抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
俺の休日は一杯のココアから始まる。ココアをじっくりと、甘く、濃く、香り豊かに練る。出来上がったココアは昇りゆく朝焼けを眺めながら、お気に入りの『The Entertainer』をスマホで再生しながら口の中で転がす。そして目をつぶり、思い耽る。
俺と淳之介君は県知事が待つ部屋に突入した。
淳之介
「な……何だこれは……!?」
仁浦
「んんん────!」
全身あざだらけの裸で、目隠しと猿ぐつわをされ、亀甲縛りにされた県知事がいた。
精
「俺は君と全力でぶつかりたかったんでな……ちょっと『金色の狂犬』らしくいかせてもらったぜ。ほら、淳之介君。写真撮れ。県知事の大スキャンダルだ。これで弱み握って条例好き勝手変えてやろうぜ……!」
淳之介
「……ふっ、お前が『仲間』で本当によかったよ……!」
俺と淳之介君は県知事のセクシーショットを大量に撮った。俺は県知事の猿ぐつわを離し取引を持ち掛けた。
精
「というわけで……俺と淳之介君と礼先輩の意見を飲まなかったら……いいな?」
仁浦
「……ふふっ。ここまで完膚なきまでに叩きのめされておいて抗うつもりはないさ……話し合うためにも解いてくれると嬉しいが」
淳之介
「……俺が覚悟を決めて戦うと決めた相手の末路がこれか……なんか、いいのか……?」
精
「悪党の末路なんざこんなもんでいいんだよ」
ということで後日、仁浦邸にて俺と淳之介君と礼先輩と県知事による談合を行い大まかな方針を決めた。まず淳之介君からの条例の撤廃、俺と礼先輩から青藍島での性教育にロマンティックラブと同性愛に関してのカリキュラムの採用並びに性人に向けての同じ教育、そして三人からSSの存続、この三点を県知事に押し付けた。
精
「あの写真をばらまかれたくなかったら俺達の言うとおりにしろ、OK?」
仁浦
「……土口君、私の右腕にならないか?」
精
「淳之介君、アサちゃんに連絡して写真を────」
仁浦
「OKだ!!!」
ということで青藍島は一時期大騒ぎになったがそれも落ち着き、新たな青藍島へと生まれ変わっていっている。
糺川
「あの時のお前の笑みはすごかったな……化け物のようだったよ……」
隣でココアを啜る礼先輩が苦笑する。連日の書類仕事で疲れたからと言われて、甘いココアを作ったはずなのだが。
精
「俺が化け物? 俺は『金色の狂犬』ですよ」
糺川
「まったく……頼もしい限りだよ。お前の手綱は私しか握れないな」
精
「それじゃ俺にリード付けて散歩に行きます? ケーキ買いに行くんでしたよね?」
糺川
「ああ、もうそんな時間か……リードは付けないが行くぞ」
店前で渡会先輩と合流する。
渡会
「あ! 礼ちゃんと土口くん! うわー……すごい金ぴかのジャージだね……」
精
「かっこいいでしょう? 余裕の輝きだ、値段が違いますよ」
糺川
「ショッピングの在庫処分セールで買ったとか言ってたからな……」
上下セットで1980で買った代物だ。俺の一張羅でもある。圧倒的な輝きを見せながら入店しケーキを気の向くままに注文していく。
渡会
「わわ……結構な値段だよ……大丈夫かなぁ……?」
精
「俺の奢りですよ。金には困っていないんで」
糺川
「妙に料理とかに凝っているのもそれが由来か?」
精
「まあ、ぶっちゃけて言うと使い道ないんで……今は一人暮らしですし」
家族を失った事故で莫大な慰謝料が入っており、SSの奨学金ももらっているから本当に金には困っていない。使い道に困っているぐらいだ。
糺川
「あー……すまない……聞くべきじゃなかったか……」
精
「だから俺と結婚してください」
糺川
「……へ?」
精
「礼先輩と結婚して二人暮らしになって、子供がたくさんできたらお金の使い道できるんで」
俺の言葉に礼先輩の顔が茹で上がっていく。
糺川
「な……あ……ば、馬鹿者! もっと、こう、ムードとかあるだろ!?」
精
「……嫌でした?」
糺川
「いいに決まってるだろ!」
精
「今度一緒に指輪選びましょうね。子供のために指輪と式は控えめにしましょうね」
糺川
「今決めるな! 家に帰って二人でゆっくり話しあって────」
礼先輩がハッとする。店内からの温かな目線に気付いたようだ。
糺川
「──っ! 行くぞ! 二人共!」
礼先輩が逃げ出すように店の外に出て行った。
渡会
「土口くんも言うようになったねぇ……礼ちゃん嬉しそうだったよ」
精
「渡会先輩も俺の呼び方変えた方がいいですよ。将来的に土口くんじゃ紛らわしいですから」
渡会
「それを言ったらとぐ……精くんも私の呼び方を変えてほしいな」
精
「おやおや……分かりました、ヒナミ先輩」
ヒナミ先輩がない胸を張ってふんすとしている。淳之介君は女性を選ぶセンスもいいみたいだ。さて、礼先輩を追いかけないと。
糺川
「まったく……お前と言う奴は……本当にリードを付けてやろうか……」
精
「俺の手を握ってくれているから大丈夫ですよ」
礼先輩は頬を膨らませながら荷物と俺の手を握っている。口ではこう言っているが嬉しいのだろう。俺だって嬉しい。
淳之介
「おーい!」
よく聞いた『仲間』の声が前から聞こえる。
精
「淳之介君!」
糺川
「橘!」
渡会
「淳くん!」
淳之介
「準備できたから、早速パーティーだ!」
皆で淳之介君の家にお邪魔する。俺はケーキを皿に盛り、礼先輩はハーブティーを入れ、淳之介君とヒナミ先輩は机にストラップを並べる。
精
「というわけで音頭を取らせてもらう。前途多難で四苦八苦に七転八倒でございましたが────」
糺川
「精」
礼先輩が笑いながら俺を見る。
精
「礼先輩に急かされたら仕方ありませんね。それでは皆様お手を拝借ぅ! 『金色の獄番犬』再結成と青藍島の輝かしい未来に乾杯ぃぃぃ!!!」
俺の宣言でパーティーが始まる。
渡会
「ショートケーキもクリームパイもすっごくおいしいね!?」
糺川
「ふふ……そうだろう? 私と精の一押しなんだ」
精
「礼先輩が淹れてくれたハーブティーもおいしいですよ。心が安らぐ味がします」
淳之介
「あまり茶葉には詳しくないが……いいものを使っているな……」
精
「セールで買った安い茶葉だけど?」
糺川
「ふっ……それぐらい私の淹れる腕前がいいということだろう」
渡会
「礼ちゃんハーブティーもいれらられるの!? 大人だなあ……」
俺と礼先輩と淳之介君とヒナミ先輩が同じ卓を囲んで笑い合っている。俺の幸せを、そして礼先輩の幸せを手にすることができた────その実感に涙が溢れる。
淳之介
「祝いの席で泣くなよ。台無しだぜ?」
精
「俺を一番泣かせた存在が言うかい? あの日の事、山道に行くとフラッシュバックするんだぜ?」
淳之介
「あ──……それはすまない……」
精
「許してくださいってかあ? 許してやるよ。そのたびに礼先輩に慰めてもらってるし……『仲間』だもんな」
俺は笑って答えてやった。全く辛くないと言ったらウソになるが、その辛さを打ち明けられる人が2人もいる。だったら大丈夫だろう。
糺川
「SSの存続問題も、私と精が筆頭になってやっているからだいぶうまくいっていてな」
渡会
「いいなあ……私のおっきい問題もそれぐらいうまくいってほしいなあ……」
精
「俺以外の人がロリ扱いすることですか?」
渡会
「そうだよ! みんなわたちゃんわたちゃんって言ってロリ扱いするの!」
ヒナミ先輩が子供みたいにプンスコ怒っている。
精
「うーん……俺はヒナミ先輩がロリだと思ったことはないけどなぁ……」
糺川
「え、そ、そうなのか?」
精
「だって、ヒナミ先輩は礼先輩を救ってくれた大恩人ですよ? それをロリ扱いしたら罰が当たるってもんです」
淳之介
「そう言えば最初から渡会先輩って呼んでいたな……」
渡会
「おっぱい大きくなったら大人に見えるかな……だから淳くん、私の事妊娠させてよ!!」
淳之介・糺川
「「ぶふぅーっ!?」」
精
「だったら俺も礼先輩のことを妊娠させようかな」
淳之介・糺川
「「ぶふぅーっ!?」」
精
「冗談ですって……今は」
糺川
「じょ、冗談でも言って良いことと悪いことがあるだろ!?」
淳之介
「そういうのは結婚してから考える物だろ!?」
渡会
「結婚っ……! いいな、憧れちゃうな……そうだ! 式の挨拶、礼ちゃんにお願いしていいよねっ!?」
精
「もちろんですよ。その代わり、俺と礼先輩の結婚式の挨拶はヒナミ先輩にお願いしますよ?」
淳之介・糺川
「「話を勝手に進めるな!」」
ワイワイガヤガヤと茶会は踊るされど進まず、楽しい時間が延々と続いていく。こんなバカみたいに笑って話したのはいつぶりだろうか。本当に幸せだ。そしてこの幸せはいつまでも続くだろう。
精
「だって……『金色の獄番犬』は不滅だからなあ!」
俺が高々と金色の犬のストラップを掲げる。
糺川
「それはそうだが!」
続いて礼先輩が金色の犬のストラップを掲げる。
渡会
「私も私も!」
ヒナミ先輩も白い犬のストラップを掲げる。
淳之介
「だからってお前が仕切るな!」
最後に淳之介君が金色の犬のストラップを掲げる。
『金色の獄番犬』で大いに笑う。だって、俺たちは、ずっといっしょなのだから────
ここで礼ルートは完結です。次のルートをお楽しみにお待ちください。