※この作品はR-18です。

抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ?   作:神剣狩刃

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過去一難しいタイトルです。分からなかったら無視していいです。


5-24 ♡ジュナンワールド、サレドセイランエイヨ

 淳之介

「行くぞ──漢勃ちッッ!!!」

 

 淳之介君が拳を構えて突進してくる。前より動きは良くなったが、それでも余裕で追える。

 

 精

「それが何だってんっ、だぁ!?」

 

 突進に合わせたカウンターブローを腹部に入れた。拳に伝わる感覚はまさに鋼の壁を殴ったようだった。

 

 淳之介

「まずはこれを取らせてもらうぞ!」

 

 淳之介君の拳がヘルメットを打ち上げる。ヘルメットにはヒビが入っていた。どんな威力で殴ればこうなるんだ。

 

 精

「許せ、淳之介君!」

 

 ただ事ではないと判断し、後ろに跳びながら淳之介君の足を連続で撃ち抜く。

 

 淳之介

「弾ごときで俺が止まるか!」

 

 全弾当たったというのにまるで効いていない。リロードする余裕もないならこの銃は不要だ。

 

 精

「だったらこれはどうだ!」

 

 顔を目がけて銃を投げる。額と顎にクリーンヒットしたが淳之介君は笑っている。

 

 淳之介

「弾でダメなら銃ならってか! 効かないな!」

 精

「いや、すでに完成している!」

 

 銃を投げると同時に放っていた思い切り糸を引っ張る。跳んで回避され、再び迫ってくる──一瞬息を止める。

 

 精

「──居合」

 

 踏み込みすれ違いざまに一太刀浴びせる。──バキィンと断末魔を上げて愛刀ティラミスが折れた。

 

 精

「──もう一度」

 

 そのまま県知事の日本刀を借りて振り抜く。簡単に穿ち丸で受け止められ、拳で日本刀が叩き折られた。

 

 精

「マジか──」

 淳之介

「おっらぁ!!!」

 

 淳之介君の蹴りが俺の腹を捕らえる。重く鈍い痛みが襲う。ポール、いや、金属バットでやられたようだ。そのまま吹っ飛ばされ、地面に伏せる。

 

 淳之介

「どうした精! ここで終わるような奴じゃないだろう!

 

 その通りだ。このタイミングで戦いを挑んだのには意味がある。いや、譲れない意地がある。

 

 精

「俺は……君を超えたいんだ!!! 淳之介君!!!」

 

 悲鳴を上げる体を無理やり奮い立たせるように叫ぶ。

 

 精

「アサちゃんという妹やNLNSという仲間がいる君が羨ましかった!!! 友情と同時に嫉妬や憎悪を覚えるほどに!!! でも……それ以上に……君に憧れたんだ!!!」

 淳之介

「精……!」

 精

「だから!!! 君と全力でぶつかり合って!!! 君を超えたいんだ!!!」

 

 俺は再び拳を構える。かなり消耗しているが関係ない。燃える闘志が俺を動かす。姿勢を低くし一気に距離を詰め、ボディを狙う。膝で防がれ、背中に一撃貰う。

 

 淳之介

「どうした……! すでに限界の体で……反応が鈍いんじゃないのか……!?」

 精

「これぐらいのハンデが無きゃ……君を瞬殺しちまうからなあ……!」

 

 身体能力の差など気の持ちようでいくらでも覆せる。淳之介君が証明してきたことだ。ならば心で負けてはいけない。口先の勝負はコイツの得意とするところだ。

 

 精

「君は……本当に強いな……! 俺以外のSSの誰よりも……!」

 淳之介

「いや、お前より強いさ!」

 

 淳之介君の拳をスウェーで躱し、ボディーに一発入れる。拳が砕けそうだ。

 

 淳之介

「無駄だ! 何発撃ち込んだところで俺は揺るがない!」

 精

「本当にそうかなあ!?」

 

 今度は蹴りをぶち込む。衝撃で淳之介君が後ろに押される。脚が折れそうだ。

 

 淳之介

「俺を倒したかったらロケットランチャーでも持ってくるんだな!」

 

 兵器かコイツは。俺が今まで対峙してきたのは人間だった。今のコイツは人間じゃない。まともな戦い方では叶う気がしない。どうすれば──考えたって頭が痛むだけだ。動くしかない。

 

 精

「っしゃあ!」

 淳之介

「無駄だあ!」

 

 2人の蹴りがかち合う。すかさずその反動で回し蹴りを腹部に叩き込む。まともに入ったはずなのに、手ごたえはあるのに効いていない。

 

 淳之介

「無駄だと言っているだろう!」

 

 なんとか横に転がって穿ち丸を回避する。やれることは全部やれ。糸を伸ばして穿ち丸を奪い取る。

 

 精

「もらった!」

 

 穿ち丸で淳之介君の腹部をぶちぬ──穿ち丸が折れた。

 

 淳之介

「自分の使う武器でやられるバカが何処にいるか!」

 

 淳之介君の掌底が俺の胸を捕らえる。一瞬だけ世界が止まって見える。体が動かない。そして──

 

 淳之介

「もらった!」

 

 動き出した世界から淳之介君の蹴りが脇腹を直撃する。視界が急に回り、地面が顔の前にあった。

 

 

 SSで色々と経験をしてきたはずだが、これほどの強敵にあったことはない。コンディションが良ければ勝てるか? 全盛期の俺ならともかく、判断力が落ちて体も少しなまっている俺では──何くだらないことを考えている。そんな暇があるなら動け。動け動け────

 

 精

「がっ……はあ……」

 

 呼吸に血の香りが混じる。さっきの蹴りで肺に何か起きたか。だから何だ。立ち上がって────

 

 精

「がぁ……」

 

 体に力が入らない。眠くなってきた。こんな時に。今動かなかったら、淳之介君に負けちまう。でも、それも悪くないか? 死力を尽くしてこの結果になったならいいんじゃないか? 淳之介君はすごい奴だと認めて、淳之介君も俺を凄い奴だと認めて、それが一番平和じゃないか? ああ、もう、どうなっても──

 

 ???

「諦めるな、精!!!」

 

 ──この声は。

 

 ???

「私が知っている精は『やりたいようにやれ』る精だ!!! お前は負けたいのか!!! 負けを認めるのか!!!」

 

 ──こんな時でも俺を奮い立たせてくれるこの声は。

 

 ???

「そんな精は……私の大好きな精じゃない!!!」

 

 ──俺の大好きな。一生をかけて幸せにすると誓った──

 

 糺川

「だから!!! 私のために勝ってくれ、精!!!!!!」

 

 

 熱い血潮が全身を走る。体中に力が漲る。痛みが消えていく。────ならば。

 

 精

「────礼先輩の命令とあらば!!!」

 

 にっと笑いながら起き上がる。立ち上がる。拳を構える。そして月夜を穿つ雄たけびを轟かせる。

 

 精

「切って結ぶ蒼碧の檻を打ち破れ!!! 睦言に狂乱する悪鬼を噛み砕け!!! 

 礼賛以って三途の川を渡り世界を糺せ!!! 精卵交わりて生まれる命の限りを尽くせ!!! 

 俺は土口精!!! 『金色の狂犬』だ!!!」

 

 愛に。藍に。俺(アイ)に。そのすべてのために狂おうじゃないか。

 

 

 一気に近づき腹部に蹴りを入れる。淳之介君が少しふらつく。

 

 淳之介

「ぐっ……!? ばかな……!?」

 精

「俺が闇雲に同じところばかり攻撃するバカに見えたか!?」

 

 間髪入れずボディーブローを入れる。淳之介君が明らかによろめいた。

 

 精

「日本刀の攻撃を防いだのは効く攻撃だからだ! つまり、ダメージを受けないんじゃなくて一定以上堪えるのが漢勃ちの正体だろ!」

 淳之介

「だったらなんだってんだ!」

 

 淳之介君がお返しと言わんばかりにボディーブローを返す。俺はそれを笑って受ける。

 

 精

「そんなの重度の思い込みの他ないだろ! だったら俺にも出来るはずだ! もっとも、まだ掴んだばかりだから愛する人がいないとできないがな!」

 淳之介

「マジかよ……! 俺が訓練してやっと手に入れたものだぞ……!」

 

 そんなの知るか。実際の所、俺だってよく分かってないんだ。出来てしまったのだからしょうがない。

 

 精

「そして水滴石穿! どんなに堅い物だって同じところを打ち続ければ綻びが生まれる! 俺は賢しいんでやらせてもらうぜ!」

 

 落ちていたヘルメットを武器にし腹部を殴打する。ヘルメットが砕けたがそれだけの衝撃があった証拠だ。

 

 淳之介

「ぐはぁ……! お、お前、あ、アサちゃんが作ったものを……!」

 精

「天手力機構はアサちゃんが作ったが、ヘルメットそのものは礼先輩のプレゼントだぜ!」

 

 淳之介君の言葉にも揺らぎが見える。色々効いてきている証拠──

 

 淳之介

「だが俺には文乃がいる!!!」

 

 再び俺にボディーブローが入る。メシリと骨からやばい音がした。淳之介君も同じはずだが、笑っている。

 

 淳之介

「俺には文乃がいるんでな!!!」

 精

「だったら俺には礼先輩がいる!!!」

 

 俺は淳之介君を蹴り飛ばし虚空に糸を伸ばす。

 

 糺川

「私には精がいる!!!」

 

 意図を汲んでくれた礼先輩が黒い拳銃を投げる。糸の先に──先に拳銃が撃ち抜かれた。文乃ちゃんの狙撃は半端じゃない。

 

 糺川

「だからコ(・)イ(・)ツ(・)はいらない!!!」

 

 それに続くように赤い拳銃(クラスター・アマリリス)が糸に絡む。それを引き寄せ、右手に掴む。

 

 淳之介

「しまった!」

 精

「アリアドネの糸は愛する人に持たせないとなあ!」

 

 淳之介君の腹部に向けて一発打ち込む。

 

 淳之介

「があっ! まだだ!」

 

 明らかに怯んだがまだ動く。この距離でダメならもっと近くで撃つしかない。近づいてくる淳之介君の動きを見極める。拳か脚か──違う狙撃だ。俺はあえて淳之介君に近づく。直後、俺のいた場所に銃弾が届く。

 

 精

「愛する旦那様ごと撃つ覚悟はないよなあ!」

 淳之介

「読まれた──」

 精

「この距離なら漢勃ちも関係ないな!」

 

 ゼロ距離で淳之介君の腹部に銃弾を当てる。

 

 淳之介

「う、ぐ、あ……」

 

 絶え間ない全弾射出に、淳之介君からうめき声が漏れた。渾身の力を込めて拳銃を叩きつける。

 

 淳之介

「ご……かっ……」

 精

「ぁおおおおん!!!!!!」

 

 吠えながらコルクスクリューブローを腹部にぶち込む。拳銃ごとめり込んだ一撃は流石に堪えられないはずだ──

 

 淳之介

「あっ」

 

 いつの間にか淳之介を追い詰めていたらしく、柵を支点に淳之介君の体が後ろに倒れる。やばい淳之介君が落ちる。右の拳はコルクスクリューでぶっ壊れてすでに使えない。

 

 精

「うだらぁ!!!」

 

 左手で淳之介君を掴む。激痛が走る。でもこの手を放す訳には──俺の左肩に何かが撃ち込まれる。それと同時に痛みが消える。

 

 精

「おおおあああぁぁぁ!!!!!!」

 

 一気に引き上げる。受け止めきれずに2人で地面に倒れ込む。

 

 

 精

「……俺の勝ちだな?」

 淳之介

「あそこまでやられて助けられたら……完敗だ」

 

 勝った。淳之介君に勝った。憧れに勝った。

 

 精

「っしゃあああ!!! 勝ったぞおおお!!! 見ましたか礼先輩いいい!!!」

 淳之介

「っるさいな……そこにいるから絶対見てるだろ?」

 糺川

「ああ……しっかり見たぞ、精……」

 

 礼先輩が俺を優しく抱きしめる。

 

 糺川

「よかったな精……お前の……『やりたいようにやれ』たな……」

 精

「……ええ、『やりたいようにやれ』ました……俺は……」

 

 扉が開きNSNS一同が駆け寄ってくる。色々言われたし、色々言いたかったが──

 

 精

「『金色の狂犬』としてやってやりましたよ……」

 

 その一言を言って礼先輩の胸の中で意識を落とした。




次回、このルートの最終回です。
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