抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
昼飯のパンを頬張っていたら急に連絡が来た。B等部で騒ぎが起きたらしい。お気に入りのクリームパイを咥えながら現場に急行する。
精
「もぐもぐ……こちらω-99。ゴクリ、状況はどうだ屑畜生女?」
屑畜生女
「屑畜生女じゃありません! SSの時代を担うホープ、花丸凛です!」
我らの花丸委員長の妹、屑畜生女だ。見た目こそ似ているが中身は真反対で、自分のためなら他者を平気で物として扱い、すべてにおいて自分を優先する。クソを下水で煮込んで数年熟成させた、SS史上最悪の汚点だ。
凛
「この付近に居るはずです! あなたの鼻で探してください!」
精
「誰かもわからないのに匂いで探せと? 分かる訳ねぇだろバカ。一片死んで二度と現世に戻ってくるな」
しかし、誰か分かってしまっている自分がいる。淳之介君だ。しかも、そこのロッカーに隠れている。
精
「……匂いがごたつきすぎてよく分からねえ。この匂いか……?」
とりあえずこの場から離れる。そして廊下の陰から淳之介君を見守る。凛は見事に淳之介君をはめたが、淳之介君にハメ返された。ザマアミロ。ふらつく淳之介君に肩を貸す。
精
「……何も出来なくて悪い。流石にSSの前じゃごまかしがきかない」
淳之介
「いや、俺の作戦が甘かったんだ。肩を貸してくれるだけでもありがたい」
淳之介君をエレベーターまで送り、戻って屑畜生女の顔を引っ叩く。
精
「おら、人呼んでおいて自分は寝てんじゃねーぞ。上に報告して降格処分させるぞ」
凛
「それだけは勘弁してください! お願いします! 何でもしますから!」
精
「じゃあ何もするな。今日一日中喋るな」
今日の放課後は哨戒任務だ。この頃、未性人の子供に手を出す事件が多くなっている。条例違反の中でもかなり重い罰がくだる条例違反だ。未然に防げるなら防いでおきたい。
精
「あれ、渡会先輩だ。隣にいるのは……子供?」
今日もちんまく可愛い渡会先輩と子供が男と話している。しかし、あまりいい雰囲気ではなさそうだ。次の瞬間、男が渡会先輩に襲い掛かった。
精
「まったく、一日で二人の屑を相手にするこっちの身にもなってくれよ」
俺は拳銃を抜き、男の頭に弾を一発お見舞いした。男がよろけ倒れる。
男A
「がっ……!? は、発砲……!?」
精
「合意なしのドスケベセックスは条例違反だ。そして俺は条例違反者に対し、独断での発砲が許されている────『金色の狂犬』の特権だな。もっとも、子供に手を出す屑ロリコンは普通のSSでも発砲許可が下りてるがな」
渡会
「土口くん……! ありがとう、助かったよ……!」
渡会が子供を抱えながら感謝する。事情を聞くと、淳之介君と一緒に迷子の子供ユキちゃんを保護していた最中にこうなったらしい。
精
「なるほど──甘いな」
後ろに向けて拳銃を突きつける。
男B
「な──」
精
「不意打ちっていうのは殺気を抑えてやるもんだ。こんな風にな」
そのまま足払いで二人目の男を崩し、男を組み伏せる。
淳之介
「おかき買ってきましたよ──って、何があったんですか!?」
ちょっと目を離したすきにこの惨状になっていれば当然の反応だろう。とりあえず淳之介に通報を頼んで状況を説明する。
精
「とりあえず、何で子共に手を出そうとしたんだ? 答えによっては……頭を撃ちまくって廃人になってもらうぜ?」
男B
「この島なら小さいことヤれるって……そう聞いた──」
俺は無言で残っていた全弾を頭に撃ち込んだ。
精
「子供をモノ扱いする奴に与えられる慈悲はない。お前みたいな屑のせいで苦しんだ人を……俺は知っているからな」
通報を受けやってきたSHOの人に事情を説明して引き渡す。今回の件を報告するために俺は学園に戻った。
精
「──というのが今回の事の顛末です。対策を打たないと将来を担う子供たちが危ないです」
糺川
「ご苦労だった。しかし、これらの問題に加え反交尾勢力か……」
冷泉院
「そう……人手が足りなくなってしまうのも当然ね……」
糺川
「はい。このまま対策を練らずに無理を押し通せば、いずれ士気にも影響が出るかと……」
精
「俺がココアを練って振舞ったらどうにかなりませんかね? もちろん経費で落としてもらいますよ?」
冷泉院
「土口さんのココアだけではどうにもならないでしょう。人の数が足りてないのなら……足りるようにするのが一番じゃないかしら?」
そんな簡単に人が集まったら苦労はしないだろう。大体実力者じゃないとかえって足を引っ張るだけだし──
翌日の訪問者がその悩みを容易く打ち砕いた。
淳之介
「俺をSSに入れてくれないか?」
渡会
「私も入れてよ!」
俺は手に持っていたコップを地面に落としてしまった。ギャシャァンとコップが砕け、足元に熱いココアが飛び散る。
精
「あっつ!!!」
糺川
「精!?」
色々と大丈夫ではない。コップの弁償とか掃除が面倒とか制服が汚れたとか色々あるが、一番聞きたいことがあった。
精
「おい、淳之介君……何があったんだ……?」
反交尾勢力として活動してきた奴が急にSSに入りたいと言ってきたら、理由の一つや二つは聞きたくなるだろう。淳之介君は一呼吸おいて俺を見つめて答えた。
淳之介
「──思い返せばお前の世話になりっぱなしだった。だから、少しぐらい友達への恩返しをしたいと思ってな」
精
「淳之介君……」
淳之介
「それに──ようやく吹っ切れたんだ。この青藍島を受け入れようって」
精
「淳之介君……!」
俺は涙を流して淳之介君の手を握った。本当に嬉しかった。敵対していた友達が分かり合える友達に、ずっとなってほしいと思っていた『仲間』になれることが。
精
「もちろん歓迎するぜ! これで『金色の獄番犬』結成──」
糺川
「待て。喜ぶ気持ちは分かるが、お前の一存で決定できることではないだろう」
礼先輩から冷静な待ったが入る。確かにそうだ。いくら『金色の狂犬』と言えど人事採用担当ではない。しかし、どうしても欲しい人材だ。
糺川
「それに……まずはヒナミ。SSの訓練は大変だぞ? 学園生活最後の1年ぐらい、もっと楽しい思い出を作りなさい」
渡会
「うん……確かに大変かもしれないけど……でも、橘くんと礼ちゃんを土口くんと一緒だったら、きっと楽しい思い出になると思うな」
俺と礼先輩は目を合わせる。渡会先輩に頭が上がらない者同士、一旦後回しにする。
糺川
「橘……入隊志望ということだが──今言った通り、SSの訓練は並大抵なものでは──」
精
「まあまあ、素質はありますし、無くても鍛え上げればどうとでもなりますから」
俺としては絶対に淳之介君を入隊させたい。例え
精
「家族を亡くして妹と二人きりで生活しているんです。SSに入って少しでも楽をさせてやりたいんですよ」
だってよく似た境遇で頑張っている大切な友達だから。俺の強い訴えに礼先輩も頭を掻いて困っている。
冷泉院
「でしたら……ひとまず入隊試験の性能力検査を受けてみるのはどうでしょうか?」
その声を聞いて空間がぐらりと揺れたかのような錯覚を起こす。会長だ。いやでも頭を働かせなければいけなくなった。
淳之介
「あの、すみません……実は、俺────インポなんです」
そうだった。すっかり頭から抜けていたが淳之介君は不能ということになっている。
糺川
「SSを志望しながらインポなどと……馬鹿にするのも大概にしろ! マンコにも入れられない男をSSに入れられると思うのか!?」
淳之介
「確かにセックスはできませんが、そのぶん他のことで役に立ってみせます!」
糺川
「ほざけ! チンポも勃てられない男が役にたてるわけないだろう! もういい、話は──」
──ここだ。
精
「彼は事情を持ちながら前向きに生きていこうと頑張ってるんですよ?」
俺の言葉に礼先輩の言葉が止まる。卵の末路を知っている礼先輩からしたら、この発言を咎めることはできないだろう。
精
「出来る事だけでもいいですから──『認めて』みませんか?」
糺川
「それをしたら……今まで我々が行ってきた活動の意味がなくなるぞ?」
精
「信条や思想ならともかく、身体機能の問題はどうにもなりません」
あまり礼先輩と舌戦をしたくはない。流石に心が痛む。しかし、風紀委員長としての矜持が認めることを許さないのだろう。
冷泉院
「不能と言ってもどれだけの物か確かめてみましょう? 幸い、ここには多数の精力剤や媚薬がありますから」
会長の一言で話の流れが変わった。相変わらずこの女は空気が読めない。