抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
精
「さて……まずは、なんでSSとNLNSが仲良く一緒の家にいるんだ?」
俺の発言に皆が驚いている。普通に考えたら敵対している組織同士が手を取り合うなんて相当なことがないと──
文乃
「…………土口様は、心の底から仰っています……」
精
「えっ、文乃ちゃん!? 家族の所に行ったんじゃないの!?」
何故か文乃ちゃんがいる。俺の記憶だと淳之介君達が家族の下に送り出したはずだ。
糺川
「いいか、落ち着いて聞いてくれ精……」
礼先輩が言うには青藍島を取り戻すためSSとNLNSが結託しNSNSという同盟を結成した。文乃ちゃんをを取り戻し、守っている際に俺が撃たれた。現在NSNSは青藍島の設備を守ってはいるが、後手に回らざるを得ない状況らしい。
精
「…………俺の記憶、相当飛んでいますね。一週間分は無くなってるじゃないですか。次に何かあったら俺が俺でなくなる可能性もありますね」
糺川
「……正直、ヘルメットや天手力機構があったしても戦ってほしくないが……お前は戦いたいんだろ?」
精
「当然です、『金色の狂犬』ですから」
俺は今まで多くの物を失ってきた。卵、青春、礼先輩への想い、そして自分。だからこそ、今度は守る。卵のため、淳之介君のため、礼先輩のため、そして俺のため。
精
「と言っても戦闘は最小限に抑えたいですけどね……」
淳之介
「それなら心配に及ばない……今日が最終決戦だ」
なんでも防人老人なる人物がSHO本社ビルを取り壊すらしい。復讐に駆られると人間はこうもクソみたいな存在になるのか。俺も一歩間違えればこうなっていただろう。
精
「そのクソ老害と話せるか?」
淳之介
「どうだろうな……向こうから一方的に連絡が来るだけだが……」
精
「そのクソ老害と話したい。安心しろ、交渉して取り壊しを取りやめてもらうつもりはないから」
淳之介君からスマホを貸してもらい連絡を待つ。夕方頃になって電話が鳴る。
防人老人
『──……ほう、まだワシからの連絡を受け取れる気力が残っているとはな』
精
「ボケてんじゃねえぞクソ老害。電話越しに手前をぶち殺すぐらい気力に満ちてるわ」
防人老人
『貴様は……まだ生きていたか。あの日からずっと眠っていたから死んだと思ったのだがな」
精
「それよりも話したいことがある。──何でこんな形で復讐したんだ?」
クソ老害の言葉が一瞬止まる。そしてあからさまな怒気を帯びて言葉を続ける。
防人老人
『ワシは……ドスケベ条例を恨んでいるからだ……!』
精
「説明してもらおうか。同情の余地があるかどうか確認してやる」
クソ老害の娘は仁浦県知事様に防人一族から奪われた。そして文乃ちゃんを産ませておいて青藍島に捨てた。その結果、娘は裏風俗で働くしかなくなり、青藍島民に迫害されながら死んだ。なるほど、復讐にも走りたくなるわけだ。
精
「……判決を下す。同情の余地なしだ」
防人老人
『当事者でもない青二才に同情されたくは──』
精
「俺も青藍島に妹を殺された」
防人老人
『……何だと?』
精
「ここまでやっておいて俺のこと知らねえのかよ。俺には卵っていう同性愛者の妹がいたんだよ。卵は異端者として扱われ、除者にされて、そんな絶望の中で死んだんだ。俺だって青藍島が憎いさ」
流石の事情にクソ老害も黙った。
精
「でもな……その憎しみで青藍島を滅茶苦茶にしても、卵のためにはならないって思ってな。だから、条例を変えるという形で復讐をしようとしたんだ。今では他の事情もあって条例を変えたいと思っているが、根本にあるのはそこだ」
俺だって人間だ。青藍島に卵を壊されて憎いと思った。復讐してやると思った。だからこそ、
精
「こんな青二才でも分かることを倍は生きてるであろう手前は分かっていない。だから同情の余地なしだ。恥かかされる前に──クソ老害、
俺は通話を切った。
精
「これであのクソ老害の頭の血管が切れて死んでくれれば御の字だが──」
淳之介
「精……」
淳之介君が複雑な表情で俺に話しかけてきた。
淳之介
「お前も……俺と同じだったんだな……」
精
「いや、違うけど?」
淳之介
「へ……?」
明らかに想定していた答えと違うと言った顔だ。相変わらず淳之介君はバカみたいだ。
精
「俺は青藍島も、大半の青藍島民も、ドスケベ条例も憎いさ。でも、全ての青藍島民が嫌いとは言ってないだろ? 郁子先輩、会長、何より礼先輩……俺の事情を分かってくれる人を嫌いになるわけないじゃないか」
淳之介君と俺の決定的に違うところはここだろう。淳之介君は
精
「……子供の頃に君と出会えていたら何か違ったかもな」
淳之介
「……かもしれないな」
精
「でも、変わらず友達になっていただろうな」
淳之介
「ああ、それは違いないな」
友情に浸るのもこれぐらいにしておこう。今は最終決戦に備えるべきだ。まずは────
精
「NSNSの口上を考えるか。ついでに武装も整えたいから例の秘密基地に行くか」
淳之介
「ついでの方が大切だろ!?」
NLNSの秘密基地にやって来たNSNSwith文乃ちゃんは早速武装を整えていく。
淳之介
「奈々瀬には、カスタムを施したT-A-Eを渡す。麻沙音には、強固なタブレットケースだ。……すまないが、今日は一人で頑張ってくれ。ヒナミには、強化カーボン製の椅子だ。岬だが……お前にはこれに乗って砲台を破壊してもらう」
中央のモニターに畔がデザインされた戦闘機が映し出された。
淳之介
「超局地山頂攻撃機"青藍・改"だ」
精
「よし分かった。今度は俺達SS部隊の番だな」
あれに関して考えるのは止めだ。頭がおかしくなりそうだ。
精
「まずは会長、アサちゃんと同じく強固なタブレットケースです。天手力機構の保護に使ってください。会長は十分な武器を持っていますからそれだけあれば十分でしょう」
冷泉院
「ええ、任せてください。私も久々に本気を出せそうですから……」
とは言っているが本気は出さない。この人が本気を出したら間違いなく死者が出る。あくまで『良識の範囲内』で本気を出すということだろう。
精
「次に郁子先輩、靴と手袋以外全裸で行けます? 相手は実銃ですから制服ぐらいじゃ変わりません。だったら郁子先輩が気持ちよく戦えるほうがいいと思います」
女部田
「精くんったらだいたーん♪ でも、一度全裸で戦ってみたかったんだよね~。死線を潜り抜ける感覚……全身で味わっちゃお♪」
だからと言って今脱ぐ必要はないと思う。でも、遊び無しで本気になった郁子先輩は俺だって勝てるかどうか怪しい。少なくとも、理性があったら勝てない。
精
「最後に礼先輩……これをどうぞ」
俺は礼先輩に赤色の銃を渡す。礼先輩は一目であることに気が付いた。
糺川
「……お前と同じ型の銃だな」
精
「『クラスター・アマリリス』と名付けました。意味は彼岸花……俺の誕生花です」
糺川
「つまり……お前の代わりだと」
精
「戦況によっては離れ離れになる可能性があります。その時はこれで俺が近くにいると思ってください」
糺川
「……ああ、お前の想い、しっかりと受け取ったよ」
礼先輩に想いを伝え、皆の前で宣言する。
精
「それじゃあNSNSの結束のために……行くぜ! 一つ! 非道なアクメを憎み!」
淳之介
「二つ! 不思議なアクメを追って!」
畔
「三つ! 淫らなアクメでオホるか!」
糺川
「四つ! 良からぬズチュウ♡のアクメを!」
女部田
「五つ! 一気にスペルマアクメ!」
渡会
「六つ! むべりむべむべむべむべる!」
片桐
「七つ! ならばこれを聞いてみよ!」
冷泉院
「ゼロ……ゼロ……ゼロ……♡」
全員
「「「「「「「「"NSNS"!!! ──No Sex No Seiran!!!」」」」」」」」
精
「総員、盛りの準備をせよ!!!」
都合よくあった台本から改良を加えた口上が決まった。
精
「テンション上がりますねぇ!」
淳之介
「改良したらかなり良くなったな!」
女部田
「でも、ここまでアクメだらけになったらもう盛ってない?」
片桐
「まだまだ改良の余地があるのだわ……」
糺川
「ヒナミ! 今回はうまく言えたな!」
渡会
「お姉さんだからね! 当然だよ!」
冷泉院
「冷泉院の『冷』とゼロの『零』をかけたのですね……お上手です」
文乃
「あの……文乃はどうすればよろしいでしょうか……?」
しまった。文乃ちゃんの口上を考えていなかった。渡会先輩の所を文乃ちゃんにして、渡会先輩に八つ目の口上を言わせるか?
淳之介
「──文乃には、ここで残って戦ってほしい」
恐らく文乃ちゃんに何か言わせるのだろう。青藍島の一番の被害者の言葉ならこの青藍島を覆せるかもしれない。
淳之介
「ずっと傍らにいると言ったのに……俺はまた、君を孤独にする。分かった上で──……俺は、そうすると決めた」
俺は淳之介君じゃないからその胸にどれだけの想いや覚悟があるのか分からない。青藍島への憎しみ、文乃ちゃんへの想い、淳之介君のやりたいこと。それらを全て考えてこの決断をしたのだろう。俺が何か言うべき場面ではない。
文乃
「……そんなあなた様に、お仕えすることが────……それこそが、琴寄文乃の誉れでした」
文乃ちゃんの瞳から一筋の涙がこぼれる。俺はその美しさを真っ直ぐ見ることができなかった。俺にはあまりにも清らかすぎる。
文乃
「淳之介さんの、心のお傍に……文乃は、いつもおります──……旦那様を送り出すことが、妻の務めですから」
守れてよかった。文乃ちゃんには傷ついてほしくなかった。この思いは淳之介君の方が強いだろうが、俺も少なからずは思っていたことだ。目をつぶってふっと笑う。俺もこんなこと言われたいな。
糺川
「──……旦那様と一緒に歩いていくのも、妻の務めだからな」
礼先輩が俺の肩をポンと叩きながら呟いた。
糺川
「お前は目を話すとすぐにとんでもない事をするからな」
精
「……ありがとうございます」
なら、守らないと。俺の大切な大切な礼先輩を。その礼先輩とたくさんの思い出を作っていく青藍島を。その青藍島で出来た大切な『仲間』を。──心の底からそう思う俺を。