※この作品はR-18です。

抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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5-21 Re_birthSei

 本来の精を呼び戻すためには何がいいか会議を開く。

 

 糺川

「まずはあいつが好きなもので試してみよう。まずはデカチンジャーのオモチャだな。プレパンで買った奴を役に立つと思って持ってきたんだ」

 

 鞄から一振りの剣を取り出す。精の大好きなデカスマターのディックソードマラだ。

 

 糺川

「ほら、見てみろ! 勃起淫行をぶった切る! 恥辱の番犬! デカスマター!」

 精

「わぁ……かっこいいですね……僕もやって良いですか?」

 

 ダメだったようだ。それでも楽しそうにブンブン振っているからいいだろう。

 

 女部田

「精くんはエッチなことが好きだからね! イクのテクニックで本能から呼び覚ましちゃうよ~♪」

 

 ありとあらゆるコキ、髪コキさえも試したが駄目だったそうだ。郁子がしょぼくれている。

 

 冷泉院

「ココアはどうでしょう? 練り方は以前教えてもらったので練ってみます」

 

 とてもおいしいですと褒めてもらったそうだが、それだけだった。

 

 畔

「でしたらおいしい料理はどうでしょう! ちょっと冷蔵庫漁ってきます!」

 

 冷しゃぶサラダを持ってきてくれた。土口は数口食べただけでもういいと言ったが、このくどさなら納得だ。皆で何とか食べきった。

 

 渡会

「頭をなでなでしてあげるのはどうかな!」

 

 私とヒナミで頭を撫でてみる。珍しく精が恥ずかしがる姿が見れたからいいだろう。

 

 文乃

「逆に私を撫でさせるのはいかがでしょうか……」

 

 精に文乃を撫でさせる。珍しくぽわぽわした笑顔になる精が見れたからいいだろう。

 

 片桐

「いつしかギャルが好きって言ってたから、好きな人がギャルになったらいけると思うわ」

 

 片桐にギャル風メイクを施してもらってギャル語で精と接してみた。精からいいかもしれないですとアドバイスをもらった。

 

 糺川

「もうだめだぁ……おしまいだぁ……取り戻せるわけがない……」

 女部田

「折れるの早くない?」

 冷泉院

「しかし、並の手段では取り戻せそうもないのは事実です」

 

 もっと精の根幹を揺さぶるような何かが必要だ。しかし、今の精からそれに関する情報は聞き出せないだろう。以前の精が何か残していてくれればいいのだが……

 

 淳之介

「……そういえば、俺がSSを辞める時に一本の動画を渡されました。何でも『金色の狂犬』秘蔵の動画だって言っていましたけど……」

 

 淳之介がタブレットから一本の動画を再生する。そこには正しい意味で緑髪の長髪の少女が笑って立っていた。

 

 卵

『お兄ちゃん! 頑張ってね!』

 

 その一言だけの数秒ほどの短い動画だった。

 

 精

「っ! 卵! ううっ! ぐうっ!」

 

 精が突然苦しんで悶える。もっとも守りたかったのに守れなかったその存在が、今の弱い精を生み出したのだからあり得る反応だ。いや、それどころではない。精を落ち着かせないと。

 

 糺川

「大丈夫だ、精……私がいるから……」

 

 優しく抱きしめ頭を撫でる。次第に精が落ち着いていく。

 

 糺川

「この方法だと先に精が壊れてしま──」

 

 考えてみれば弱い精が生まれた原因は、精が卵を守れなかった自分を弱いと思っているからだ。強い精だったら卵の死を糧にできたが、怒りで我を失ってしまった。そして今の弱い精が出てきていて、自分は弱いと思い続けている。ならば────弱い精が卵の死を乗り越えることができる強さを持てば戻るかもしれない。

 

 糺川

「つまり……何が必要だ……?」

 

 今の精一人では到底乗り越えることはできない。精が心の底から信頼している人物は私と淳之介だ。心の支えだけでは足りない。苦しみから自害しかねないから精を抑えるられるだけの実力者も必要だ。郁子と桐香様ならできるだろう。後は──卵だ。

 

 糺川

「……ダメだ、卵の代わりがいない……!」

 

 動画の卵だけでは精を動かすには足りない。生の卵の声でないと精の心を動かすことはできないだろう。どう考えたって誰も卵の代わりになれない。そんなことができる人間なんて────

 

 麻沙音

「────私なら……できるかもしれません」

 

 立ち上がったのは橘淳之介の『妹』である、橘麻沙音だった。

 

 

 桐香様に精を縛ってもらい猿ぐつわを噛ませ、その上から郁子に抑えてもらう。精が何が何やらという顔をしているが、止めるわけにはいかない。

 

 糺川

「桐香様、お願いします」

 

 桐香様が催淫ペンを持って土口の前に立つ。

 

 桐香

「土口さんは今から麻沙音さんが卵さんに見え~る……最愛の卵さんに見え~る……認識を塗り替えて卵さんに見えぇ~るぅ~……っ」

 

 そして麻沙音が精の前に立つ。

 

 精

「っ! うー! ふー!」

 

 精が身をよじらせて悶える。おそらく麻沙音が卵に見えているのだろう。そして麻沙音が口を開く。

 

 麻沙音

「お兄ちゃん……私の事、分かる?」

 

 麻沙音は声帯模写が上手い。私が聞いても本物の卵の声にしか聞こえない。精もより一層反応が激しくなったから、精にとっても卵の声に聞こえるのだろう。

 

 麻沙音

「私、お兄ちゃんのことが心配だよ……」

 

 郁子が険しい顔で抑えている。いくら桐香様が縛っているとはいえ、精が本能的に暴れられたらかなりの力になるだろう。

 

 麻沙音

「だって、お兄ちゃん、私を守れなかったから……」

 精

「ううっ!!! ううう!!! んんん!!!」

 

 精が涙を流している。自分の弱さの象徴を刺激されているのだから無理もないだろう。

 

 麻沙音

「だから、私、お兄ちゃんのことが────」

 

 この言葉だ。私と淳之介が目を合わせて精に呼び掛ける。

 

 糺川

「精!!! 惑わされるな!!! そこにいるのはお前の卵じゃない!!!」

 淳之介

「お前の妹は事故で死んだんだろ!?!?!? だったらここにいるわけないじゃないか!!!」

 

 精が私と淳之介の顔を見る。しっかり届いているようだ。

 

 糺川

「私の知っているお前は卵の死を受け入れて前に進んで言ったんだ!!!」

 淳之介

「お間の前にいる卵はお前の弱さが作り出した幻だ!!! 受け入れるな!!!」

 糺川

「お前は弱くない!!! お前はお前が思っている以上に『強い』んだ!!!」

 淳之介

「打ち破れ!!! お前が選んだ『お前のやりたいこと』を信じろ!!!」

 糺川・淳之介

「「精!!! お前は!!! 『金色の狂犬』だろ!!!」」

 

 

 急に縛られ口を封じられ抑えられて、何が何なのか分からなかった。でも、僕は弱いから抗えない。

 

 桐香

「土口さんは今から麻沙音さんが卵さんに見え~る……最愛の卵さんに見え~る……認識を塗り替えて卵さんに見えぇ~るぅ~……っ」

 

 会長が僕に何かをした。そしたら──僕の前に卵が現れた。何で卵がここにいるんだ?

 

 卵

「お兄ちゃん……私の事、分かる?」

 

 僕が卵のことを分からなくてどうする。今すぐ抱きしめたいのに体が動かない。

 

 卵

「私、お兄ちゃんのことが心配だよ……」

 

 そうだよね。こんな弱いお兄ちゃんだったら心配するよね。でも、そんなこと言わないでくれ。僕が一番分かっているから。

 

 卵

「だから、私、お兄ちゃんのことが────」

 

 ああ。だよね。嫌いだよね────

 

 糺川

「精!!! 惑わされるな!!! そこにいるのはお前の卵じゃない!!!」

 淳之介

「お前の妹は事故で死んだんだろ!?!?!? だったらここにいるわけないじゃないか!!!」

 

 礼先輩と淳之介君の声が響く。2人は僕に何を言いたいんだ? だって卵はここにいるのに。

 

 糺川

「私の知っているお前は卵の死を受け入れて前に進んで言ったんだ!!!」

 

 卵は────ああ、そうだ死んだんだ。あの日事故で。

 

 淳之介

「お間の前にいる卵はお前の弱さが作り出した幻だ!!! 受け入れるな!!!」

 

 こんなに近くにいるのに。声もするのに幻なのか。

 

 糺川

「お前は弱くない!!! お前はお前が思っている以上に『強い』んだ!!!」

 

 ごめんなさい礼先輩。あなたが言うほど僕は強くないです。

 

 淳之介

「打ち破れ!!! お前が選んだ『お前のやりたいこと』を信じろ!!!」

 

 ごめんなさい淳之介君。僕にやりたいことなんてもう──

 

 糺川・淳之介

「「精!!! お前は!!! 『金色の狂犬』だろ!!!」」

 

『金色の狂犬』? 僕が『金色の狂犬』?

 

 

 精

「俺(・)を忘れるほどになるとはな……弱さを受け入れるって言うのは大変だな」

 

俺(・)が僕(・)に──

 

 精

「ああ、そうだ。俺は俺で僕は僕だ」

 

 じゃあ僕は──

 

 精

「そして、どっちも『土口精』であり『金色の狂犬』だ」

 

 ──僕は『土口精』? 『金色の狂犬』?

 

 精

「俺は『土口精の強さ』だ。そして僕は『土口精の弱さ』だ」

 

『強さ』と『弱さ』。

 

 精

「俺は強くなるために『弱さ』を置いていったんだ。だが、『本当の強さ』ってただ強いだけじゃなかったんだ」

 

 俺が僕に重なる。

 

 精

「『本当の強さ』っていうのは『弱さを受け入れること』だったんだ。本当に弱かったのは──それから逃げてた俺(・)だったんだ」

 

俺(・)が僕(・)より弱い──そんなわけない。

 

 精

「何言ってんだ? 事実だろ?」

 

 だって俺(・)は僕(・)に変わって色々なものを守ってきたから。

 

 精

「……俺(・)は僕(・)を守れなかっただろ?」

 

 こうやって受け止めようとしているだろ?

 

 精

「……ふっ。俺に説教するとは────随分と『強く』なったな」

 

 ────ああ、そうだな。僕(・)は、いや俺(・)は強い。『弱さ』も『強さ』も俺になったんだ。なら問題ないな。ありがとう俺。いいってことよ俺。

 

 精

「……さて、『金色の狂犬』が蘇る────『リターン・フロム・リンボ』だ!!!!!!」

 

 

 ぼんやりと目を開ける。礼先輩とアサちゃんと淳之介君が俺の目の前に立っている。体を動かそうとしても動かず、口にも何かされていて喋れない。これはチャンスだ。

 

 精

「ひ……」

 糺川

「ひ……?」

 精

「ひんほはひへはんほはへへほほひほほひ♪」

 女部田

「あっ、ドスケベ音頭だ!」

 糺川

「こんな時にふざけてる場合か!!!」

 

 礼先輩が俺の口の何かを外してくれる。

 

 糺川

「精!? どうなんだ精!? 錯乱しているわけじゃないよな!?」

 

 礼先輩がマジで心配している顔だ。ふざけるのは止めよう。

 

 精

「……今すぐ抱きしめたいので、解いてもらえ──」

 

 俺の体が軽くなる。この感じだと会長が縛っていたのか。早速礼先輩を抱きしめる。

 

 精

「……また迷惑かけちゃいましたね。ごめんなさい、礼先輩」

 糺川

「────精の、ばかああああああ!!!!!!」

 

 礼先輩が俺の胸で大泣きする。そういえば、『私を幸せにしろ』と言った際に違反したら泣くと言っていた。だから、俺は礼先輩の頭をあやすように撫でる。皆がやれやれまったくと言いたげな顔で笑っている。さて、俺が戻ってくるまでの間に何があったのか聞かないと。

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