ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング! 作:RAP
ゴブリン集落を壊滅させて全ての討伐部位を持ち帰り、コマクサの花も採取し、冒険者ギルド・中央広場支部に報告した。
コカトリス討伐の件も含めて、F級パーティ『
あとなにか1件ミッションをこなせば、C級認定はほぼ確実だそうだ。
まぁ、パーティの冒険者等級なんて暗黒大陸に行けば面白いようにあがるだろう。
僕個人はといえば、僕が単身でオークを倒した光景を聖女騎士レピアが見ていたらしく、わざわざ冒険者ギルドに寄って報告してくれていたとか。
ゴブリン集落の壊滅事態は聖女の協力があったかもしれないが、たかが13才のF級冒険者が単身でオークを真正面から斬り捨てたというのは相当な騒ぎになった。
冒険者等級の昇格試験もクリアして、今の僕はSのD級『
「一人前」のC級になるには成人男性を担いでかなりの距離を走ったりする試験がある。
女性冒険者がC級にあがれない理由だ。やろうと思えば僕もできるとは思うんだけど。
「古武術 介護」などのワードで検索してもらうとすぐに出てくるが、古武術の技術を利用して自分より30kg以上重い人間を運ぶテクニックなどが書籍や動画で紹介されている。
だから繰り返すが、別にできなくはない。でも昇格を急ぐ理由が欠片もない。
貴族学校を卒業して、暗黒大陸に行ってから個人の昇格をすればいい。
……等級なんて、どうせ勝手にあがっていく。装備を含めて根本から違うのだから。
今気づいたけど、発明家って二つ名はアロちゃんと被るんじゃ?
いや、僕がインベンターで、アロちゃんが発明家だから、いいのか?
革命はレボリューション、革命家はレボリューショナリー?
めんどくさ。いざとなったらこの二つ名はアロちゃんに贈呈しよう。
セルヨーネ侯爵家の裏手にひっそりと作られていたビケワ嬢の墓に、コマクサの花を添えた。
コマクサの花言葉は「誇り」「気高い心」。短い付き合いではあったが、彼女らしい花言葉だ。
……大事なことだが、彼女の死はまだ公表されていない。理由はわからない。
* * *
聖都カケルへの帰りの馬車内、僕は冒険前にクコロに言われたことを思い出していた。
『ミルヒとカカオに泣きながらお願いされた』と、クコロは言っていた。
ミルヒとカカオの双子に妾にしてと言われた時、僕は僕で将来のエース級人材かつ巨乳美少女になることが確定だから受け入れた。
実際、彼女たちは「勝ち組! 玉の輿! 保証された人生!」と飛び跳ねて喜んでいた。
だから僕の中で、ミルヒとカカオはバトさんのオマケであり、双子はワンセットの政略結婚で、愛情的なものを
原作五巻の「さっさと一発ハメて『女の味』ってやつを教えちまえばいいんですよ」「そんでまず一回覚えさせて……またヤリたがるようなら……こっちのもんでしょ」とふひひ笑いをしていたシーンが印象的だったのもある。随分と耳年増だったのか、それともこの世界で16才美少女なら、バトさんをいじりまくれるぐらい経験豊富だったんだろうか?
でも、この世界線は。
彼女たちなりに、僕の事を愛してくれていたんじゃなかろうか。
じゃなきゃ自分達の実力不足を嘆き悲しみ、泣いて増援を願ったりなんてしない。
妾への立候補だって、好意の下地があってこそだ。
バトさんが僕を好いてくれたからこそ、彼女達も僕に好意を抱いてくれた。
僕は双子をワンセットの駒扱いして、一人一人に目を向けていなかった事に気がついた。
初潮前なら
どのように双子を抱こうかと、エロ漫画家がプロットを練るがごとく色々と考えてはいた。
例えば、師走の翁神の名著「Please!Freeze!Please!」をリスペクトしつつアレンジ。
砂時計を用意して、双子の片方に「砂時計が落ちきるまで、動いてはいけない」と命じて色々する。もう片方の双子には「砂時計が落ちきるまで、僕は動かないから好きにして」と命じて色々してもらう。そうやって双子の気分を盛り上げていって、3Pしちゃうのはどうだろう、とか。
原作の時間軸まであと5年で、ミルヒとカカオは11才。
前世では女子小学生相当とはいえ、今世では結婚すら可能な立派な女性だ。
……女子小学生、か。僕は前世の知り合いのことを思い出す。
* * *
前世の知り合いに、小学校教師を目指す真性ロリコンがいた。
そいつの本棚はロリ幼女系アニメDVDでぎっしり埋まっているぐらい本物だった。
所持しているエロ本の傾向はお察しというやつだ。
地道な努力が結実し、無事に小学校教師となった彼に、飲み屋で祝杯をあげた。
新聞沙汰になったら『いつかやると思ってました』ってインタビューに答えるよ。
そう言って乾杯すると、彼は『気をつけるよ』と苦笑していた。
ある日突然、彼が色々と吐き出したいから飲み屋で聞いてくれと連絡してきた。
久しぶりに会った彼は、別人のように頬がこけ、暗い瞳をしていた。
両親に虐待、あるいは育児放棄をされている女子児童。
あるいは、母子家庭で父性に飢えている女子児童。
彼はロリコンではあったが、誠実で真面目な小学生教師でもあった。
そんな「信頼できる大人の男性」が、大なり小なり闇を抱えた女子生徒と出会うとどうなるか。
……彼女達の距離の詰め方が、まったく洒落になっていなかったらしい。
女子小学生とHな雰囲気になるなんて、エロ漫画の向こう側の世界だと思い込んでいたのに。
むしろ女子児童の方から、しかも複数の子が、積極的に迫ってくる。
彼は一気に日本酒を飲み干すと、絞り出すように吐き出す。
俺は彼女たちのことを何もわかっちゃいなかった。
彼女たちは子供じゃなくて、立派な女だよ。
父性愛に飢えた女の子が、授業でセックスの知識を得て、好奇心のまま飛び込んでくる。
俺の手を掴んで、自分のスカートの中に直接突っ込ませてくるんだぜ?
自分が何をしているのかを全部理解したうえで、彼女達は陶酔した表情で笑うんだ。
YESロリータNOタッチなのに、ロリータ側からタッチを強制してくる。
内心「お前がはじめた物語だろう」と思っていたが、続く彼の言葉に驚いた。
初潮前の女性は、焦らず回数を抱くといい。
ある日突然、変わるから。
その飲み会を最後に、彼とは連絡がとれなくなってしまった。
僕は死んでしまったから、彼がその後どうなったのかはわからない。
逮捕されて報道されたか、それとも逃げ切って
『初潮前の女性は、焦らず回数を抱くといい』という。
前世だったら光の速さで警察が飛んでくる全く役に立たないアドバイス。
……今世なら、ギリ参考になるか?
* * *
アドリ=ブヨーワ公爵家の聖都屋敷に戻ると、双子が泣きながらのハグで出迎えてくれた。
まだ抱かれてもいないのに、未亡人になんかなりたくないと彼女達なりに必死だったようだ。
「ユーリざまがぁ、ユーリざまがじんじゃうがどおもっでえええ」
「ぐごろざんにお願いじだんでずううう」
「二人の機転のおかげで無事に生き残れたよ。……ミルヒ、カカオ。本当にありがとう」
そう言って双子にキスをすると、彼女達は泣きながら笑ってくれた。
見ていたバトさんが苦笑する。
「今回の件でよぅわかったわ。そのうち暗黒大陸がー、とか言うとる場合やあらへんで? 後悔なく生きぃ。ミルヒとカカオにも、まだ手ぇ出しとらんのやろ? 安心させたりっ……」
バトさんが青ざめてよろめき、口元をおさえた。
全て理解していますよ、とばかりに公爵家のメイド長が木桶をすかさず運んでくる。
バトさんは皆の目の前でしゃがみこみ、たまらず胃液を吐いた。
メイド長が手慣れた様子でバトさんの背中をさする。
少量の未消化物と、胃液と、涎が木桶に吐き出される。
「若旦那様。
メイド長はそう言って、メイド達に冷静に指示をだしはじめる。
屋敷内全ての隠し木桶チェック。料理長の呼び出し。水分の多い果実の在庫確認、などなど。
まだ結婚式前だからユーリ様?
いや、もう書類は提出済みなのか? 若旦那様で正しい?
僕は今世で初の出来事を目の前に、完全に混乱して別の思考をしていた。
こういう時、男は役に立たないのよね。
そんな顔でメイド長は苦笑してから、手をパンパンと叩いた。
「さあ、さあ。バト様はこちらで寝室に案内し、
「……いや、せめて。彼女は。バトさんは、僕が運ぼう」
「恐れ入ります」
メイド長が僕に一礼する。
しゃがみこんで青ざめたままのバトさんに、僕は優しく声をかける。
「肩を貸すのと、抱えるのと、どっちが気持ち悪くなさそう?」
「……せやな……抱えてもらおか……」
バトさんは苦しそうに言う。
バトさんの両手を僕の首に回してもらい、僕は彼女の背中と膝裏を抱えて持ち上げた。
お姫様抱っこで、バトさんを寝室に運んでいく。
待機していたメイド達に手早く処置をされ、ゆったりとした服装になったバトさんは。
心配そうに見守る僕の頬にゆっくり触れながら、微笑んだ。
「女としての感覚が子を孕んだとわかる、なんやそんな事を公爵家の連中が言うとったな。確かにな、わかるで。おるわ。……腹ん中に、ユーリの子が」
「ありがとう……おめでとう? どっちだろ、わかんないや……言葉がうまく出てこない」
「こん子は、メアキやと、エエなぁ……」
バトさんの意識が段々薄れていくのがわかる。
僕は、僕の頬を撫でるバトさんの手を毛布にしまう。
「ウチに構わず……ミルヒとカカオを、よろしゅうな……」
「そんな。死ぬわけじゃないんですから。……ゆっくり寝てくださいね、バトさん」
魔法のない中世ファンタジー異世界の出産が命がけなのは、僕だってわかる。
だから、死ぬわけじゃない……というのは気休めの台詞にしか過ぎない。
バトさんの寝息を確認し、メイドが僕に声をかける。
「若旦那様、お風呂の準備は済んでおります。どうか疲れを落としてくださいませ」
「……そうだね。汚れた格好で、まして妊婦の寝室になんかいちゃいけない」
妙に落ち着かない。
色々な感情が、胸の奥で渦巻いている。
原作なんて、僕がこの世界に生まれ落ちた時から崩壊している。
実際、僕のガバチャーなんて、とうの昔に崩れたじゃないか。
散々ヤリまくっていたんだ、子供なんて出来て当たり前。
公爵家の連中だって散々孕ませただろう、今更だ。
原作ネームドキャラを妊娠させたことで、動揺でもしているのか?
いずれ死んでしまう女性冒険者を札束ビンタで記念セックスとか言ってたくせに?
思い上がるな。みんなこの世界で、生きているんだ。
僕はバトさんを愛していて、バトさんも僕を愛してくれている。
愛し合う二人が愛し合ったのだから、子供ができるのは当たり前だ。
落ち着け。僕はこの世界の医学と薬学を学んできただろう。
コマクサの花が咲いていた。今は五月半ば。
バトさんを公爵家で抱いた時期と、悪阻がはじまる時期。
もし無事に子供が生まれるとしたら、年末頃か?
つわりには、ミントティーが効くと聞いた覚えがある。
作ってみようか、ミントティー。
ミントなんてその辺に転がってるはずだから。
* * *
「おめでとう、ユーリ。ほぼ確定でいいみたいよ?」
食後のリビングで、皆がくつろいでいる。
医者が帰った後、セスレがにこにこしながら報告してきた。
僕は恥ずかしそうに応える。
「ありがとう。何事もなければ、出産は年末頃かなぁ……」
「バーチェは避妊してるんだっけ?」
「うん。二人が一緒に妊娠しちゃうと、色々回らなくなっちゃうからさ。アイリスが早く子供を産みたいっていうから、アイリスを優先させてもらってる」
セスレに説明していると、バーチェが補足してくる。
「ユーリ様は、私に『竿覆い』は使用しておりません。ユーリ様が開発なされた新しい避妊具の被検体として、かなりの回数の膣内射精実験を続けておりますが、いまのところ避妊実験は全て成功しております」
「ごぶっ」
僕は飲みかけのアイスティーを噴きかけた。
流石にセスレが驚く。
「えっ? 竿覆いを使わずに中で出しても妊娠しない避妊具!? 娼婦を含めて世界が変わるんじゃ!?」
「はい、セスレ様のためだけに開発し、今もなお実験を継続中です」
「私のためだけに開発!?」
「うぇっほげっほ」
思いっきりむせる。
そういや関係者以外への口止めはしてたけど、セスレは関係者ですね。ちくしょう。
で、関係者ではないけど事実上関係者なクコロが、呆れたように。
「男の人ってそこまで
「そうですね、私も妊娠しないように、暫くお尻のほうでしたし」
「ぶっほがほっ」
アイリスが何でもないように言い、クコロが驚く。
「お尻!?
「はい、ですから……次期侯爵が確定していない頃のユーリ様は、それだけ深くセスレ様を愛したかったのでは?」
「せ、世界が変わるようなシロモノを? 私を抱くためだけに!?」
淡々と告げるアイリスに、セスレがあわあわとする。
僕は頭を抱える。
「勘弁してくれ……」
「そっ、そっかー、そんなに私を抱きたかったんだ? 竿覆いを使わずに」
ちらっ、ちらっとセスレが見てくる。
「そうです、認めます。……今は予定が全部崩れて、バーチェで実験継続してるだけです」
「なるほど、それでバトさんは妊娠したんだね、使ってなかったから……」
セスレがなにかを期待する目で見てくる。
「……ここまで来たら、婚前交渉はしませんよ? 結婚式までセスレは抱きません」
「そんなぁ!? ユーリ後輩、なにをしているのです! 欲望を先輩にぶつけなさい!」
「何言ってんだこの人」
僕はジト目でセスレを見る。
クコロが感慨深そうに呟く。
「私は、最短でユーリが侯爵様になってから、かぁ……」
「あと二年、何事もなければ、ね」
僕はチラリと、双子を見る。
「はい、そこで無関係そうにしてるミルヒとカカオ」
「な、なんでしょうユーリ様?」
「今夜の私達はまとめて寝室ですか?」
「ううん」
僕はミルヒの目を、カカオの目を、それぞれじっくりと見つめる。
「
親からも友人からも誰からも、バトからすらも双子一緒にまとめて扱われる経験しかなかったミルヒとカカオの顔は、これ以上ないぐらい真っ赤に染まった。
感想と誤字報告に感謝いたします。本当にありがとうございます。