「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!? 作:白拍子
テーブルから聞こえてしまう声、全てが明瞭に聞こえるわけではない。
いや、聞いてはいけないだろう。
しかし勝手な心配がどうしても声を拾ってしまうのは………いたし方ない事だ。
「話って………これからの……こと?」
「そうだね………僕たちに付き合って傷つく必要はない。もっと別の戦い方もあるはずだよ」
(これは……別れ話?)
(表情を変えるな、向こうを向くな)
いつのまにか俺の隣にマスターはいた。
視線だけの制止が、なによりも雄弁に店員の動揺を抑える。
「やっぱり………あの事……気にして……いる?」
「………………それは………うん……」
静まり返った店内に、彼女の震える声が落ち。まるで店内の空気を一段冷やしたように感じる。
彼は、しばらく沈黙したあと、喉の奥で何かを押しつぶすように答える。
短い返事だが、重さだけは皿一枚分じゃ済まないほどだ。
(なにが、なにがあった?)
興味というより、動揺に近い。あの二人がこんな空気になるなんて、これまで一度もなかった。
彼女はいつも怯えがちで、彼はいつも冷たそうでも穏やかで、二人で来るときは、どこか支え合ってるようにも見えていた。
それが今は、互いの言葉が触れた瞬間に崩れそうな緊張を孕んでいる。
俺の横では、寡黙なマスターがいつものように静かにカップを磨いていた。
だが、その手の動きがほんの一瞬だけ止まったのを、俺は見逃さなかった。
マスターは何も言わない。
ただ、磨いているカップの縁をいつもより丁寧に、ゆっくりと指でなぞっていた。
その沈黙が、逆に聞こえてしまっていることを物語っているようだ。
「そうだよね、ゾンビーに輪姦されて…………体中どころか、中出しされ続けて………もう……どうなってもいい……なんて、思ってしまったの………………早く………早く終わってって相手に媚びて……射精させて……それで終わるわけないのに………ね」
彼女は、まるで心の奥底に沈めていたものを、ひとつずつ掬い上げるように言葉を続けた。
彼は息を呑んだ。
俺も、カウンター越しに手が止まった。マスターの手も、動きを止める。
(めちゃっくちゃヘビーだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)
「それでも………それでもね…………みんなと……あなたと並んで……………わたし戦いたい…………」
「どうして、そこまで───」
彼女の声は、痛みを押し殺すように続き。
彼の声は低く、冷たい。
「わたし……トロいし………にぶいし……たよりっぱなしだし……………だから、ね……わたしみたいに、ひどい目にあってしまう人のために戦いたいの…………だから……たすけて……そのためにわたしも寮に入る」
「…………………………わかった、傍にいるよ。一緒にがんばろう」
彼女は小さく息を吸い、自分を責めるかのように言った。
彼は、彼女の言葉を受け止めるように………ゆっくりと頷く。
(……重い……重すぎる……こんな話を聞くつもりじゃ………)
それでも、耳に入ってしまう。
マスターの手つきは、いつもよりゆっくりと、丁寧だった。
【祝福】
暫く、サンドイッチを食み、珈琲を飲むのが進む。静かに無言で。
サンドイッチを消費する量は、彼女の方が二倍以上だ。
まだ重苦しさを乗せて、彼女は顔を伏せたまま、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
「あの時も……あなたが彼女を犯すのが……それが必用だったの………わかる。でないときっと取り返しのつかない事になっていたから………けど……わたし……自分の体の痛みに疼きに抗えないのと……欲しがって、おちんちんを口に求めて………精液を啜って、あさましくて自分勝手で…………すごく……呆れさせた目で見られて……自業自得なのに恐くなって。収めてくれなかったら……わたしどうなっていたか………」
(いったいどういう状況だ! あの男ものすごくヤバイ奴じゃないのか? もしかして、一緒に来ていた色黒で背の高い女の子とセックスしてたのに出くわしたとかなのか? ちくしょう爆発しろ!)
思わず飛び出したくなるのを、マスターの静かな視線が抑さえる。
その一瞬だけで、俺は冷静になれた。
彼は彼女の言葉に続きがあるのを感じたのか待っているが……焦りと動揺だろう、手にしたコーヒーカップが震えている。
「いやされたいし、いやしたい……………きもちよくなってほしいし、きもちよくなりたい………………好きだから、おちんちんが欲しいのか。おちんちんが欲しいから、好きなのか……頭の中、ドロドロになっちゃって……………………」
彼女は感情が制御できないような、泣き笑いになり。落ち着こうとしたのか珈琲をあおって小さく咽る。
「ごめん──それは───僕のせい──────」
「ううん、違う。違うよ……わたしが……甘えているだけ───けど……甘えてもほしい───」
感情も愛情も肉欲も綯い交ぜになった、少女と少年の、生々しい静かに煮たぎった会話。
耳にしているだけで、余計なお世話をかけたくなる。
マスターが軽く首を振る。
我々はただの観測者だ、介入は許されないと、無言で語っている。
「けど、それは───」
彼の戸惑いの混じる声。それを遮るように彼女はゆっくりと意志を続ける。
「ただ………甘えるなら、いつか折れちゃうから………痛みをごまかすために寄りかかりあっていたら……前に……進めなくなる………きっと」
彼は息を呑んだ。
彼女の声は震えているのに、その言葉はまっすぐだからだ。
「けどね、けどね、支え逢って進むために甘えるなら。それは………強さになれるの……」
カウンターから掠め見える彼女の横顔は、弱さと強さが同時に溢れている。
「痛み───分け合おう───逃げるためじゃなく、進むためになら…………いっぱい甘えてほしい……ううん」
彼女は顔を上げ。
その瞳は涙で揺れているのに、覚悟を宿している。
「甘えてよ!! いつだって強がって、冷静に考えようとしていて無理して頑張って、わたしたちのことで傷ついて苦しんで───だから、だからね、わたしに甘えて。甘えさせるために……わたし……強くなる……」
彼は言葉を失いながら。ただひたすら、彼女の言葉を受け止め、ゆっくりと息を吸う。
「一歩踏み出すために……先に進むために……痛みを乗り越えてゆくために……甘えて、甘えさせるのは……だめ、かな?」
その瞬間。
彼女は、テーブルを挟んだ距離を一気に縮め、彼の頬に手を添え──
迷いのない動きで唇を重ねた。
強引というより、必死で、祈るようなキス。
彼は驚いたように目を見開いたが、すぐにその目を閉じ、静かに受け入れ───
二人の間に流れる空気が、はっきりと変わった。
(ああ……そういうことか)
複雑な事情があるのは分かっていた。
彼女が抱えている痛みも、彼が背負っているものも、全部は分からない、分かるわけがない。
けれど──
今の二人を見ていると、それでも、前に進もうとしているのが伝わってきた。
(……よかったな、二人とも)
胸の奥がじんわり温かくなる。
横でカップを磨いていたマスターは、相変わらず無言だ。
だけど、その手つきがほんの少しだけ柔らかくなったのを、俺は見逃さない。
普段は鉄のように無表情な人なのに、今はどこか、静かに祝福しているように見えた。
二人の声は、もうカウンターまで届かない。
ただ、寄り添う気配だけが、店内の空気を温めていた。
【今日は閉店】
長い……思っている以上に長いと感じる……それはそれでしょうがない事のはずだが。
やはり長い時間、二人のキスは途切れず続いている。
時折、粘つく唾液の絡む音まで聞こえ。口腔内で舌が絡みつきあっているのが、容易に想像できてしまう。
よ~うやく、唇が離れ、唾液が銀糸となって垂れ繋がっている。
こんな状況は、嵐が去るのを待つしかない。
甘ったるい災害でしかないからだ。
「もぅ……………がまんできないしたくない、なめたいしゃぶりたいすすりたいのみたいいれてほしいなかにぶちまけてほしい──────」
彼女が囁く小声だ、それでも明瞭に聞こえてしまうのはなぜだ!
彼が慌てて会計を行う、お釣りもないぴったりの勘定。
俺は一礼をもって、丁寧にお客様達を送り出す。
彼女の潤みきった濡れた発情の瞳。彼だって勃起しきってんのは、わかってんだぞ、コノヤロー。
珈琲はまだ少し残っていたが、バスケットのサンドイッチは綺麗に食い尽くされていた。八割がたは女の子が食べていたような気がする。
二人が店を出て、俺は大きく息を吐く。
これはこれで満足だ。
若い二人を送り出す場になれたのだ。
当てられまくる、情愛の波動に耐えきったのだ。
振り返るとマスターが親指を立て微笑んでいる。そして差し出される、封筒とメモとクーポン。
今日の出来事に、店員としてのベターな対応の賛辞。
店の雰囲気と客の空気を壊さず、飲食を交えながらの話し合いを演出できる場を提供し乱さなかった事。
その俺のささやかな成長に対し。わずかながらの金一封に、ソープランドの割引クーポン券。
さらに今日はもう店を閉め、それをマスターが行うので帰っていいとの事。
無言なマスターの簡潔なメモと、店仕舞いをはじめるその背に………俺は感涙した。
「マスター……マスター………俺……………………いってきます!!」
俺はドアを開けると、勢いよく店を飛び出した。
走り出した直後、横目に掠める異様な雰囲気。
ラブホにしけこむまで我慢できなかったのか、路地の暗がりで、熱烈なフェラチオしている、先ほどの客二人だ。
「───のおちんちんと精液が………一番好き………………」
女の子の甘く嬉しそうで淫靡に滑った声が聞こえてしまう。
「チクショー! 羨ましくなんかないぞ~~~~~~」
俺は歓楽街へと突っ走っていった。
【そして店内】
『CLOSE』の看板を表に出し、ドアは施錠しカーテンも下ろされている。
マスターが振り返るとそこには───
「あ~んな甘いの聞いていたら、我慢できないわぁんマスターぁん。上手いこと追い出しましたわね、うふふ───」
ねっとりとした染みに濡れた下着を引き抜きながら、厨房から出てきた調理担当の、艶のある声と熟れた肉体。
マスターは無言で、猛々しく勃起したペニスと……ピッと指に挟んで示す、避妊用のゴム製品を見せつけた。
「あぁぁんっ!! マスターのおちんぽ最高っっっっ!! いくっいぐぅっいっちゃうぅぅぅぅ!!」
店内に、パン!パン!と肉の弾け重なる音が響く。
オトナの時間はこれからだ。