抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
春巻パーティーの翌日、俺は淳之介君に反交尾勢力の基地に呼び出された。連絡通りにエレベーターのボタンを押すと、一階で止まらずそのまま基地へと直行した。
精
「これは分かるわけないな。お邪魔するわよー?」
淳之介
「来てくれてありがとう。人前では話せない話をしたいんだ。」
精
「俺は自分の意志でここに来たからな。話せることなら可能な限り話すよ。」
淳之介
「"琴寄文乃"のことについて何か知っていることはないか?」
想像以上にやばい話が出てきた。何で淳之介君が琴寄文乃を知っているんだ?とはいえ、質問を質問で返すと学校で習っていないので答える。
精
「…結構知っている。でも、話せることがない。」
SSでも機密情報クラスの話だ。おいそれと話していいものではない。たとえ友人相手であってもだ。その辺りは淳之介君も分かってくれたようで、踏み込んでは来なかった。
淳之介
「つまり…SSは琴寄文乃に関して重要な情報を持っているってことだな。やはり、生徒会室から情報をデータを抜くのがよさそうだな?」
精
「いまなんつった?」
流石に聞き逃せない事だった。聞いてみたところ、琴寄文乃の情報を手に入れるために生徒会室のPCから情報をぶっこ抜こうというのだ。
精
「半分犯罪だぜそれ?」
片桐
「完全に犯罪だと思うわ…アタシが言うのもアレだけど。」
精
「…流石に俺には出来ない。俺に足が付くのはともかく、そこから淳之介君達にすぐ繋がっちまう。」
麻沙音
「カードを貸すだけでも…」
精
「新しいカードに更新するんだ。配られるのが今週末、具体的には"ヌキ撃ち☆どぴゅどぴゅ体イク祭"の前日だ。」
簡単に言うとエロい競技がある体育祭だ。そのせいで今日から体イク祭まで、セックスの拒否が許される。体イク祭に向けて性欲を高めるためだ。淳之介君達が逃げやすくなるのはいいが、当日はやばいだろう。俺は大半の競技に出るし、協議に出ていない間も見回りがある。俺が淳之介君達をサポートできる範囲が限定的すぎる。
淳之介
「となると…作戦を行うのはNDT*1の最中がいいか。」
精
「な、なんだってー!?…冗談はさておき、理にはかなっているな。」
全生徒の動きはSSでも分からないし、生徒会室への出入りもそれなりにある、潜入するにはもってこいのタイミングだ。
精
「で、誰が行くんだ?悪いが俺はパスだ。俺が変な動きをしたらすぐ怪しまれちまう。」
淳之介君も駄目だ。郁子先輩に目を付けられている。何より隠密適性があるやつが行かないといけない。---いるな、俺や郁子先輩ですら察知できなかった奴が。
淳之介
「今回の作戦は絶対に失敗できない---畔、お前にやってもらいたい。」
畔
「わ、分かりました…僭越ながら、小生畔美岬…こ、この大役、お引き受けいたしますっ……!」
馬が合わなくとも適材適所に鶏鳴狗盗、俺は畔に協力することになった。
翌日、淳之介君から水着を持って基地に来てほしいと言われた。金色の長袖の上下の水着を持って基地に行った。そこには水着に着替えたメンバーがいた。
精
「こりゃ眼福ものだな。この基地に来てよかったことランキング1位だぜ。」
淳之介
「それならよかった。で、協力してほしいことがあるんだ。畔の事なんだが…」
まさか畔のダイエットに協力してほしいなんて言われるとは思っていなかった。しかし、その役に俺を抜擢したのは大正解だ。早速、畔にトレーニングを始めさせる。
精
「オラオラ動け動け!それで運動しているつもりか!こんな食に媚びた下品な体してるからだよ自己中野郎!」
畔
「うわーん!協力が本気すぎます!」
『金色の狂犬』直々の指導なんてSSからしたら、上の口からも下の口からも垂涎物だろう。
精
「だらしねぇ腹しやがって、どうせダイエットにもダラしねぇんだろ?」
岬
「ほ、本気です…!本気でやってるんです…!」
精
「よく言えたね畔♡クソデブがよ!」
ダイエットで大切なのは心だ。適切な食事や運動を続ける心がないとダイエットは続かない。だから俺は本気で畔を罵る。
淳之介
「…なあ、精。もうちょっと優しくやってやれないか?このままだと畔の心が」
精
「心が折れて飯が食えなくなったらダイエットは簡単だぞ!おらおら腹筋しろクソ力士がよ!!」
畔
「んひぃー!!」
精
「渡会先輩、その調子です!もう一回!そのもう一回が渡会先輩をさらに大人にします!」
渡会
「ふにゅるうううぅぅ……んんーっ……!」
淳之介
「それぞれに適したモチベーションの出させ方ってやつか…」
ぶっちゃけて言うと、畔に対しては本心から言ってるところが5割ぐらいある。ともかく、モチベーションというのであればゴールを見せるのも大切だろう。俺は文字通り一肌脱ぐことにした。
精
「ほら、ここまで鍛えられるんだよ。見て、確認して♡確認しろオラ!」
一同が唖然としていた。水着の上からでもある程度は見せていたが、実際に目の当たりにすると違うだろう。魅せるためではなく実戦を意識した筋肉は必要最低限の大きさで、しかしはち切れんばかりに詰まっている。その筋肉は漆黒の刺客をイメージさせる。
岬
「す、すごいです…」
精
「すごいですじゃねえよ、お前も頑張んだよ!」
俺の体を見てか畔が気合いを入れ直す。その調子だ。初日に頑張れない奴は何時になっても頑張れないからな。
トレーニングを終えた俺達は畔の案内で温泉にたどり着いた。男同士の裸の付き合いで話し合いたいこともあったので、反交尾勢力ガールズに先に入ってもらう。そして、淳之介君と一緒に湯船に浸かる。
精
「単刀直入に言おう。俺は体イク祭でSSを完全に裏切ることになる。」
淳之介
「…そうだよな。データを抜き取られることを事前に知っておきながら、見逃すどころか協力するんだもんな。」
淳之介君に言われて、自分がやろうとしていることの重大さを改めて認識する。俺はSSに世話になったどころではなく、救われたのだ。そんな存在を裏切る、今までの俺なら思い付きもしなかっただろう。だが、俺は淳之介君に、正確には淳之介君達にも救われたのだ。『金色の狂犬』関係なしに共と接してくれ、ドスケベ条例に悩む心境を打ち明け、協力した。そしてなお協力したいと思った。
精
「…もしこの件がきっかけでSSがクビになったら、NLNSに転がり込むとするか。」
淳之介
「その時は歓迎するよ。お前の強さはよーくわかっているからな。」
精
「でも、NLNSだとドスケベセックスできないんだよなあ…愛があれば何でもオッケーって訳でもないだろ?」
淳之介
「心の底から愛しているなら問題ない。精にはそういう人がいるのか?」
せっかくだからちょっと脳内で検索してみる。会長は論外だし、礼先輩は愛しているというよりは憧れだ。そうなると…
精
「…郁子先輩?」
淳之介
「女部田か…俺から見れば天敵だが、精からしてみたら頼れる上司だもんな…」
実力もあるし、体の相性もいい。アルファベットでもHのあとにIが来るから、体の関係から始まる愛も悪くないだろう。問題があるとすれば、そんな人を裏切ろうとしているところか。深く考えるのはやめだ。淳之介君にも聞いてみよう。
精
「そういうお前はどうなんだ、淳之介君?」
淳之介
「うーむ…もしかしたらの話だが…畔は俺のことが好きなのかもしれない。」
マジか。まあ、蓼食う虫も好き好きだ。否定するつもりはない。だが、明らかに言っておかなければいけないことがある。
精
「エンゲル係数ヤバくなるぞ?」
淳之介
「えんげる…?アサちゃんと畔で天使が2人いることになるからな。」
精
「エンジェル係数*2もあるけどな。俺が言っているのは家計の出費における食糧費の割合だ。」
淳之介
「…それは確かに悩ましいかもな…」
見てて気持ちいいを通り越してドン引きの食欲だ。与えたら与えただけ食べそうだ。とりあえずよく考えておけよと言って、風呂から出る。さて、学園に戻って色々準備しないと。