抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
体イク祭前日、畔が倒れたと淳之介君がSOSを送ってきたので急行した。何でも絶食していて、空腹で倒れたらしい。流石に俺の怒りが有頂天になった。
精
「無理痩せようとするな!急がば回れという言葉を知らねえのかよ!」
畔
「す、すみません…でも、どうしても痩せたくて」
精
「喋るな!!まんじりともせず食事しろ…ッ!」
俺は本当に畔のことが好きじゃない。何から何まで合わない。淳之介君と関係があるから構ってやっているだけだ。事と次第によっては、そのまま餓死しててもおかしくなかったんだぞ?とりあえず、憤りながら料理を提供する。豚肉と冷蔵庫の余り物野菜を炒め物を手早く提供する。
畔
「うまっ…5分で作ったとは思えない出来です…」
精
「このムチムチ力士が!!何がうまっだ!!」
片手間に作った卵とワカメの中華スープも提供する。ついでに、明日の流れも確認する。
精
「隙を見て俺のロッカーからカードを盗み出してそれをもとにカードを作る、そして情報を抜き取る際は俺が見回りの時を狙う…一応言っておくが、他のSSにバレた際はフォローできないぞ?」
淳之介
「それは俺達も承知の上だ。あくまで実行するのは俺達で、精は運の悪い被害者…これを崩す訳にはいかない。」
これは俺と淳之介君達の間で譲り合った結果だ。お互いの事情は良く知っている。だからこそ、あくまでSSと反交尾勢力という形で済ませることになった。
作戦の打ち合わせも終わり、風呂も頂いて、さあ寝ようとなったところで問題が起きた。畔を淳之介君の家に泊めることになったが、誰をどこで寝させるかだ。橘兄妹は畔と寝るのはお断りしたいらしい。俺もお断りしたい。
精
「んじゃあ、淳之介君は俺の家で寝るか?近いし問題ないだろ?おいしい朝飯も付けておくぜ?」
淳之介
「いいのか精?最後まで協力させて悪いな…」
精
「なーに、たった一人の友達だもの。ボーイズトークに花咲かせるから覚悟しろよ?」
ということで、淳之介君を連れて俺の家に行く。
精
「そういや俺の家に来るのは初めてか。折角だから卵に挨拶させてくれ。」
淳之介
「精の死んだ妹さんか…ああ、そうさせてくれ。」
淳之介君を卵の部屋に案内する。卵がいなくなってからも、俺はこの部屋はキレイにしている。俺の部屋の掃除よりも力を入れているほどだ。女の子の部屋にしては物が少なく、ベッドと勉強机とクローゼットがあるぐらいだ。その勉強机の上に卵の仏壇がある。
精
「紹介するぜ卵。俺の友達、橘淳之介君だ。反交尾勢力として、ドスケベ条例を壊そうと頑張っている。」
淳之介
「初めまして…淳之介です。いつもお兄さんの世話になっています。」
卵はニコリとほほ笑んでいる。いつも、いつまでも、もう変わらない笑顔だ。
精
「俺は卵の為にドスケベ条例を変えようとしている。…淳之介君は何で反交尾勢力になったんだ?」
淳之介
「…それはさすがに言えないな。ただ…過去に何かあった、とだけ言わせてもらう。」
俺はそれ以上追及する気はなかった。それ相応の事情がなければSSやSHO、ひいてはドスケベ条例に反抗しようとは思い至らないだろう。そんな事情はいくら友人とは言え、気軽に話せるものではないだろう。事実俺も、淳之介君に全てを打ち明けてはいない。
精
「やっぱ俺たちって似ているな。俺と淳之介君が仲良くできたから…卵とアサちゃんも仲良くできたかもな。」
淳之介
「…そうかもな。女の子同士、女の子が好きな者同士で気が合ったかもしれないな。」
最早叶わない夢だ。それでも、思わずにはいられない。もしも卵が生きていたら。橘兄妹と土口兄妹が出会ったら。卵は救われていたかもしれない。改めて言うが、叶わない夢だ。
精
「…祭り前に湿っぽい話は無しだ。男同士エロい話で盛り上がろうぜ?淳之介君ってどんな子がタイプだ?」
淳之介
「そうだなあ…清楚で一途で…」
男子らしいトークをしながら卵の部屋から布団を拝借し、俺の部屋に持ち運ぶ。
淳之介
「うおっ…甘い匂いがするな…バニラと…なんだ?」
精
「バニラとシナモンだ。甘い匂いで満たされながら眠ると。滅茶苦茶気持ちよく眠れるぜ?」
俺の部屋はいい意味で男子らしくない。卵の部屋と同じぐらいの物しかなく、甘い匂いで満ちている。性の匂いで満ち溢れるこの島では、別の匂いを嗅がないと鼻が鈍る。そういう意味合いもあって、俺の料理はこだわるところが多い。
精
「あんまりきつくて眠れないって言うなら換気するぜ?」
淳之介
「いや、たまにはこんな風に眠ってみるのも悪くないだろう。」
二人そろって布団に入る。健全な男子が眠るのには早すぎる。まだまだトークに花を咲かせる。
精
「そう言えば…何で俺が『金色の狂犬』になったか話したっけ?」
淳之介
「いや…SSに入った経緯は聞いたが、その話は聞いてないな。」
ということで俺は淳之介君に『金色の狂犬』になった経緯を話す。
SSでいい成績を出し、SHOのいい役職に就くために俺は強くなりたかった。だから、四番隊から一番隊に移った。実力者揃いの一番隊で、俺は揉んで揉まれまくった。元々素質はあったし、四番隊でかなりの実力をつけたが、それでも中々大変だった。
女部田
「礼ちゃんが素質は十分って言ってたけど…私にはまだまだ及ばないね。」
精
「くっそ…化け物かよ…!」
特に郁子先輩は越えなければいけない壁だった。一番隊のトップに勝てばこれ以上ない実力の証明になるからだ。そのために俺は、ひたすら鍛えた。学業と生活に必要な時間以外はすべて訓練につぎ込んだ。血を吐いても、骨が折れても、がむしゃらに鍛えた。そのせいか、俺の周りから人が離れていった。苦しんで強くなるにしても、その果てはすでに死んでいない妹のためなんだから。
女部田
「精くんは…頑張り屋さんなんだね。」
精
「俺は…妹の為に強くならなきゃいけないんです…!」
そんな中でも郁子先輩は俺の訓練に嫌な顔一つせず付き合ってくれた。来る日も来る日も手合わせとトレーニングに付き合ってもらって、もちろんドスケベセックスもして…SSで俺を育ててくれたのは郁子先輩だった。郁子先輩には、俺に対して思うところがあったのだろう。だからこそ一切手を抜かず、本気でぶつかり合った。そして---
精
「っだらあ!」
女部田
「くっ…!」
精
「ずあっ!」
女部田
「きゃっ…!?」
俺は郁子先輩に勝った。俺の持っているすべてを出し切って、ついに郁子先輩を超えたんだ。その時祝福してくれたのは…BIG3と一部のSSだけだった。大半の奴らは、俺を恐れていた。突出した個は組織を乱す、それを身をもって実感したよ。俺はSSや学園をどうこうしようってつもりは全くなかった。でも、周りの人間は勝手に俺が何か企んでいると恐れた。だから、俺はそれを利用してやろうと思った。
精
「俺は…『金色の狂犬』を名乗ります。」
それこそが『金色の狂犬』で、この学園での俺の地位だった。オーダーメイドの金色ラインを入れた制服に身を包み、『プリンセスウィーク』と『ブラッドムーン』の二丁拳銃と愛刀『ティラミス』を携え、他の物とは一線を画す存在になった。
精
「いかなる事情があれ、受け入れられないものは受け入れられない…人間のヤなところだな。」
淳之介
「お前も…そうだったんだな。」
淳之介君も周りから受け入れてもらえなかった時期があったという。何でも性器がデカすぎて気味悪がられたというものだ。子供とは無邪気で残酷なものだ。
精
「俺が淳之介君のことをもっと早く知っていたら…いや、それよりも卵のことを優先したかもしれねえな。」
淳之介
「それでいいさ。…このことを話したのはアサちゃん以外だと精が初めてだな。」
精
「おやおや、男の初めてを貰う日が来るとはね。この『金色の狂犬』の目をもってしても読めなかったぜ。」
淳之介
「お前は目より鼻の方がいいんじゃないのか?」
お互いに違いないなと笑い、眠りにつく。明日は近い。でも、夜明けはまだまだ遠そうだ。