抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
元の世界に戻って来て、ハメドリくんの中にいた水引ちゃんと和解して、ひと段落したのもつかの間────
精
「ほんっっっとうに申し訳ありませんでしたああああああ!!!!!!」
ただいま俺は礼の部屋で土下座している。それはもうすごい勢いだ。ゴッと床に傷が付くほどだ。
礼
「何がどう申し訳ない? 言ってみろ」
精
「心の底から愛している存在との別れがどれほど辛いかがわかりました!!! それを何度も礼に体験させてしまったことが申し訳ないです!!!」
礼
「……分かっているならいい。顔をあげろ」
礼の言葉に顔を上げる。礼はやれやれと言った顔で俺を見下している。最高だ。
礼
「丸々1日絞ると言ったな。それに変わりはない」
精
「ありがとうございます……」
礼
「ただし、最高に搾り取りたいから……‥今から72時間、プライベートな付き合いを無しにしよう。SSで上司と部下の関係の付き合いをするだけだ」
より我慢してから搾り取るというのか。しっかり準備しないと俺は72時間後に精魂尽き果てて死ぬかもしれない。
精
「俺が他の人とドスケベセックスするのは?」
礼
「プライベートな制限を付けるつもりはない。好きにすると良い」
ならしないようにしよう。3日も貯めれば1日中射精しても持つだろう。こうして禁欲の3日間が始まった。
1日目。早速全校集会だ。体育館では所々でドスケベセックスをしている奴がいる。するしないの自由ができたのはいいが、今の俺からしてみたらしないの一択にしてほしい。目と耳と鼻は同時に塞げない。いやでも性的興奮を促す情報が入って来る。
冷泉院
「遅れてしまい、大変申し訳ございません、皆さん──」
桐香様が出てきてやっと収まる。一瞬でもこの人の傍にずっといたいと思ったことを恥じよう。会長の一声で、男女の欄が空白になっている新しいドスケベ許可証が配られる。
精
「……ふっ、相変わらず桐香様は仕事だけは出来ますね」
この可能性の空白によって様々な問題が出るだろう。しかし、困難を乗り越えてこそよりよくなっていくのだ。それを先導するリーダーが桐香様なら問題なく乗り越えていくだろう。
桐香
「では最後に……精さん、恒例の一言をお願いします」
だと思った。壇上に登る。しかし、やけにざわざわとしている。
精
「あー……そういえばそうか……」
B世界の俺は精神崩壊状態でまともに学園に来れなかったはずだ。それが急に現れたのだからざわつくのも無理はない。となったら、『金色の狂犬』らしくいかせてもらおう。
精
「一言と言われましたが今回もちょっと長く話します。俺はやっぱり青藍島が嫌いです」
前と同じようにどよめきが聞こえる。未だにボロボロメンタルでいると思っているのだろう。
精
「ここに至るまで何年かけてるんだと。俺は最初から認めていたぞと。やっとこの島が俺に追い付いてきたぞと」
本心からそう思う。卵の同性愛を認めている俺が、性的マイノリティーを認めていない訳がない。
精
「…………だからこそ、俺が色々教えていきたいと思います。認めると言ったって、具体的にどうすればいいか分かる人いますか? ただ自分の言うことを受け入れさせることだと思っていませんか? 自分を認めてもらうには、相手も認めなければなりません。例え納得できなくとも、理解して、手を繋ぎ、心を繋いで、やっと"認める"なんです」
舞台袖から小さな拍手が聞こえる。俺はそれに小さなサムズアップで答える。
精
「なので……引き続き『金色の狂犬』、土口精をよろしくお願いします!!!」
一礼して壇上から降りる。前と違いかなりの声援が聞こえてきた。これはもう『金色の狂犬』と言って購買部争いを避けることは出来ないだろう。その後、学業を終わらせてヌーディストビーチを散歩する。ちらほらと孕めオラってる奴らがいるが、密集していないから大した刺激にはならない。そのまま散策を続けていると────
淳之介
「おっ、おーい! せーい!」
秋野
「土口さーん!」
浅はかならぬ関係の2人に呼ばれた。秋野ちゃんはウィッグを被って女子の制服を着ており、新たな許可証の欄には女と書いていた。
精
「おやおや、お2人でデートかい? 俺も混ぜてくれよ!」
淳之介
「さっきの演説はよかった。卵ちゃんを思いながら生きてきたお前にしかできない演説だった」
秋野
「本当に……ありがとうございます、土口さん」
精
「なあに。卵を認めさせるついでに君も──────……ふっ、幸せにな」
俺が言うまでもなく水引ちゃんはこの世界で幸せを掴む事だろう。だってその横には良き理解者が、俺が釣られて笑ってしまうぐらいの笑顔で立っているのだから。
精
「…………お前の花嫁衣装が見たかったよ」
淳之介
「オイオイ、俺が着るのはタキシードだぞ?」
秋野
「ワタシが着るにしても、その時が来たら招待状出しますよ……って、どこ見て言ってるんですか土口さん」
俺の目線が水引ちゃんや淳之介君を見ていないことに気付いたようだ。
淳之介
「……前もこんなことがあったような……」
精
「ヌーディストビーチの性気に当てられてよく出るんだよ……」
秋野
「ま、待ってください!? それって!?」
精
「……いるんだよ、裸の女の幽霊が」
水引ちゃんと淳之介君が同時に抱き着く。暑苦しいったらありゃしない。でも、悪くない。なんか、いい。
卵
「私の分も幸せになってね、お兄ちゃん」
精
「──────ああ、俺も幸せになるよ。礼と一緒にな」
2日目。あっちの俺はまともに動いていなかったらしい。おかげで慢性外傷性脳症はある程度よくなっていたが、体の鈍りがヤバイ。ということで朝から絶賛一番隊でバチボコに扱かれている。勿論金色のフルフェイスヘルメットは装着している。それでも死にそうだ。
ゴリマス
「年賀の納め時であります! 『金色の狂犬』殿!」
精
「そろそろ年末だけどさあ!」
クールフール
「それを言うなら寝具の収め時ね」
精
「寒くなってきたから衣替えしたいよね!」
女部田
「結構余裕じゃん。イクも混ざって良いかな?」
精
「そしたら命の納め時になっちゃいますって!」
タイマーが鳴るまでゴリマスちゃんから逃げ続けた。アレが同じ哺乳網霊長目ヒト科であると認めたくない。終わると同時に地面と熱烈なキスをする。
女部田
「お疲れ様~。おまんこする?」
精
「俺がどんな状態か知ってて言ってます……?」
女部田
「ものすごーく疲れて♪ ものすごーくエッチしたくて♪ でも、レイちゃんのために我慢してるんでしょ♪」
精
「全部知ってるじゃん……その上で誘ってくるとか……サキュバスとインキュバスの間に産まれた子供かよ……」
女部田
「……レイちゃんも本気で我慢してるんだよ? ほら」
郁子先輩が何かの鍵をちらつかせる。
女部田
「これはレイちゃんがしている貞節帯の鍵。精に罰を科すなら、自分にも罰を科さなきゃいけないって言ってたよ」
なんでもB世界での百合5Pの時に、卵に俺を重ねてしまったとのことだ。精を愛してると言いながら、他の誰かに精を求めてしまった罰らしい。なんとも礼らしい罰の科し方だ。なら俺もしっかり我慢しないと。
精
「礼に情けない姿を見せるわけにはいきませんね……!」
女部田
「だから頑張って鍛えてね♪ それに鈍っている精くんに勝っても面白くないから♪」
精
「なんだったら天手力機構無しで勝ちますよ。本来の力と礼への愛の力で勝ってやります」
女部田
「それじゃあイクは乱れ神使っちゃおうかな~?」
精
「一生勝てなくなるので勘弁してください……」
女部田
「ウソウソ。あれ使っても勝った気しないもん。あくまで素のお互いでの勝負で勝ちたいからね」
こういうところは武人らしい郁子先輩だ。そういうところは本当に尊敬できる。しばらくはそのデカい胸を借りるとしますか。
昼休みの購買部戦争を生き残り、無事に
精
「ちーっす桐香様。仕事手伝うんで紅茶入れてくれ」
冷泉院
「もちろん良いですよ。飛び切りの一杯を淹れましょう。何が飲みたいですか?」
精
「砂糖もミルクも入れないアイスのストレートティーで」
会長が紅茶を淹れるために席を立ったので、その座につき仕事を捌いていく。
精
「はい、代表代理土口精で……切りやがった。はい、代表代理土口せ……また切りやがった。はい、代表……そこで切ったら桐香様だった時に失礼だろ」
冷泉院
「私の声はそんなに怖くないですから。お待たせいたしました。『ストレートティー~冷泉ブレンド仕立て~』です」
縦長のグラスにストローを差してだされたストレートティーからは、シナモンとオレンジの甘い匂いと、ピリッとしたミントのような匂いもする。
精
「中々いい匂いじゃないか。甘ったるいだけなのはココアやバニラで十分なんでな」
そして口にする。甘くてピリッとしたかと思えばめっちゃ渋い。端的に言ってマズい。
精
「マズいな」
冷泉院
「ですよね。匂いはよくできたのですが、あまりいい茶葉が用意できなかったので」
そんなもの人に出すなよといいたかったが、光姫さんか母さんに出したカクテルはおいしくなかったと言われた。だったら人が作った物の味にとやかく言う権利はないだろう。なので左手でクリームパイを、右手で書類を、口ではマズい紅茶を楽しむ。そんな不思議な光景を見てか、桐香様が穏やかに笑う。
冷泉院
「礼のために禁欲しているようですね」
全然違った。この感じだとSS全体に伝わってるだろう。
冷泉院
「頑張ってくださいね。礼を幸せにできるのはあなただけですから」
精
「下手に手出ししないだけ桐香様は優しいな。言われるまでもなく頑張るさ。それと────俺は『
冷泉院
「…………ふふっ、そうでしたね。これは失念していました。お詫びにもう一杯淹れましょう。
恐らく試したのだろう。相変わらず食えない桐香様だ。とは言え、これからの青藍島を導くのに必要デカケツな存在だろう。変わらずに忠誠と反抗を貫こう。
学業を終えた夕方、淳之介君の家で男同士談笑している。気の置けない友人との会話は楽しいものだ。
淳之介
「ところで俺が送ったオナホはどうだ?」
精
「流石にオナホの域を出ないな。本物の温かみとか動きが再現できていない。セックスの気持ちよさってのは刺激だけじゃ再現できないもんだからな」
淳之介
「分かるぞ。文乃とのセックスの気持ちよさは何にも代えがたいものだ。例えどんなオナホを使っても文乃とのセックスは越えられないな」
精
「水引ちゃんのオナホは?」
淳之介
「寿司と焼肉を比較できるか?」
寿司のカルビも焼肉のカルビもそれぞれに良さがある。同じカルビでも優劣をつけるのは愚かなことだ。
精
「……ありがとうな、淳之介君。色々付き合わせちまって」
淳之介
「こっちもありがとうな。お前が卵ちゃんを引き受けていなかったら俺達は勝てなかった」
確かに卵と水引ちゃんが2人同時に空中から攻めてきたら間違いなく勝てなかっただろう。卵が俺への憎しみを強く抱いていたからこそ分断できた。
淳之介
「とはいえ、お礼の言葉一つでチャラにするつもりはない。あのチャーハン作って、また食わせてくれよ」
それならお安い御用だ。早速家から中華鍋とツナ缶を持ってきて調理を始める。するとどこからともなく文乃ちゃんがやって来て玉ねぎを切り始めてくれた。
琴寄
「私もお手伝いさせていただきます。此度も土口様は淳之介さんを助けてくれたそうですので……」
精
「助かるよ。正直な所、鈍った体で作るの不安だったんだ。折角だし和風よりの味にするか」
いつものレシピから胡椒を抜いて顆粒出汁を加える。油もごま油からサラダ油に代える。こうすることであっさりした和風チャーハンになる。
精
「俺も文乃ちゃんにお礼を言わないとな。淳之介君があの世界でやっていけたのは、文乃ちゃんへの愛があってだ。だから、文乃ちゃんのおかげで俺は助かったんだ。ありがとう、文乃ちゃん」
琴寄
「……ぬっへっへ……」
文乃ちゃんが嬉しそうに笑う。大分NSNSに絆されてきたように見える。チャーハンを仕上げて橘家の食卓に並べる。
精
「お待たせいたしました。『土口家チャーハン~たまにはあっさり和風もいいよね仕立て~』です」
麻沙音
「土口さんのチャーハン! 頂きます! ウマい! ウマいウマい!」
淳之介
「前回はガッツリ来る感じだったが、今回は優しく仕上がっている……! じっくり噛みしめたくなるようなじわじわ来るウマさだ……!」
琴寄
「料理の腕は落ちていないようで安心しました……」
橘家の皆がおいしそうに俺のチャーハンを頬張っている。胸が一杯になって──────ものすごくお腹が空いてきた。
精
「俺も頂くとするか。頂きます」
思ったよりパラパラにならず、ちょっともちゃっとしたチャーハンを口にする────
これはこれで美味しいよお兄ちゃん!
優しくて精みたいな味がするな! 余の舌にはちょうどいい!
貴方が心を込めて作ったからとってもおいしいわ!
────そういえば俺が初めて作った料理ってこんなチャーハンだったな。
精
「…………ああ、確かに美味いな……」
淳之介
「……『土口家のチャーハン』だからな。俺の分を分けてやろうか?」
精
「……いや、いい。淳之介君のリクエストだからな。俺の分をしっかり味わうよ」
今日のチャーハンは出汁を効かせて塩分控えめにしたはずなのに、やけに塩辛く感じる。でも、初めて作った時もこんな感じだった気もする。小さな一欠けらも残さず食べないとな。