抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
翌日の昼休み、生徒会室で俺のドリームプランの始まりを告げる。
精
「──という先日の一件がありましたので、しばらく単独で哨戒に当たらせてもらいます」
糺川
「本当に大丈夫か? 流石に誰かと一緒の方がいいんじゃないか?」
礼先輩が不安そうに尋ねてくる。俺のことを案じてくれているのは嬉しいが、この一件に巻き込むわけにはいかない。
精
「相手は実銃を持っています。実力や経験のないSSだと……言葉を選ばないのであれば俺の足を引っ張ります」
ヤクザに捕まったらどんな尋問をされるか分からない。俺もSSという組織にいる以上、同僚を見殺しにしては経歴に汚点が残る。
女部田
「だったらぁ、私が一緒だったらいいんじゃない?」
精
「哨戒ではなく郁子先輩に精を出すことになるのでダメです」
過去に任務の同伴をしているが195%の確率でドスケベセックスをしている。この195%というのは一つの任務につき、平均1.95回ドスケベセックスをしているという意味である。
精
「何より……俺は奴らに顔を覚えらえれています。向こうからやってくることもあるでしょうから、単独で動くほうが効率よく情報を集められます」
冷泉院
「……そこまで言われたら任せるしかありませんね。ですが、無理はなさらないでください。いつでも増援を呼べるようにはしますので」
会長からの了承も得られた。ただ、会長はいつ俺の思惑に気付いてもおかしくない。SSに害を出す訳ではないが、なるべく悟られないようにしないと。
放課後、約束の場所に行くと吹子ちゃんがいた。
精
「やあ。今日からしばらくお世話になるぜ、吹子ちゃん」
吹子
「……本当に、いらっしゃるとは」
精
「友達との共同任務なんでな……そういや自己紹介がまだだったか、俺の名前は──」
吹子
「精様……でよろしいでしょうか……?」
精
「嬉しいけど……土口様にしてくれ。女性から下の名前で呼ばれるとドキッとしてしょうがないんでね」
そういや昨日淳之介君が俺の方を掴んだ際に叫んでたっけ。吹子ちゃんはかなりできる女だ。美しいし有能とあればぜひともSSに──
淳之介
「おっ、いたいた……!」
淳之介君が笑顔でやってきた。三人揃ったところで吹子ちゃんから指示を受ける。奴らが出現するポイントを一夜のうちに見回りするというシンプルなものだった。
精
「疑わしきは罰せずか……ま、現行犯逮捕できりゃ十分か」
淳之介
「だが、今回はほぼすべての戦闘用T-A-Eを持ってきている。どんな状況も対応できるように!」
精
「よっと」
淳之介
「うぎゃあ!?」
淳之介君があまりにも隙だらけだったので足払いをしたら見事に転んだ。
精
「対応できてないじゃん……」
淳之介
「仲間の裏切りに対応できる奴が何処にいるか!」
精
「それもそうか。悪かった。一回だけやり返していいから」
淳之介
「覚悟してろよ……!」
俺と淳之介君のやりとりを吹子ちゃんはなんとも言えない顔で見ていた。
夜の山道を三人で歩いていく。淳之介君が場を盛り上げようとするが、吹子ちゃんのレスポンスで会話が終わる。なんとも歯がゆい雰囲気だ。
吹子
「お二人は……ご家族の方は……いらっしゃらないの、ですか……?」
淳之介
「妹はいるが……数か月前に、交通事故で両親を亡くしてな……」
精
「ちなみに俺は数年前の交通事故で両親どころか妹も亡くしているぜ」
吹子
「……それは……本当に申し訳、ございません……」
吹子ちゃんが心底申し訳なさそうな顔をしてしまった。俺たちの特大地雷がそこにあるとは思ってもいなかったのだろう。ここは『金色の狂犬』として盛り上げないと。
精
「そのおかげで俺と淳之介君は出会えたんだ。悪い事ばかりじゃないよな?」
淳之介
「そうだな。カフスLアナザーな喉越しっていうしな!」
吹子
「……?」
精
「どんな飲み物なのか気になるが……『禍福は糾える縄の如し』って言いたいのか? 淳之介君、そういうところバカだよなあ……礼先輩といい勝負だぜ」
淳之介
「お、お前! 言うに事欠いてバカはないだろ!?」
精
「テストTOP3常連に口答えするのか?」
淳之介
「お前そんな頭いいの!?」
当然だ。『金色の狂犬』としてはな。
淳之介
「…………もしかしたら吹子は幽霊かもしれない……」
精
「ば~~~~~っかじゃねえの!?」
翌日、震えながらやってきた淳之介は心底バカなことを言っていた。なんでも聞き込み調査で幽霊少女の目撃情報を聞いて、場所と特徴が吹子ちゃんに当てはまったという。
精
「俺はオカルトは否定しないが、目の前にいて会話もして匂いもする存在が幽霊なわけないだろ!?」
淳之介
「いや、そうなんだ……そうなんだが……」
吹子
「……お待たせして、しまいましたでしょうか?」
淳之介
「────っ!?」
淳之介君が声にならない悲鳴を上げて俺に抱き着く。やめろ。もし誰かが見ていて精×淳のBL本を出したらどうする。俺の母ちゃんが蘇って買いに来るぞ。
吹子
「……? では行きましょう……」
淳之介君が何かあるたびに俺に抱き着いてきてしょうがない。吹子ちゃんがBL同人作家でないことを祈ろう。
精
「────まて、誰かいる」
吹子
「この先、800メートル……北北西の方角3名……」
吹子ちゃんも察したようだ。あれだけの狙撃を決められるのだから目や気配察知には長けているのだろう。美しさだけでなく、実力も人間離れしているとは流石だ。
精
「俺が見てくる。二人はなんかあった時のバックアップを頼む」
俺はその場所を調べる。
金色ジャージの金髪のウニ髪
「外でするっていうのはやっぱりいいね!」
ゴーグルをかけたピンク髪
「はい! たまにはこうやってハメを外して楽しんじゃいましょう!」
バカップルがスマッシュしていた。あのジャージのセンスには目を見張るモノがあるが、問題なさそうなので戻って二人に報告する。今日の見回りも特に収穫はなかった。しいて言えば、吹子ちゃんにが腐女子ではないことが分かったぐらいか。
淳之介
「…………ということでSSの仮メンバーになったんだ……」
精
「知ってるわバカ。何で俺に相談もしないでやったんだよ?」
このバカは本日のセックスの授業中、SSの風紀委員室から情報をぶっこ抜こうとしていたところを、BIG3に取り押さえられた。そこでの口論の末、SSの仮メンバーになったのだ。
精
「多少の情報なら俺が流してやるってのによ……」
淳之介
「多少の情報じゃなさそうだったし……お前に迷惑をかけたくなかったんだ……」
精
「気持ちは嬉しいが……まあ、刑にかけられなくてよかったよ。BIG3相手に口先だけとはいえ凌ぎ切ったのは流石だ」
威圧感がすごい礼先輩、色気のある声で惑わせてくる郁子先輩、すべてが分かっているかのような会長、どれも一筋縄ではいかない相手だ。俺でも敵うかどうかは分からない。
淳之介
「俺は誇り高き童貞なんだぞ……!」
吹子
「誇り高き……なんですか……?」
淳之介
「うぉおおっ吹子!?」
だから抱きつくのは止めてほしい。夜とは言え夏で暑いんだ。
精
「ああ、吹子ちゃん。もっとゴーンゴーンと存在感を上げてくれ。淳之介君が君のことを幽霊だと思っているらしいから」
吹子
「私が……幽霊……?」
吹子ちゃんがきょとんとした表情で目を丸くする。そして、しばらくして──
吹子
「……ふっ……ふふ……っ」
堪え切れず笑い出した。昨日から様子がおかしい淳之介君の行動に全て納得したのだろう。
精
「わ、笑うな……くふふ、こいつは誰も知らねぇと、とこで、ぱひゃひゃひゃ!!!」
淳之介
「笑うな──!!」
俺は膝を折って大笑いした。淳之介君はどこまでバカで純粋なのだろう。だから俺は友達になって、友達でいたいと思い続けるのだろう。
精
「ふ、吹子ひゃん……あ、足見せてやれ……そしたら幽霊じゃないって証明できゃはははは!!!」
吹子
「むべむべ……さ、左様で、ございますか……ど、どうぞ……ご覧ください……」
淳之介
「お、お前ら……!」
今日は大収穫だった。吹子ちゃんが幽霊でないことが証明できたのだから。
淳之介
「…………」
精
「笑えよ淳之介君。その面が一層悲惨に見えるぜ?」
本日の放課後、淳之介君がSSとしての訓練を受けた。俺に鬼詰めされ、運ばれ、足を銃で撃たれ、しまいにはボコボコにされ満身創痍だった。
淳之介
「お前、本当に精だよな……? さっきと人が違うぞ……?」
精
「指導の時はマジで非情になるさ。君も強くなりたいだろ?」
少なくともSSに入っている間は色々と指導するつもりだ。事情を知っている人間の方がいいだろうし、何より友達だし。
精
「素質はある方だ。鍛えれば結構上目指せるぜ?」
淳之介
「……砂での目潰しが聞かないお前が言うならそうなんだろうな。道具に頼らなくても戦えるようにしないと……!」
精
「鍛えると言ったら────吹子ちゃんも、もうちっとおしゃべりできるようになるといいな?」
吹子
「──っ!?」
右後方を振り返ると想像通りの驚いた表情をしている吹子ちゃんがいた。
精
「見事な隠密だよ。俺も匂いでさっき気付いたぐらいだから、仮SSじゃ絶対気が付かないね」
淳之介
「……事実だから否定できないな……」
吹子
「……土口様は色々と察しが良いのですね……申し訳、ございません……」
吹子ちゃんが深々と頭を下げる。
精
「気にしないでくれ。俺がアルコール類が苦手なように、淳之介君が勉強が苦手なように、吹子ちゃんも喋るのが苦手なだけだろ? 俺と淳之介君乃はともかく、吹子ちゃんのは鍛えればよくなるさ」
淳之介
「……そうだな。俺は筋トレで体を鍛えて、吹子はその間に俺たちとたくさん喋って会話を鍛え……精は何を鍛えるんだ?」
精
「指導力と罵倒のボキャブラリーかな」
淳之介
「……指導力だけにしてくれ」
俺たちの雰囲気にのまれてか、吹子ちゃんは少し笑って────
吹子
「…………はい、よろしくお願いします……橘様、土口様」
どこかためらいながら頷いた。
今回に登場するバカップルは私の作品からのゲスト出演です。誰と誰か分かった方は……ご愛読ありがとうございます。