「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!? 作:白拍子
口調が変わるのはよくないかもですが、アスカの心情の表し方と思ってください
【昼食のお誘い】
「それじゃ明日、桜市中央公園で」
アキラはアヤとの通話を終える。入寮に関してしっかりと詰める話を、桜市で広大な敷地を持つ桜公園にて行う約束を交わした。
さて、明日の準備はと考えを巡らせていると、着信が入る。アスカからだ。
「おっすアキラ、ちょ~~~と、昼飯に付き合ってくんない?」
「おけおけ。で、どこでメシ食う?」
いつものギャルなアスカの声に、準備は後回しにすることにする。
どうせアスカとも話し合わなければであるし、それならば早い方がいい。
「場所はね」
「え?」
【衣装室】
「なんでここ?」
指定された場所にに辿り着き、アキラは立ち尽くす。
眼前に広がる高級ホテル。
ロビーに入場するだけで圧倒的なプレッシャーが覆い尽くす中、場所を指定した当人を探す。
「お~約束の時間よりちょい早いとかさすがじゃん。ちゃんとしたの用意してっから、サクッと着替えてきな」
「着替えって……そういうのは先に言ってほしいな」
「つかさ、今日はちょい良さげランチ一緒するんだから、そこはお願いってことで」
待ち合わせに待っていたアスカは、ギャルメイクでなくホテルに合わせたかのようなフォーマルなドレス姿。
病院でメイクを落とし大人びた言葉遣いを知っていなければ、アスカとわからないであろう。
ホテルを待ち合わせ場所に指定されたことから、ある程度、ギャルの姿ではないと予測はつけてはいたが。着替えを要求にはさすがに説明を求めると、どうやらフォーマルな衣装が必要な店を使うようだ。
わざとギャル口調なのは、今は『いつもの』アスカでいたいという事に。アキラはそれ以上なにも聞かず、アスカの従いに沿うようにした。
レストランへ向かう前に、ホテルのロビー奥にある「衣装室」のプレートをアキラは見上げる。
こうまでして『場』を作りたい整えたいアスカの意志が、妙にアキラの胸に残る。
静かな廊下を進むと、衣装室の扉が自動で開く。
中は外の喧騒とは別世界のように静かで、柔らかな照明が床に淡い影を落とす。
壁一面には黒・紺・グレーのタキシードが整然と並び、ガラスケースにはカフスやポケットチーフが宝石のように配置されていた。
「アキラ様ですね。アスカ様より伺っております。」
スタッフの声は、ホテル特有の、音を騒めかせない静かな話し方。
アキラは軽く頷き、案内されるままフィッティングルームへ入ってゆく。
部屋は広く、鏡は天井から床まで一枚のガラスのように滑らか。
照明は肌の色を自然に見せるためか、暖かいが陰影は控えめだ。
中央には、すでにアスカが選んだらしいタキシードが掛けられている。
黒に溶け込むほど深いボルドーの生地、わずかな赤が光を拾って揺れる。
まるでアキラが内封する炎を表すかの選択。
「サイズは事前に伺っておりますが、微調整いたしますのでご着用ください」
アキラは無言で上着を手に取る。
生地は驚くほど軽く、指先に吸い付くような滑らかさ。
袖を通すと、肩のラインが自然で背筋がすっと整う。
微かな緊張はあるが。それよりも鏡の中の姿に納得できる自分も存在する。
これは、アスカがもっている別の世界に引き込んでいる感覚。
スタッフが静かに近づき、襟を整え、袖口の長さを確認する。カフスを留める金属音が、衣装室の静けさに小さく響いた。
「とてもお似合いです。アスカ様のご指定通りです」
アキラは軽く息を吐く。
アスカの指定という言葉に、ほんの少し胸の奥が少しだけざわつく。
「……これで、いいんだな」
「はい。レストランの雰囲気にも最適でございます」
鏡の中のアキラは、もう準備が整った男の顔をしていた。
あとは、アスカの待つレストランへ向かうだけだ。
衣装室を出るとき、スタッフが深く一礼する。
「どうぞ、良いお時間を」
【伊達】
アスカは、レストラン前の小さな待合スペースに立っていた。
いつもの派手めなギャルメイクは影を潜め、今日は驚くほど落ち着いた雰囲気。
昼間だというのに、イブニングドレスを身にまとい、肩のラインを美しく見せるシルエットが、照明に柔らかく浮かび上がっている。
髪も、いつものツインテールではなく、ゆるくまとめたアップスタイル。大人びた横顔に、ホテルの静けさがよく似合っている。
衣装室からアキラが姿を現した。
タキシード。
髪もきちんと整えられ、普段の無造作さはどこにもない。
歩くたびにジャケットのラインが揺れ、まるでこのホテルの空気に最初から馴染んでいたかのようだ。
アスカは、一瞬だけ息を呑む。
『───似合いすぎっしょ、あんた』
心の中でそう呟きながらも、視線を外せない。
いつもは軽口を叩く彼が、自分の演出とはいえまるで別人のようで、そのギャップが胸に焼き付く。
アキラが気が付き、少し照れたように眉を上げる。
「……そんなに変か? 俺」
「変じゃない。むしろ……その……」
アスカは言葉を選ぶように、ほんの一拍、間隔が置かれてしまい。
「……すごく、いい感じ」
その声は、いつもの調子より少しだけ柔らかく、そして照れが滲む。
アキラは小さく息をつき、アスカの前に立つと、自然な動作で手を差し出した。
「じゃあ……行こうか。案内するよ。あちらでよろしいかな、マドモアゼル」
アスカはその手を見つめ、昼間の光に揺れるドレスの裾をそっと整えた。
「……うん。エスコート、お願い」
指先が触れた瞬間、アスカの表情に、普段見せない微かな緊張が揺れる。
アキラは、ゆったりと歩き出す。
二人の足音が、ホテルの静かな廊下に溶けていく。
これから向かうレストランで、どんな話し合いが待っているのか──
互いに言葉にはしないまま、ただその手の温度が、確かに二人をつないでいた。
【ランチ】
客もまばらな中、奥まったテーブルはちょっとした密談の舞台。
アミューズ
〈季節野菜のムースとコンソメジュレ〉
「いきなり誘ったけど、大丈夫だった?」
「アスカの誘いさ、断る理由はないだろ」
「そう言ってくれると……嬉しいわ」
一口で食べられる穏やかな香りで。
先ずは軽い社交辞令。
前菜
〈帆立の軽いグリル 柑橘のヴィネグレット〉
「ウチは入寮を受ける」
「そうか……俺も前向きだ」
重さの無い柔らかな感触。
伝えたい事の入り口として、空気が整う。
スープ
〈白ポタージュ(カリフラワー)と温かいブリオッシュ〉
「まあそのあたりは、だいたいお互いに想定内だと思う……」
「そうだよな………………」
「カオリの力を利用する、そして利用される。それでより多くの弱者を助けられるなら──」
「広げて伸ばす手は、大きくなる方がいい。それがアスカの考えなら邪魔しないけど、無理はするなよ」
寮に入り、ピュアとヒーラーが力を合わせる。
その事には確認を取り合うだけだ。
スプーンだけで完結する静けさ。
魚料理
〈真鯛のポワレ 白ワインソース〉
「危ないことはしてない───するかもだけど、アキラなら危ないって思ったら助けてくれるし。それは頼りたい……」
「おう、頼れ。俺もアスカを頼る」
軽く踊るナイフとフォークの動き、会話のアクセントになりつつ邪魔にならない味と香り。
肉料理
〈牛フィレのロティ 赤ワインと香味野菜のソース〉
「正直──ウチの正義って言っても、それが正しいのか揺らいでた。助けたり虐げたりする力も、弱者には押し付けかもしれない──力がなければ無いで、ウチは路地裏で触手に襲われて終わってたかもしれない」
「それにね、最近知ったの───父が下請けを切り捨てる動きをしたのも、元々はその下請けに問題があって。父もフォローしきれなくなってしまい、自分の所属している企業、部下、家族、それらを守るためにどちらを選ぶかと問われれば───目の前の弱さだけに心を奪われていた───」
「そうしたいからこそアスカは力を持ったのだし、力を弱者を助け強いやつに歯向かう身勝手に使っている。俺の好きな自分勝手だな」
アスカのナイフが皿に触れ、音を立ててしまう。
「俺達は──未熟すぎるのを痛感した。いいように力を悪い大人に使われないよう学ばなきゃならない。今回の入寮はいい機会だと思ってる、一緒に学ぼうぜ」
「そっか、アキラに好かれる勝手なら、いいわ。そう、ね、学ぶためにカオリの誘いに乗る。いいかも」
ランチのため量は控えめながら、深い味わいの一皿。
濃密な一口が満たしてゆく。
デザート
〈ベリーのコンポートとバニラアイス ハーブの香り〉
「やっぱりこうやって話が出来てよかった、アキラのこと………男として好きよ。アヤやリサより出会うのが早ければ──と、思うけどさすがに、ね。まっ、一歩引いてみんなの話聞いてニヤニヤしたいし。二人のグチ言いたいんだったら、違うマンコを味わいながらでいいっしょ。それ許さないほどあの二人狭くないし」
緊張を解く甘さが、会話の呼吸を取り戻し。
心の甘味も漏らし伝える。不適切な言葉はさすがに小声で。
【コーヒー】
食事中とは違う香りと、気持ちの休まる時間───ではあるが。
自然そっとトレイがアスカに置かれ。支払いの現金が静かに乗せられる。
スタッフは音もなく下がり、再び二人だけの空間が戻る。
「このあとどう? お部屋でゆっくり───する?」
アスカはコーヒーカップを指先で軽く回しながら、食事中とは違う、艶を帯びたコケティッシュな視線をアキラに向け誘い───アキラの眉が緩やかに上がる。
「いまから部屋とるのに、アスカはバタバタと動きまわるのかい? 十分すぎるほど御馳走になってるし。ここを出て~~とかなら大歓迎ってやつだけどさ」
「えっ? どして、まだ部屋を取っていないの知ってるしょ?」
アスカの手が止まる、隠せない驚きがそのまま表情に出てしまい目を丸くする。
アキラは照れと気まずさをごまかすように鼻をかく。
「支払いをサインやルームナンバーとかじゃなく現金で済まして、ルームカードキーを見せないから、持っている様子が無い。アスカの事だから事前に会計の段取りは整えているだろうし。会話の内容だったら、ファミレスでも十分だけど、わざわざここってことは、二人っきりで万が一にでも知っている人に聞かれたくなくて干渉がないように、お金を使ってでも環境を整えたい──だよな」
「まあその、部屋に関しては。もしも会話が不調だった場合その…………一人で部屋に戻るのは、嫌だよな」
「なによう、ぜーんぶお見通しっしょ~あ~ん、ムカつく~~」
アキラは苦笑し、肩をすくめ。アスカは照れ隠しのように唇を尖らせる。
その仕草が妙に可愛く、アキラはつい笑ってしまう。
「ははは、わりいわりい。けど、わかってないふりは、俺にはできねえ」
「ふっ、いいわよ、伊達男。それでこそアキラだわ」
アスカはふっと笑い、さっきまでの不安も、誘いの色気も、全部ひとつに溶かしたような表情。
二人の間に、コーヒーの香りが静かに漂う。
重かった話の余韻も、互いの胸に残るざわつきも、
すべてを包み込むような柔らかな時間。
レストランの外には、昼の光がまだ明るく広がっている。
このあとどこへ向かうのか──
それはもう、言葉にしなくても決まっているようだった。
【隣席】
「なるほどな、たまにはこういう所で昼食するのもよいものだ、面白いものを聞かせてもらった。カンクロウその企業を調べてくれ」
アスカとアキラの密談のレストラン。
二人の切実な話し合いは、周囲から見ればただの穏やかな、若者が少し背伸びをしたランチにしか見えない。
だが──そのすぐ近くの席で。ヒーラーだった大人が静かに耳を傾けていた。
偶然、同じ場所で昼食をとっていた、カオリの父にして財閥の当主、そしてかつてはヒーラーのトキジロウ。
若い二人のピュアとヒーラーの唇を読み。
アスカが抱える問題。アキラがそれをどう受け止め、どう支えようとしているのか。
そして、カオリが巡らせる勧誘の空気。
若者らしい真っ直ぐさと、ヒーラーとピュアの不器用な優しさが交差するその会話に、トキジロウは思わず目を細めてしまう。
彼は静かにナプキンを置き、執事長カンクロウに指示を出す。
アスカの父が属する企業で起きているトラブル。
それがアスカの悩みの根にあると察したトキジロウは、まず情報を集めさせることにした。
そして、得られた情報を踏まえ、彼は淡々と、しかしどこか愉快そうに指示を口にする。
「ならば投資を行うか。窮状を救い収めるなら、不幸になる人は減る。なにより担当している男と下請けに大きな貸しを作れるし。今後介入する切欠にもできる。話を進めるぞ」
若者たちの悩み、自分の立場と資金力で、そっと後押しするという形で解決する。
それは、かつてヒーラーだった男の、今のやり方。
「娘も面白い連中を仲間にしようとしているな……ふふっ。今の私には見守りながら、金を出す、か」
アスカとアキラの真剣な会話を、大人は大人の視点で楽しみ、そして静かに支える。
二人は知らない。
この日のランチが、思わぬ救いになっている人がいることを。