抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
本日は校外ボランティアの日だ。例年通りだったらヌーディストビーチで行うのだが、会長のサプライズでドスケベ遊園地ランドでやることになった。新たなイベントのモニターを学生諸君でやってほしいとのことだ。6人1組になって行うのだが、誰と組むか──
???
「よかった! 『金色の狂犬』がまだ組んでいなかったなんて! 僕のデータになかったがありがたい!」
精
「んーっと、その声とデータは、べるべるか?」
『SSの生きる催眠音声データベース(俺が勝手につけた)』のべるべることシューベルト、本名中村シュウ。その後ろにはガチムチの4人の生徒がいた。
精
「なるほど……知識とパワーを兼ね備えている俺が必要と?」
シューベルト
「ああ! 君の力があれば僕達の勝率は95%だ!」
精
「100%と軽く言わないところが気に入った。チーム命名権を俺にくれるなら参加しよう」
俺とべるべるが硬く手を握る、交渉成立だ。チーム名は『金色の
精
「友人とそのお仲間だからって手加減はしないぜ、淳之介君?」
淳之介
「ここにきて最難関か……! 気が抜けないな……!」
三種目目は"見事に脱がせ、水鉄砲シューティング"だ。紙の水着を着て、サバイバルゲームの如く水鉄砲で撃ち合う。水着が脱げたら退場で、先に大将の水着を脱がしたほうが勝ちである。
シューベルト
「この勝負は僕達の勝ちみたいだね! もちろん大将はこの僕──」
精
「いや、一番戦力がある俺が大将だ。それに……橘淳之介は元SS、しかも俺が認めたやつだ。舐めてかかったら──」
あっと言う間に俺一人になった。即席の脳筋寄せ集めのこちらと違って連携力が異次元だ。孤軍奮闘したところで勝てるわけがない。
精
「……だからってあきらめるのは俺らしくねえよなあ?」
勝ち筋を考えろ。相手は6人だが司令塔のアサちゃんは前線には来ない。渡会先輩も戦力としては非力だから前線には置かないだろう。機動力のある片桐と隠密力のある畔がやってきて、その隙を淳之介君が突いてくる。そこを文乃ちゃんが狙撃で援護する。
精
「……頭が痛くなるようなパーティ──-」
左前方から畔のおいしそうな匂いがする。隠密力も俺の嗅覚の前には無力だ。
精
「もっと痩せて食うもん変えろほと────」
渡会
「やっぱり土口くんだから引っかかったよ!」
畔に比べ何もかもが小さい渡会先輩だ。まさか匂いを誤魔化したのか。その後ろから本物の畔が出てくる。
畔
「二対一の不意打ちなら────」
精
「生憎、『金色の狂犬』なんでね」
二丁拳銃で二人の水着を撃ち抜く。手数で押すなら3人以上で──片桐と淳之介君の匂いがする。
精
「やっぱり一気にたたみかけるよなあ!」
匂いのする方向へ近づく──ふりをして横に転がる。前方に勢いよく水が降る。
精
「匂いで釣って狙撃してもらう戦法か? やらしいこと考えるな!」
メリーゴーランドにかくれて考える。大将は一番狙われず、それなりに実力のある文乃ちゃんだろう。としたら先に出てくるのは──
精
「君だよな、淳之介君!」
淳之介
「くっ! やはり読まれていたか!」
陰から出てきた淳之介君を撃つ。淳之介君も撃っていたため相殺される。次は──
精
「横から片桐だろ!」
片桐
「きゃっ!? 反応早すぎ……!」
片桐の水着を撃ち抜く。これで淳之介君と距離が詰められ──俺の顔に水がかかる。
麻沙音
「や、やった……! 当たった……!」
精
「やってないぜ? 脱落条件は水着を脱がすことだからなあ!」
反射的に目をつぶってしまったがすぐに開け────急な眠気が来る。抗えず目が開かない。なら視界に頼るな、淳之介君の匂いは前にある。そのまま姿勢を低くしてツッコめば──
淳之介
「精! 止まれ!」
その声と同時に顔全体に衝撃が走る。そうだった。メリーゴーランドに隠れていたのだから、方向を間違えれば激突する。気付くのが遅かった。しかも姿勢を低くしていたせいで棒ではなく乗り物に直撃した。脳が揺れる。意識が────
精
「本当にこのままでいいのか?」
俺が問いかけてくる。夢の中か。
精
「お前はずっと
卵との約束、条例を変えるために生きるとあの日決めた。それで十分のはずだ。
精
「……『お前のやりたいようにやれ』だ。その言葉の意味をよく考えるんだな」
俺は俺のやりたいことをやっているはずだ。たとえ結果が伴っていないとしても────
ぼんやりと目を開ける。クリーム色の壁や天井に、蛍光灯の光が視覚情報として入ってくる。
精
「としたら……ここは病院? って、前もこんなことがあったような……ということは」
以前と同じように礼先輩────はいなく、代わりに机の上に書置きがあった。
『しばらく入院していろ。勝手なことをしたらSSから除名する』
筆跡で分かる。激オコだ。紙の端が何かで濡れていたが、どんな状況で書いたのだろう。何か飲みながら書いたのか? とりあえずスマホで時間を確認する。19時だった。放課後からずっと眠っていたとしたら、数時間ほど意識を失っていたのか。
精
「気を付けないとな──」
スマホのニュースでとんでもないものを見た。
『ドスケベ遊園地で意識不明の重体!?
精
「……想像よりもやばい状態なのかもしれないな……」
検査の結果は想像通り悪化していて、運動や認知の機能に影響が出るのは間違いないらしい。SHO本部でのリハビリである程度は改善できるが、元には戻らないことは覚悟しなければならない。
精
「……まあ、生きているだけありがたいと思わないとな。それに立ち止まっている暇はない。今日はもう寝て明日からのリハビリに備えるか」
目をつぶって寝ようとする。と言ってもさっきまで寝ていたようなものだ。簡単に眠れるわけ──
精
「……これは相当やばいな……」
目を覚ましたのは翌日の6時だった。たまたま目を覚ましたからよかったものの、うっかりしてたら一日中寝ていたかもしれない。とりあえず方々に連絡をする。
精
『入院してリハビリ生活を送ることになりました。面会はできるようなのでいつでも来てください』
精
「……誰が一番に来るかな? 淳之介君に一票入れておくかな」
と言っても今日は平日だ。放課後になるまでは簡単に来れないだろう。誰かが来るまではリハビリに専念するとしよう。
淳之介
「精! 大丈夫か!?」
放課後になって一番に淳之介君がやってきた。
精
「大丈夫な奴はリハビリなんかしないだろ?」
淳之介
「…………その言い方が健在で何よりだよ」
リハビリの休憩がてら淳之介君と色々話す。そろそろ文乃ちゃんとお別れになるそうだ。
精
「しまった……プリン・ア・ラ・モード作るって約束したんだけどなあ……」
淳之介
「入院生活じゃ作るのも無理だろうな……」
精
「具体的なお別れの日は決まっているのか?」
淳之介
「……1週間以内とだけ言っておこう」
精
「あー……まともな手段じゃ引き渡せないもんな……」
恐らくSHOの検問を無理やり突破しての引き渡しになるだろう。大事が予想されるが、俺が関わることはできるのだろうか?
精
「……俺の病室には手を出さないでくれよ? 下手なことしたらSSから除名されるんだから」
淳之介
「……善処する」
そろそろリハビリの再開だ。淳之介君と別れを告げる。
精
「ふ……吹子ちゃんにはお達者でと言っておいてくれ」
淳之介
「ああ、しっかり伝えておくよ」
さて、今度は認知機能のリハビリだ。頭を使うのは得意だが、どこまで落ちているのか──なんだ余裕じゃん。認知機能に関しては良好そのものだ。折角だし夜の自由時間はビシャーコック・ンホォムズの読んでない作品でも読むか。
精
「『みだらな紐パン』ね……いいじゃない」
読み進めていくうちに事件の情報も大分集まった。ここで一つ名探偵並みの推理を見せてやろうじゃないか。被害者の状態から言って──
精
「いっつ……マジか。これぐらいで頭痛くなるのかよ……推理小説読みたいから痛み止めくださいなんて言えないしな……」
考えるのをやめて読み進める。事件のオチとしては女博士の履いていた紐パンで首を絞めて殺人をしていたというものであった。
精
「紐パンをプレゼントしたら人生の墓場に直行だな。いい教訓になったよ……」
本を戻し、病室に戻る。病院という環境だから仕方ないが、もっといい環境で寝たいものだ。バニラの香りを漂わせ、甘い衣を着てそのまま──
精
「そう言えばBIG3は面会に来なかったな……あのイベントの後処理で忙しいのかな」
一応メッセージは来ていたが──
冷泉院
『お大事にしてください』
女部田
『お大事にしてください』
糺川
『お大事にしてください』
恐らく会長がこれだけ送っておけば十分でしょうと言ったのだろう。最低限過ぎる。郁子先輩がこんな文章送るわけないだろう。
精
「リハビリに専念しろってことなのかな……最近休んでばっかだから衰えそうだぜ……」
次の自由時間は筋トレでもするか。病室で出来る範囲でいいからやっておかないと。