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部屋の中央で、ベルは静かに正座をしていた。 その姿はまるで罪人のようで、床の感触すら冷たく感じられた。 視線の先では、カイルが椅子に腰掛け、その膝の上にアイズが静かに座っている。
「……カイル」 アイズが小さく彼の名を呼ぶ。伏せたまつ毛の奥で、頬がほのかに赤く染まっていた。
「何だ、アイズ」 カイルの声にはいつもの高圧的な調子があったが、アイズに対してだけはどこか柔らかさがにじんでいた。
「もっと……触ってもいい?」
カイルは微笑んで、彼女の髪を指先でそっと撫でた。
「ああ、好きなだけ触れ」 その言葉に、アイズはほっとしたように胸元に身体を寄せた。
ベルは視線をそらそうとしたが、どうしても二人の親密なやり取りが目に入ってしまう。 胸の奥で嫉妬と無力感が絡まり合い、息苦しさが込み上げた。 彼女の穏やかな笑みが、自分の存在を遠ざけていくように感じられてならなかった。
「なあ、アイズ。あいつのこと、気になるか?」 カイルが意地悪く尋ねる。
「……ん、別に」 アイズは一瞬だけベルに目を向けたが、すぐにカイルへと視線を戻した。
「そっか。じゃあ、俺だけを見てろ」 カイルはそう言うと、アイズの顎を軽く持ち上げ、その唇に静かに口づけた。
アイズは目を閉じ、素直にそれを受け入れる。
ベルは拳を握りしめ、ただ黙ってその光景を見つめることしかできなかった。 胸の内では焦燥と怒りが交錯し、膝に置いた手は震えていた。 汗が滲み、背筋に冷たいものが這う。自分だけが排除されたような感覚に、心が軋んだ。
顔を伏せ、震える拳を握り直す。無力さが骨の奥まで染み込んでいく。 誇りも、尊厳も、何もかもが崩れ落ちていくような錯覚に襲われていた。
「やっぱり、気分を変えるか」 カイルがふと表情を変え、ベルに視線を向けた。
「おい、ベル。両手を顔の前に持ってきて、掌を上に向けろ」
ベルは戸惑いと不安の入り混じった顔をしながら、言われたとおり正座の姿勢のまま両手を顔の前に持ち上げる。 その格好は、まるで何かを乞うようで、ひときわみじめに見えた。
羞恥と屈辱が全身を包み、頬が熱を帯びる。 この姿を彼女に見られていることが、何よりも耐え難かった。 なぜ自分だけが、という思いが胸の奥に渦を巻き、唇を強く噛むしかなかった。
そんな中、カイルはアイズの耳元に口を寄せ、ベルには聞こえないように小さな声でささやいた。
「なあ、アイズ……次は、」
アイズはわずかに瞬きをして、カイルの目を見つめると、ゆっくりと頷いた。
静かに立ち上がる。 アイズの動作には、ためらいと覚悟が滲んでいた。 その場の空気が、ひときわ緊張を増す。
ベルの目の前に立った彼女は、何も語らず、視線を落とすと、そっと指先を腰元に添えた。 薄布の中で、指が静かに動く。
小さく揺れる腰と、かすかな布ずれの音。 その手の動きが何を意味するのか、ベルには痛いほど明白だった。
アイズは、下着を外したのだ。
ただそれだけの動作が、空気に熱を持たせる。 掌の上に届く微かな体温が、逆に現実感を増していた。
目の前に立つ彼女が、何をさらけ出しているのか。 その事実が、言葉にならない重みとなって、ベルの内側を押し潰していった。