東方二次創作劇場「月と太陽」 - 月の章 - 作:俄かさん。
「あれ?どうかしたんですか、『センパイ』?」
すいぶんと下の方から聞こえるその声で、「また」我に返る。
どうやら、また「夢をみていた」らしい。
けれどその夢の内容は、どうにも思い出せない。
なのにその夢の余韻を引き摺るように、途方もない無力感と悲しみで胸が締め付けられていた。
「ふぁっ」
不意に股の付け根から走る「甘い」痛み。
たまらず小さく声を上げながら、その痛みの根源を探ろうと目線を動かした瞬間、「彼女」と目線が重なる。
「ごめん、センパイ。『痛かった』?」
「あ、う、うん、ちょっとだけ」
申し訳なさそうに謝る彼女に「大丈夫」だと答える傍ら、今の今まで彼女が自分に何をしていたのかを見なくてもそれとなく察する。
もうこの頃に至っては彼女の美しい「裸身」も、そしてその白くしなやかな指先が奏でる「手ほどき」もすっかり慣れたものになっていた。
けれど気を抜いてしまうと、たまにこういった「痛み」を受けるときも、ごくごく稀にある。
「相変わらず」鎖に繋がれたまま大人しく身を委ねていると、徐々にそこから込み上げてくる「何か」を感じていく。
「……来そう」
いよいよそれに堪えきれず、ぽつりと呟くように彼女にそう告げる。
「あは、『早い』ですね、センパイ?……じゃあ、どうします?『口』か、『手』か。言わないと『許しません』」
そんな此方の様子を目の当たりにした彼女は、実に意地悪く「小悪魔の笑み」を浮かべながら問い返す。
それまで擽るようなその指使いでさえ、今にも「迸りそうな衝動」をせき止めるかのように「強く痛い」ものに変わる。
「う、ぁっ……」
「ほら、どうしたんですか、センパイ?早く言ってくれないと、『楽になりません』よ」
まるでじわりじわりと小動物を甚振るかのような口ぶりとその指使いで、ただ悶えるだけの自分を容赦なく彼女は追い詰める。
それに耐えきれず、彼女のその「手の中で果てること」を選ぶことを余儀なくされる。
その瞬間。
「あ」
それまでせき止めていた彼女の指先が離れると同時、何かが「突き抜けて」いく。
鎖の音色を鳴らしながら、顔を紅潮させるままに、小刻みに身体を震わせる。
そこからの「爆ぜんばかりの迸り」を、彼女は実に愉しそうにその掌で受け止めていた。
「……ねぇ」
「なんですか、センパイ?」
そうやって尽き果てた後、なんとも言えない倦怠感を感じながら、それとなく彼女に声をかける。
「白く穢れた」掌を塗れた手拭いで拭き取り、怪訝そうな顔をして彼女は緩やかに首を傾げる。
「わたし、『生きてるのか』、『死んでるのか』、ときどき分からなくなることがある」
どうしてそんなことをここで言い出すのか、「まるで」よくわからない。
それは、ほんとうに「無意識のうちに」紡がれた言葉。
そしてここにきて、今の今まで自分が「泣いていた」ことを今更のように悟った。
「なに言ってるんですか、センパイ。……『生きている』に決まってるじゃないですか」
そんな呟きめいた問いかけを、あっさりと彼女はそう「断言」せしめる。
そうしていつの間にか携えていた「赤い輪のようなもの」を静かに翳していく。
それが何なのかを確かめる暇もなく、吸い込まれそうなその翠の瞳に「魅入られていく」のを感じた。
「センパイは『生きてます』。だから、安心して……」
わ た し の も の に な っ て く だ さ い 。
首に巻き付かれた「それ」の留め具がかけられた瞬間、「また」意識が深い闇の中に沈んでいくのを感じていった……。