抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
あの戦いから数週間がたった。俺の怪我もすごかったが、淳之介君はもっとすごかった。何でも漢勃ちのためにやばい薬に手を出していたらしく、その症状が半端ではなかった。全身痙攣からの吐血を目の当たりにしたときは流石の俺も叫んだ。それでもなんだかんだ収まり8月後半には2人そろって仲良く退院できた。
夏休みも終わりそうな8/29日、NSNS一同で俺の家で盛大なパーティーを開くことになった。
精
「というわけで……退院祝いとちょっと遅れた誕生日パーティーを開きます!」
淳之介
「おめでとう! 精! しばらくはお前の方が年上だな!」
精
「いや、違うけど?」
淳之介
「へ……?」
明らかに想定していた答えと違うと言った顔だ。相変わらず淳之介君はバカみたいだ。
精
「俺の誕生日は9/29だ。遅れた誕生日パーティーって言っただろ?」
淳之介
「じゃあ、誰の誕生日パーティーだ……?」
精
「卵の誕生日パーティーだ」
卵の誕生日は8/18だ。毎年俺が祝っているが人を呼んで祝うのは初めてだ。
淳之介
「……友達の大切な妹の誕生日パーティーなんだ、盛大に楽しませてもらうぞ」
精
「ああ、バケツプリン作ってあるから皆で食べような」
主催者が妙に重い雰囲気にしてしまったのは良くない。ここは『金色の狂犬』として盛り上げないと。
精
「こんな時はカラオケだ! 土口精歌います! 聞いてください! 『イキそう戦隊デカチンジャーOP』!」
糺川
「待ってました! 精の十九番だぞ!」
ちなみに俺の歌唱力はどれだけ高く見積もっても90点いかないぐらいだ。でも、カラオケで歌う時は楽しく歌うのが正解なのだ。俺を筆頭にいろんな人がいろんな歌を歌って、バケツプリンをみんなで食べて、楽しくパーティーが終わった。
翌日、俺は2人の人物を家に呼び出した。
淳之介
「急に来てほしいってなんだ? 退院直後でまだ忙しいんだぞ?」
俺の大切な友達と。
糺川
「朝はあまり強くないんだがな……ふぁあ……」
もっともっと大切で世界で一番大好きな人だ。
精
「墓参りを手伝ってほしいんですよ」
2人を連れて卵の墓前に立つ。
精
「紹介するぜ卵。友達の淳之介君と恋人の礼先輩だ」
淳之介
「橘淳之介です。精とは仲良くやらせてもらっています」
糺川
「糺川礼です。精とはとても仲良くやらせてもらっています」
2人が卵に挨拶する。
精
「やっと一件落着したから来たぜ。青藍島がいい感じになっていてな」
あれから"新ドスケベ条例"が撤廃され色々改良が加わった"真ドスケベ条例"に変わった。まずセックス可能地域、通称"性感地区"が設定され、各々のしたいプレイに分けて地域が分けられた。普通の性感地区内ではいつものドスケベセックスができるが、準性感地区ではオーラルセックスのみが許可されている。また、ドスケベ可能地域であっても首からSHO公認許可証を下げていなければ、生ハメはできない。その上で両者合意の上でなければできない。要はゾーニングがなされたのだ。
精
「それで、お前に交尾許可証のプレゼントだ。『同性愛者』のな」
何より同性愛が認められたのだ。それを理由に断ってもよくなった。まだまだ差別意識はあるが、次第に偏見もなくなっていくだろう。
精
「……やっと……やっと……! お前が気持ちよくドスケベセックスできる青藍島になったぞ……卵……! お兄ちゃん、頑張ったよ……!」
あの日、卵と誓って、果たせなくて、何もかも失って、やっと、やっと約束が果たせた。涙が止まらない。拭っても拭っても視界が滲む。ああ、こんな情けない姿を見せに来たわけじゃないのに。
淳之介
「……お前は本当によく、頑張ったよ……同じ『兄』として、尊敬するよ」
淳之介君泣きながら励ましてくれた。
糺川
「自分が一番やりたいと思ったことを成し遂げた……お前を好きになって本当によかったよ、精」
礼先輩も泣きながら励ましてくれた。
精
「お前の、おかげで、こ、こんなに幸せになれたよ、俺……! 俺は……お前に、どうしても言いたかったことがあるんだ……! だ、だから……言わせてくれ、卵……!」
涙でボロボロになりながら、一番言いたかったことを言う。
精
「卵、生まれて、きて、くれて、生きて、くれて、あり、がとう……! 本当に、ありが、どう……!!!」
墓に抱き着いて大泣きする。これを言いたくて、どうしても言いたくて、でも言えなくて、だから頑張った。たとえ届かなくとも構わない。俺が俺のために言いたいのだから。
淳之介
「精……きっと卵ちゃんにも届くさ」
糺川
「こんなにも空が青いんだ。天国の卵ちゃんからも見えるさ」
ひとしきり泣いた後、鮮やかな空を見上げる。透き通ってどこまでも見えるかもしれない──青空がこんなにも綺麗だと思えたのは生まれて初めてかもしれない。
精
「……さて、礼先輩が黒ギャルになっちゃう前に帰りますか」
糺川
「相変わらずギャル好きだな……その、誕生日プレゼント、それでいいか……?」
淳之介
「だったら服は俺が選びますよ。俺と精のセンスは似ていますから精の好きそうな服、きっと分かりますよ」
3人で下らないことを話しながら帰路に着く。本当は言ってほしかった言葉があったが、もう卵は喋らない。だから、代わりに俺が呟く。
精・卵
「「ありがとう、お兄ちゃん」」
思わず後ろを振り返る。
淳之介
「……どうしたんだ精?」
精
「……俺はオカルトは否定しないんでね」
糺川
「墓場でそういうこと言うなよ!? ま、まさか……」
精
「……いたんですよ、裸の女の幽霊が」
礼先輩と淳之介君が同時に抱き着く。暑苦しいったらありゃしない。でも、悪くない。なんか、いい。
卵
「私の分も幸せになってね、お兄ちゃん」
新学期になり水乃月学園での生活が始まる。SHOも立て直したためSSも健在だ。
女部田
「おはよ~精くん……うわっ、どうしたのその目? 真っ赤だよ?」
精
「ああ、昨日劇痴女版デカチンジャー『フルマンデブラブラスルト・アクメション』見ましてね……バチコリ泣きました」
新学期早々重い話は無しだ。軽く笑ってごまかす。
女部田
「礼ちゃんとは毎日エッチしてるの?」
精
「俺は毎日でもしたいですけどお互いの体調がありますから」
いくら礼先輩が風紀委員長だとしても『金色の狂犬』の性欲には追い付かない。なるべく礼先輩ASMRを使った自慰行為で我慢しているが、いくら
精
「集会前に一発どうです? 30秒あれば──あだっ」
糺川
「私の前でやろうとするな……我慢させて悪いとは思っているが、お前はたかが外れると激しすぎるんだ」
後ろから礼先輩に脇腹を小突かれる。
精
「いやー、だって礼先輩のおまんこが気持ちよすぎて──あだっ」
糺川
「そういう話は後だ、郁子と一緒に集会の誘導を頼むぞ」
女部田
「レイちゃ~ん、時間があったら精くん借りてい~い? ダーリンは攻略できなさそうだしさ~?」
郁子先輩は淳之介君を狙っていたのだが、文乃ちゃんの存在に勝てないと悟り俺の隙間股間を狙っている。
糺川
「……私に連絡をくれるなら考えてやろう。だからまずは誘導だ」
3人で誘導を終え、集会に参加する。
冷泉院
「改めまして、再びSS代表兼生徒会長の役目を仰せつかりました、冷泉院桐香です。これからもよろしくお願いします」
会長は相変わらず会長だ。カリスマもプライドもそのままに、新しい理解の形を知って勇往邁進と言ったところか。演説は適当に流して──
冷泉院
「最後に土口さん、一言お願いします」
色々言いたいことがあったからちょうどいい。壇上に上がってマイクを握る。
精
「一言と言われましたがちょっと長く話します。俺は青藍島が嫌いでした」
一同からどよめきが聞こえる。今回の事件の立役者がこんなことを言うのだから無理もない。
精
「卵を見捨てた奴はいまだに許したくありません……でも許さないと言って変わらないでいるのは、もっと許されないことです」
当然だ。青藍島は変わっている最中だ。意固地になって不変を貫くのは良くない。
精
「変わっていくもの、変わらずに貫くもの、それを見定めて生きていくのが大切なんだなと今回の件で学びました」
それでも俺は『金色の狂犬』で居続けたい。
精
「なので……これからも『金色の狂犬』、土口精をよろしくお願いします!!!」
一礼して壇上から降りる。それなりの声援が聞こえてくる。『金色の狂犬』も恐怖の象徴じゃなくなる日は遠くなさそうだ。それはそれでちょっと残念だ。購買部のパン購入が面倒になる。
冷泉院
「──頑張ってくださいね、土口さん」
精
「あなたに言われなくても頑張りますよ──
振り返らなくても分かる。あのエメラルドのような目を開いて驚いている事だろう。
放課後になりSSの訓練を始める。本格戦闘が無くなったからと言って体を鍛えるのを怠って良い訳ではない。
糺川
「……本当にいいのか? 何も私が教官にならなくたって、お前は自主トレとかできるだろ?」
精
「何言ってるんですか。俺はまだまだ強くならなきゃいけません。淳之介君に勝ち続けるため、卵の誇れるお兄ちゃんで居続けるため、礼先輩を守り続けるため……それらが全部できる『金色の狂犬』であり続けるため」
またいつこのような大事が起きるか分からない。備えておいて悪いことはないだろう。
精
「それに……礼先輩と一緒にいたいですから。出来る限り、どんな時でも」
これが一番の理由だ。大好きな人といつまでも一緒にいたい。でも、いつでも一緒にいられるわけではない。だから、一緒にいられる時間は多くしたい。
糺川
「……ふっ、そうだな。お前を導くことができる人間は私しかいないだろうからな」
礼先輩も笑ってくれた。
糺川
「……ここからは新しく始めるんだ。呼び方も改めてもらおう」
精
「分かりました、礼」
こう言うことだろう。礼の顔がちょっと赤くなる。
糺川
「……流石に人前ではやめておくか。2人きりの時は──」
精
「いいじゃないですか、俺と礼の仲なんですから」
糺川
「……ほう、訓練中に教官に歯向かうとはな? 一番隊でだいぶぬるま湯につかっていたようだな?」
礼の目がマジになる。これは今日の訓練は激しくなりそうだ。
精
「改めてこれからよろしくお願いします────『礼』」
糺川
「舐めるような真似はまんこの前だけにしろ! この『金色の狂犬』!」
さて、頑張りますか。
次回で一旦一区切りとさせていただきます。