抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
3-01 会長少女レイゼイイン
冷泉院
「--以上を持ちまして、"エースは誰だ!?コンドーム撃墜王選手権"を終了と致します。皆さん、本当にお疲れさまでした。」
撃墜王イベント終了の挨拶をする。体育館は割れんばかりの拍手と歓声に包まれる。会長の付き添いとして横に立つ俺は、あくびを噛み殺しながら会長の話を聞き流す。コイツの話はまともに聞いてはいけない。どんな話であれ聞いていくうちにコイツが正しいと思い、コイツに従い、誰も逆らおうとしなくなっていく。だから俺は業務連絡以外は聞き流すことに--
冷泉院
「折角ですから『金色の狂犬』からも言葉を頂きましょうか。土口さん、どうぞ。」
会長が台から離れ、俺に譲る。何も考えていなかった俺はとりあえず立ってみる。観衆を目前にしてもなお、何も思い浮かばない。とりあえずアドリブで行くか。
精
「あー、まずはお疲れさまでした。まあ、俺はSSとして見回っていたからあんまり参加できなかったですケード?今度は俺も遠慮なく参加できるイベントを考えたいです。それでは、一同解散!」
俺の解散宣言で生徒たちはぞろぞろと体育館を出ていく。横目で会長を見ると、誰かを見て微笑んでいるようだった。その視線の先には--淳之介君がいた。そういえば以前もこんなことがあったような気がする。
放課後の訓練前に、俺は会長に聞きたいことがあったから生徒会室に入る。そこでは相変わらず会長が安寧に座していた。
精
「会長、俺にも勲章なんかください。松葉崩し何とかってやつとかがいいです。あれでおはじきやりたいんです。」
冷泉院
「今回はあまり活躍していませんでしたからお預けです。それに、以前授与したはずですよ?」
精
「そうでしたっけ?まあ、どうだっていいや。そんなことよりも聞きたいことがあるんですけど。」
会長がカップにお湯を注ぐ。ココアの香りが広がる。慣れた手つきでインスタントココアを俺の前に持ってくる。それを一口啜って話を続ける。
精
「淳之介君のことが好きなんですか?」
冷泉院
「特別好意を持っているというわけではありませんが…なぜそのようにお考えになるのですか?」
青春だったらドギマギするような質問に会長は涼しい顔一つ崩さず答え、逆に俺に質問してきた。もう一口ココアを啜って答える。
精
「俺が話している時、淳之介君を見ていましたからね。もし好きだったとしたら…あなたの問題点に関するプレゼンをしましたよ。」
冷泉院
「まあひどい…私だって生徒会長を務めているんですよ?」
精
「生徒会長
ココアを一気に飲み干す。インスタントも悪くない。タイパとかコスパを考えたらこちらの方がいいのかもしれない。もっとも、手間暇かけて逸品を作ることの楽しさは味わえなくなるが。
精
「ご馳走様でした。結構なお点前で。」
冷泉院
「ふふ、お口にあったようで何よりです。」
精
「あなたの練ったココアよりもおいしかったですよ?」
冷泉院
「企業の努力は素晴らしいですね…私もまだまだです。」
会長はくつくつと笑う。どこまで本気で受け止めているのか分からない。考えたってしょうがないので俺は訓練へと向かった。
翌日の昼休み、購買部前でまごついてる橘兄妹を見つけた。
精
「BOUBOU!パココじゃないよ土口精だよ!」
淳之介
「ああ、精か…先日はメンバーが世話になったな。感謝する。」
麻沙音
「私からもありがとうございます。」
精
「BOUBOU♪」
淳之介
「ボウボウ言ってりゃ良いと思うなよ?お前のキャラで言うと可愛くないぞ?」
ちょっと傷ついたがなんとなく状況が分かった。この混雑でパンが買えないのだろう。
精
「ちょっと待ってな…ん゛ん゛!パン買わせろ!」
金剛の如く野太い声を出し周りに存在を知らしめる。俺に気付いた一般生徒たちは黙り、俺達に道を譲った。
精
「つー訳で、パン買っていこうぜ。俺のおすすめはひぃんおほぉカレーパンパンパンパンだ。いろんなスパイスが入っていてムクリ百倍の天然媚薬なんだ。ほかにも生あぁんパンパンパンパンと本番食パンパンパンパンもある。パンパンパンパンセットで安くなるからどうだ?」
麻沙音
「じゃあ、それと『射精管理サキュバスが仕上げた先っぽから溢れちゃってるチーズパン』で…」
淳之介
「ひどい名前のパンしかないのか…?普通のコッペパンとジャムパンとコロッケパンがあるじゃないか。俺はそれにするぞ。」
俺もいくつかのパイを買う。購買部で性のパンパン祭りを終え、早速食べ歩きをする。
精
「やっぱりクリームパイに限るよなあ…他のパイもいいけど。」
麻沙音
「兄ぃ、耳食べてぇ…耳がおいしくないよぉ…」
淳之介
「コッペパン食べてるときに耳を押し付けてくるなよ…!」
精
「その食パンは耳舐め訓練用に耳が硬く作られてるんだ。じゅるじゅるふやかしながら食べるのが通の食べ方だぜ。」
食べ方を教えるも淳之介君と麻沙音の口論はヒートアップしていき、俺にパンを預けてまで喧嘩を始めてしまった。目の前でやられる兄妹喧嘩は微笑ましくもあり、でも--
糺川
「こらっ、貴様らッ!!こんなところで何をやっている!!なぜ廊下の真ん中で殴り合いなどしているのだ?それに精、お前もただ眺めていないで止めるべきだ。」
礼先輩の声で我に返る。確かに止めるべきではあるが、止めたら多分性産行為をしろと言われるだろう。
精
「まあまあ、兄妹喧嘩ぐらいさせてあげましょうよ。…できなくなったらすごく寂しいですから。」
その言葉に三人の動きが止まる。空気も一瞬にして凍った。
糺川
「…………考えてみればお前だったら簡単に止められるか。すまない、私がでしゃばるところではなかったな…」
淳之介
「…すまない、お前の目の前ではやるべきじゃなかったな…」
麻沙音
「ごめんなさい…」
流石にやりすぎたか。ここは切り抜けるために俺が一芝居打つか。
精
「仲良く喧嘩すればいいんだ。さ、飯食って3Pしようぜ!折角だし礼先輩も--」
冷泉院
「でしたら私も混ぜていただけませんか?」
また空気が変わる。その一言は圧倒的な存在感を放ち、この場にいる全員の視線を強制的に惹きつける。人外の存在のようで、不気味で度し難く、なのに従うしかない。
精
「あなたとはしたくありませんね。背と胸を大きくしてから出直してきてください。」
糺川
「おい精、いくら何でも無礼が過ぎる--」
冷泉院
「礼、人の好みはそれぞれです。この学園には彼のお気に入りがいるのでしょうからそれを尊重しましょう?」
糺川
「はっ……申し訳ございません、桐香様。ですが、精の態度は指導したほうがよろしいかと……」
組織の上下関係上、礼先輩の言っていることは正しい。だが、だからこそ、俺は会長への態度を改めるつもりはない。コイツに従うということはコイツに首輪をかけられるということ。俺は俺でありたい。気に入らない奴の指示なんて聞きたくないのだ。
冷泉院
「はじめまして。橘さんのお兄さん?」
淳之介
「あ、こちらこそ……橘淳之介、二年です……」
アサちゃんと会長は同じクラスで知り合いらしいが、淳之介は初めて顔を合わせたらしい。
冷泉院
「SSも最近はカリカリしていて…なんでも最近、ドスケベ条例を護らない反交尾勢力成集団があるそうで--」
精
「『金色の狂犬』である俺や一年にして昇り詰めた会長ですら手を焼く存在でな。」
俺は分かりやすく会長の方を見ながら嫌味をこぼす。礼先輩が滅茶苦茶何か言いたそうな目で俺を睨んでいる。そこで、チャイムが鳴る。
冷泉院
「では行きましょうか。皆さんも、はやく教室に戻りましょう。楽しいドスケベセックスは、放課後のお楽しみです。」
相変わらず何を考えているのか分からない翡翠の瞳は淳之介君を見ていた。
放課後、俺は礼先輩から説教を喰らった。
糺川
「精、桐香様は生徒会長だ。SSの頂点に立つお方で実力も権威もある。お前の実力や活躍は認めるが、桐香様への態度はしっかりするべきだ。」
精
「…アレが俺なりの会長への忠誠なんですよ。」
糺川
「……何だと?」
従順に付き従うのは誰でも簡単にできる。でも、それだと会長が間違っていた時に止めるSSがいなくなる。だから俺は反抗的な態度を以って、会長自身に本当に正しいかと問いかけ続けている。と、それらしいことを言ったら礼先輩は少し困ったような顔をしてため息をついた。
糺川
「……そういう考えがあるなら周りの人間にも言ってくれ。浅はかな奴が乗じて問題を起こすと厄介だ。」
精
「もっと大人数の時は普通の態度を取りますよ。あくまで俺なりの会長とのコミュニケーションですから。」
実際の所はただただ『気に入らない』だけだったりする。会長もそのことを知っているから飄々としているのだ。だが、会長はそれを誰にも言わない。理由は『俺ぐらいだったら会長一人で抑えられる』からだ。その辺りが本当に『気に入らない』。
新ルート開幕です。今回は誰ルートでしょうか?