抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
生徒会室には相変わらず会長が座って事務作業をしていた。
冷泉院
「あら土口さん、さっきぶりですね。」
精
「サボり中では報告できないことをしに来まして。『琴寄文乃』の情報です。」
冷泉院
「まあ…何か有力な情報が手に入ったのですか?」
会長が興味津々に聞いてきた。ちょっと嬉しかった。この度差し出されたのはアイスティーだった。キリッと冷たく、程よい甘さと香りが口に広がる。キーンとする眉間をわざとらしく抑え、答える。
精
「惜しいですね。『この島にはいなかった』という情報を手に入れました。」
あの後、淳之介君の家で戸籍情報をざっと見てみた。見落としがないと言い切れはしないが、『琴寄文乃』という人物はいなかった。
精
「健康診断ついでにサーバールームに失礼しましてね。ちょっと戸籍情報を見てきました。」
冷泉院
「あらあら…ちょっと強引な方法ですね。それだけ熱心に探しているという証拠でしょうか?」
精
「俺への処罰はともかく、まともな手段では琴寄文乃は見つからないかと思われます。」
紅茶をグイッと飲み干した。前座はこれぐらいにしよう。俺は深呼吸を一つして会長の方を向いた。
精
「会長、先ほどの淳之介君との会話に関してちょっと言いたいことがあります。よろしいでしょうか?」
冷泉院
「ええ、良いですよ。土口さんとの議論はとても生産的なもので、勉強になります。」
恐らく本心からそう言っているのだろう。会長はSSのトップに立ち、ほとんどの人間が従っている。その中でただ一人反抗しながら従う存在で、まともに話し合えるのだろう。
精
「セックスがコミュニケーションの1つなのは認めます。ただ、セックスをすれば人を理解できるというの過言だとおもいます。」
冷泉院
「あら…それはなぜでしょうか?」
精
「セックスで得られる情報は限られているからです。どんな体位で、どんなペースで、どんな場所で…その人間の性的嗜好の理解はできます。でも、過去、感情、経験、学力…性的嗜好以上にその人間を理解するのに必要な情報は山ほどあります。」
セックスでなければしれない情報もあるだろう。だが、セックスで知られる情報なんてたかが知れている。
精
「セックスはあくまで生殖行為やお互いの愛を確かめる行為であって人を知るための行為ではない…これが俺の意見です。」
会長は瞳を閉じてうんうんと頷いている。
冷泉院
「貴重なご意見ありがとうございます。やはり価値観の違いというものは素晴らしいですね。」
精
「ちなみに淳之介君も同じ考えです。淳之介君を知りたいならそういう方面からアプローチするのはおすすめしませんよ。」
これで淳之介君との接触を少しでも減らせられたら御の字だ。もっとも、コイツがそれぐらいで諦めるような単純な存在であればの話だが。
冷泉院
「では今度は私から質問をしてもよろしいでしょうか?」
精
「もちろんですよ。ちなみに俺の性癖は陰毛と足裏です。」
冷泉院
「土口さんにとって先輩はどんな存在でしょうか?」
シンプルな質問だった。故に慎重に答える必要がある。必要以上に語る必要はない。だからシンプルに答える。
精
「……友達です。」
--何故だろう。何で少し言い淀んだのだろう。似たような境遇を持ち、条例に思うところがあり、互いの素性を知ったうえで、友達で居続けることを選んだ。普通ではないにせよ、間違いなく友達である筈なのに。
冷泉院
「なるほど……友達とは煩雑なものなのですね。私にはそういった人がいないのでわかりませんでした。」
会長はわざとらしく笑う。そんなわけない。友達はもっと単純でさっぱりした関係であるべきだ。たまたま複雑な事情が重なり合っただけで--
俺の通信機に連絡が入る。俺は即座に取り、応答する。
精
「こちらω-99。…反交尾勢力が出て花丸姉妹からの連絡がなくなったから確認してほしい?分かった場所を教えてくれ。…分かった急行する。」
俺は会長に一礼して生徒会室を後にする。向かった裏山では花丸姉妹が模範的な事後状態にあった。意識が朦朧としているが目立った外傷もなく、頭をぶつけた跡もない。激しいセックスをしただけだろう。
精
「…淳之介君、なかなかやるじゃないか。」
流石に隣の席の人間の匂いぐらい判別できる。ナニをどうシたのかは分からないが、二人を相手にしてここまでの状態にできるのは中々だし--
精
「--こちらω-99、花丸姉妹二人を発見した。多少の不適当な発言があるがそれ以外は問題ない。安全に運ぶために増援を要請する。」
糺川
「了解した。そろそろ現場に到着する。周囲の警戒を怠るなよ。」
通信を切り、腰を下ろして一息つく。
精
「……ちょっと前まではただの友達だったんだけどなあ……」
礼先輩と一緒に花丸姉妹を送り届け、事の顛末を会長に報告する。
糺川
「----以上が、この一週間手入手した反交尾勢力の逃走ルートです。」
精
「それと正体不明の強力な武装を所有しています。花丸姉妹を失神並びに記憶混濁に陥れるほどです。」
俺と礼先輩の報告を会長はふむふむと咀嚼している。会長が下した判決は二人への四十八章の授与と希望部隊への転属で、これと言った処罰はなかった。
冷泉院
「そういえば、今週は"アレ"があったわね?」
糺川
「アレですか……?ええ確かにありますが……それが?」
精
「それを利用して反交尾勢力に攻撃するのでしょう。仙波姉さんに連絡しますか?」
冷泉院
「ふふっ、話が早くて助かります。礼からも連絡をお願いします。」
糺川
「承知しました。それでは、失礼いたします。桐香様。」
精
「失礼します。会長。」
俺と礼先輩は生徒会室を後にする。
精
「あ゛ー…堅っ苦しいったらありゃしない…礼先輩がいなかったらもっと悪態つけたのに…」
糺川
「お前なあ…私の意見を聞いて態度を改めたことは褒めるが、それを私の前で堂々言うのはよくないぞ。」
礼先輩から肩に手を置かれ窘められる。
精
「アレでもうちょっと生活が自立していればいいんですけどね。そうすれば俺も手放しで従えるんですけど。」
糺川
「桐香様はそういう人なんだ。…何だったか、サーヴァント症候群…?ドーパント症候群…?」
精
「そんな怪人みたいな名前じゃないですよ。サヴァン症候群*1です。」
だから、会長一人だとまともに日常生活を送れないのは仕方がないことなのだ。俺がどうこうしたって、誰がどうこうしたって解決しない。嗅ぐ夜姫のムリムリ難題の一つに加えたっておかしくないほどだ。
精
「--だからこそ気に入らないし、従うんですよ。会長は生命体としては致命的な難点があるのに、その難点を補って余りある実力がありますから。」
糺川
「桐香様を支えるということはSSを支えるということだ。もし桐香様がいなくなることがあるとすればそれはSSの崩壊につながるだろう。それはお前も分かっているだろう、精?」
精
「分かっていますよ。分かった上で気に入らないんですよ。ほかにも気に入らない点なんていくらでもありますけど、それを理由に従わないなんて子供じみたことはしませんから。」
糺川
「お前は素直すぎるよ……SSにいてくれてよかった。敵対したらこの上なく厄介だろうからな。」
精
「反交尾勢力にいたら間違いなく人員は俺に割かれるでしょうね。いやー、有能すぎるのもこまるなあ…」
礼先輩の(多分)誉め言葉を頂いて上機嫌になる。ウキウキの気分で家に帰りシャワーを浴びて布団に潜り込む。そろそろ町内奉仕ボランティアがやってくる。青藍島の美女は抱き着くしたから、本島からやってくる美女を見定めなければ。できれば下の毛をバッサバサに生やした金髪ギャルビッチの子が来てほしいなあ。それで足コキしてもらいながら--