抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
今日は反交尾勢力炙り出し作戦の実行日だ。学園の空調システムを止め、ウォーターサーバーに先日の媚薬を仕込んだ。メーカーとの問題になりそうだったが、青藍島らしく体で懐柔し決行したらしい。昼休みになればあっという間に始まるだろう。
精
「おっと、その水飲むなよ淳之介君?」
淳之介
「なんだ、精?」
精
「あの媚薬入っているからさ」
淳之介
「何だって!?」
訓練生である淳之介君は知らなかったらしい。危うく飲んでいたら性行為待ったなしだっただろう。いくら不能と言っても薬を使えば勃起するから────
淳之介
「すまない、ちょっと気になることがある!」
淳之介君はすごい勢いで駆け出して行った。流石に気になったので、風紀委員として見回りがてらあとをついていった。そしたら淳之介君と渡会先輩がシックスナインをしていた。────見なかったことにしよう。これを礼先輩が知ったら淳之介君を殺すんじゃないだろうか────
糺川
「どうした精? さっきからぼーっとしているが……?」
精
「えっ? あ、ああ……俺もドスケベランドのエロクズリヌルパレード行きたかったなーって……」
『金色の獄番犬』の三人での訓練中だというのに集中が切れていた。
糺川
「見ろ、私とお前の指導もあって橘の腕は驚くほど伸びている……それをお前が見てやらないでどうするんだ?」
精
「すみません……直視したら感動で泣いちゃいそうなので……」
淳之介君はメキメキと腕を伸ばしていった。俺と礼先輩の直接指導が多いとはいえ、ここまで伸びる奴はなかなかいない。本当に泣きそうだ。話をそらさないと。
精
「反交尾勢力の問題もある程度片が付きましたし、やっと本腰入れて治安維持に挑めますね」
糺川
「ああ、橘の奴はかなり気にしていたからな。あいつが勝手なことをしないようにも早く────」
俺と礼先輩のタブレットに緊急連絡が入る。なんと県知事の仁浦俊明が攫われたというのだ。他のSHOやSSは出払っている。
精
「……『金色の獄番犬』の初任務が県知事救出になりましたね」
糺川
「……そのようだな。橘、私の命令に従えるな?」
淳之介
「はい」
精
「イッツオンザゲーム……!」
俺の操る小型船でSHO本社に向かう。どんな奴も海門を通らないと青藍島への出入りはできない。その管理をしているSHO本社なのだ。
精
「ドスケベ条例がよくないからって県知事を狙うのはちょっと強引すぎるぜ……!」
淳之介
「仁浦氏を手中に収めるだけで条例をどうこうできるのか?」
糺川
「少なくともやつらはそう考えているらしい。しかし様子が妙だな……なぜSHOと連絡がつかない?」
緊急連絡を要するほどの事態なのだ。すでにとんでもない事が起きているだろう。
精
「最悪、SHOの人と戦うことになるかもしれないな……! 淳之介君、銃はいつでも打てるようにしときな! この場に限っては俺の判断でも発砲を許可するぜ!」
緊張感と高揚感と共にSHOの本社に乗り込む。SHOのガードマンがそこかしこで倒れている────明らかに異様だ。
精
「意識なし、ライオット弾の痕……仙波姉さんが酔ってやらかしたか? あの人ならやりかねな────」
SHOガードマンA
「あら? あなたたちは……どうしてSSのこがいるのかしら?」
SHOのガードマンに話しかけられる。この人のほかにいくつかの気配を感じる。
精
「SS一番隊、『金色の狂犬』の土口精です。県知事がさらわれたので奪い返しに、いや────」
俺は素早く銃の抜き、ガードマンの銃を撃ち飛ばす。
精
「────『金色の獄番犬』の名を売りに来ました」
それにつられて隠れていたガードマンが身を乗り出す。
精
「────糺す狂犬の下に命ず、三途の川にて一抹の礼賛を捨てよ! そして
二丁拳銃で素早くガードマン達の手を撃ち抜く。大人数でいるということは銃での戦いを想定しているだろう。逆に言えば近接の乱闘は想定外のはずだ。目の前であっけにとられているガードマンに膝蹴りをぶち込み、人質にする。
精
「隠れてるやつら! 銃を捨てて出てこい! じゃなきゃコイツの両手両足を折って肉便器にしてやる!」
俺の発言にSHOは発砲で答えた。つまり、SHOはすでに壊滅状態にあるということだ。コンテナに隠れ、二人と話す。
精
「礼先輩、県知事見ました? 俺からは見えなかったです」
糺川
「ほんの一瞬だが見えた。2名のガードマンに拘束され、乗船所に向かっていた。海門はすでに開放されていると見るべきだろう」
想定の範囲で二番目に悪い状況だ。だが、連れ出されていないなら勝機はあるはずだ。
糺川
「────精、囮になれるか?」
精
「囮だけじゃなくて殲滅もできますよ?」
糺川
「今は戦力がなくなると詰みだ。回避に専念しろ」
精
「殲滅は礼先輩と淳之介君に任せますよ? ────行きます!」
コンテナから飛び出し一気に駆ける。一直線ではなく横跳びやバックステッポも交えた複雑な動きは、さすがのSHOガードマンでも捕らえられない。その間に礼先輩がガードマンを一人一人撃ち倒していく。流石礼先輩だ。この調子なら────
糺川
「うあぁっ!?」
淳之介
「礼先輩ッ!!」
礼先輩のうめき声と淳之介君の叫び声が聞こえる。振り返るとそこにはピンクに近い紫髪の女性が、仙波光姫が立っていた。
仙波
「はぁはぁ……あ、当たった……? ふ、ふふ……お山の大将がSHOに逆らおうなんて、片腹────」
精
「その気になっているあなたの姿はもっと片腹痛いですよ」
俺は仙波姉さんの両手両足を撃ち抜いて動けなくさせた。衣服をはぎ取り、裸で縛り上げる。
精
「本当は頭を撃ち抜いてもよかったですが……礼先輩と淳之介君の前だから遠慮しました。二人に感謝してくださいね?」
糺川
「すまない、精……お前を囮にしておきながらこの体たらくで……」
精
「仙波姉さんはアレでも治安管理委員会特殊戦闘部で実戦経験豊富ですから。しかし、この状況はマズいですね……」
他にもガードマンはいると考え、左足を打たれて動けない礼先輩を一人にするわけにはいかない。となると────
精
「行けるか、淳之介君?」
糺川
「私達が後方から合図を出す……お前が仁浦様を助けるんだ。できるな?」
淳之介
「────できます」
淳之介君が息を殺してボートを窺う。ガードマンは二人。真正面から行ったら間違いなく負ける。ボートのエンジンがかかる。それと同時に礼先輩がガードマンを撃つ────合図だ。
淳之介
「おおおおおおおおおぉっ!!」
淳之介君の撃った弾は空を切った。
SHOガードマンH
「くたばれええええぇぇっ!!」
淳之介
「貴様があああぁぁぁぁぁ!!」
互いの銃口が向き合う。
精
「くたばるのはお前の方だ」
俺はガードマンの銃を撃ち抜く。そして、淳之介君の銃弾がガードマンの頭を捕らえた。決着だ。俺達『金色の獄番犬』が勝った。
諸々の連絡を済ませ、SSに迎えに来てもらう。県知事のことは一旦放っておいて、淳之介君の肩を組む。
精
「やったなあ淳之介君! 大手柄だぜ!」
淳之介
「いや……お前と礼先輩のおかげだよ。一発外したからな……」
糺川
「バカ。SSの訓練生がSHOのガードマンを倒したんだ。誇っていいことだよ」
精
「まあ、俺と礼先輩のおかげなのも事実ですけどね! 俺が撃っていなかったら淳之介君の頭が危なかったぜ?」
淳之介
「ありがとう。お前が『仲間』で本当によかったよ────ハッ!?」
またも淳之介君がハッとしている。今度も思いっきり揶揄ってやろう。
精
「だ~か~ら~そういうことはもっと堂々と言ってくれって~? 『仲間』なのは事実だろ~?」
淳之介
「いや、まあ……それはそうなんだが……」
精
「じゃあ驚くなよ~♪ 照れちゃって~♪ 初心いなぁこのこの~♪」
俺は淳之介君の横腹を小突く。淳之介君は困ったように笑っている。
糺川
「……今回は見逃そう。この喜びを止めるのは野暮というものだ」
淳之介
「そんなあ……助けてくださいよ礼先輩……」
精
「礼先輩のお墨付きだから覚悟しろよ~♪ 明日は祝賀会を開くか~♪ もちろんあなたの経費で落としてもらいますよ県知事~?」
俺達の輪の外にいる県知事に話題を振る。流石に入れてやらないと可哀想だ。
糺川
「おい精、いくら何でも浮かれすぎ────」
仁浦
「もちろんそのつもりだ。命の恩人達にそれぐらいのことはして当然だろう?」
精
「っしゃあ! 寿司桶一杯にカルビ詰めてくださいね!」
淳之介
「そういう時って中トロとかじゃないのか?」
精
「分かってないなあ淳之介君……寿司で一番うまいのはカルビなんだよ」
糺川
「……橘、精と回転寿司に行ったら絶対に驚くぞ。こいつは生魚系の物は絶対に頼まない。ハンバーグ、えび天、ツナマヨコーン、ラーメン……ある意味回転寿司を楽しんでいると言えるが……」
明日の祝賀会に向けて食事をセーブしなければ。明日は吐くまで食べるぞ。
土口の回転寿司の頼むメニューには元ネタがあったりします。分かった方は……ご愛読ありがとうございます。