ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング! 作:RAP
「裏切ったな……バーチェ……」
バーチェは僕を見て、くすくすと笑う。
魔性の微笑みというやつだ。
「ユーリ様がいけないのですよ」
「……お前まで僕を裏切るなんてッ」
僕は絶望するしかなかった。
ここに味方はいない。
敵しか、いなかった。
* * *
話は少々遡る。
「それでね、ユーリ」
「なに?」
魔改造
「ユーリへの個人指名依頼として、ハーベラ山のコマクサの花の採取依頼を冒険者ギルドの聖都支部に出す。ここまではやっておいたわ」
「ありがと、セスレ」
「それでね? 依頼を受領したら、そのまま直接ハーベラ領に向かうんじゃなくて。一回屋敷に戻って欲しいの。色々渡したいものがあって」
「うん? まぁ、いいけど」
よくわからないけど、よくわかった。
僕は首を傾げながら、冒険者ギルドの聖都支部に向かう。
ガクブル震える受付の専属お姉さんと挨拶を交わし、依頼を受領する。
……そこまでは、良かった。そこまでは、何も問題は無かった。
侯爵家の屋敷に戻ると、僕が荷物を詰め込んでいた荷車は中身を検閲され。
僕がしまいこんでいた全ての着替えや下着が外に出されていて。
代わりに、折りたたまれたメイド服と、女性用の下着類が丁寧に置かれていた。
「……あの、セスレさん? これはなんでしょう?」
「デザインをこっちにぶん投げで、試作依頼をしたじゃない。これはデザインと機動力と防御力を全て兼ね備えた、
パチン、とセスレが指を鳴らす。
ミルヒとカカオがそそそっと近づいてきて、僕の腕を両方から掴む。
「逃げたらアカンで? ユーリ」
ヒカリを胸に抱いたバトさんがいつの間にか僕の背後にいて、ニヤニヤしている。
セスレはゆっくりと、僕が着ている服を脱がしはじめる。
「突然一人旅なんて、怪しすぎるでしょ。いつもならバーチェぐらいは連れていくのにそれもない。こっちとしては、浮気とかそういうのを警戒したくなるワケ」
「う、浮気?」
「妾を増やすのなら、それはそれでいいんですけどぉー」
「新しい女の匂いをつけたまま帰ってくるのは、どうなんです?」
ギクッ。
ミルヒとカカオのジト目に、硬直する。
ま、まさか。カスメの匂いをご存じだったのでしょうか。
「モテる男はつらいのう。ヒカリ、お前のパパは人気モンやなぁ……」
「きゃっきゃっ」
ごそり、と僕が着ていた貴族礼服が床に落ちていく。
「簡単な話よ。試作品の服と下着を、お試しするだけ。ユーリ自身でね?」
「あっハイ」
「バーチェ、着替えを手伝ってあげて」
「はい、セスレ様」
「あの、下着ぐらいは勘弁していただけると……」
「何か言った?」
「いえなんでも」
セルロースナノファイバーや
ユーリ君がユーリちゃんになっていきます。
青ざめながら女装していく僕に、セスレが楽しそうに告げる。
「それでね? 前々からみんな思ってたことなんだけど。ドラゴンに致命傷を与えたバーチェが、ドラゴンの呪いでエルフの長耳になってしまった。ここまではいいの。十分わかる話で、納得できる内容よ。でもね?」
「致命傷どころか、ドラゴンにトドメをさしたユーリ様がぁ」
「ドラゴンの呪いを受けてないっていう話は……おかしいですよね?」
ミルヒとカカオが、ニヤニヤしている。
「でな? 皆でバーチェに尋ねたんや。ユーリは隠したがっとるようやけど、ユーリが受けたドラゴンの呪いって、なんや? ってな」
バトさんが嬉しそうに言う。
……嫌な予感しかしない。
いや、僕にドラゴンの呪いなんて、無いはずだ。
バーチェのように、修復するような遺伝子なんて僕には無かったはずだ!
「バーチェ。命令よ。ユーリが受けたドラゴンの呪いを、私達に見せなさい」
「仰せのままに、セスレ様」
命じられたバーチェが、美しいカーテシーを見せてから。
彼女は僕の耳元で、優しく囁いた。
「そのままでは可愛いが毀損してしまいます、うにょうにょ様。調整なさいませ」
一瞬だった。
僕の身体のあちこちに分散して居着いていたスライム達が、可愛いを毀損しないように全力で僕の身体を調整しやがったのだ。
僕の身長は少しだけ縮み、縮んだ分で身体は女性のように丸みを帯びて。
僕の胸の中に居たスライムは、乳房さえも生み出した。
「うっそだろオイ!?」
僕から出た声は、完全に少女の声だった。あいつら僕の声帯までいじりやがった!
脳内に、スライム達の声が響く。
『理論上は交尾も可能だ、ゴシュジンサマのユーリ。膣を形成した皮膚がチンポで撫でられるだけなので快楽はない。快楽を得るには神経接続の研究を重ねる必要がある』
『……僕の息子をどこにやった』
『擬似的な陰核として先端部分のみ露出させている。腸や胃を含めた身体の隙間を利用し、本体は内臓に格納している。希望なら引き出すこともできる』
『お前達に出来るのは、筋肉や神経を模擬するだけじゃなかったのか』
『長年の共生により研究は大幅に進化した。だがそれだけでは見た目の性別を改変するほどの調整は不可能だった。我々はアイリスという人間のメスの身体構成を知り、ゴシュジンサマのユーリという人間のオスの身体構成を知り、さらにゴシュジンサマのユーリが大量に摂取したドラゴンの血の研究をすることができた。これら全てが揃ったからこそ、骨格や内臓レベルの調整をすることが可能になった。これで可愛いを毀損することは無い。喜ぶといい、ゴシュジンサマのユーリ』
あっそうですか、あのドラゴンの血が最後の鍵だったんですね……。
ドラゴンの血は、不死身になれるとか魔力があがるとかじゃなくて、性転換の研究材料。
そんなのわかるわけがない。そもそもスライムとの共生自体がイレギュラー案件でしょ。
ん? 骨格や内臓レベルの調整!?
僕は慌てて自分のへその位置を確認する。
男が女装しても絶対にごまかせないのはへその位置。
男性のへそはくびれと同じ高さ、女性のへそはくびれより下にある。
今の僕のへそは、見事にくびれより下にある。
というか、女性的なくびれが身体に確認できてしまう時点でおかしい。
喉仏・肩幅・肋骨の下・腰の骨盤と、上から順に触って確かめていく。
うん、駄目だ。完全に女性の骨格だ。
重心を確認する。当たり前だけどずれてる!
ちょっとだけ歩こうとしてみる。
男の歩き方じゃ無理だ、女性としての歩き方を覚えないとまともに動けない!
ていうかなんでバーチェが可愛いの毀損の事を知ってるんだ?
……そうだ、あの時! アイリスが共生の真実を話してくれた時に可愛いの毀損のこと話してた! あの会話内容から僕達の身体に何が起きたのかバーチェが推測するのは簡単だった!
「裏切ったな……バーチェ……」
すごんでみせるが、少女声かつ涙目なので迫力がない。
バーチェは僕を見て、くすくすと笑う。
魔性の微笑みというやつだ。
「ユーリ様がいけないのですよ」
「……お前まで僕を裏切るなんてッ」
「凄いわね、ユーリ。ブラジャーに詰め物をする必要すらないじゃない」
「えっ、おちんちんも無いですよ?」
「完全に女の子じゃないですか、ユーリ様」
セスレが感心し、ミルヒとカカオが僕の股間やお尻を撫でる。
「とても……とてもお似合いですよ、ユーリ様」
バーチェの、満面の笑み。
「冒険者証には、等級と名前と登録番号が書いてあるんやろ? けど、性別も書いてあるとはひとっことも聞いとらんなぁ、
ヒカリを抱いたままのバトさんが近づいてくる。
口調が完全にどこかのおじさんである。
僕は絶望するしかなかった。
ここに味方はいない。
敵しか、いなかった。
「あ、あの」
「なんや、ユーリ? 聞くだけ聞いたるわ」
僕の身体をぺたぺた触りながら、バトさんが答える。
胸も股間もお尻も一切遠慮無しに全部触られてます。
「偽名を使うのは、駄目でしょうか……」
「そらアカンわ。個人の指名依頼を別人がやったらアカンでほんま」
「ねぇ、ここリボン欲しくない? 黒か、赤か、青……」
「服の色との兼ね合いから、黒を提案します、セスレ様」
「頭のホワイトプリム! 必要です!」
「眼鏡いきましょう眼鏡。この際全部載せで」
嫁達がわいわい騒いでいる。
僕は死んだ目で思考放棄をするしかなかった。
* * *
だから、僕は完全に油断していたんだ。
こんなことになるなんて、本当に思ってなかったんだ。
銀髪のロングボブにホワイトプリム。
碧眼に眼鏡。
格好良いデザインのメイド服に膝丈のスカート。
左腰には打刀と脇差。
右腰には無反動矢の弓矢ケース。
背中には大弓槍。
若返りの秘薬によって、肌もみずみずしい。
そんな、属性を盛りまくったユーリちゃんが。
ハーベラ山でちょっとしたピンチに陥って。
まさかまさかのジャン君に出会って。
しかもジャン君に助けられて。
ジャン君の性癖を破壊することになるなんて、これっぽっちも。
これっぽっちも、思っていなかったんだ。
念のために性転換タグをつけておきましたが、創世神KAKERU様の作品に触れた事のある皆様なら大丈夫なのではないかと一方的に思っております。