※この作品はR-18です。

抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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5-13 コリウスの銃口

 今日のリハビリも終わり月明かりが美しいと思っていた矢先、SHO本社に警報が鳴る。何者かが侵入したらしい。

 

 精

「──淳之介君達か」

 

 流石にこっちの施設まで手を出すことはしないだろう。だから俺はここにいれば安全だ。礼先輩からのお墨付きで療養中だし、むしろ下手に動いたら後でどれだけ怒られるか分からない。何もしない──それでいいのだ。

 

 精

「──さて、辞表の書き方を後で調べないとな」

 

 いい子ちゃんぶるのは止めだ。淳之介君の作戦が成功したらSHOがどうなるか分からない。そもそもここで黙っているなんて『俺のやりたいこと』じゃない。何も為せないまま物事の終わりを見届けるのはまっぴらごめんだ。そんなの俺じゃない。

 

 精

「武装は現地調達か……倒れているガードマンから拝借するか」

 

 想定通り夜警のガードマンが倒れていた。そこから服と銃を2丁拝借する。

 

 精

「さて……むやみに行くのはよくない。まずは状況確認からだ」

 

 1階までのガードマンはすべて倒されている。外では淳之介君と県知事が戦っている。

 

 精

「どうせSSはクビになるんだ。その前に県知事様の面一発ぶん殴ってやりますか!」

 

 勢いよく外に飛び出す。2人は俺に気付いていないようだ。そのまま駆け寄り──

 

 仁浦

「機動力のある相手との1対1なら、脚を狙うのも──」

 精

「後遺症残ったらここでのリハビリをお勧めしますぜ、県知事様」

 

 二丁の拳銃で勢いよく県知事の頭をぶっ叩く。県知事は一息の間に意識を失った。

 

 淳之介

「精……!?」

 精

「コリウスが役に立ったようで何よりだ……こっからは俺が相手だ」

 

 素早く二丁拳銃を構える。淳之介君も事態を理解したようだ。

 

 精

「ドスケベ遊園地では結果が有耶無耶になったからな……今度は勝つ」

 淳之介

「ここまで来て最大の敵か……! だが、負けるわけにはいかない!」

 

 俺のSSとしての最後の戦いが始まる。

 

 

 すでに淳之介君は足をライオット弾で撃たれている。なら──

 

 精

「っ、こんな時にも痛むのかよ……!」

 

 痛みを食いしばりながら一気に駆けよる。淳之介君が煙玉で目くらましをする。

 

 精

「相変わらず小細工がお得意で──」

 

 胸元に飛んできた何かを咄嗟に転がって避ける。偶然にも県知事の近くに転がり、持っている刀に目が付く。

 

 精

「……ありがたく使わせてもらうぜ……!」

 

 二丁拳銃を投げ捨て、刀を拾い構える。

 

 精

「本物の日本刀なんて使ったことないんで……何が切れても文句言うなよ!」

 

 改めて踏み込む、淳之介君も踏み込んできた。何が来る? 予想しろ。拳、脚、小道具──

 

 精

「っぐ……!」

 淳之介

「ウィンチェスター!!」

 片桐

「──……淳!!!」

 

 痛みで思考が途切れた一瞬に状況が変わる。何が来──今度は眠気が──

 

 淳之介

「喰らい、なァっ!!」

 精

「ぐがあああ!?」

 

 何かが張り付きとんでもない電気が流れる。体が硬直し動かない。だが──

 

 淳之介

「……マジかよ……耐えれるのか……!?」

 精

「おかげで目が覚めたぜ……! その感じだと万策尽きたって感じだな……!」

 淳之介

「いや、お前からもらったコイツがある!」

 

 赤紫の銃口が俺に向く。鮮やかにはっきりと見える。

 

 精

「見え見えだぜ! そんなの避けれ──」

 

 踏み出そうとした足が動かず、バランスを崩して体が前に倒れる。まさか電気で痺れて──淳之介君の指が引き金を引く。その先は俺の脚に向いていた。体はすでに倒れている。地面が近づいていく。このまま弾が出たら当たる場所は──頭だ。

 

 淳之介

「あっ──」

 

 発砲音が響く。そして頭に衝撃が走る。すごく痛いが、まだ意識は失っていない。

 

 精

「──俺のことはいい……! 君の為すべきことを為せ……!」

 淳之介

「──っ、すまない!」

 

 淳之介君が文乃ちゃんを連れて去って行く。

 

 精

「……戻るまで持ってくれよ、俺の体……!」

 

 意識があるうちに病室に戻らないと。はやく、いか、ない、と────

 

 

 精

「やっと少しは分かったか? 『お前のやりたいようにやれ』という言葉の意味が?」

 

 俺が問いかけてくる。夢の中か。

 

 精

「命令を無視してでもお前が動いた理由は何だ? 卵のためか? 礼先輩のためか? 淳之介君のためか? 『金色の狂犬』のためか?」

 

 あの時、俺の中にあったのは何だった? 何のために動いたんだ?

 

『そんなの俺じゃない』

 

 ──ああ、そうだった。他の誰でもない俺(・)の(・)た(・)め(・)だった。

 

 精

「やっと気が付いたようだな。『お前のやりたいようにやれ』はお(・)前(・)の(・)た(・)め(・)に(・)『お前のやりたいようにやれ』なんだ」

 

 振り返ればいつもそうだった。俺は誰かのために何かをしてきた。誰(・)か(・)の(・)た(・)め(・)に(・)『俺のやりたいようにやれ』だった。卵のため、礼先輩のため、淳之介君のため、『金色の狂犬』のため……いつの間にか俺(・)自(・)身(・)の(・)た(・)め(・)に何かすることを忘れてしまった。

 

 精

「自分のために物事ができない奴は誰かのために物事をできるわけがないだろ? だからお前はいつもうまくいかないんだ」

 

 自己中心的な考えと言ったらそれまでだろう。しかし、人生はいつも自分を中心として物事が動いていく。だったら、自分のために何かをするのは悪いことではないだろう。自分のために誰かの手を借り、自分のために誰かを頼って、自分のために物事を為す──それでよかったんだ。

 

 精

「行きすぎたら迷惑になるがな。だが、力も無いのに一人でやろうとするやつは、それはそれで迷惑だろ?」

 

 痛感する。俺はいろんな人に迷惑をかけてきた。糺川礼、女部田郁子、冷泉院桐香、橘淳之介──何より土口卵。

 

 精

「迷惑かけたくないなら誰かの手を借りろ。そして頼れ。それがお前に足りないものだからな」

 

 

 ???

「──い、──まして──、せい……」

 ???

「れ────……-いくんは──────-」

 ???

「ふ────、とぐち──めが──そう──」

 

 三人の女性の声に応じるように目を開く。そこには泣いている礼先輩と、それをなだめる郁子先輩と、相変わらずの表情の会長がいた。

 

 精

「……4Pの準備ですか?」

 糺川

「精……!!!」

 女部田

「精くん……!」

 冷泉院

「土口さん……」

 

 なんとなく状況が読めてきた。淳之介君との戦いに敗れた後、SHOの人間が病室に運んでくれたのだろう。

 

 糺川

「馬鹿者……!!! 私を置いて……どこかに行こうとするんじゃない……!!!」

 女部田

「そうだよ~? 精くんは一人で頑張りすぎだよ?」

 冷泉院

「私も含め、ここにいる三人はとっても心配していたんですよ?」

 

 心配していた──あまりに思い通りの言葉に笑ってしまった。

 

 糺川

「そんな顔するな! どれだけ私はお前の面倒を見てやったと思っている! 心配するのは当たり前だろう!」

 女部田

「命令を無視して飛び出した部下が意識不明……心配しない方がおかしいよ?」

 冷泉院

「土口さん、あなたは人間ですよ。失敗もしますし、死んでしまうんです。世間知らずの私だってそれぐらい知ってるんですよ?」

 

 やっぱり迷惑をかけていたみたいだ。だから──

 

 精

「……皆さん。少し話したいことがあります。ちょっと付き合ってもらえますか?」

 

 俺の言葉に、BIG3は当然だというように頷いた。

 

 病室で俺は俺の過去についての話を始めた。同性愛者である卵が島からの迫害を受けたこと。それを解決するために俺が努力したこと。卵が心の底からドスケベセックスをできるようにドスケベ条例を変えれる立場になりたかったこと。卵と約束をしておいてその約束を果たせなかったこと。卵を排除しておいて何も関係ないという顔をしている島民が憎かったこと。────だから青藍島が嫌いであるということ。だから一人で頑張ってこようとしたこと。

 

 精

「俺を救ってくれた礼先輩、俺を育ててくれた郁子先輩、俺を挑ませ続けてくれる会長……思えば頼れる『仲間』はすぐそばにいたんです。なのに、心の底から頼らなかった────怖かったんです。『頼って弱みを見せる』ことが怖かったんです。そんなの卵が誇れるお兄ちゃんじゃないって」

 

 三人は黙って俺の話を聞いていた。

 

 精

「だからこそ──お願いします、俺の『仲間』になってください」

 

 俺は頭を下げて頼んだ。散々一人で暴れておいて、今更頼むなど図々しいだろう。受けてもらえるわけ──

 

 糺川

「何を言っているんだ馬鹿者!!! お前は最初から『仲間』だろうが!!!」

 精

「えっ……」

 女部田

「礼ちゃんの言うとおりだよ。イクも最初から精くんは大切な『仲間』だと思っていたよ?」

 精

「えっ、えっ……」

 冷泉院

「やっと言ってくれましたね。喜んで『仲間』になりますよ」

 精

「……皆…………」

 

 涙が出た。こんな俺でさえ受け入れてくれるのか。勝手に突き放して、必要になった時には都合よく頼る。どう考えても最低な人間なのに。

 

 糺川

「『仲間』だったら……『理解』して……!!! 『信頼』して……!!! 『愛して』いいんだ……!!! それが、わかるのにっ、ど、どれだけ時間をかけさせたんだ、っこの、大馬鹿者が!!! うわあああん!!!」

 

 礼先輩が俺に抱き着いて大泣きする。

 

 女部田

「あーあ、礼ちゃん泣いちゃった。これは責任取らなきゃダメだよ~?」

 冷泉院

「女性を泣かせた責任の取り方……『金色の狂犬』でしたらご存じですよね?」

 

 それに何かを期待している郁子先輩と会長──分かっている。すべて打ち明けよう。

 

 

 精

「──礼先輩」

 糺川

「なん、だっ、この、大馬鹿者……」

 精

「俺は礼先輩に救われました。あの日の恩はいつまでも忘れません」

 糺川

「……だ、だったら、なんだ……」

 精

「だから、俺の一生をかけてその恩を返させてください。──好きです。付き合ってください」

 糺川

「…………私と付き合ったらっ、た、大変だぞ……自分で言うのもアレだが、面倒くさいぞ……」

 精

「知ってます。マメに掃除しないとすぐ部屋がごちゃっとしますし、勉強できなくて追試もちょくちょくありますし────今まで自分がやってきたことに対して、罪悪感があって素直に幸せになる資格はないと思っているでしょうし」

 糺川

「ぜ、全部っ、言うなバカ……郁子と桐香様がいるんだぞ……」

 精

「俺一人じゃ幸せにできないかもしれません。だから、ここにいる『仲間』と一緒に礼先輩を幸せにします」

 糺川

「…………だ、大隊長命令だ。『私を幸せにしろ』……違反したらまた泣くぞ」

 精

「ありがとうございます。俺(・)の(・)た(・)め(・)に(・)『俺のやりたいようにやります』から」

 

 俺は礼先輩の唇を奪った。憧れで、大好きで、ずっと一緒にいたかった礼先輩と。礼先輩は何も抗おうとせず受け入れてくれた。

 

 女部田

「うひゃ~! 見せつけてくれちゃって~! 幸せにね、ご両人!」

 冷泉院

「……今はお祝いしましょう。おめでとうございます」

 

『仲間』からの祝福を受け、俺と礼先輩は結ばれた。

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