※この作品はR-18です。

抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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2-16 段ボール・ボックスの人形劇場

 俺たちは郁子先輩と合流し、今日の成果を報告する。

 

 精

「おそらくですが会長は手嶋の洗脳を受けていません。」

 

 理由は単純で、もしあの人が本気で俺達を殺そうとすればいくらでもできるのに、見逃したからだ。殺しをも厭わぬ極道の洗脳下であればいかようにも殺せたはずだ。なのに、武器を捕縛しただけで、それすらも解いた。

 

 女部田

「…もしかしたら、他にも洗脳されてないSSがいるかも…」

 精

「あり得ますね。ただ、あり得る可能性ぐらいに留めておきましょう。」

 淳之介

「…来た。」

 畔

「お待たせしましたー!」

 

 畔がバスに乗ってやってきた。畔にとっては乗れるものなら何でも操縦できるらしい。今の畔と淳之介君に道理を求めるのは無駄だから考えるのは止めた。連日洗脳者を開放していく中、全面的に畔がプリントされた、オブラートに包んで言って狂ったデザインのマジカルミラー号がNLNSにやってきた。

 

 精

「すっげぇひどいデザインだな!」

 淳之介

「そういうな。ディルド砲に個室に自動操縦の自転車が飛び出すギミックに砲撃に耐えられる装甲…完璧で究極で最強で無敵の愛風改だぞ?」

 麻沙音

「いやもうマジキチミラー号だよこれ……」

 

 そのマジキチミラー号に乗って道を進んでいく中だった。

 

 淳之介

「文乃!!」

 畔

「文乃ちゃん!!」

 

 居るはずのない人物を叫ぶ二人の目線の先には--淡色の髪に和装を身に纏ったこの世に二人といないであろう--琴寄文乃がいた。その後ろでは仙波姉さんが琴寄に銃を向けていた。

 

 淳之介

「危っ…」

 精

「遅い。」

 

 いち早く飛び出していた俺は仙波姉さんの銃を撃ち飛ばす。その隙に淳之介が仙波姉さんの洗脳を解除する。郁子先輩が琴寄に駆け寄って寄り添う。

 

 女部田

「ボロボロだけど大きな怪我はなさそうだね…大丈夫?」

 琴寄

「あなた…は…」

 淳之介

「心配ない、みんな味方だ。」

 

 ゾロソロとNLNSのメンバーが集まる。琴寄から事情を聞きたいが、今は保護が先だ。

 

 琴寄

「伝言…です…父…からの…」

 

 琴寄から渡された手紙をトラックの中で読む。

 

『--君たちのことは聞いている。反交尾勢力…君たちは島の条例を変えるべき戦い続けてきた。さぞ私がに気だろう。それを承知で頼みがある。どうか文乃を護ってほしい。文乃を…我が娘を護り抜いてくれるなら、私はいかなる要求も受け入れる。』

 

 娘を思う父らしい行動だと褒めてやりたいが、そもそもお前が引き起こした問題だろと思わずにはいられなかった。とはいえ、ドスケベ条例には感謝しているところもある。琴寄文乃を護るべく淳之介君の家で準備をする。

 

 

 麻沙音

「こちらNullベース、感度良好。もうちょっといいものに座りたかったけど…状況が状況だからね。」

 

 段ボールの上に座っているアサちゃんが連絡を取っている。環境が変わってもアサちゃんは冷静に行動をしている。

 

 淳之介

「アサちゃん!家にヤクザが!」

 麻沙音

「え?」

 

 なんて芝居打っているが、アサちゃんは淳之介の家にはいない。手嶋が狙ってくるであろうことを想定してNLNS基地にいる。

 

 麻沙音

「おっと…」

 

 コロンとアサちゃんが何かを落とす音が聞こえる。それと同時に何者かの足音が聞こえる。アサちゃんが席を立った瞬間--

 

 精

「アサちゃん!伏せて!」

 

 俺はアサちゃんが座っていた段ボール箱を跳ね除けて立ち上がる。

 

 ヤクザ達

「「「なっ!?」」」

 

 勢いそのままに二丁拳銃でヤクザ達の顔面を撃ち抜く。バタバタとヤクザ達が倒れていく。

 

 精

「名付けて『シュレディンガーの狂犬』作戦…お前の情報源のクソジジイは碌な奴じゃないんだぜ、手嶋ぁ?」

 手嶋

「て、てめぇは『金色の狂犬』…!?なんでここにいるんだ…!?」

 

 あえて残した手嶋は歯ぎしりしながら質問をしてきた。

 

 精

「琴寄の護衛には郁子先輩がついている。そこに俺もいたら過剰戦力だし、何より俺は最悪の事態を想定していた…『お前が何らかの方法でこの秘密基地の情報を知っている』事態をな。だからアサちゃんの護衛に回ったわけだ。ただ、NLNSのパトロンのクソジジイが護衛のことを喋ったらまずい。姿を隠して護衛をしていたら…何も知らない馬鹿がやってきたわけだ。」

 手嶋

「ごちゃごちゃうるせえんだよ!!!」

 

 手嶋が俺に向かって銃を構える。俺は素早く手元を撃って銃を落とさせる。

 

 精

「言っておくが、俺は超エリートSSだ。貴様のような下級ヤクザ相手が遊んでもらえることを感謝しろよ。下手した三下手下の手嶋ぁ?」

 手嶋

「確かに頭の出来は違いそうだなあ…!悪い意味でなあ!」

 

 手嶋が倒れた手下を盾にして突進してくる。

 

 精

「見せてやろう…超エリートSSの圧倒的パワーを!」

 手嶋

「甘いんだよ!」

 

 俺は盾にした手下ごと手嶋を蹴り飛ばす。寸前で手嶋は部下を離しており、飛び越えてきた。俺は手嶋に銃を向け--

 

 精

「弾が出なくなった銃など必要ない…後で拾うがな。」

 

 --そのまま投げた。手嶋が両手で銃を防ぐ。そのまま俺は拳を叩き込む。

 

 精

「お前にはどうやっても越えられない壁がある…それは愛だ。」

 手嶋

「はっ、こんないかれた島で愛をどうこう言えるのか!?」

 精

「俺も最初は愛なんてただの感情の一つとしか思っていなかったさ…」

 手嶋

「ああそうさ!所詮くだらねえ感情の一つさ!」

 

 俺の連撃を捌いた手嶋が俺の顔面に拳を叩き込む。俺はそれを額で受け止める。ベキィと手嶋の手の骨が折れる。

 

 精

「だが、違った…愛は不可能を可能にし、時には人智を超えたことをも成し遂げれる…」

 手嶋

「ば、バカな…!?俺は全力で打ち込んだんだぞ…!?」

 

 手嶋が一瞬硬直する。その隙を見逃さず、手嶋の懐に潜り込む。

 

 精

「お前は自分のためだけに人を使っていた…愛もなく、ただ自分の都合のいいように、人を人として扱わずに…!」

 

 そのまま一息で手嶋の全身に打撃の豪雨を当てる。拳と蹴りが入り混じり、防ぐ腕すら跳ねのけ、反撃の余地の一切ない無慈悲な連撃だ。

 

 精

「だりゃりゃりゃっ!あだだだだっ!でぇあっ!!へっ……ぬぅんっ!!」

 手嶋

「ぐっ…!何がてめぇをここまで…!?」

 精

「手前は俺の郁子先輩を深く傷つけた!あの雨の中見た郁子先輩を俺は一生忘れない!二度とあんな顔をさせる訳にはいかないんだ!」

 

 あの時、手嶋は俺の逆鱗に触れた。渾身の憤怒を腹部に入れる。ゴリッとめり込む。想像をはるかに超える強烈な一撃に手嶋はうずくまった。

 

 手嶋

「な、なぜだ…!?崋山心眼流で鍛えたんだぞ…!?」

 精

「…まぁ、ここまで言ったところで短小野郎の貴様にはわかるまい…」

 

 俺は再び強く拳を握る。

 

 精

「愛する者のために戦うってことがなあ!!!」

 

 手嶋の顔面を思い切り殴り抜ける。メガネが砕け散り、鼻の骨が折れる感覚が伝わってきた。手嶋が吹っ飛び、壁に叩きつけられる。

 

 手嶋

「て…手前は殺してやる…!」

 

 手嶋は銃を拾い上げ、俺に向けた。それと同時に俺は愛刀ティラミスに手をかける。

 

 精

「お待ちになっても据え膳の花--」

 手嶋

「しねえええ!!!」

 

 手嶋の発砲に合わせてティラミスを振るう。キィンという金属音と共に実弾が落ちる。

 

 精

「さァ、鯉口切っていざ睦言を交わし--」

 手嶋

「だあああ!!!」

 

 連続して放たれる弾丸を全て叩き落す。手嶋は空しく弾の出ない銃を撃ち続けていた。

 

 精

「交わり乱れて狂いましょう?」

 手嶋

「来るんじゃねえこの化け物があああ!!!」

 

 一気に近づき、一太刀振り上げ、手嶋の顎を砕く。そのまま手嶋は意識を失い倒れた。それを確認した俺はティラミスを鞘に納める。

 

 精

「ティラミスの意味は『私を上に引っ張って』、転じて『私を元気づけて』だ。郁子先輩から渡された以上、この刀は郁子先輩のために使う。…ちなみに、昔は夜遊び前の強壮剤として振舞われていたそうだ。」

 

 

 倒れた手嶋含むヤクザ一同を着ていたスーツで拘束し、事態を収束させる。

 

 精

「SSで習ってよかったぜ。もう、大丈夫だよアサちゃん。出てきていいよ。」

 麻沙音

「兄も大概ですけど…土口さんも別方向で人間を辞めてますね…」

 

 俺が入っていた段ボールからちらっとアサちゃんが顔を覗かせる。基地では箱に入って眠ることが多いアサちゃんには良く似合っているかわいい姿だった。俺は淳之介君に連絡を入れる。

 

 精

「こちらNullベース、襲撃の制圧完了だ。そちらはどうだ?」

 淳之介

「こっちも文乃の護衛成功だ。お前の言っていた通り、一部のSSが協力してくれた。」

 

 こちらも俺の想像通りで、会長や礼先輩を含む一部のSSが青藍島のヤクザ掃討並びに、仁浦県知事奪還を企んでいた。手嶋が基地を襲撃したおかげでSHO本部の戦力も手薄になり、県知事も無事奪還できたようだ。

 

 精

「俺の郁子先輩も頑張ってくれたからな。…その郁子先輩は?」

 淳之介

「TOP3の再会に感動しているよ。変わるか?」

 精

「んー…話せそうになったら変わってくれ。急ぎで話すことは、『愛してる』しかないからな。」

 女部田

「大丈夫だよ。あたしも精くんのこと愛しているから♪」

 冷泉院

「ふふっ、見せつけてくれますね。これからも郁子のことをよろしくお願いします。」

 糺川

「…………色々と言いたいことはあるが……まずはおめでとうだな。お似合いの二人だと思うぞ。」

 

 通話越しでも楽しそうに笑っている皆の光景が思い浮かぶ。今度こそ俺は守れたんだと実感する。




次回、このルートの最終回です。
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