抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
河川でひとしきりオナって色んな熱が冷めた頃には日が落ちていた。建物に戻るとBIG4と琴寄があーしを出迎えた。
女部田
「あっ、卵ちゃん戻って来たよ! 大丈夫だった!?」
琴寄
「先ほどは申し訳ありませんでした。土口様の事情に対してあまりにも無遠慮でした」
冷泉院
「自分を否定してきた島やその住民への恨みと憎しみ……私達では到底計り知れるものではありません」
糺川
「独りで発散するのもいいが……どんな些細な事でも私達に出来ることがあったら言ってくれ」
淳之介
「俺達は仲間なんだ。仲間が困っていたら助けたいんだ。だから……今は協力させてくれ」
こいつ等はあーしの事を心の底から仲間だと思っているらしい。あーしも協力関係だとは思っていたが、ここまでの信頼関係が築けているとは思っていなかった。
卵
「…………心配かけて悪かったな。性帝サマと琴寄の言い分も一理あるのは分かった」
確かに分かり合えて手を取り合えたらそれが一番なのかもしれない。だが────
卵
「……復讐をしなきゃあーしはずっと復讐に囚われたままだ。復讐を終わらせてやっとスタートラインに立てるんだ。生産的なことを考えるためにはこの復讐を清算しなきゃいけねえ……共感しろとも納得しろとも言わねえが、理解はしてくれ」
今のあーしに手を取り合おうという気持ちは一切出て来ない。繋ぐ手があったら叩きのめして打ちのめしてぶっ壊したいのだ。
淳之介
「…………防人老人は分かってくれたんだがな……」
琴寄
「あの方はあの方、土口様は土口様です。同じ人間であっても、心まで同じとは限らないはずです」
卵
「だから人間は多数派を作り異端を排斥する……排斥される側の気持ちより、多数派に属したい手前の気持ちを優先するんだよ……」
あーしを激変させるような話題も出来事もない。この話題はここで終わりだ。
淳之介
「……そろそろ時間か。タブレットでSHKを見るぞ」
性帝サマのタブレットから水引の映像が流れる。"パコロワイヤル"というイベントであーし達を炙り出す算段らしい。チップを集めてSHO本部で戦い豪華賞品を手に入れようという企画だ。BIG4と琴寄は真正面から戦うつもりのようだ。
淳之介
「卵ちゃんも来てくれると心強いが……秋野と戦えるか?」
卵
「…………悪い、例え何があっても水引とは戦えねえ」
あーしには無理だ。他のトリ公のメンバーだったら容易く戦えるが、水引とだけは戦えない。水引に刃を向けるぐらいなら自害する。あーしにとって水引はどんな状況になってもあーしを助けてくれた水引だ。
卵
「…………明日は麻沙音と会ってくる。兄貴と戦うためには麻沙音の力が必要だからな。この拠点に来るよう交渉してみる」
淳之介
「……ありがとう。見回りの奴らに気付かれないようこのマスクを着けて行ってくれ」
黒色の羽が飾られた金色のベネチアンマスクを渡された。オブラートに包んで言ってセンスが悪い。性帝サマの美的センスはどうなっているんだ。兄貴とどっこいどっこいじゃねえか?
翌朝AM4:00、あーしは麻沙音の家前にいた。流石にこの時間なら見回りもおらず問題なく着いた。インターホンを秒間19連打し麻沙音に来訪を伝える。かなり焦ったようでドタバタドジャァンと派手に音を立ててドアが開いた。
麻沙音
「卵ちゃん……! 無事だったんだね……!」
卵
「積もる話は後だ、一緒に風呂入ろう。水浴びだけじゃ洗った気がしねえ」
麻沙音と一緒に風呂に入る。服を脱ぐ流れで麻沙音の匂いを嗅ぐ。ややもすれば刺激臭と言っても差し支えない鼻を貫く匂いだ。
卵
「5日入ってねえだろ?」
麻沙音
「だって、卵ちゃんが心配で昼しか眠れなくて……」
卵
「しっかり風呂に入って夜に寝ろ。犯すぞ」
きっちり麻沙音を風呂で犯してスッキリ綺麗になった。腹が減ったから朝飯を作ろう。冷蔵庫にある野菜の余りと卵を炒めた適当チャンプルーを麻沙音と口移し合いで食べて、もう一回麻沙音をブチ犯して眠りに着かせた。麻沙音のタブレットを寝ている麻沙音の指紋で起動させ水引と連絡を取る。
卵
「…………水引、あーしだ」
秋野
『やあ、卵ちゃん』
水引はご機嫌そうに明るく話してくれた。ここまで順調に進んでいて、後はあーしを保護するだけなのだから無理もないだろう。
卵
「…………計画通りに進んでるみたいだな。水引が嬉しいならあーしも嬉しいよ」
秋野
『君のお兄さんは本当にすごいよ。今日でBIG4はこの青藍島からいなくなるかもしれないよ』
流石は兄貴だと手放しに喜べない。このまま狂った兄貴でいられると危なすぎてあーしはとても困る。
卵
「…………あーしは兄貴を取り戻してえ。だから──────」
秋野
「卵ちゃんの『やりたいようにやれ』ばいいと思うよ』
こんな時でも水引はあーしを励ましてくれる。近くに居たら力の限り抱き締めたい。
秋野
『卵ちゃんと話したことはお兄さんには黙っておくよ。居場所を知ったらすぐにでも飛んで行きそうだからね』
卵
「…………ありがとう水引、愛してる」
秋野
『ワタシも愛してるよ、卵ちゃん』
音だけで唇を重ね、通話を切る。こんな状況だから、水引から愛を囁かれるととても嬉しかった。画面にちらりと時間が映る。気付けば正午過ぎだ。そろそろ麻沙音を起こそう。麻沙音の耳元で魔法の言葉を囁く。
卵
「……画面端限定ガー不連携喰らってランク落ち」
麻沙音
「誰だァ、私のトラウマを抉ってくる奴はァ……!? あれは最新バージョンで修正されたからノーカンだぞォ……!?」
麻沙音がピキりながら起きた。これはあーしが過去に"Rebeleon"というネームで格ゲーをやってた時の、墓まで持っていくと決めた秘密だ。麻沙音の頭を撫でて怒りを収めて話を切り出す。
卵
「昼飯を食いながら話がしたい」
パコロワイヤルを潜り抜け、畔とわたちゃんと奈々瀬と、かつてのNLNSの仲間がここに集結した。俺達が元の世界に戻ることと、精を取り戻すことが目的だと伝えたら快く引き受けてくれた。この奥はその精が待ち受けているだろう。
淳之介
「これで精が戻ってくれば……NSNSの再結成だな」
冷泉院
「しかも今回は卵さんが入る豪華絢爛版です」
女部田
「でも、私達だけで勝てるかな? あの武装だったら間違いなく勝ち目ないよ?」
糺川
「精は卵を傷つけるような武装は二度と使わないだろう。それに役職を守る手前、死者を出すような出力にはできない……出力を下方調整した何かが来るだろうな」
俺以上に精のことを理解している糺川先輩らしい考えだ。ただ、それであったとしても厳しい戦いになることに変わりはない。アサちゃんがいない今、フルパワー以上の精を相手にしなければならない。この世界の精にBIG3の技術がないのが唯一の救いだ。
淳之介
「……行くぞ、皆!!!」
勢いよく扉を開ける。ガラス張りの窓を背に、玉座の間にいたのは────
精
「やっぱり来ましたか。流石ですね性帝サマ」
金色のパワードスーツを纏い、金色のフルフェイスヘルメットを抱えた精だった。
淳之介
「……相変わらずのセンスだな。かっこよくて羨ましいぜ」
精
「性帝サマも中々いいセンスをしてらっしゃる。出会い方が違えばよい友になったでしょうね」
淳之介
「実際にいい友だったんだよ────友達としてお前を取り戻す」
精
「ジョークのセンスは皆無のようですね。逆徒の分際で俺の友だなどと────虫唾が走る」
精が金色のフルフェイスヘルメットをかぶる。
精
「藍蘭に反する愚者に命ず、
おそらくあれは天手力機構と同じようなもののはずだ。ならば処理できないように一気に手数で押し切る。
冷泉院
「先手必勝です」
糺川
「一斉掃射、フォイア!」
会長が羅漢銭を弾き、糺川先輩がライオット弾の弾幕を張る。
精
「────見えれば十分、"
キンキンキンと凄まじい金属音が響き渡る。精の右手は目にも止まらぬ速さで全てを弾いた。
精
「飛び道具は俺に通用しない────」
精が背後に刀を構える。直後ギィンと鋭い金属音が炸裂する。
精
「奇襲もな」
女部田
「完璧に紛れたと思ったんだけどな……!」
片桐
「でもこれはどうかしら!?」
精の足元に滑り込んだ奈々瀬が精の足を思い切り絡めとる。精は体勢を崩して────奈々瀬の顔に向けて左手をかざす。
精
「来ると分かっていれば迎撃できる」
ドドンと銃声が響く。奈々瀬の顔には傷一つ付いていないが、どっと汗が噴き出ていた。床に2発のライオット弾が落ちていた。片方は精が放ち、もう片方は──
琴寄
「それはこちらも同じことです」
文乃が相殺したものだった。こちらは人数で勝っている。ありとあらゆる事態に備えて万全を期している。いくら精が強いからと言って一人で出来ることには限度が────
女部田
「っ、来るよ。背後、数は3。体温は低い────!」
ドアから、複数のアーマードハメドリくんが飛びこんでくる。すでに量産されており、無人でも操作できるようだ。
精
「言っただろう? 来ると分かっていれば迎撃できる」
アレ一体で何人か分の力と連携が取れる。これで人数差という利点は無くなった。
秋野
「茶番劇は終わったかな────橘くん?」
最後のアーマードハメドリくんが、扉から飛翔する。
精
「終わったなら────手前等全員地獄行きだ」
起き上がった精がこちらに向けて両手をかざす。あの威力のライオット弾を乱発されたらひとたまりもない。
精
「六文銭代わりに受け取りな────」
渡会
「だ、ダメだよ! 撃っちゃダメ!」
咄嗟にわたちゃんがパイプ椅子を構えて皆の前に出る。と同時に精の手がパイプ椅子にかざされる。
冷泉院
「止められなくとも逸らすことならできます……!」
精の両手から放たれた弾丸はすさまじい勢いでパイプ椅子に当たり弾かれる。壁や床や窓ガラスやアーマードハメドリくんを経由して、一発目が精のヘルメットを吹き飛ばし────
精
「嘘だろ?」
2発目が精の顎を捕らえた。そのまま精がクタリと倒れる。隙ができたのでそのまま皆で窓から飛び降りる。
糺川
「まて、精が────」
淳之介
「あの精を連れていける余裕はありません! それに、卵ちゃんの居場所が精を経由して秋野にバレたら、その段階で奇襲されます!」
精に手を伸ばす糺川先輩を無理やり止める。俺だって連れて行きたい。だが、今それをやったところで精は取り戻せない。取り戻すためには、今一度離れて準備する必要があるのだ。会長の糸によって着地をし、体制を整える。
淳之介
「美岬! ボートの運転を────」
ニノマエ
「乗りなあ! ボートは2隻あるう!」
光姫
「こう見えて私は色々練習しているんです!」
ボートに乗って────ボートには金色のバタフライマスクを装備した全身黒タイツの変人となぜか土口光姫さんが乗っていた。秋野の罠か? しかし今からボートを奪う暇はない。2人を信じてNLNSと俺は光姫さんのボートに、BIG3は変人のボートに乗って宵闇に消えて行った。
ニノマエさんが運転するボートに揺られ、私達はSHO本社ビルを離れていく。
糺川
「何故私たちを助けたのですか、ニノマエさん?」
ニノマエ
「……精くんにクビにされた腹いせ3割、卵ちゃんに秋野ちゃん関連で殺されかけた3割かなあ」
私を助けてくれた時のような真剣な声で話しているが、10割になっていない。残りの4割は何だろう。
ニノマエ
「ぶっちゃけていうと……精くんに対してあれだけの想いを持っている礼ちゃんや、そのお友達が悪い人には思えないんだよね」
冷泉院
「見た目で人を判断するつもりはありませんが、格好の割には良い判断をお持ちのようですね」
ニノマエ
「見た目通りのいい判断っていってほしいなあ? 涙ちょちょ切れのぴえん丸だよ、緑髪のゲキマブ会長さあん?」
よりにもよってゲキマブとは。いつの時代の言葉だ。卵が時代錯誤のスケ番だとしたら、ニノマエさんは時代が錯誤している人間だろう。
ニノマエ
「ともかく、余と光姫さんは礼ちゃん達に協力するよお。その辺りの事情も話すから覚悟してねえ」
どんな話が出てくるのだろう。理解できる言葉で話してもらえるとありがたい。