東方二次創作劇場「月と太陽」 - 月の章 - 作:俄かさん。
それはまだ夏の盛り、盆が過ぎても尚、真夏の強い日差しがぎらぎらと照り付ける日のこと。
この直近においては、とある日を境に四季の垣根を飛び越えた様々な花々が突然と一斉に狂い咲き乱れ、それが幻想郷一帯を瞬く間に埋め尽くしていった「かの異変」を前に、その原因が分からぬまま馳せ参じた猛者たちがそれぞれの思惑と意図を胸に狂乱の宴を演じたことが未だ記憶に新しい。
「ったく、あんたはなんであちこちで悪さばかりすんのよ?ちょっとは振り回されるこっちのことも考えてごらんなさいっ」
「う、うぇえ、れ、霊夢!く、くるしいぃ」
「妖怪の山」の麓にある「大蝦蟇の池」で片っ端から蛙を氷漬けにして弄んでる「邪妖精」がいるという通報を受け、この炎天下の中「緊急出動」を余儀なくされた霊夢は、下山がてら苛立ち交じりにその犯人である「氷の妖精」をヘッドロックでギリギリと締め上げていく。
「に、しても、あんた当たり前といえば当たり前だけど、ひんやりして涼しいわね。このまま持ち帰って抱き枕にでもしようかしら?」
「や、やめてくれ、あたい、ちぬ、溶けるぅうう」
いつもの巫女服につばの大きめの麦わら帽子を被った霊夢は、ヘッドロックついでにべったりとその妖精にへばりつく。
元より炎天下の只中にいることと、ヘッドロックで首が容赦なく締め上げられるのに加え、そのダメ押しの霊夢自身の体温をまともに受けた、かの妖精は早くもココで墜ちかけ、そんな頃合いで横合いから二人は誰かしらに声をかけられる。
「你好、霊夢サン、チルノサン。こんな暑い中、お二人で仲良くお散歩デスか?」
「……あら、『美鈴』じゃない。久しぶりね。って、ああ、なんだ、いつの間にこんなところまで来てたのか」
「ああ、覚えていてくださいマシたか。本当に『あの日』以来で。実にお久しゅうございマス」
妖怪の山を下りきった先に広がる「霧の泉」のほとりにある深紅の洋館「紅魔館」。
あれからなんだかんだで知らないうちにそこに辿り着いていた霊夢は、偶然にもその館の「門番」である「紅美鈴(ほん・めいりん)」と再会を果たす。
淡い緑の中華帽を被り、同色の華人服とチャイナドレスを組み合わせたような裾丈の長い衣服を纏った、赤い髪の長身の女性。
起きているのか寝ているのか傍目では分かりづらい糸目。悠然と唯一の出入り口であるこの門を背に立ち、緩やかに腕を組んで佇む柔らかなその物腰と、口元に湛える優し気な笑み。
その全ては「あの日」とまるで変わってなどいない。……そう懐かしんだその時。
まるで難解な「間違い探し」の最後のピースを目ざとく探り当てたような勢いそのままに、霊夢は彼女の「変化」を正確に指摘する。
「あれ、美鈴?髪切っちゃったの?あの時はロングだったでしょ?」
「おお、気付きマシたか。流石、博麗の巫女殿はお目が高い。実はあんまり暑くて暑くて、いつまでも髪伸ばしっぱなしにしてても煩わしかったので、思いきって『咲夜サン』に切ってもらいマシた」
「咲夜、ねぇ。あの『瀟洒なメイド』もなんだかんだいって面倒見がいいのね」
「ええ、それはもう、あの咲夜サンデスから。っと、で、どうデス?似合ってマス?」
その指摘を受けた美鈴はさも嬉しそうにあの頃よりも軽くなった髪を揺らしながら微笑む。
澄ましていればその見た目通りの「華人」。されどその実態は、まぁ、さておくとして「ああ、そうそう」と、ぽんと美鈴は手を打つ。
「時に霊夢サン、そろそろいい加減チルノサン『解放して』あげたらどうデス?……泡吹いてますヨ、彼女」
「え、あ、ああ、いけないっ、すっかり忘れてたわ(ぽいっ)」
「うきゅう☆(ばたーん)」
既にライフゼロの氷の妖精をここで霊夢はあっさりとその場に「ポイ捨て」する。残機?コンテニュー?そんなモノなどはない。
「ばったんきゅー」と両目をぐるぐる回して口から泡吹きながらぐったりと伸びているそんな憐れな妖精を前に、静かに合掌する美鈴。
「これ、どうしよう?」「ああ、『見なかったコト』にしマスか?」、ここに来て二人はこの妖精の処遇についてひそひそと小声で示し合わせる。
「と、あ、そうデシた。我が『主』よりひとつ霊夢サン宛てに伝言預かっておりマシて」
「ああ、『おぜう』ね。あの子がわたしになんて?」
「おぜう」。この館の主である「吸血鬼幼女」に付けられた不名誉なる「仇名」。
その仇名を聞いたらその主はそれこそ駄々っ子のように地団駄を踏んで怒り狂うのが簡単に予想できるが、ともかくとして。
「『ここ最近何の音沙汰もなしとは如何なるモノか。たまにとは言わず毎晩でもウチに来い。我が自慢のメイドの拵えた茶菓子を用意して待っている』とのことデス」
「はぁ、何言ってるの、あの『おぜう』。宴席のときはいつも決まって顔を合わせてるし、『永夜の異変』の時だって、こっちは頼んだ覚えもないのに咲夜を引き連れて勝手に出張って来たくせに?っとに甘えん坊なんだから?」
「まあまあそう邪険にしないでくだサイ。ああ見えてもおぜうサマも霊夢サンのコト、『大好き』なんデスから」
そうそう、私もデスよ、とここで器用に片目でウインクする美鈴。しかし糸目なのでそれは正直分かりづらい。
それを受けて、なんともこそばゆい感覚に決まり悪そうに霊夢は頬に左手をあてて微妙な顔をしてみせる。
「というか、おぜうが絡むと決まってあの『妹』も飛んでくるのよね。いつも決まってわたしを巡って『姉妹喧嘩』おっ始めるし、それを止めるのも結局わたしになって?……だから嫌なのよ」
「あはは、それは災難デスネ。おぜうサマはまだしも『妹サマ』もなかなかの『猛者』デスしね。お二人揃って取っ組み合いの喧嘩なんか始められた日にはそれこそ『流血沙汰』にもなりかねまセンし、かくいう私もいざその喧嘩を止める際には、『どうか生き延びられマスように』と必ず天に祈りを捧げてから臨むコトにしてマスし?」
頬に左手をあてたまま、やれやれとため息をつく霊夢を美鈴は優し気な目線を投げかけがてら相槌を打つ。
そんな二人のやり取りは、ただの「知り合い」の域を越え、それこそ仲の良い「姉」と「妹」のようだ。
「ふーん、美鈴も大変ね。あ、そうだ。美鈴って、宴席の時もあの時も、なんだかんだで『居なかった』わよね?」
「ま、曲がりなりにもこの館の『門番』デスから。ここから離れることは『原則』許されまセン。『永夜の異変』の際には、『私も連れてってくだサイ』って咲夜サンに泣きついたら、『主が館を空けるのに誰が留守を預かるんだ、このウスラボケ』とヒール履いたそのおみ足で足蹴にされマシたし」
「そ、そう、そんな裏事情があったのね、嫌なこと思い出させてごめんなさい。……、ああ、それより?」
それまで頬にあてていた左手を放しがてら、改めて霊夢は美鈴と向き直る。
二人の間をそのタイミングで生温い風が吹き流れる。
「……『不思議な話』ね。かつては『敵と味方の関係』だったわたしたちが、今こうしてまるで『古くからの友人のように』語り合っている」
その風に吹かれ、互いの髪が弄ばれるように揺れながら切り出した霊夢の言葉に、美鈴はうっすらと双眸を開いて彼女を眺めた。
しかしそれもまたすぐに普段の糸目へと戻り、刹那の間に真一文字に結ばれていた唇すら柔らかな笑みをまた湛えていく。
「それはネ、霊夢『小姐』。『貴女のおかげ』デスヨ」
「え、わたしのおかげ?……わたしは『特に何も』?」
予想だにしなかった美鈴のそんな切り出しに戸惑いの表情を露わにする霊夢の右手を、「少しだけ失礼」と美鈴は自分の両手でそっと包み込む。
それまでそれなりの間合いを保ちながら立っていたはずの二人であったが、美鈴は霊夢の知らぬうちにその間合いを『詰めてみせた』のだ。これには、さすがの霊夢も驚きを隠せない。
「貴女は『あの日』、ここで待ち構えていた私を打ち負かした際、『敵であるはずの』私にこの手を差し伸べてくださいマシた」
僅かばかりの沈黙の後に静かに切り出されたその美鈴の言葉に、霊夢はその時の光景を思い出す。
そう、それは紛れもなく、彼ら「紅魔館」の面々が企てた「紅霧異変」での出来事。
そしてそれは、初めて霊夢たちが解決に乗り出した「はじめての異変」。
「ああ、そんなこともあったわね」
感慨深げにそう呟く霊夢の様子を優しく見守りながら、「ええ、そうですヨ」と美鈴はにっこりと微笑む。
しかしそんな穏やかな顔もまた翳りを帯びてどこか哀愁の籠った切ないものとなる。
「あの異変のそもそものきっかけになったのは、我らが主の『我儘』だったコトはご存知のコトと思いマス。今もこうして肌すら焼き付くような強い陽の光は、吸血鬼であられマス主にとっては、『害悪』でしかありマセンし。故にここを起点にあの『紅い霧』で幻想郷一帯を覆い尽くし、間接的ではありマスがこの幻想郷から『太陽を奪った』」
「……そうだったわね。ほんとこっちはそのおかげで『いい迷惑だった』わ。わたしは嫌だったんだけど『魔理沙が』無理矢理引っ張りだすもんだから、それで仕方なく」
「そ、それはなんと。……では魔理沙サンが強引に霊夢サンを巻き込まなければ、霊夢サンはこれすら放置するおつもりだったんデスネ。と、とりあえず霊夢サン側の裏事情はこっちに置いときマシて」
それまで握っていた霊夢の右手をそっと離し、わざわざ「よっこいしょ」と大袈裟なジェスチャーをしてのける美鈴。
そこから仕切り直しとばかり、またいつものように緩やかに腕を組みがてら、それでいてまた神妙な面持ちで語りだす。
「しかしそれも我々からすればそれ以上の意味合いも含んでいた。月並みな言い方になりマスがそれは言うなれば『扇動』」
「そしてその扇動によって幻想郷に住まうすべての者を混乱と恐怖に陥れ、同時に主の名をこの幻想郷中に轟かせ『主の名』と『畏怖』で以って『支配せしめる』」
「もし、仮にその目論見を阻もうとする輩が現れたならば、速やかにこれを『排除する』。その為には『手段すら選ばず』コト次第によってはその者を『殺めるコト』すら『厭わない』。……無論、霊夢小姐、『貴女もネ』」
そんな不穏な言葉を言い終わらぬうちに、美鈴は予備動作もなしに霊夢の喉笛へと左拳打を突き付け、その寸前で「止める」。
止めこそすれ、その薄く開いた冷徹な眼差しは、それこそ彼女が「本気だった」ことを言外に示さずとも如実に伝える。
これにはさすがの博麗の巫女ですら微動だにできず、寸止めとはいえその拳圧で吹き飛ばされた麦わら帽子をそのままに、やがて引き戻されていくその拳の行方をただ呆然と眺めるしかない。
それを見た美鈴は、「ごめんなサイ」と罰の悪そうな笑みを投げかけ、地面に落ちた麦わら帽子を拾い上げて被り直してあげる。
「そんなともすればどちら側にも『死人』すら出かねない『殺伐とした状況』になりそうなところを、霊夢小姐。……貴女は『それすら』、『赦しませんでした』ネ」
「あたりまえじゃない。そんな死人騒ぎでも起こしたら、それこそ後味悪いったらありゃしない。そんなのずるずるいつまでも引きずること自体、そもそも面倒なのよ」
何を今更と霊夢は呆れたように腰に手を宛がい、嘆息交じりにふんぞり返る。
その仕草をあの日と重ね合わせ、美鈴はどこか懐かしむように双眸を細めた。
「それはそれで霊夢小姐らしい。だけどそのおかげで『それなりの負傷者は出たものの』、『誰も彼も死ぬコトなく』、結果的には『我々の敗け』でオチがつきマシたが、その後も何の禍根もなくこうして他愛のない世間話に花を咲かせ、そして宴席では肩を寄せ合い楽しく笑いながら杯を酌み交わすこともできる。それも、貴女があの時に提示した『スペルカードルール』のおかげで」
「スペルカードルール」。
互いにあらかじめ定められた『枚数」に応じた「手札」に宿した「能力」を用い、その発動に際してはその手札に応じた『技名」を『宣言』し、それを駆使しながら「殺し合うことなく」決着をつける。
それは言うなれば「決闘(デュエル)」。そしてそれは「単なる白黒をつけるモノではなく」、己がその技を「魅せる」闘いでもある。
「ああ。そういえば、その『弾幕勝負』をおっぱじめたのも、あなたたちを相手にした時からだっけ?……すっかり忘れてたわ」
「そ、それは流石にないんじゃないデスか、霊夢小姐。それではあまりにもあのルールに則って闘った挙句、敗けた我々が浮かばれまセン」
ここに来ていい雰囲気だったのを、あっさりとそのルールを出した側の博麗の巫女は盛大にぶち壊す。
そんなクラッシャーぶりにこの門番もただ愕然と頭を抱えて悶えるしかない。
それでもどうにかこうにか、美鈴は立ち直り、また改まる。その際にそれまでその両手で包んでいたこの巫女の小さな手から感じ取った「温もり」を思い起こすようにそっと自身の胸の前で組み合わせて。
「貴女に敗けたとき、私は恥ずかしながら『死を覚悟していマシた』」
そう切り出した後で、遠い遠い過去の記憶を探るようにしながら言葉を重ねる。
「『郷里』に居た頃のこういった『果たし合い』はそれこそ霊夢小姐が忌み嫌う『殺し合い』。それに勝てば良いデスが、敗ければ『問答無用』で『殺され』、死して尚も『その屍』すら『吊るされ』『晒され』『辱められる』」
その頃の記憶は果たしていつのモノか。今となっては、ただ朧げにただ曖昧にしか思い出せない。
それが百年前の記憶か、はたまた千年前の記憶かすらも判別つかぬほどに、この門番はその麗しき見目に反して途方もなく永い時を生きている。
そんな彼女の語りを「柄にもなく」真顔で霊夢はただ黙ったままそれに聞き入る。
それに深く感謝しながら、またゆっくりと美鈴は語りだす。
「でも貴女はそれもしませんでしたネ。尽き果て力なくこの門を背に凭れかかるだけの私に、ただぶっきらぼうにただ面倒くさそうに、黙って私にその手を差し伸べてくれた」
「私はそれが嬉しかった。そして同時に深く貴女に感謝しマシた。敗けても尚、こうやって『生き長らえられる』コトに」
そこまで告げた後で、胸の前に組んでいた両手を解いて、どこか恥ずかしそうに右の指で頬を掻く。
「その時の貴女はまるで『太陽』のように感じられマシた。この慈悲なき真夏の太陽ではなく、慈愛に満ちたあのうららかな春の時のような」
「バ、バカね?いくらなんでもそれはないわよっ。勝手に人を美化すんのも大概にしてっ!」
なんだか甘い愛の告白をするかのような美鈴の口振りに、たまらず霊夢は顔を真っ赤にして激しく両手を振りながら抗議する。
それを見た美鈴も「いやいや、コレは失敬、失敬」と彼女以上に顔を赤らめながら照れくさそうに頭を掻く。
「ひとまずその話はそこらに置いておきマショウ(どっこいしょ)、それからあの最終局面の盤面で、貴女と主があの時計台を背景に盛大な『弾幕勝負』を繰り広げる様も、私はここから見上げていマシた」
……それはまさしく郷里で見た旧正月の花火のように華やかで美しかった、と美鈴は添えて、どこかそれを懐かしむように紅魔館のシンボルともいえる、時計台を見上げる。それにつられ、霊夢もそちらへと目線を上げた時だった。
ちゅっどぉおおおおおおんっ!!
その時計台の側面の外壁が何の前触れもなく内側から消し飛んで、そこに大きな風穴を空ける。
「すわっ、何事!?」と驚愕する美鈴とは裏腹、「ああ、あいつか」と霊夢はげんなりとした顔をしてみせた。
「あーはっはっはっ、この『ネクロノミコン』と『グリモア』、この魔理沙さまが確かに頂いたぜっ!!」
「あ、待てっ、こん畜生!よりにもよってそんなけったいな『禁書』を二冊も持ち逃げしやがって、返せっ、今すぐ返せっ!」
「あァ、なんだこの『蝙蝠女』?悔しかったら取り返しに来いよっ、ばーかっ!!」
「なんだとはなんだ!あたしは『こあ』だっ。『小悪魔』だ!おまえみたいな矮小なニンゲンに『蝙蝠女』呼ばわりされるいわれなんてないっ、とにかく返せ!」
その風穴から勢いよく飛び出し、空中でじゃれ合う「通りすがりの魔法使い」と「図書館の番人」。
必死にこの紅魔館の超重要な資産を取り返そうと『小悪魔』は何度も執拗なアタックを仕掛けれど、それをせせら笑うように魔理沙は器用にまるでサーフボードのように箒の上に乗っかって余裕綽々と躱していく。そして小悪魔も大事なそれらを盾にされ、思うような攻撃ができずにいるのを、とても悔しがる。そんな鬼ごっこがいつまでも延々と続くかと思われたその時。
「ったく、いい加減しつけぇなあ?しょうがねぇ、コレでも使っとくか?」
「ひっ、そ、それは?」
唐突に突き付けられた小さな火炉を前に、愕然となる小悪魔。
そんな小悪魔を前に、魔理沙はまるで世紀末に現れるアンゴルモアの大魔王のような、とてつもなく邪悪な笑みを浮かべてみせる。
「恋 符 『 マ ス タ ー ・ ス パ ー ク 』 ッ !!」
その火炉から放たれる凄まじい「超々高出力ビィイイムッ」をモロに喰らい、「うぎゃーっ」とそのままひゅるりらーと霧の湖へと墜落していく小悪魔。
その様子を満足げに眺めた後で、へへっと得意げに鼻を擦ってから魔理沙は颯爽と「魔法の森」へと飛んでいく。
「ね、ねぇ、美鈴?あれって一応、『侵入者』よね?どうして気付かなかったの?……もしかしてあの時みたいに寝てた?」
「い、いや、そ、それは?少なくとも霊夢サンの気配を感じた時には、流石に起きてましたヨ?」
そんな一部始終を目の当たりにして、どこか引き気味に問いかける博麗の巫女。
その巫女の問いかけに、一足飛びで地雷を踏んづけに行く間抜けな門番。
瞬間、二人の周囲の空気が何の前触れもなく凍り付く。その不吉な感覚には、二人とも身に覚えがあった。
「あ、ああ、さ、咲夜サン」
いつの間にか美鈴の背後に立っていたあの瀟洒なメイド「十六夜咲夜(いざよい・さくや)」は、ゴゴゴゴゴゴと凄まじい殺気を伴いながら手にしていたナイフの切っ先をその喉笛へと突き付ける。
そんなメイドの顔を、あまりにも恐ろしすぎて博麗の巫女ですら「直視できない」。
「你这个白痴、以死亡为代价(バァアアアアアアン)」
「阿、只是拯救你的生命ッ……!!」
そんな状況を前にして顔を引き攣らせる霊夢を横目に、冷辣に美鈴しか分からないその言語で「処刑宣告」を告げる咲夜。
そしてまた美鈴も真っ青な顔で「母国語」で必死に命乞いをする。
そんな憐れな門番の命運はいかに?
そして、その一方で。
「あ、あたい、も、ダメ……」
ついでに「こっち」の命運はもうすぐ尽きそうな感じであった……。