抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
先日の5Pで桐香様がいい情報を手に入れたとのことなので、BIG4全員で朝一会議を始める。
冷泉院
「単刀直入に言いましょう。秋野水引さんが反交尾勢力のリーダーです」
卵にクンニをした際に手に入れたらしい。お互い媚薬の影響を受けて卵の全てを知ることはできなかったとのことだが、その情報があれば十分だろう。
女部田
「卵ちゃんが仲良くしていたからもしかしたらとは思っていたけど、本当にそうだったんだね……」
糺川
「とはいえ、いきなり捕らえることは止めた方が良いだろう。仁浦様が関わっている以上、それなりの証拠をそろえないとこちらの心証を地に落とすだけになる」
淳之介
「証拠集めなら俺に任せてください。秘密基地に潜り込んでかっさらってきますよ」
秋野に関してBIG4全員で動いたら卵に感づかれる可能性があるのでここは橘に任せよう。
冷泉院
「……お気を付けください先輩」
そう言った桐香様はどこか晴れておらず、今なお何かあると言った表情だった。
女部田
「どうしたのトーカちゃん? 中折れちゃったおちんちんみたいな顔して?」
冷泉院
「卵さんがこんな失態をするでしょうか?」
確かに卵は頑なに反交尾勢力のリーダーに関しての情報は言いたがらなかった。自分の命を賭け、精の力に頼ってでも守りたがっていたはずだ。
淳之介
「5Pで浮かれすぎちゃったんじゃないんですか? 卵ちゃんとアサちゃんの長年の夢だったみたいですし」
女部田
「愛液でオムツぐっしょりだったもんね。最後なんて息するだけで潮吹いちゃってたし」
糺川
「……あまり言いたくないですが、痴情でらしからぬ失態をするのはよくある話です」
私としても思い当たる節がある。あの卵でもそういった面はあるだろう。
冷泉院
「…………そうですね。考えても答えが出ないなら、必要以上に警戒するのは止めましょう」
こうして会議は終了した。後は橘がうまく証拠を集めてくれることを願うとしよう。
現在PM0:30、あーしは学業を放棄している。昨日の反動で動ける気がしなかったからだ。兄貴に朝飯を食べさせてもらった。兄貴は用事があるから学園に行くとのことなので、あーしは眠りに着こうとしていた。
ニノマエ
「卵ちーゃん! 起きてるー!?」
卵
「どんな呼び方してんだよ!? 言いづらいだろそれ!?」
奇妙な発音で呼ばれたから嫌でも反応してしまった。
ニノマエ
「焦ってたら誤字脱字衍字が起きるものだろ!? ニュース見てないのかい!?」
卵
「昨日は5Pで忙しくて見てねえよ! 何があったんだ!?」
ニノマエ
「見たらわかる! その上で分からないことだらけだろうだから説明させてくれ!」
面倒くさくなってきたのでニノマエさんを家にあげる。黒タイツに明らかな焦躁を感じさせる汗ジミができていた。とりあえずスマホでニュースを見る。『土口精氏、治安管理委員会委員長就任』と書いてある。これまでの業績でついに昇格となったらしい。それに伴いSHOガードマンの増員や兄貴自身による巡回も多く行うそうだ。
卵
「…………あーしからしたら嬉しい話じゃねえか?」
ニノマエ
「それはこれを見てからにしてほしい!」
ニノマエさんがスマホを出す。不倫相手こと光姫さんとのメッセージのやりとりだ。バブみ保育園からSHOの機密情報が兄貴によって奪われたらしい。
卵
「……何だと? だとしたらさっきのニュースは────」
ニノマエ
「SHOは精くんに脅されている可能性が高い」
兄貴がどんな手段でどんな情報を手に入れたのかは分からないが、SHOを掌握しつつあるのは分かっている。あーしを守るためとはいえグレーゾーンを大きく踏み越えている。
ニノマエ
「おかげで余もクビになったんだよ! なんでも不倫行為が何たらどうたらで!」
ニノマエさんの光姫さんの不倫は兄貴公認のはずだ。今更それに言及してクビにするのはおかしな話だ。就任直後からかなりの動きを見せている。
ニノマエ
「所で精くんは!? 家にいないの!?」
卵
「用事があるから学園に行くとかなんとか言ってた────」
嫌な予感がする。一度放棄した学業を拾い上げ、制服に袖を通し学園に向けて走り出す。
昼休みになって俺は反交尾勢力の秘密基地に向かった。今日は精が学園に来ていてトリ公メンバーもうかつには動けないらしく、エレベーターには楽に乗れた。秘密のコマンドを入力して秘密基地に向かう。そして扉が開き────
精
「おやおや……どうして性帝サマがこちらに?」
精がいた。
淳之介
「何で……お前がここに……?」
疑問しかなかった。いくら治安管理委員会委員長になったからと言って、この世界の精にこの場所が分かる訳がないだろう。
精
「善良な一生徒が俺に報告してくれましてね。エレベーターのボタンをふざけて押したらここに着いたと。試行回数が多ければ猿もアクメ漱石とタイピングできますからねえ」
あの隠しコマンドが分かる訳がない。偶然分かったとしても再現性はないはずだ。つまり、精にこの場所を教えたトリ公メンバーがいるはずだ。精とトリ公を繋ぐ人物────いた。アイツは先日、精とヌき家で会っていた。
淳之介
「秋野か……!」
精
「おや、よくわかりましたね? SHO特別監査役である彼女が俺に教えてくれたんですよ」
精が白々しく笑いながら手を叩く。つまり精は秋野と、反交尾勢力と協力関係にあるということだ。そんなことをする理由など一つしかないだろう。
淳之介
「妹のために悪魔に魂を売ったか……!」
精
「卵を守るためなら悪魔に魂を売りますよ。それとも……この島にいる人間は卵を守ってくれると言えますか?」
その答えはNOだろう。ドスケベ条例において生産性の無い同性愛はご法度だ。だからアサちゃんも苦しんでいるし、卵ちゃんも隠れてレズプレイをしている。
精
「……告発しますか? そうすれば目障りな反交尾勢力と治安管理委員会委員長がいなくなりますよ?」
淳之介
「…………会長の警告をもっと聞いておくべきだったな……」
致命的なミスだった。"性帝が反交尾勢力の秘密基地にやって来た"という情報を精に、秋野に、反交尾勢力に与えてしまった。
想定よりもかなり早く生徒会室に帰って来た橘からの報告は衝撃的という他なかった。
糺川
「精が反交尾勢力に加担しているのか……元の世界と同じとは言え、流石に衝撃を受けるな……」
淳之介
「完全に俺のミスです。もっと考えて行動するべきでした」
女部田
「流石にダーリンを攻めるつもりはないよ。イクだって予想できなかったから」
冷泉院
「卵さんにも共有しておきましょう。呼び出して────」
生徒会室の扉がバンと勢いよく開かれる。
卵
「兄貴から聞いたぞ! どういうことだ!?」
流石に精から聞いたらしい。全ての事情を卵に話す。聞き終えた卵がこれ以上ないほど膝からぐしゃりと崩れ溶けた。
卵
「…………あーしとしたことが……やっちまった……水引に合わせる顔がねえ……」
糺川
「まあ、その、私も精でオナニーした時に盛大にベッドを汚してやらかしたことがるから……」
女部田
「あの時のレイちゃんはすごかったよ。部屋の前に『関係者以外を除いて立ち入り禁止』って張り紙してたからね」
淳之介
「それだと関係者が入れないじゃないですか」
冷泉院
「だからSSの誰も入れなかったんですよ。『関係者立ち入り禁止』でよかったですけどね」
私達の慰めが効いたかどうかは分からないが、卵は何とか立ち上がって頬を両手で叩いた。
卵
「……精液玉袋にかえらずだ、こっから挽回するぞ。何が起きるか分からねえから戦力が欲しい。当てはあるか?」
淳之介
「……文乃がいる。反交尾勢力に所属しているが、事情は理解してくれるはずだ」
文乃の不思議な瞳は何でも見通すと聞く。精曰く邪心すら見抜くのだから誠心も容易く見抜くだろう。
女部田
「SSからは……うーん……どうだろうね?」
冷泉院
「BIG4で呼びかければ全戦力を動かせますが……最悪を想定したら心もとないですね」
糺川
「最悪……精によるSHO総動員ですね……」
精の役職であれば一般のガードマンから特殊戦闘部、ひいては精鋭警備兵すらも動かせるだろう。もし敵対したらと思うとぞっとする。
卵
「…………とりあえず、各々掛け合ってくれ。あーしは水引と話してくる。腹括って話すしかねえ」
憂い晴らすことなく傾き始めた太陽は私達を嘲笑っているように見えた。
学園のどこを探しても水引はいなかった。教室にも、秘密基地にも、体育館裏にも。そんな中でSSのタブレットに緊急連絡が入る。スススス焦っているスス子からだ。
スス子
『"トリ公"が出たっす! BIG4からの指示でランチャーの要請が入ったっす! ポイントT-2っす!』
卵
「……っ、分かった今すぐ行く!」
あーし抜きで行動しているということは、水引的にはキていると考えていいだろう。となったらあーしはSSで活動するしかない。秘密基地から建御雷を持ってきてそのポイントに向かう。すでに交戦状態となっていたが、BIG4やSHO特殊戦闘部の活躍によってトリ公を追い詰めていた。
卵
「ω-99到着した! どうやら必要なさそうだな!」
糺川
「お前も一斉掃射に参加しろ! このまま捕らえるぞ!」
礼先輩の指示の下トリ公メンバーに銃を向ける。あーしの姿を見たメンバーはどこか安心した顔をしている。あーしが逆転の一手を放つと思っているのだろうか。残念ながらここからは────
礼
「対象を"トリ公"にあわせ! 一斉掃射、フォイ────うぐぅっ!?」
礼先輩のうめき声に振り向くと、SHO特殊戦闘部があーしたちに銃を向けていた。何が起きている? 突如通信が入る。
水引
『────……ご覧頂いた通り、SSではかねてより"ドスケベ法"に否定的だという密告がありました』
よく聞いたことのある水引の声だ。明るくぽわぽわした方ではなく冷凛とした方の声だ。
水引
『こちらの映像をご覧ください。こちらは土口精委員長が見つけた反交尾勢力の拠点です。そこに青藍島の象徴たる性帝がやってきました。これは性帝が反交尾勢力の関係者である紛れもない証拠です』
さっき性帝サマが言ってたアレが流れているのか。そういわれたらそうとしか言えない映像だろう。
水引
『さらにこちらの映像をご覧ください。こちらは1人の少女が命からがらに撮った映像です。BIG4ガールズと『反逆の緑髪』が同性による生産行為を行っています。明らかな条例違反でしょう』
恐らくあーしが水引に送った昨日の5Pの映像だ。言い方的に編集で麻沙音が撮影したことにしているのだろう。
水引
『そう。SSはドスケベ条例の庇護下にいながら、ドスケベ条例を堂々と違反していたのです────!』
水引の発言に場が混乱する。否定しようにも映像付きで言われたらどうしようもないだろう。ジャミングでSHOやSSに連絡が取れない。
水引
『SS代表、冷泉院桐香。風紀委員長、糺川礼。一番隊隊長、女部田郁子。『反逆の緑髪』土口卵────彼女たちによって、SSは腐敗しました。よって、ワタシはSHO特別監査役として彼女たちを告発し────その指揮権を、自ら引き継ぐことを宣言いたします』
今ここに、水引の反逆が成立した。BIG4達も舌を巻くほど鮮やかで、あーしが付け入る隙がないほど完璧だった。そんな場合じゃない。何をするべきだ? 考えてる場合じゃない。動け、叫べ、戦え。
卵
「BIG4は逃げろ! この場はあーしが引き受ける! あーしに歯向かう奴らは等全員地獄行きだ!」
糺川
「バカを言うな! お前一人でどうにかできるわけないだろう! 私達も戦う!」
女部田
「話し合える状況じゃないよね! だったら全力で戦ってなんとか隙を作るよ!」
冷泉院
「最低限の戦闘で切り抜けましょう。先輩は司令塔を崩してください」
淳之介
「了解!」
スムーズな連携によって相手の指示役は潰せた。後は混乱に乗じて何とか逃げ────轟音が響く。空を裂き、圧倒的な暴力を象徴するソレがやって来る。
水引
『次世代のリーダーを紹介しましょう。我らが象徴たりうる従前の存在。ドスケベ法を守護する鋼鉄の翼────SHOの公式マスコットキャラクター、ハメドリくんです。新たなる希望の実力を皆様にご覧入れます──』
目の前に、ハメドリくんが颯爽と現れる。以前にもまして巨大なそれは圧倒的な存在感を放つ。BIG4が構える。
淳之介
「来たか秋野……! 録画してまで準備をするとは中々だな……!」
女部田
「悪いけど手加減できないからね……! 怪我しても知らないよ……!」
糺川
「私達を陥れたまではいいが……目前に来たのは間違い────」
冷泉院
「っ!? 待ってください! 相手は秋野さんではありません! 大きさが違います!」
会長サマは気付いたようだ。秋野が纏っているアーマードハメドリくんより二回りほど大きい。巨大に見えるのではなく、実際に巨大なのだ。だとしたら誰が──────あーしの最悪を超えた最悪の想像に背筋が凍る。
卵
「……
その答え合わせだと言わんばかりに、ハメドリくんの前面がゆっくり開く。
精
「卵────お前を守りに来た」
優しく微笑む兄貴がいた。