままの私の顔の上で立ち止まった。
そしてその脚をガニ股にすると、両手の指先でその花びらを——
くぱぁ、と拡げた。
そのまま床に膝をつき、その秘められたピンク色の肉は、私の鼻先数センチで止まる。
「ほんとの犬みたいに鼻息荒くしちゃって。ふーっ、ふーっ、って……わたしの“おまんこ”まで届いてるわよ?」
もう、何もかもどうでもいい。意識が混濁してきた。
「安心しなさい。これが最後よ。
ここに上手にご奉仕できたら、ちゃんとあなたの願いを叶えてあげるから。
だから、もう少し、頑張って?」
その言葉が、失いかけていた理性の原形をなんとか留める。
「良い子。じゃあ、腰を下ろすわね」
その一言に、喉が鳴った。
逃げることも、拒むこともできない。
むしろ、そうされることを待っていた。
さとりの影が、ゆっくりと上から覆いかぶさってくる。
太腿の内側が、私の頬を挟むように寄せられる。
すぐに、肌と肌の間にこもった湿度が感じられた。
汗の香り、秘所の匂い、ラベンダーの残り香が入り混じった空気が、鼻腔を満たしていく。
彼女の足が両側に固定され、次の瞬間——
柔らかく湿った粘膜が、私の口元に押し当てられる。
「ん……♡」
太腿の筋が緊張し、彼女の膣口が、私の唇に密着する。
ぬるりと滑るその感触。
一瞬で、口内が熱を持つ。
舌を伸ばし、まずは花弁の輪郭をなぞるように軽く撫でる。
彼女の身体が、ぴく、と小さく震えるのが分かる。
「……くすぐったいわ。もっと……奥まで、舌を入れて」
その命令に、舌を押し入れた。
ねっとりとした粘膜の蠕動が、舌先を絡め取る。
その奥には、既に蜜がたまり、私の奉仕を待ち受けていた。
じゅる、じゅる……
音を立てて吸い上げる。
鼻先が割れ目に擦れ、秘所の熱と匂いが顔中にまとわりつく。
「あ……ッ、そんなふうに、じゅるじゅるって……っ」
さとりの喘ぎが頭上から降ってくる。
それだけで、身体が跳ねるほどに嬉しかった。
顔面が、彼女の快楽のための“器”になっていく。
いや、“それでこそ器”になれることが、光栄だった。
舌を回す。吸い上げる。唇を尖らせて、クリトリスを吸う。
「あ……あ、上手。下品……でも、上手……っ」
彼女の太腿の筋肉がきゅっと締まり、私の頬が挟まれる。
鼻息が止まりそうになるほどの密着感。
息ができない。けれど、これが幸せだった。
奉仕するたびに、彼女の身体が甘く震える。
奉仕するたびに、自分が「役目」を果たしていることが実感される。
舐めれば舐めるほど、蜜が溢れる。
それを飲み干しながら、私は確信する。
——ここは、わたしの“居場所”だ。
「そういえばさっきから、あなたの腰がへこへこ動いているけど、自覚は無いようね」
言われて初めて気がついたが、それは止まらない。
私の頭はこの後のご褒美を期待しすぎるがあまり、先走った指令を出しているようだった。
「そろそろ……限界、かしら」
さとりが、呟いた。
その声音には、甘さと慈しみと、ひと匙の意地悪が混じっていた。
「じゃあ、上手に“おねだり”できたら、ご褒美をあげる」
私は、間髪を容れず応えた。
「ご主人様……ッ、ごしゅじんしゃまぁ……さとり様だけを求めて、この、この私は限界まで昂っております……ッ
私は生涯、さとり様だけを愛するとここで誓います……♡
ですから、どうかその“証明”をお許しくださいッ!」
乾いた声帯を震わせて、言葉を絞り出すと、喉はヒリヒリと痛んだ。
「おね、がい。しま、す……」
ひくひくと横隔膜が痙攣し、最後の懇願は言語の体を成さなかった。
それでも。
彼女は、しっかりと“読んで”くれた。
「ずっと我慢して……偉かったわ、ミオ」
次の瞬間——
カチャリ。
肉棒の根元に巻かれていたリングの金具が外れる音が、時の封印を解いた。
陰茎の奥に溜め込まれていた欲望が、怒涛のようにせり上がる。
その膨大な圧力に、身体が悲鳴を上げる。
さとりの秘められた肉は私の口を離れ、自由を与えられた欲望の先端にあてがわれた。
「さあ、全部……わたしに証明して。——“よし”」
ズブ、ぬちゅ。
膣口が、私を迎え入れた。
いや、違う。
飲み込まれた。包まれた。吸われた。
鈍く、柔らかく、熱く、抵抗しながらも確かに許されていく感覚。
わたしの形に馴染んでいく。
「ん……ッ、ああ……っ♡」
彼女の声が震える。
私の陰茎が、彼女の一番深いところを押し広げている。
奥まで届いたその瞬間——
全身が、爆発した。
どくっ、どくっ、どくっ……!
それは歓喜の悲鳴、一度目の絶頂。
全身ががくんがくんと震え、睾丸の奥から絞り出すように、精が放たれる。
挿入しただけで、果ててしまった。
それなのに。
さとりの腰は再び上昇を始める。
彼女の膣壁のヒダは私のカリを擦り、まだ精を吐き出し終わらない最も敏感な状態の陰茎から、「もっと出せ」と言わんばかりに搾り上げる。
これまでの地霊殿での記憶が全て、この快感で上書きされるかもしれないと思うほどの、熱い絶頂。
それが終わらないうちに、再び。
ぱちゅん。と彼女の尻肉が、私の腰に打ち付けられる。
まだ、出る。出続ける。脳が排尿かと錯覚してしまうほどの、長い長い射精。
「ふふふ、あははは。ずーっと脈打ってるわよ、どくどく、どくどくって。
でもミオ、散々あなたのいやらしい心を読んで、わたし……」
さとりは少し言い淀んで、
「これだけじゃ、ぜ~んぜん、足りないわっ♡」
さとりが腰を沈ませたまま、前後にぬるりと動き始めた。
——熱い。やわらかい。
中で絡みつく粘膜が、敏感になりきったそこを、ぬちゅぬちゅと嬲ってくる。
「あんなに出したのに、……まだ硬い♡」
言われるまでもなく、自分でもわかっていた。
脈打つたびに、さとりの中がきゅん、と締まってくる。
さとりの腰が、わたしの上にまたがったまま、ぬるりと揺れる。
射精したばかりの肉棒が、膣の中で強制的に擦られている。
通常なら、もう触れることすら許されない敏感な時間帯。
けれど——
それすらも、快感になっていた。
「はっ、ひぅっ……! んぁっ、ああっ……っ!」
背筋が勝手に跳ねる。
肉棒が、ぬるりとした粘膜の奥で絡め取られ、うねるヒダが射精管を絞り出すように嬲ってくる。
「ぴくぴくしてる……♡ ねえ、どこが“限界”なの? 教えて?」
さとりの声は、優しい拷問。
彼女の中が、さっき出したばかりの精を押し戻してくるようだった。
肉壁が“残さず飲み込みたい”とでも言うように、
一撃ごとに吸い寄せてくる。
「まだ、まだよ。ミオ……あなたは、わたしのためにイくの」
どくん、と脈打つ。
第二波——もう限界だったはずの身体が、再び達しようとしている。
精液が湧いてくる。睾丸がぎゅうっと縮むのがわかる。
「さぁ、わたしの“おまんこ”で狂って♡」
その一言が、爆薬だった。
ばちっ、と視界が弾ける。
「ひゃ、ぁっ……ッ!!」
自分の声か、彼女の声かもわからない。
でも、確かに果てた。
果てたのに、終わらなかった。
「ほら、ほら……まだ、抜かないわよ。まだまだ、足りないの」
さとりがゆっくり腰を回す。
わたしの肉棒は、そのたびに深く擦られ、絞られ、溺れていく。
「見て……わたしのナカで、こんなに暴れて……ミオ、気持ちいい?」
答えられない。
答えたら、終わってしまいそうで。
でも、終わらせてくれないのなら——もっと、壊されたい。
もう一度、彼女が腰を沈める。
ヒダが根元まで咥えこみ、尿道に残った感覚を全部、拡げていく。
わたしは、ただの“性感器”と化していた。
「あなたの“全部”、わたしに溶かして?
ミオは、わたしだけのものなんだから……♡」
その言葉に、脳の奥で何かがちぎれた。
破裂するような、最後の絶頂。
心も身体も——快楽の“飼育器”として、
ようやく完成したのだと実感した。
「わたしの、ミオ……だいすきよ……♡」
その言葉と同時に、最後の波が押し寄せた。
脳の奥が真っ白になったまま、私はまたひとつ、“読まれる存在”としての階段を上がった。