※この作品はR-18です。

抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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3-11 万姦前戯要る?

 最終日前日、俺は布団の上で先日の三者面談を思い出す。会長が淳之介君の肉棒で青藍島を支配できると言い、俺がそれを可能だと背中を押した三者面談だ。その後二人残って会長はこんな言葉をこぼした。

 

 冷泉院

「私が初めてほしいと思ったのが──あの先輩なんです」

 

 生まれが貧乏だから何かを欲しいとは思わず、生まれつき器用だったから欲しいものは手に入れられた、冷泉院桐香という女が初めてほしいと思ったもの。それが橘淳之介という存在だという。

 

 精

「奇遇ですね。……いや、違うか。俺は淳之介君のことが──」

 

 似た境遇でありながら敵対し、お互いを理解しながらも手を取り合わなかった、土口精という男が初めて築き上げた関係。それが橘淳之介という存在だ。

 

 冷泉院

「私は、先輩がほしい。そして私がこれほどまでに欲したものを、周囲にも誤解なく理解してほしい」

 

 不気味で度し難く人ですらないと思った存在の本性は──子供のように無邪気なものだった。その人を知れば少しでも歩み寄れる。俺が卵のためにしてきたことを、俺は冷泉院桐香という存在に対して無意識に否定していた。

 

 精

「俺は、淳之介君のことを良く知りました。友達として、敵として。だからこそ──」

 

 対し淳之介君の本性は──最初から分かっていた通りに良くも悪くも人間らしく、真っ当なものだった。その行動はともかく、動機は俺と同じだった。だからこそ敵対しながらもうまくやっていけたのだろう。

 

 冷泉院

「この作戦が終わったら土口さんはどうするつもりですか?」

 精

「俺の目標は最初から変わりません。反交尾勢力を捕らえ、その業績を基にSHO上層部に成り上り、条例を変えます」

 

 俺は自分の本性を知った。もう迷わない。友情を理由に甘えるのは止めだ。俺は『金色の狂犬』だ。

 

 精

「でもその前に──決着をつけます」

 

 

 最終日はSSから人権がなくなるほど忙しい。

 

 精

「A級精力剤はまだまだあります! 押さないでください! 困ります!! お客様!! 困ります!! あーっ!! お客様!! あーっ!! 困ーっ!! お客困ーっ!! 困り様!! あーっ!! お客様!!」

 

 風紀委員として言うが、このイベントはマンパワー不足が否めない。秩序を保たせるための人数が圧倒的に足りない。突出した個の力があっても、それを満遍なく配置しなければ意味がない。この地獄は放課後になるとこれ以上に忙しくなるだろう。

 

 精

「性欲の奴隷が! 色欲の傀儡が! 有象無象がよぉ……これ以上並んだ者から殺していく」

 蘭

「と、土口さん!? 刀に手をかけないでください!」

 

 俺の殺気を以ってもこの熱気は収まらない。マジで終わってやがる。おかしくなっちまうよ……授業なんか適当に流す。授業なんかやってられるか、授業中は休み時間だ。じゃなきゃ放課後に亡か故になっちまう。しかし、6限から放課後になるから授業休み時間も少ない。

 

 精

「もう、どうなってもいいや。いやどうなってもよくないだろ」

 蘭

「ああっ、土口さんがおかしくなっている……ここが一番の頑張りどころですよ!」

 精

「頑張る……?」

 蘭

「ああ、もう放課後ですから! 行きますよ!」

 

 放課後……? そうだ。行かなければ。俺は花丸委員長の手を振り払い、エレベーターに向かう。NLNSの秘密基地への扉が開き、ただ一言放った。

 

 精

「頑張れよ、淳之介君。俺が君に送れるたった一つの言葉だ」

 淳之介

「精……ああ、たとえお前と刃を交えることになったとしても──俺はドスケベ条例をぶっ壊す」

 

 どうやら淳之介君は俺や会長を利用するつもりは無い様だ。それを聞いて俺は──安(・)心(・)し(・)た(・)。これで心置きなく決着をつけれる。俺はエレベーターの扉を閉じ昇っていく。

 

 精

『宣戦布告は済ませました』

 冷泉院

『ご武運を祈ります』

 

 そのメッセージだけで会長がどんな顔をしているのかがたやすく想像できる。静かに目を閉じ、かすかに笑っているだろう。扉が開く。

 

 冷泉院

「ふふっ。直接言いに来ちゃいました」

 

 思い描いた通りの会長がそこにいた。俺は少し笑って跪いた。

 

 精

「想像通りの顔でよかったです。少しはあなたを理解できたと言いうことでしょうか」

 冷泉院

「ご武運を祈ります」

 精

「ありがとうございます──桐(・)香(・)様(・)」

 

 俺は桐香様の手の甲にキスをして駆け出した。これで少しは桐香様を驚かすことができただろうか。考えたって仕方がない。早く合流しないと。

 

 

 森の中の一斉掃射部隊に入り銃を構える。

 

 精

『こちらω-99。いつでもOKです』

 糺川

『よし……来た! 我らが版図(はんと)*1の逆賊どもよ。我が君主の名の下に、落下繽紛と散華せよ!』

 

 礼先輩の指示ので銃の引き金に指をかける。

 

 精

「糺す狂犬の下に命ず、三途の川にて一抹の礼賛を捨てよ! そして蒼碧(そうへき)の獄底(タルタロス)にて己の咎を知るがいい!」

 糺川

『──一斉掃射、発射(フォイア)!!』

 

 弾丸の豪雨(バレットスコール)が淳之介君に降り注ぐ。周りの木々をも薙ぎ倒す威力。生身の人間が喰らえばひとたまりもないだろう。

 

 精

「……まあ、これぐらいでくたばるような奴じゃないよなあ!」

 

 止んだ雨の中、淳之介君は電気アンマの傘をさして立っていた。

 

 精

「見返り美人ってかぁ!? 第二陣! 撃てえええ!!!」

 

 第二陣の弾幕をも凌いだ淳之介君が、礼先輩を地に伏せさせる。

 

 精

『こちらω-99! 三番隊は突破されました! 頼みますよ郁子先輩!』

 女部田

『こちらα-1、了解したよ。フォロー頼むよ、精くん!』

 

 通信を終え俺は淳之介君達を後ろから追う。やけに茶色い煙があろうが匂いまではごまかせな──張り巡らされた煙幕はやけにビターな匂いがした。

 

 精

「ーっ!? ココアの匂い……!? これピュアココアかよ……!?」

 

 食べ物を粗末にするとかそいう言う問題は置いておいて、俺に対しての専用道具まで考えていやがった。俺が近接戦闘を挑むと言ったせいか。すぐさま郁子先輩に連絡を繋げる。

 

 精

『こちらω-99! あいつ等匂いの妨害までしてきやがりましたよ! 追尾が困難です!』

 女部田

『こちらα-1! 接敵したらそのポイント教えるから準備してて!』

 

 ほどなくして接敵の報告があった。そのポイントに急ぐ。そこには郁子先輩が倒れていた。そして、傍らには淳之介君を抱えた片桐がいた。

 

 片桐

「くっ……! こんな時に……!」

 

 倒れている郁子先輩を見る。目立った外傷はない。意識は無いが呼吸もある。おそらく──俺は逆刃刀を振るう。キィンと刀が何かを弾く音がした。

 

 精

「俺でも集中しないと気付かない狙撃……郁子先輩らしくない。調子にのって獲物を前に舌なめずりしちゃいましたか」

 

 俺は片桐に刀を突きつける。

 

 精

「さァ、交わり乱れて狂いましょう?」

 

 そして一気に踏み込む。再装填の時間は数秒、それまでに仕留める。片桐は動けるような状態じゃない。もらった──

 

 麻沙音

「止めてください! 土口さん!」

 

 振りかぶる刹那、アサちゃんが俺の目の前に立つ。

 

 卵

「止めて! お兄ちゃん!」

 

 何でこんな時に卵の姿が──俺は動揺してその手を止めて、いや、ためらうな。俺は──

 

 琴寄

「──……1」

 

 その一瞬が明暗を分けた。俺の足に鋭い痛みが走る。頭部や頚部ではなく、足を狙った確実な一撃だった。感覚的に骨は折れてないが、まともに追うことはできないだろう。

 

 精

「ああ、畜生……なんでこんな時に限ってフラッシュバックしちまうんだ……」

 麻沙音

「ごめんなさい土口さん……兄が土口さんと対峙した時の最終手段でやれって……」

 精

「ははっ……人の心とか無いのかよ……」

 

 俺はアサちゃんと片桐にアイコンタクトで早く逃げろと伝える。二人は申し訳なさそうに去って行った。それを見届けた俺は連絡を入れる。

 

 精

『こちらω-99……反交尾勢力並びに琴寄文乃に逃げられました。……俺(・)の(・)望(・)み(・)通(・)り(・)で(・)す(・)』

 

 連絡先の人物はふふっ、と表情が思い浮かぶように笑った。

 

 冷泉院

『明日は反省会にその作戦と大忙しですね』

 

 ここからが本番だ。痛む足を引きながら郁子先輩を担ぐ。さて、敗戦処理はなんて言い訳しようかな。

*1:
一国の領域。領土。

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