抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
やばいぜ。
いつものインポの友人(同い年)と
先日助けた紫髪のふくよかな姉ちゃん(多分同い年)と俺(性人済み)の3人で
学校ある秘密基地の下で話し合っているぜ。
精
「あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!
おれは友だちと一緒にエレベーターに乗っていた思ったら、いつの間にか反交尾勢力の秘密基地にいた……な……何を言っているのか分からねーと思うがおれも何をされたのか分からなかった……頭がフットーしそうだった……催眠術だとか超スピード!? だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ……」
淳之介
「状況説明ありがとう。ということで皆、今日からNLNSに加入する二人だ」
畔
「私、畔美岬と言います。2年2組です。どうぞ、よろしくお願いします」
ふくよかでおいしそうな匂いのする娘が自己紹介をする。
精
「えーっと、俺、土口精です。2年1組です。『金色の狂犬』で通っています。
……じゃねえよ!? 俺、SSだよ!? 反交尾勢力に加入したらまずいだろ!?」
危うくこの場の雰囲気に流されそうだった。
渡会
「わわ、土口くん!? 落ち着いて落ち着いて……」
片桐
「そうよ土口。わたちゃんびっくりさせちゃダメでしょ?」
麻沙音
「そうです土口さん。わたちゃんはロリだからびっくりしておもらししちゃうかもしれません」
渡会
「ロリじゃありませんけど!? おもらししませんけど!?」
精
「危機感持てよ!? 活動拠点に不俱戴天の敵の主力が来ているんだぞ!?」
俺は机を叩いて大声を上げる。このことをSSに言えば間違いなく大手柄だ。今まで見逃してきたことも、『情報を掴むために泳がせていた』と言えば不問だろう。とすれば、ここにいる反交尾勢力のメンバーは俺を捕らえて何をしてもおかしくない。
なのに、平和に楽しそうにしている。
淳之介
「友達だろ?」
麻沙音
「兄の友達ですよね?」
片桐
「淳之介の友達でしょ?」
渡会
「淳之介君のお友達だよね?」
畔
「昨日助けてくれましたよね?」
精
「それ以前にSSだって言っているだろ!?」
俺の荒ぶりとは対照的に、淳之介君が本気な顔をする。
淳之介
「お前も、この条例に苦しめられているんだろう?
ここにいる全員がそうだ。……精、事情を話してくれないか」
その通りだ。俺はこの条例のせいで今も葛藤している。そして、その事情はBIG3にしか話していない。だからこそ、今、話さなければならない。
精
「……俺には妹、卵がいた。生きていれば、アサちゃんと同い年だった」
5年前、交通事故で家族を失った。両親と妹を失った俺は茫然自失だった。そんな中、SSの先輩が俺を励ましてくれたから何とか立ち上がれた。
精
「……卵は……同性愛者だったんだ」
この島で同性愛者としての矜持を貫くのは不可能だ。妹は自由な性の島で、望まぬ性交を強要されていた。
精
「いつも言っていた……『好きな女の子とセックスがしたい』って……!」
それは許されることのない条例違反だ。だから、妹はいつも満足なセックスができなかった。
精
「だから俺はSSで業績を出して……! 『条例を変えられる立場になる』って卵に約束したんだ……!」
卵の心の支えになった約束。俺の心の支えになった約束。その約束は言うまでもなく、果たされなかった。
精
「俺は……根っからの……クズの兄だ……! 妹に希望を与えておいて、それを叶えないなんて……! だからSSでもっと業績を出そうと『狂ったように』努力をして……! でも、そのたびに非性産者を罰しなきゃいけなくて……! 人の思いを踏みにじって……! 卵のことを淳之介君やアサちゃんのことを見逃しておきながら、『非性産者や条例違反者は許さない』なんて言って……!」
俺は泣いていた。今までの苦しさを全部吐き出していた。
精
「こんな条例無くなればいいと思っていた! でも! この条例がなかったら助からない人もいるんだよ! SSの人間にいるんだよ! 俺自身もそうなんだよ! だから! 俺は反交尾勢力にはなれないんだ!」
俺の叫びに、場の雰囲気が凍る。誰も何も言えなかった。
精
「……この基地のことはSSには言わない。淳之介君達が反交尾勢力であることも言わない。でも……SSとして対峙した時は……どうなるか分からないと思ってくれ」
淳之介
「……それでもかまわない。精が思うように、やりたいようにやってくれ。ただ……俺達は本気だ。お前にとって卵ちゃんが大切なように……俺にとってもアサちゃんが大切だ。……俺にも譲れないものがある」
俺と淳之介の間に、距離ができた。少なくとも、今まで通りに友達が出来るとは思えない。
精
「……帰る時は普通に上を押せばいいのか?」
淳之介
「……ああ。ここに来たくなったら、いつでも待っているぞ」
その時が来ることはあってほしくない。そう願いながら俺は、学園へと戻って行った。
複雑な心境で学業を終わらせ、単独の警戒に移る。
緑髪のナードな男性
「この症状……何かしただろ!」
丸顔の麗らかな女性
「何もしてへんよ……?」
緑髪のナードな男性
「嘘だ!!」
丸顔の麗らかな女性
「くすっ♡テクくんの体がドスケベセックスの気持ちよさ覚えてもうて女の子見たらすぐハメたくなるだけやろ? 自分がドスケベなん、人のせいにしたらあかんよ♡」
学生服を着たカップルがHでEROなSMASHをしている。
精
「こちらω-99、警戒範囲に異常は無し。時刻のためそのまま帰宅する」
任務を終えて帰路に着く。自宅に入る前に振り返る。橘家の明かりは消えていた。時間も時間だ、寝ているのだろう。
精
「撃墜王は明日が最終日か……SSとして対峙するかもしれないな」
最終日の盛り上がりは異常と言っていい。ラストスパートの点数稼ぎに無料で提供される精力剤……動員されるSSやSHOから人権がなくなるほどだ。有力な人材にかかる負担は言うまでもない。俺もその一人だからだ。
精
「突如風邪ひいて休めないかな……いや、休んだら将来に響くか」
果たせなかったからこそ、引き下がれなくなった約束が胸に響く。あの世の卵が笑って過ごせるように、いや、笑って許してくれるように。
就寝準備を済ませ、ベッドに沈み溶ける。
精
「……もし卵が生きていたら、俺はどうしていただろうな」
あり得もしないことを考える。きっと淳之介君に卵を紹介して、卵もアサちゃんのことを知って、事情を抱える者同士仲良くなって、もしかしたら卵とアサちゃんでレズセックスをするかもしれない。そしたら、俺はためらいなく反交尾勢力になっただろう。
SSの皆よりも卵を選ぶだろう。かけがえのないものだから。
精
「かけがえのないもの、か……」
今の俺にとってかけがえのないものとは何だろう。
『金色の狂犬』としての立場?
SSの同志たち?
淳之介君との友情?
卵との約束?
いくら考えても答えは出なかった。
精
「守りたいものを守れる、そんな力があればな……」
あり得もしない夢物語を呟き、夢の世界に落ちる。
精
「本当にそれでいいのか?」
俺が問いかけて来る。夢の中か。
精
「お前が望むものは……本当にそれなのか?」
俺が望むもの……よく分からない。
精
「お前は本当に──-を望むのか?」
──-。なるほど。言われてみればそうかもしれない。
精
「精々うまくやることだな」
目が覚める。いい時刻だ。早く学園に行こう。そして……俺の選んだ道が正しいことを祈ろう。
ゲームだったらここで分岐の選択肢が出てきます。
あの四つの中から選んで、その後のルートが確定します。