抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
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撃墜王が終わった週末、俺はイベントの疲れを発散するべくSSの寮の一室にやってきた。休日とは言えSSの敷地内に入るため制服を着てきた。といっても両手にお菓子とジュース、佩いている太刀を見ればオフスタイルなのは確定的に明らかだろう。
精
「礼せんぱーい? 約束通りお菓子もジュースも持ってきましたから開けてくださーい」
ガチャリと開いたドアの先には、見るからに寝起きですと言わんばかりの私服の礼先輩がいた。
糺川
「精……今、汝だと思っている……?」
精
「哲学者みたいなこと言わないでくださいよ。朝の7時です。特撮は朝から見るに限りますよ。というか、約束したじゃないですか」
糺川
「……しまった、今日がその日だったか……すまない、上がってくれ」
礼先輩に案内されて部屋に上がる。早速今日は何話を見ようかと物色する。
糺川
「相変わらず好きなんだなデカチンジャー」
精
「子供の頃からずっと好きでしてね。特にボスのディッグソードマラがめっちゃかっこいいんですよ」
俺が子供の頃から愛してやまない戦隊モノ、特巣戦隊デカチンジャーだ。燃えるハートでクールに戦う刑事たちが地球に侵入した宇宙の性犯罪者エネマナイザーたちと戦い、人々の平和と安全を守る作品で、かれこれ20周年になる名作だ。
糺川
「……ん? その刀……ティラミスじゃないな? もしかして……」
精
「よく気が付きましたね。プレパン*1で予約したのが届いたんですよ」
抜刀し、スイッチを入れる。睾丸を模した柄が開きオォーンと渋い男優の声と共に鋭い金属音が鳴る。
精
「勃起淫行をぶった切る! 恥辱の番犬!デカスマター!」
糺川
「おお、口上も完璧じゃないか……!」
精
「痴女との約束は果たせぬが……ここでお前を倒す!」
糺川
「インモラル・キャンペーンのアレか! 弟弟子のクスコスと再び対峙するときの覚悟はかっこよかったなあ!」
精
「礼先輩デカスマター役やってください! 俺クスコスの役やるんで!」
礼先輩にディッグソードマラを渡す。礼先輩はウキウキで構えてくれた。
精
「この俺が……貴様ごときに……!」
糺川
「淫裸一本流秘オホォ義! インピオス・マラ・スラッシュ!!!」
精
「ぐあああ──ー!!!」
振り下ろされた刀に斬られ、俺は床に倒れる。
糺川
「これにて一件パコンプリート……いやー、楽しいな、精!」
精
「ですよね! これ分かってくれて、やってくれるの礼先輩しかいないんですよ!」
礼先輩は特撮オタクである。元々はライダーモノが好きだったが、俺がデカチンジャーを勧めたら見事にハマってくれた。おかげで今でも子供のようにデカチンジャーごっこをしてもらっているのだ。
精
「ごっこをしたら本物も見たくなりますよね! 見ましょう!」
糺川
「そうだな! よーし、今日は一気見だ! 付き合えよ!」
精
「委細承知! 一気に見るぜ!」
一気見して幼心に戻った俺と礼先輩は一緒にハンバーグを作っている。ハンバーグを綺麗に作るコツは玉ねぎの炒め具合だ。あめ色になるまで炒めると焼いている際に焦げてしまう。あめ色になるまで炒めるのはルーにコクを与える時だ。だからと言って半端な火の通りだと、焼いてる途中に残った水分によってハンバーグが割れてしまう。長年培ってきた料理の勘が物を言うため、回数を重ねるしかない。
糺川
「精は料理のことになると雰囲気が変わるな……」
精
「体を作るのはトレーニングと食事ですから。本気にもなりますよ」
玉ねぎとつなぎを入れたタネを木べらで混ぜる。肉と玉ねぎとつなぎをしっかり結着させるために低温を保ちながら混ぜる必要がある。体温で暖まるのを防ぐために木べらを使うのがおすすめだ。ココアを練っていた俺からしてみればビフォーブレイクファストなことだ。調味料を入れてもう一練りしたら、手で空気を抜いて成型する。パンパンするのは青藍島民だったら誰でも得意だ。真ん中にくぼみを作ってフライパンに並べ焼く。約5分程焼いてひっくり返し、竹串を刺して透明な汁が出てくるようになったら皿に移す。温めておいた市販のデミグラスソースをかければ完成だ。
精
「それではお手を拝借! いただきます!」
糺川
「いただきます!──うまい! やっぱり精の作る料理はうまいなあ!」
精
「マーベラス! お望みであれば休みごとに来て作りますよ!」
糺川
「それは流石に申し訳ないが……でも来てほしいなぁ……」
やっぱり礼先輩と一緒にいるのは楽しい。心が満たされていく。
楽しい休日が終わり、週明けになれば風紀委員会の仕事が待っている。"大感射精祭"という青藍島へのふるさと納税で青藍島に高額寄付した人への返礼、通称腰ふるぱこ納税のイベントを捌く。
精
「俺と礼先輩にかかればあっという間ですね」
糺川
「精は優秀だからな。……学力で私に勝っているのは少し不満だが」
精
「まあ、子供の頃から向上心はむき出しでしたから。今なお叶えたい目標が──」
駄弁っている間に校庭に着いた。そこでは淳之介君とアサちゃんが何かを話していた。
精
「こんにちはアサちゃん。ついでに淳之介君」
淳之介
「俺はついでか……──! そっちにいるのは……」
淳之介君が俺の後ろに目線をやって驚いている。
糺川
「貴様ら、何をしている? 生徒は全員"大感射精祭"に行ったと思っていたが……まだ残っている学生がいたとはな」
俺からしてみれば憧れの先輩だが、淳之介君からしてみれば大の天敵だ。警戒して動揺するのもおかしくない。ここはひとつ助け舟を出しますか。
精
「俺がイベント参加者の情報を渡す約束をしていましてね。風紀委員として手に入れた情報をリークする……淫サイダー取引ってやつです」
糺川
「そ、そうだったのか……しかし、直接会って話す必要があるのか?」
精
「文字だけじゃ伝わらない情報がありますから。フェイストゥーフェイスで色んなエモーションを交えて
糺川
「そ、そうだな……」
礼先輩はいまいち言葉を咀嚼しきれていない顔をしていた。そんな中、ピンク髪の先輩がトテトテと可愛らしい音を立てながらやってきた。
渡会
「あれ……礼ちゃんと土口くんだ! 何時も仲良しだねぇ。今日はお休みなの?」
糺川
「イベントがスムーズに進行して時間ができたから、はやめに報告書を仕上げてしまおうと思ってな」
渡会
「そっかそっか。今日も頑張ってるんだねぇ、えらいえらい」
糺川
「よ、よしなさいヒナミ……私だってもう風紀委員長なんだから……」
礼先輩が渡会先輩に褒められて恥ずかしがっている。幼い頃から付き合いのある二人で、この光景はいつ見ても微笑ましい。俺を救った礼先輩といえど、渡会先輩には敵わないようだ。なんか羨ましくなってきた。
精
「いいなー、俺も褒めてください渡会先輩」
渡会
「いいよぉ。土口くんも頑張ってえらいねぇ」
精
「渡会先輩も……あー……頑張ってくださいね」
『"大感射精祭"頑張ってくださいね』とは言えなかった。反交尾勢力として参加することはないだろう。だからといって『気を付けて帰ってくださいね』と言うのも風紀委員としておかしな話だ。
渡会
「うん! 頑張って帰るね!」
糺川
「そうか……なら日が暮れる前に帰りなさい。車とおかしな人にはきをつけて」
もっとも、俺が心配するまでもないことだが。
報告書をまとめながら礼先輩と話す。
精
「渡会先輩、無事に帰れましたかねえ……」
糺川
「大丈夫だ。お前が認めた男がついているだろう?」
精
「認めたって言うと大げさ……でもないですね。俺のたった一人の友達ですから」
糺川
「──お前に友達ができるぐらいの余裕ができてよかったよ」
精
「──礼先輩のおかげです。その恩に報いるためにも──」
不意に筆が止まった。その恩に報いるためにはSSで活躍するのが一番だろう。だが、SSで活躍するということはいつの日か反交尾勢力を捕らえるということになる。つまり、友達をこの手で捕まえなければいけない。今までの友情を裏切ってまで──
糺川
「どうした精? 何か分からないところがあるのか?」
礼先輩が心配そうに覗き込んでくる。この心中は流石の礼先輩と言えど打ち明けられない。
精
「いや、税を『おさめる』ってどの『おさめる』だったかド忘れしちゃって……」
糺川
「糸偏の『納める』じゃないのか?」
精
「ああ、そうでした。納税ですもんね……ありがとうございます」
糺川
「ふっ、お前もそういうところがあるんだな」
だって、俺は礼先輩のことが──
パロディー元の作品のファンに殺されそうです。自分に殺されそうです。