「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!? 作:白拍子
バキ!! ゴス!
アヤは頬を真っ赤に染め、アキラとリサに放たれた殴打の音が響き渡る。
リサの膀胱ピンチは無事に解決し、ほっとした空気が流れるはずだった──のだが。
「アンタねぇぇぇぇぇぇ!! なんであんな持ち上げ方すんのよ!! 恥ずかしいでしょーが!!」
「い、いや! 助けようと思ってだな!?」
「必要ない!! あ~~~ん! お嫁に行けない~~~~~!!」
「大丈夫、既に俺の嫁だ」
ドゴゴゴゴっ!!
さらにアキラに打撃が叩き込まれる。
本気で怒ってるけど、怪我はさせない絶妙な力加減。
「痛っ……ぅ…………ふふ、アヤに殴られるなんて、何年ぶり……………」
「りぃさぁ~~あなたもなんてことしてるのっ!!」
「アヤの放尿を、アキラに抱え込まれての姿だなんて……こういうの何度見れるかわからないし………チャンスは逃したくなかった……ご、ごめんなさい」
リサもアキラよりは多少加減してあるものの、ごすりとアヤの一撃を脳天に受け。頭をさすりながら、欲望の言い訳と謝罪を口にする。
「ほんっと、リサの暴走って時々恐くなるわ。それにつきあうアキラもアキラよ、まったくそういう変態な所は付いていけな………………………!?」
アヤの糾弾がぴたりと止まり、視線がどこか別の方向へ注がれる。
そしてその視線の先へと歩を進ませる。
痛みと反省でかしこまっていたアキラとリサは、そのアヤの動きを視線で追う。
「あれは? う~ん? もしかして?」
何かを見つけたように導かれるまま、アヤは森の奥に入ってゆく。
「おい、いったいどうし───!?」
アキラの胸に警告が走る。
心の奥底からの警鐘。
アヤを行かせてはいけない───過去の自分が叫んでいる。
ついていくな、逃げろとの囁き。
覚えのあやふやなナニカが、アキラの足を止める。
「アヤ……? どうしたの?」
軽快に奥へと進むアヤを。リサは自然にそのままにその背を追う。
アキラはわけのわからない迷いに一歩遅れ、ようやく二人を追いはじめる。
渦巻く不安を、じわりと胸に染み込ませながら。
【AA】
「確かこの先、私とアキラの頭文字を目印にしていたんだから………あ~~~~~~~~!! やっぱりここ!! うわあ、懐かしい~~」
アヤが辿り着いた先。
木の幹に、古びた『AA』──Aが二つ重ねられた印が刻まれている。
そのを印を目印に進んだ先に、岩が口を開けたような浅い洞窟があった。
入口の形も、周囲の木々の配置も、アキラとアヤの記憶のまま。
「こっ、ここは!! 残ってる!!」
「ほんとに……残ってるわ!」
「………………!?」
アキラが息を呑み。アヤが思わず笑顔になる。
リサはついてきたが、首をかしげるばかりだ。
アヤとアキラは洞窟の中へ足を踏み入れる。
薄暗い空間には、幼い二人が運び込んだ宝物の残骸が散らばり残っていた。
木の板で作った即席の机と小さな椅子
地面に敷かれた、ボロホロのビニールシート
色褪せた絵本の表紙
錆びた缶バッジや、くすんだビー玉
子ども用のプラスチック剣の柄だけ
「ここで、よく遊んだわ。秘密基地って言って……大人に見つからないようにって、こっそり来て」
「雨の日でも来てさ。ここで『世界を救う作戦会議』とか言って、勝手に作り出した巨大な悪に対抗するための計画や特訓したり……だけど、結局だらだら遊んでいたりしたよな」
「あんたが勝手についてきただけでしょ」
「いやいやいや! アヤが『おもしろい所、見つけた!』て、俺を引きずっていったんじゃないか」
「そうだったかしら?」
二人が言い合いを始めたところで──
「…………すごく楽しそう………………わたし、初耳………………」
「「あっ」」
リサの洞窟の少し湿った空気に、声が静かに通る。
アヤとアキラは同時に固まる。
「こんな……素敵な場所があったなんて…………二人だけの……思い出の場所……ずるいです……ずるい…………ずるい……ずるいずるいずるい…………」
リサは洞窟の中を見回し、興味と………不満を撒き散らしはじめる。
「ち、違うわよリサ! 別に秘密ってわけじゃなくて! その……」
「そうそう! ほら、当時はまだリサと会ってなかったし! 今は三人で来てるし!!」
二人はリサに言い訳がましくなだめようとする。
その中でアヤが思い出したかのように口を開く。
「あ~~~そうね、リサとつきあいはじめてから、ここに来なくなった感じかしら? あのころは、アキラもころころっとして、おおきなぶたちゃんだったし」
「ええ~~俺そんな豚野郎だったっけ? たしかにちょっと太ってたけど。ん? あれ?」
「あら………そうだった、の?」
アヤの言葉にアキラはなにか引っかかりを覚え。リサはアキラに興味を示した時には、アキラは太っている印象はなかったはずだ。
「ん~~~まあ今こうして三人で来られたからいいでしょ。これからは、三人の秘密基地!!」
「………ありがとう、二人とも……ふふ、これが秘密基地……」
細かいことは置いておこうと、リサをあらためて秘密基地に歓迎するのを表すアヤ。
それを受けてリサは喜ぶ。
「俺、太って……いたけど………う~~ん?」
なにか齟齬がある。
その欠如を埋められない感覚に、アキラは頭を悩ませていた。
【宝箱は秘密】
木漏れ日が差し込む薄暗い洞窟の中。
三人は、かつてアヤとアキラの、世界の中心だった秘密基地で、しばし時間を忘れて過ごしていた。
「ここで、よく魔王討伐ごっこしたのよ。アキラが魔王役で、私が勇者。まあ、毎回私が勝つんだけど」
「いや、アヤが勝つまで帰らせてくれなかったし」
アヤは壁に残る落書きを指でなぞりながら、懐かしそうに笑い。アキラが苦笑する。
リサは膝を抱えながら、興味津々で聞き入り。
「ふふ……お二人らしい……他にはどんな遊びを?」
「えっとね……宝物探しって言って、ビー玉を隠し合ったり。秘密会議って言って、お菓子食べながら作戦会議したり。探検隊ごっこで、この森の地図を描いたり……」
アヤは指を折りながら数える。
「あと、アヤが『ここは私の城!』って宣言して、俺が門番役にさせられたりな~」
「門番は必要でしょ!」
「すごく楽しそう………わたしも、その時に会っていれば…………」
アキラが補足し。リサはくすくす笑いながら、ほんの少しだけ寂しそうにぽつりとこぼす。
自分の歪んだ性癖を、幼いころから独りで醸造させていた。もっと早く二人に会っていれば………普通の少女でいられただろうか?
『けど、そうであれば。わたしはアヤとアキラを取り合っていたかもしれない』
二人が同時にアキラの嫁であり、心も肉体も許し合える仲なのは奇跡だ。
巡り合わせに感謝しよう。今があるからそれでいい。
そっと想いをリサは胸に収めた。
「ん? なにかしらこれ?」
少し会話の途切れた時間。アヤが洞窟の奥で何かを見つけてくる。
埃をかぶった大きな箱。
しっかりと密封され、油性マジックで大きくこう書かれている。
『ひみつ』
「ちょっと……これ……絶対開けるしかないでしょ!」
「なに……? 宝物……? 黒歴史……? 禁断の何か……?」
アヤは目を輝かせ、リサも興味津々で身を乗り出す。
慎重に手早く封を解いて行く。
「待て!! それは……開けるな!! その箱は……開けちゃいけないんだ!!!」
それを見たアキラに動揺が走る。
額に汗を浮かべ、あれは解き放ってはいけない。
封印された邪悪な何かを前にした勇者、壊してはいけない祠を祀る神主。暴いてはいけない墓を守る墓守であった。
アヤはその必死な様子を鼻で笑い。箱をかぱと開ける───そこには──────
大量のエロ劇画雑誌
「あ~~~~~~思い出したわ! 森の中になぜか、いっぱい捨ててあったのを回収したのよっ!!」
「なるほど………なぜかこういう本を、普通にゴミや古紙回収として出さなかったり……こういうかさばる雑誌を大量に処分するのに、森の中や河川敷等。人目に付かない場所に捨てるのは……人の心理かもしれない……」
意外な宝物の正体に、納得が埋まった。
【読書会】
エロ劇画
それは、子供向け中心の漫画とは一線を画した存在。
「写実的な絵柄……大人向けのテーマ……シリアスな物語……映画的なコマ割りで、劇画という表現の追求………ペラ」
「ん~~そして大人のリアルってのを、エッチな事を描くことで表現するのがね~ペラ」
「そして……その大人のドラマとして性の表しを。ハードボイルドやサスペンスを融合した物語の中。大人の人間関係や欲望のテーマとしてセックスを描画する………ぉぉ、エグイ表現、オトナのダークネスな欲望の世界、ペラ」
「とはいっても、所詮はエロ本ってことでしょ? 裏社会とか犯罪な雰囲気なのもあるけど。人妻ものとか不倫とか、知り合いがいきなり欲情して襲ったりとか、唐突で内容の薄いのって多いわよ。うわあ、玄関開けたら不倫相手といきなりはじめてる。ペラ」
「女子高校生や女子大生、OLが日常から、エロにはまってゆく過程を……時にシリアスに、時にコミカルに。表現しながらセックスを差し込む強引さもまた味かも………そして、対象の男を監禁して楽しむ逆のパターンまで、うふふふふふ。ペラ」
「可愛さよりも、写実的な描画がやっぱり劇画なのね。重厚さってやつはあるけど、やっぱり古臭く感じるわ~~セックスのシーンも結構単調だし、ん~~~ベタ塗りや、白く抜いた修正が大きすぎ。けどそれも想像を掻き立てるのかしら? ペラ」
「それも時代の流れ………あ、この四コマ漫画、下ネタ炸裂面白い…………ペラッペラ」
秘密基地は、エロ劇画読書会となっていた。
部屋を片付けしていたら、何の気なしに手にした古い冊子に夢中になってしまう。
そのような駄目な時間の過ごし方に近いものがある。
掘り起こした古いエロ劇画は箱の密封が完璧だったおかげで湿気を帯びず、腐ることなく保存されていた。
なぜこんなものを集め、大事に秘密の箱にしまっておいたのだろうか?
森に打ち捨てられた大量のエロ雑誌。
それは、子供たちにとっては禁断の宝として扱われ。
その宝は他人に見せびらかせるものでもなく、ひっそりと楽しむ禁忌であった。
危険度は高く、家族に見つかったならば、どんなお仕置きがあるかもしれないと怯えながら。
ならばどうするか?
自分と信頼できる仲間だけが知る場所に、隠し持てばいい。
そう! 秘密基地に!!
批評しながら、アヤとリサは古いエロ本を読む手を止めない───
「……ああいう生き方、憧れたんだよな」
アキラが読みふけるある劇画。
狙撃で仕事を行う殺し屋が、ハードボイルドな世界を自分の流儀で生き抜く物語。
「どんな依頼でも、どんな状況でも、絶対に遂行し生き残るために徹底した準備。自分の技術に絶対の自信。それでも油断しない、慢心しない。臆病でも、その臆病さが強さなんだよ。仕事をこなし自分は死なないために全力。そして契約やルールやマナーを破ったやつには、しっかりと報復するという姿勢がさ」
「女とのセックスも、相手の欲望や寂しさを抱いて快楽に酔わせながらも、自分の性欲を処理してるだけで、心なんて一切見せない。相手を甘やかすでもなく、自分が乱れることもなく、ただ、仕事の合間の生理的な作業みたいに淡々としてるんだよ」
「いや、別に真似したいわけじゃねえよ。ただ……ああいう徹底した距離感って、ある意味で強さなんだと思っただけだ」
「そう。誰にも依存しないし、誰にも甘えないし、誰にも弱みを見せない。孤独だけど、強い。あの、生き残るための覚悟は……子どもの頃の俺には……すげぇカッコよく見えたんだよなあ」
「まあ…………あいつみたいに孤独で生きるのは……俺には無理だ………」
「……そうだな。あいつの強さに憧れたけど……俺は俺で、みんなと一緒に生き残る強さを選ぶよ」
「でも強がるために、ちょっと参考にはすべき………かな」
それにしてもとアキラは思う。
なぜあんなにも危機感を持ったのか?
確かに過去の秘密である、古いエロ本を発掘発見されるのは恥ずかしい。
でもアヤと一緒に、秘密基地に回収した秘密の宝物である事には違いない。
なにか──なにかを見落としている。
紙面の無口な殺し屋の主人公、過去に読んだ時にも憧れたタフガイに視線を合わせ、記憶の奥底のなにかを探る。
早く解明しなければ、とんでもないことになるかもしれない。
焦燥を感じながら、ページを捲ってゆく。
そしてその時が………過去からの刺客が大鎌を振るう。
「あ~~~これこれ!」
アヤは紙面の何かを掘り起こした。
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