抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
アジトでは卵と麻沙音と一緒にあそこ剥いてホイで遊んでいた。麻沙音はパンツ一枚になっており、がけっぷちのようだ。
麻沙音
「これで負けたら10回連続裸……! もうお嫁に行けない……!」
すでに結構崖から落ちていたようだ。対し卵は制服から何も変わっていないように見える。
卵
「そんときはあーしが嫁にもらってやるから安心して負けろ、じゃーんけん────」
淳之介
「アサちゃん!? よくも俺のアサちゃんを! 絶対に許さん!」
2人の間に淳之介が割って入った。卵が不適そうに笑う。
卵
「許さなかったら何だってんだ、性帝サマよぉ?」
淳之介
「この勝負、俺が引き受ける!」
卵
「いいねぇ! そう来なくっちゃ!」
その後淳之介はストレートで卵に負け一糸まとわぬ姿に剥ぎ取られた。
卵
「退屈しのぎにもなんねえなあ……目の毒だから早く着ろ」
淳之介
「もうお嫁行けない……」
麻沙音
「大丈夫だよ兄、卵ちゃんが引き取ってくれるって」
卵
「そこまで引き受けてんじゃねえよ……あ? 随分と大所帯で帰って来たな」
こちらに気付いた卵が何処か不機嫌そうに言葉を吐き捨てた。
卵
「つーか"トリ公"メンバーいるじゃんかよ。手前等も水引に切り捨てられたか?」
片桐
「私は淳についていくって決めただけで……」
渡会
「お姉さんだから協力しないと!」
卵
「水引を裏切ったと……状況が状況だったら手前等をぶちのめしていたぜ」
畔
「えっ、わ、私の事情は……」
卵
「黙れクソデブス。一番隊奥儀破瓜ブサの剣お見舞いするぞ?」
一番隊にそんな裏技みたいなものがあるのか? 郁子を見たがそんなものはないと首を横に振られた。一体畔に何をするつもりだったのだろう。
ニノマエ
「あー……盛り上がってること申し訳ないけど、余と光姫さんからお話しをしていいかな?」
光姫
「この話はSHOの秘匿情報で、精くんがSHOの実権を握るのに使った情報です。しっかり聞いて欲しいです」
2人揃って本気の声音で話し始めたので、一同が視線を向ける。
光姫さんが1つの封筒を取り出す。
光姫
「精くんが知った情報は『土口一族抹殺命令』の指示書と計画書と報告書です。この資料によると、『鍛錬による際限なき成長』と『凶悪な二面性』の体質があるとのことです」
淳之介
「卵ちゃんや精を見れば一目瞭然だな……あと一族ってことは、会長や文乃は何か知っていないか?」
淳之介が桐香様と文乃の方を見る。文乃はむべむべと首を横に振っているが、桐香様には思い当たる節があると言わんばかりに笑い出した。
冷泉院
「ええ、『乱世を産む一族』と呼ばれ、その実力と凶暴さから他の一族が一致して盛大な粛清を行ったと」
女部田
「それイクも聞いたことあるかも。男の子には『セイ』って読める漢字を、女の子には『ラン』ってよめる漢字を付けるしきたりがあるって」
どうやら精や卵はそれなりの血筋を持っているらしい。持っているが故に受難に当たる、世界はどんな人間にも厳しい様だ。
光姫
「そんな土口の血が集まって青藍島に叛旗を翻そうとしていた……これが青藍島に留まらず、日本や世界を揺るがす事件に発展しかねないと判断され、この事故が計画されました」
卵
「……あーしや兄貴はそれに巻き込まれたのか。ムカつく奴等だ、ぶっ殺してやりてえ」
卵の抱く怒りは最もだろう。ただ産まれただけなのに、ただ自分らしく生きようとしただけで殺される。理不尽にもほどがある。
光姫
「ただ……この計画は失敗に終わりました」
卵
「……あーしと兄貴が生き残ったからか?」
光姫
「いいえ、全員生き残ってしまったからです。だから、一族はまず慰霊碑と偽の報告書を作って真実を探るものを遠ざけました。そして次に両親をSHOに取り込みました」
琴寄
「……おそらく、私の父が監視しやすくするために謀ったのでしょう」
卵
「…………納得できねえ……なんでパパとママは黙ってSHOに従ったんだ……! あーしや兄貴が死ぬほどつらい目に遭っているのに……! 何で何もしてくれなかったんだ……!」
卵の言うとおりだ。いくらSHOに取り込まれたとはいえ、両親が生きていたら何かしらの行動を起こしているはずだ。
光姫
「……まず、一成さんは事故の影響で記憶を失ってしまいました。そして美蘭さんは残された家族の安全のために…………沈黙を強要されました」
卵
「んだと……!? そんなの……そんなの……!」
淳之介
「もしも卵ちゃんは秋野が人質に取られたら────」
卵
「分かっている! 分かっている上で認めたくねえんだよ!」
卵も愛する誰かを人質に取られたのなら同じ選択をするのだろう。激昂しながら納得して否定した。
冷泉院
「……お待ちください。いま、一成さんは記憶を失ったとおっしゃいましたか?」
桐香様は光姫さんの発言に引っかかるところがあったようだ。
光姫
「…………はい。その通りです」
冷泉院
「……以前、ニノマエさんは記憶がないとおっしゃっていました。どれぐらい前の記憶ならありますか?」
ニノマエ
「…………ニノマエの名前を受けたのが大体5年ぐらい前かな」
糺川
「待ってください……5年前って、精が事故に遭った時期で──」
嘘だろ? 確かにニノマエさんから精っぽいと思う要素はどこかあったが、そんな理由だからなのか?
ニノマエ
「……記憶の無くなった余に、青藍島での衣食住と立場を保証する代わりに、このマスクと姿を強要されたんだ」
ニノマエさんがバタフライマスクを取る。他者を鋭く射貫く金色の三白眼が露になる。次にタイツの頭の部分を脱ぐ。ぼっと広がる髪は獅子のような金色だった。そして露になった顔は────
一成
「余は精に滅茶苦茶そっくりだからねえ」
タレ目になって、丸くなった精そのものだった。その姿に誰もが思った事だろう。間違いなく精の父親であると。
卵
「……何で黙ってたんだ!? 何であーしに言わなかった!?」
卵が光姫さんに掴みかかって揺さぶる。誰も止めようとはしなかった。誰が悪いと言う訳ではないが、卵ちゃんを止める権利は少なくとも私達にはなかったからだ。
光姫
「……ごめんなさい。謝って許してもらえるとは思ってないけど……父が記憶をなくして生きているなんて言ったら……」
卵
「んなのあーしに話さなきゃ始まらねえだろうが! 大体手前はパパと不倫していて────」
卵の動きがぴたりと止まる。そして光姫さんの身体を眺め始めた。
卵
「……手前、土口光姫じゃねえな?」
卵の言葉の意味が解らなかった。どこからどう見ても光姫さんにしか見えないからだ。どうしてという前に卵がしゃべりだした。
卵
「まず左手の薬指に指輪の跡がねえ。指輪をしている保母さんって興奮するからいいとバカがぬかしていたが、そんなあんたに指輪の跡がねえのはおかしい。それに今のあんたからは粉ミルクの匂いがする。光姫さんはさっきまで外で解説をしていたからそんな匂いはしねえ」
卵がものすごい勢いで違和感を指摘していく。言われてみれば確かに立ち方や構え方が違う気がする。
卵
「何より……髪からヘアスプレーの匂いがする。そこまで長い髪だったら多少手間でも染めればいい。染められない事情があるんだろ? その髪に思い入れがあるからだ。あーしはスケ番になる際に金髪にしたかったが水引が黒髪が良いと言ったから止めた。あんたも染めるのは嫌だったからヘアスプレーで手を打ったんだ、違うか?」
光姫?
「…………この髪は私にとって譲れないものだったの。私が私として残せる唯一のものだったから」
光姫さんが何かの液体を頭からかぶる。すると紫色の髪がみるみると────サラサラとした長くて綺麗な緑髪になっていった。
卵
「…………嘘だろ…………あーしの髪はママ譲りだって…………」
光姫?
「……そうよ。だから、絶対に染められなかったの。だって────」
そして光姫さんが目から何かを外す。紫の瞳が外れ────優しい鳶色をした瞳になった。
美蘭
「一成さんが私に惚れた理由って言ってくれたから」
その悲しく笑う姿はどこか私に似ていた。崖に立っていた精が私のことを頼った理由は、何処か母親と重なって見えたからなのかもしれない。
美蘭
「私は土口一族の女……鍛錬すれば誰かに成りすますこともできます……そのせいで、母親でいられなくなりましたが……」
卵
「……今更……今更母親面してんじゃねえよ!!!」
卵が再び美蘭の胸ぐらを掴む────のではなく抱き着いた。
卵
「あーし……あーし……!!! メッチャ寂しかった!!! 辛かった!!! 死のうとすらしてた!!! なのになんで助けなかったんだよ!!!」
美蘭
「ごめんなさい……卵……! あなたと精と一成さんに手を出されたくなくて……! 喋ったら全員の命の保証はないって言われて……!」
卵
「分かってるよ!!! あーし達への愛は分かってるよ!!! でも!!! それでも助けてほしかったんだよ!!!」
卵が子供のように癇癪を起して泣きついている。これで少しでも卵の悲しみや怒りや憎しみが和らげばいい。私達はただ黙って、親子の再会を眺めていた。
卵がひとしきり泣いて落ち着いて、美蘭さんが話を再開する。
美蘭
「……これで私と一成さんがあなた達に協力する理由が分かったかと思います。愛する息子を止めたいんです」
一成
「何を今更と罵ってくれても構わない。それでも余と美蘭は精を助けたい」
子を思う親の純粋な気持ちに誰も反対しなかった。
淳之介
「ここまで大所帯になるとは思わなかったな……正直、俺はNLNSのとBIG3皆がいれば十分だと思っていた」
糺川
「ああ。まさか精のご両親まで加わるとはな。この世界限りの心強い助っ人だな」
卵
「……待てよ、確かパパとママは同い年だったはずだ。四十……幾つだ?」
一成
「黙秘権を行使しますう。永遠の40代ですう」
女部田
「そこで永遠にしたら人生大変じゃない? もっと若い年齢で永遠にした方が良いと思うな」
美蘭
「あら、年を重ねてなお若々しい一成さんはとっても素敵ですよ。この戦いが終わったらもう一人作っちゃいたいぐらいです」
冷泉院
「となると……美蘭さんも40代ですね。本物の仙波光姫さんは30代だったはずですので……10歳ほど若く見えるということですね」
麻沙音
「だったら美蘭さんは光姫さんの上位互換では……?」
渡会
「女の人を年だけで考えたらよくないと思うな! 私は一番お姉さんだから分かるよ!」
片桐
「一行で矛盾しちゃっているわたちゃんかわいいのだわ……」
岬
「若く見えるということは体形維持の秘訣があるはず……! 私に教えてください、美蘭師匠……!」
琴寄
「まずは規則正しい生活と栄養に偏りのない食事から始めるのがよろしいかと……」
こうなったら精も入れてNEONSNSを結成したい。全員分の口上も考えて名乗りをあげたいものだ。
???
「おやおや、意外とにぎやかにやっているね……僕のデータではもっと寂しそうなはずだったんだが」
???
「相変わらず当てにならないデータっすね……うおっ!? 老けた精さんがいるっす!?」
声のする方に振り返るとシューベルトやスス子を始めとした、凛を除いたSSフルメンバーがいた。
一成
「夜更けに余老けてるだって……!? 余のデータにはないぞ……!?」
淳之介
「おっ、シューベルトのマネですか? アイツはいつもこうなんですよ」
美蘭
「記憶を失っているからって持ちネタにしているんです。ちょっと不謹慎ですけど面白いですよね」
女部田
「でもちょっとだけ言い方の感じが似てるよね~……卵ちゃん、一成さんは土口一族の人間じゃないんだっけ?」
卵
「ああ、パパはママの所に婿入りしたって聞いてる……旧姓は……中村だっけ?」
シューベルト
「中村!? 僕と同じ苗字じゃないか!? そんなの僕のデータにないぞ!?」
一成
「君も中村なのか!? 余のデータにはないぞ!?」
全てが終わった後に分かったことだが、一成さんとシューベルトは親戚だった。意外な人物が意外な人物と血が繋がっているというが、いくらなんでも意外過ぎる。私のデータにもなかった。ともかく人員は揃った。これだけいれば精を取り戻すことも不可能ではないだろう。早速話し合って作戦を考えよう。