抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
俺と礼先輩のイチャラブ生活は長く続かなかった。なんと文乃ちゃんがニュース番組に出て、県知事様の隠し子だということが取り上げられた。そこからの老人の政治家による文乃ちゃんが幽閉され続けただの、少年少女の売春をしているだの、暴力団と繋がってるだの、犯罪の温床になっているだの、ほとんど事実無根の毀誉褒貶によって青藍島はめちゃくちゃになった。
アナウンサーA
「ちょっとそこのあなた! この学園の生徒さんですよね!?」
精
「先輩、んちゅー……」
糺川
「っ!? な、ば、ばか!? 何するんだ!?」
精
「俺と先輩の熱愛発覚報道ならどんどんやってくれ! 何だったら公開セックスも──」
アナウンサーB
「……あ、あっちの子がいいんじゃない? 彼、ヤバそうだし……」
俺たちはインタビューをバカップル作戦で乗り切れるにしても、他の生徒はそうもいかない。極めつけは──
冷泉院
「──……皆さんもご存じの通り、現在青藍島は大きな注目を集めています」
精
「会長の口からは言いづらいでしょうから俺が言いますよ。……青藍島では"ドスケベ条例"の見直しが検討され、一時的にこれを停止することになった……要は自由にドスケベセックスできなくなったわけだ。ついでにSHOとSSも解散だ」
青藍島は大きく揺れ動くことになった。早速放課後に生徒会室で会議を行う。
精
「さてさてさーて……今日の会議は俺が仕切らせてもらう。理由は単純、まともな奴が仕切ったところでこの問題の解決策は出ないからだ」
冷泉院
「こういう時こそ冷静にと言いたいところですが……私の頭では妙案が浮かばないのも事実です」
精
「まずは……この青藍島でこれから発生するであろう問題をどんどん提示してくれ。どんな馬鹿気た事でもいい」
女部田
「自由にエッチができなくなっちゃう!」
精
「大問題ですね。生活環境が大きく変わることによってストレスが生じ不安も生まれ、活気がなくなっていくでしょう」
糺川
「治安の問題もあるだろう。青藍島の人々の安全が脅かされかねない」
精
「世間の青藍島叩きは異常ですからね。暴力沙汰に発展してもおかしくないでしょう」
そのほかにも様々な問題が挙がる。いちいち書き留めていたらキリがないほどだ。
精
「さて、この問題の根本的な原因を考えたいが……ちょっと礼先輩、お手を拝借しても?」
糺川
「あ、ああ。構わないが……」
礼先輩の右手を両手で握る。そして考える。政治家、県知事の隠し子、琴寄文乃の存在──
精
「っぐ……!」
頭が痛い。思わず体に力が入ってしまうほどだ。でも──
糺川
「っ精! 大丈夫か!? 私がちゃんと手を握っているからな!」
愛する人が支えてくれる。それだけでどんな痛みにでも耐えられるのが男だ。思考を続ける。犯罪の温床、プライバシーを無視したインタビュー、条例の停止──
精
「──要するにこれが原因だ!!!」
『青藍島は脆弱な悪であると思われている』
精
「要は世間の皆様は青藍島が悪だと思っている。しかも、県知事様という支えを失ったガバガバユルユルの軟弱な悪だと思っている。そんな存在を見つけたら人間はどうなるか? 『自分は正しい』『あいつらが悪い』……大勢がそう思い、極めつけは『みんながやっているから』の考えになる。こうなったら人間歯止めが利かなくなる。……皮肉にも世間が悪だといっている"ドスケベ条例"と同じ状況なのにな」
どれだけ異常な考えでも有力者が集団を説き伏せ広めたのなら、それが常識となるのだ。その中にいる少数派の意見はないものとされ、異端として排除され、多数派に飲み込まれていく──俺の最も忌むべき行為だ。
精
「さて、ここからが本番だ。この原因をどうやったら解消できるか……実は簡単に解決できる」
SS一同に驚きが走る。たった今出た問題の解決策が出たら無理もないだろう。俺はホワイトボードに力強く書く。
『青藍島は危険な悪であると思わせる』
精
「例えばですが、お店で子供がお菓子の万引きをしていたらどうでしょうか?」
女部田
「それは悪いことだよ? って言ってお仕置きエッチをするかなあ……」
精
「では、ヤクザの組同士が目の前で抗争していたらどうでしょう?」
糺川
「流石に警察に通報して身の安全を確保するな……」
精
「人間、いくら善人ぶりたいからって命まで張ることはできません。命張って善人できるのはヒーローだけです。手を出したらヤバイと思ったら、しかるべきところを頼って……言葉を選ばず言うなら逃げるんです」
冷泉院
「つまり……常人では手を着けられない悪になろうというわけですね? それですと青藍島の評判はより一層悪くなりそうですが……」
会長の的確なアシストにチッチッと舌と指を鳴らして笑う。
精
「そうなったら……いつかあの政治家が自ら手を出してくると思いませんか?」
冷泉院
「天岩戸に隠れた天照大御神を出すための神楽歌を歌うわけですね。流石土口さんです」
精
「狸爺がやってるのは須佐之男命並みの乱暴ですがね。ともかく、奴が手を出して来たらそこをぶっ潰す……これでハッピーエンドですよ」
SS一同が大いに沸きあがる。絶望的な状況に見いだされた希望はどんなに荒唐無稽であってもすがりたいものだ。
精
「それじゃ、方針が決まったところで……締めの言葉をお願いします、会長」
冷泉院
「土口さんに頼まれては仕方ありませんね。……『幾重にも辛酸を舐め、七難八苦を超え、艱難辛苦の果て、満願成就に至る』……さあ、青藍島の未来を掴みましょう」
会長は人々を率いる天才だ。俺ではどうあがいても届かない。だからこそ頼る。
放課後、寮では出来ないデリケートな話し合いをするため、俺とBIG3は俺の家で話し合う。
糺川
「方針は良いにしても具体的な案はどうなんだ?」
精
「……ぶっちゃけて言いますと、『琴寄文乃の奪還』がアリアドネの糸になります」
あの狸爺の目を青藍島に向けさせ続けるには文乃ちゃんの存在が必要不可欠だ。何だったら、文乃ちゃんの一言で戦況はいくらでも変えられる。
女部田
「じゃあ、その文乃ちゃんの奪還のプランは?」
精
「……致命的な欠陥を除けばあります」
一枚のポスターを取り出す。"SHO特別奨学金給付者を対象とした特別帰省プログラム"……要はSSを青藍島から追い出す船が出るのだ。
精
「この船を奪って文乃ちゃんの所に行きますが……」
冷泉院
「その琴寄文乃の居場所が分からないんですね?」
会長の痛い指摘に頭を抱える。致命的な欠陥というのは、文乃ちゃんの居場所が全く分からない事だ。ネットで調べるしかないのに、そのネットにすらまともな情報がないのだ。
精
「SSが知らない情報を知っている組織なんてあるのかよ……」
冷泉院
「道行く人と粘膜接触をするのは罰の対象になってしまいますし……」
女部田
「そもそも青藍島の人が知ってるとは思えないけど……うーん……」
糺川
「時間は無いが……考えても出ないものは出ない。思いつくまでは休
精
「んぶっふ……」
つい
精
「……むべむべ、琴寄文乃、反交尾勢力──『橘淳之介』──」
いた。この青藍島で一番琴寄文乃の情報を知っているであろう人物が。
精
「君が友達で本当によかったぜ淳之介君!!!」
俺は叫びながら淳之介君に連絡をする。
精
「淳之介君!!! 文乃ちゃんの居場所知ってるか!?!?!?」
淳之介
『い、いきなりどうしたんだ……?』
精
「知ってたら教えてくれ!!! ついでにNLNSの皆の力も貸してくれ!!!」
淳之介
『……まさか……
やはり俺と淳之介君は似ている。早速話し合いだ。
BIG3を連れお邪魔した橘家にはNLNSのメンバーが勢ぞろいしていた。
精
「各々積もる話はあると思いますが、一旦すべて忘れましょう。今は青藍島を取り戻すことが最優先です」
後々聞いた話だが文乃ちゃんが受け渡された日、BIG3は反交尾勢力にバチボコにやられたらしい。俺の願いとはいえ、よく耐えてくれた。ありがとう。
淳之介
「……精、俺は──」
精
「全て一旦後回しだ。淳之介君。君は、いや君達は琴寄文乃を取り戻したい……違いないな?」
NLNSのメンバーは力強く頷いた。
精
「BIG3の皆。俺たちも琴寄文乃を取り戻したい……違いないですね?」
BIG3も力強く頷いた。
精
「前代未聞の青藍島の危機を乗りこえるため……同盟を結ぼうじゃないか!!!」
俺は淳之介君とアサちゃんと、郁子先輩は畔と、会長は片桐と、礼先輩は渡会先輩と手を握った。
精
「まずは同盟の名前を決めないとな……SSとNLNSを良い感じに組み合わせて……"NSNS"No Sex No Seiranでどうだ?」
淳之介
「セックスがなければ青藍ではない……悪くないな」
女部田
「精くんらしいセンスだねー……ダーリンもダサいジャージ持ってるのかな?」
畔
「と言いますと……土口さんもダサいTシャツを持っているんですか?」
冷泉院
「家を調べた限り金色のヘルメットとギャル系のエッチな本しかめぼしいものがありませんでしたね……」
片桐
「ギャ、ギャル系……!? もしかしてあの時あたしに迫ったのって……」
糺川
「……せ、精はそういうのが好きなのか……私も金髪にしてみるか……?」
渡会
「礼ちゃんが金髪にするなら私も金髪にしようかな?」
結成して命名して数秒でこれとは実にいい同盟だ。だから本の並びが妙に違ったのか。何こっちを見てにこりと笑ってるんだ会長。後で覚えていろよ……教わった糸の技術で縛り乳首にしてやる。
精
「それでは作戦会議を始める。今回の作戦コードは……『捲土重来』だ」