抜きゲーみたいな島に住んでいる狂犬はどうすればいいんだ? 作:神剣狩刃
卵を目にした俺は泣き崩れた。そして大泣きした。死んでもう二度と会えないと思った人間にもう一度会った時の感動なんて誰にも分からないだろう。
精
「卵……! 卵……!!! らああああん!!!」
卵
「お兄ちゃん……その、中に入った方が良いよ? 事情を知らない人が見たら不審者だから……」
人間は困惑を極めると逆に冷静になるのかもしれない。卵に促されて家に入る。何も変わっていない。いや、大きく変わっている。卵がいる。
精
「卵……! 本当に……卵なんだな……!?」
乾ききっていない手で卵の頬を触る。もっちりぷにぷにだ。懐かしい。
卵
「そうだけど……また光姫さん呼ばないと……」
精
「待ってくれ卵……! 光姫さんにはもう言ってあるから……! 色々話をさせてくれ……!」
今はただ卵と話がしたい。何でもいい。日常の些細な事、学園での出来事、今までの思い出。とにかく話がしたかった。卵は何が何だかという顔をしながらタオルを持ってきた。
卵
「風邪ひいちゃうから……しっかり拭いて服を着てからね?」
卵が差し出したタオルを受け取る。安っぽくてちょっとごわっとしている。それでも、今まで受け取ったどんなタオルよりも暖かくて優しかった。タオルに顔をうずめて、うずくまって大泣きする。
卵
「よしよし……記憶障害ってこんな風になることもあるのかな……?」
卵から頭を撫でられる。ぎこちないが温かくて優しかった。
ひとしきり泣いてすっきりして服を着て改めて卵と話す。卵の話によるとあの日の事故は起きているが、俺は何とか卵を助けられた。卵に苦労させまいと俺は狂ったように勉強と訓練をし、飛び級もして史上最年少で特殊戦闘部のリーダーになった。ただ、その苦労が原因で心因性の記憶障害を患ったという。卵のために頑張っておいて卵を不安にさせるなど本末転倒もいいところだ。
精
「……心配かけてごめんな、卵……」
申し訳なさから自然と卵の頭を撫でていた。サラサラの髪が気持ちいい。卵は嬉し恥ずかしそうに笑っている。
卵
「…………大丈夫だよ。久しぶりにまともなお兄ちゃんを見れたかも。嬉しいな」
精
「……俺の記憶障害ってどんな感じなんだ?」
卵
「毎日半分ぐらい忘れちゃうの。でも、体の動かし方とか技術は体が覚えてるみたいで、お兄ちゃんは『金色の狂犬』って呼ばれるぐらいものすごく強いの」
こちらの世界でも『金色の狂犬』なのか。とりあえず俺の情報としては"物忘れが激しい"と"『金色の狂犬』と呼ばれている"が分かれば十分だ。今度は卵の情報が聞きたい。
卵
「私は
なんていい子なんだ。こんな妹を持てたことに感謝しないと。
卵
「だから今はSSで『
精
「物騒だな……卵はそんなひどい奴じゃないのに」
卵が気まずそうな顔をして目を逸らす。ウソだろ? もしかして時代錯誤のスケ番の噂は本当なのか?
卵
「……その、強くなるためには形からかなーって思って……」
精
「そのイメージがスケ番なのか……?」
卵
「だ、だって、家にあった強そうな女性モノがスケ番モノしかなくて……」
そういえば死んだ父さんが好きだったなと思い出す。と、同時に疑問が湧く。
精
「デカチンジャーの
卵
「デカ……チンジャー……? 何それ?」
精
「ほら、恥丘署が舞台の戦隊モノの……」
卵
「あー……お兄ちゃんが昔好きだったヤツ?」
どうやらこの世界の俺は両親の事故をきっかけにデカチンジャーを卒業していたらしい。こんなところで別人だとバレるわけにはいかない。
精
「まあ、卵が『やりたいようにやれ』てるならお兄ちゃんとしては何も言わないよ」
卵
「…………お父さんみたいなこと言うんだね、お兄ちゃん」
精
「えっ? ああ、まあ、男は父の背中を見て育つからな」
恐らくこの世界でもこの言葉は言われているのだが、それは礼からではなく父さんから言われた言葉らしい。卵が複雑な顔をしている。急に死んだ父の言葉を持ち出されて驚いているのだろう。
精
「任せろ。お兄ちゃんはお前との約束を守ってやるからな」
卵が目をかっぴらいてひどく驚いた顔をする。
卵
「やく……そく……」
精
「お前が気持ちよくドスケベセックスできる青藍島にする……たとえ記憶障害になってもこれを忘れるわけないだろ?」
卵が面を喰らってぽかんとしている。あんぐりと開いた口がまた可愛い。そして卵はにこっと笑った。
卵
「うん! 私のために頑張ってね、お兄ちゃん!」
卵からこの言葉が聞けるだけでどれだけ救われることか。録音していつでも再生できるようにしたいが、流石にそんなことをしたら怪しまれる。そろそろ帰らないと光姫姉さんも心配するだろう。今日はバブみ保育園に戻るとしよう。
精
「また明日も来るからな。一人でもしっかり寝るんだぞ」
卵
「大丈夫だよ。お兄ちゃんも光姫さんに迷惑かけちゃダメだよ」
笑顔の妹に見送られながら家を後にする。心から満たされた俺は淳之介君達に連絡を──
精
「しまった。スマホ脱衣所においてきたままだ……」
スマホを取りに駆け足で寮に戻る。寮の前に寝間着姿の礼がやれやれといった顔で立っていた。
糺川
「気持ちは分かるが……裸のまま飛び出すな。特殊戦闘部のリーダーの面目が丸つぶれになるぞ?」
ごもっともである。頭を掻きながらスマホを受け取る。
精
「話し合いはどうなりました?」
糺川
「…………私たちは元の世界に戻るということになったが…………」
礼が言葉に詰まる。何を言おうとしてるのか分かってしまった。そして。
糺川
「
想定通りの言葉が来てしまった。
精
「…………流石ですね、礼…………」
卵がいるかもしれないと聞いた時からよぎった選択だ。そして、卵に会ってしまったことで大きく傾いてしまった。
精
「……俺は礼に救われました。桐香様にも郁子先輩にも淳之介君にも救われました……皆との思い出はとても大切ですし……これからも作っていきたいですよ…………」
視界が滲む。体が震える。言いたくない。でも。
精
「でも……! でも…………! 卵とまた過ごせるっていうなら…………! 卵と生きていけるっていうなら…………! そのために思い出を全部捨てろと、礼への想いも捨てろと言われても…………!
今までの礼への想いが嘘な訳がない。心の底から愛してしたし、ずっと守っていきたいと、ずっと一緒にいたいと思っていた。でも。
糺川
「…………お前ならそう言うんじゃないかと思っていたよ…………分かっているさ。お前にとって卵は生きる意味、いや、
礼が俺を優しく抱きしめて頭を撫でる。俺が俺でなくなった時もこうして撫でてくれた。温かくて優しい手だ。でも。
糺川
「…………だから、最後にお前の愛が嘘偽りないものだったか確かめさせてくれ」
礼の部屋に一緒に入る。この世界では初めて来る部屋だが、元の世界と大して変わっていない。俺が居ないせいかやや物が片付いていないぐらいだ。2人でベッドに腰を掛ける。
糺川
「……どうする?」
精
「……礼の望み通りにしますよ」
糺川
「じゃあ……お前がリードしてくれ」
その言葉に頷いて唇を交える。柔らかくて、温かくて、でも、しょっぱい何かで濡れていて。
糺川
「……泣かないでくれ。最後くらい笑って気持ちよく別れたいんだ」
精
「……善処します」
今度は舌を入れて唇を交える。絡み合い、求めあって、でも、全く満たされなくて。
精
「……もう、我慢できません。ごめんなさい、礼」
耐えきれなくなって礼をベッドに押し倒し、寝間着と下着を脱がす。礼の匂いがふわりと、雌の匂いがむっと部屋に広がる。礼の顔は嬉しそうにも悲しそうにも見えた。
糺川
「……来て、精……精の全部、受け止めるから……」
その想いを踏みにじってはいけない。こんな時でもガチガチに怒張したおちんちんを礼のおまんこに挿入する。熱くうねる肉の道をかき分け、あっという間に礼の一番奥まで届く。
糺川
「んんぅ……い、一気に来たな……このまま抱き合いたいんだ」
言われるがままに礼に抱き着く。柔らかな乳房が形を変えて礼の心臓の鼓動を伝えてくる。とくんとくんと頑張って動いている。
糺川
「……精、大好きだ。愛している。この世界の、いや、どの世界の誰よりも愛している……精は?」
精
「……愛していますよ。許されるなら礼をこの世界へと奪ってしまいたいです」
それができればどれだけいい事か。そうすればきっと俺は幸せなはずだ。でも、そのためにどれだけの人が悲しまないといけないか。だったら皆で悲しみを背負えばまだ納得できる。
糺川
「その言葉が聞けて良かったよ……我慢させちゃったな。動いていいぞ」
今は余計なことを考えるのは止めよう。礼に想いを伝えよう。ゆっくりと腰を動かす。引いても押しても締め付けてくる名器はこの世界でも変わらないようだ。
糺川
「んっ、あぅ……え、遠慮しないで……激しくしていいから……」
その言葉をきっかけに礼に激しく打ち付ける。ばちゅんばちゅんと肉がぶつかる音と、ぐちゅりぐちゅりと重い粘液の音が部屋に響く。気持ちいい。気持ちいいのに。
精
「礼……! 礼……! 大好きです……! 愛しています……!」
言葉を叫ぶ度に胸が締め付けられる。心は本当なのに、それを簡単に手放せてしまう自分の薄情さが嫌だ。
糺川
「わ、私も……大好きだ……! 愛してる……! 今も、すごく、んぁ、気持ちいいから……! 精も……気持ちよくなって良いから……!」
いっそのこと薄情者と突き放してくれれば割り切れたのに。こんな時まで礼は俺のことを考えてくれる。それに応えることが一番辛い事なのに。でも、本当に気持ちいいからもう限界で。
精
「礼……! もう……出る……!」
糺川
「うぁ、んん……い、いつでもいいから……精の好きなタイミングで出していいから……!」
言い終わるか否かのタイミングで果てる。鍛えられた体から放たれる射精は元の世界とは比にならないほどの勢いと量で、あっという間に礼の中を満たし溢れさせた。
糺川
「イッ……っくぅぅぅ……!!!」
熱い濁流に呑まれた礼も潮を吹きながら絶頂を迎えた。その勢いでおちんちんが抜けてしまったが、まだ射精が終わっておらず礼の体を白く染める。
糺川
「っはぁ、はぁ、い、いっぱい出てるな……そんなに気持ちよかったか……?」
精
「……はい。今までのどんなセックスよりも気持ちよかったです」
そんな訳はないのだが、礼との最後のセックスだからこういうべきだろう。礼は嬉しそうににっこりと笑った。
糺川
「なら……よかったよ……最後にもう一回抱き合っていいか?」
精
「……もちろんです」
お互いの色々な液にまみれて抱き合う。温かい。優しい。でも────早く卵とこうやって抱き合いたいなという思い勝ってしまった。
最後の交わりを終えて、二人で軽く体を流して服を着る。そして寮の前まで送ってもらう。さよならの時が来た。何も言わずに一礼して礼に背を向ける。
糺川
「……泣くなって……いっ、言っただろ……だっ、大隊長、め、命令だぞ……」
笑っている。笑っているんだ。たとえ目から涙を流していようと、笑っているんだ。だって、最後くらい笑って気持ちよく別れたいと礼が言ったのだから。
精
「…………さよなら、糺川礼」
ただ一言を遺し歩き出す。背後で誰かの泣き声が響いた。澄んだ夜空のどこまでも響いた。それでも振り返らず歩き続ける。俺ではない誰かが、きっとあの泣き声を止めてくれるだろうから。