※この作品はR-18です。

「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!?   作:白拍子

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ユウヤの入寮を、一人語り的に進めます


117「ひっこし:そのご/まぶたのはは」

【日没:ユウヤ/軽トラック】

 

ユウヤの入寮に向かう軽トラックの揺れは、どこか懐かしく、そして少しだけ胸に沁みた。

荷台には、父さんがロープでしっかり固定した円筒形のシーサック。

あれはママが使っていた遠征用のバッグで、ユウヤにとっては、家族の歴史そのものみたいなものだった。

 

 

軽トラックの助手席で、ユウヤは窓の外を眺めながら思う。

父さんは、昔から家にいない時間の方が長かった。

輸入・輸出、海外の市場調査、文化や商習慣のアドバイス───世界中を飛び回っているような人だ。

 

小柄で中性的な顔立ちなのに、年齢を重ねるほど渋みが出てきて、危険な匂いのする大人みたいな雰囲気がある。

大胆なのに慎重。無茶をするようで、最後の一線は絶対に越えない。

そのバランス感覚が、父さんの商売を成功させた。

 

そして──

ユウヤに対しては、自分の知る知識や技術を教え込み。自分の専門外のユウヤの求めた学びに、金を惜しまず。

そのくせ、それ以外は「自分で責任とれるなら放任」というスタンスは、まあ、父さんらしい。

 

 

ママのことを思い出すと、ユウヤの胸は少しだけ痛む。

 

ユウヤが物心つくかつかないかの頃に病死したママ。

ロシアとか中央アジアとか北欧とか、出所の不明な混血に、さらに日本の血が混ざった、長身で、豪快で、でもどこか少女みたいな可愛らしさを持つ人だったそうだ。

父さんの話によれば、若いころは二人で海外を彷徨い、鉱物資源を探して山を歩き、鉱脈を見つけては企業に売る山師で、その資金で事業の基盤を作ったらしい。

 

法律すれすれ──

いや、時効だから言えるけど、たぶん越えてたこともあったそうだ。

 

その中心にいたのはママで、父さんの持っている地質学の知識と行動力を、ママが引っ張っていったのと。

ママに惚れていたという理由でついていった。

父さんの、そういうところは本当にシンプルだ。

 

ママはユウヤを妊娠して、二人は安定を求め日本に帰国した。

そこで父さんは、海外で繋いだコネと資金を武器に事業を立ち上げた。

 

ママが亡くなってからは、父さんが一人で事業を回しながら、ユウヤをしっかりと育ててくれた。

まあある程度、目を話せるようになったら、世界を飛び回っていたが。

 

 

【父の教え】

 

父さんの教育として「人生で必要なことは全部教える」と言っていた。

実際に、礼儀、金の扱い方、危険の見分け方、人間関係の距離感、逃げるべき時の判断──そういうものは全部、父さんから叩き込まれた。

だから僕は、父さんのこと嫌いじゃない。

家にいない時間が長くても、父さんは父さんなりに、ちゃんと俺を育てようとしてくれていた。

 

 

夕暮れの光が、運転席の父さんの横顔を照らす。

 

「───ユウヤ、寮での生活、好きにやれ。ただ、責任は自分で取れよ。だが、まずは自分で考えろ、そして行動しろ。それでどうしても必要なら、大人が話をつける」

 

父さんはいつも通りの声で言う。

放任に見えて、本当に危ない時は必ず一緒に考えてくれる。

その距離感が、ユウヤにはちょうどよかった。

 

ユウヤは、自分の手を見つめる。自分に流れているママの血───

 

危険を恐れない豪快さ、自分の考えを、自分の道を、自分で貫き通す、意志の強さ。

ママのことは───おぼろげでほとんど覚えていない。

父さんの話を聞くたびに、その影が自分の中にもある気がした。

 

軽トラックは、サクラ寮へと近づいていく。

ユウヤは深呼吸する。

僕はここで仲間と共に戦うことに。

母さんが生きてたら、きっと笑って背中を押してくれたはずだ。

  

父さんは、何も言わずに前を向いている。

でもユウヤにはわかる。

父さんも、僕を信じてくれてると。

 

 

【母】

 

あまり、いや、あえて今まで強く聞かなかった。

しかし今なら、今この軽トラの運転席と助手席に並び、寮へと走るわずかな時間なら聞く事ができる。

そんな不思議な魔法の時間なのだろう。

 

 

ママは、どんな人だったのか?

 

 

普段は鋼のように落ち着いた父さんの横顔が、ほんの少しだけ懐かしさと照れを混ぜた若い男の顔になる。

 

「あいつはな───豪胆な変人だったよ。普通の物差しで見ちゃいけない人間だな」

 

その言い方があまりに自然で、ユウヤは思わず笑ってしまった。

およそ普通とは言えない、父の口から聞けば、説得力がありすぎる。

父さんは、懐かしむように目を細めた。

 

「一攫千金を狙って海外を彷徨って、山師みたいに鉱脈を探して……危ない橋なんて、何本渡ったかわからん。あいつの人生を語ったら、ハリウッド映画が三本は作れるぞ」

「あいつの無茶に死にそうな目に合って、喧嘩もしたし、成功したからいいじゃないかと笑ってごまかされたり。地元のマフィアとトラブって、宿から素っ裸で逃げ出したこともあったな───でもな、あれでいて女の子らしくかわいらしいところもあったんだ───支えてやらなきゃって思わなかったら、たぶん逃げてたな。付き合いきれないって」

 

その言葉には、破天荒な冒険に、父さんがなぜ付き合い続けたのか?

惚れた弱みをそのままに感じた。

 

「見た目もな。長身で、かわいらしい童顔で……まあ、その……色々と迫力があった、でかかった」

 

父さんは照れ隠しのように咳払いをする。

幼く残る記憶にも…………大きな体、大きな胸、大きな尻。わかりやすく残ってしまっている。

 

「とにかく、あいつは目立つ女だった。危険な匂いとキュートさと包容力が同居してる。その不安定さも、ちゃんと見てあげなきゃ世話しなきゃ。そうだな……夢がいっぱいに詰まったそんな感じだ」

 

父さんは苦笑する。

その夢に付き合いきった男にしか語れない、甘いコロンを垂らした火薬の香り。

 

 

「ユウヤを身ごもった時にな……あいつが言ったんだ。そろそろ帰ろう、てな」

 

危険な冒険を支え合う相棒。

男女であるから、そういう仲になるのも自然で。妊娠もいつかはそうなるだろうと覚悟はしていたとの事だ。

それなりに小金は貯まっていたし、世話したりされたりで色々とコネも太く強く握れた。

ママの決断は、日本への帰国だった。

複雑な混血な身の出どころ、国境をものともしない感覚。

それでも、帰る所に選んだのは。

父さんと───

 

「それで日本に戻って、籍を入れて、安定した生活を始めた……長く続かなかったのは悔しいが」

 

父さんの声は少しだけ寂しそうだった。

ユウヤは、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じる。

ママは僕のために帰ってきてくれたのだと。

 

父さんは静かに言葉を締める。

 

「あいつはな……自分の人生は満足だって、笑って言ってたよ」

 

 

その言葉は、日の落ちる車内に静かに満ちた。

日没の残光の中、軽トラックはゆっくりと寮の前に停まる。

ユウヤが選んだ道。選んだ所に。

 

 

【気づき】

 

軽トラックのエンジンが止まり、ユウヤは荷台のシーサックを降ろしながら、胸の奥にざわつく感情を抱えていた。

 

ケイ、ヒナタ、マリア───

 

この三人の女性の特性と母性の部分。

それを全て合わせれば───

ユウヤの心の奥にある渇きを。

空白を刺激して、埋めているのではないか?

複雑で、恥ずかしくて。

でもどこか切実な欲求の感情。

破廉恥で身勝手で失礼な甘え。

その欲望をぶつけて───ぶつけられて。

貪っている。

求めている。

 

 

立ち尽くすユウヤ───

運転席から夕陽に照らされた横顔のまま、静かに、的確に、鋭く。

 

「ユウヤ。誰かに埋めてもらう穴を探すな。自分で立って、それから誰かと並べばいい」

「あいつがいなくて寂しかったのは同じだ。だがな、求めるだけじゃ、人は強くなれない」

「お前は、自分の足で立てるように育てたつもりだ。誰かに寄りかかるだけじゃなく、誰かと肩を並べられる男になるんだろ?」

「あいつの血も、俺の血も継いでる。危うさも、強さも、優しさもな」

「悩め。だが、前に進め。それだけで十分だ」

 

父の言葉。

ほんの少し───背中を押す。

ユウヤは頷く。

 

「いってくる、父さん」

 

日没の光を浴びながら、ユウヤはサクラ寮に歩いて行った。

 

 

【ユウヤ入寮と……】

 

「おつかれさま……先に、いただいているから……」

「よう、まだ肉残ってるぜ! 野菜も牡蠣もまだまだたっぷりだ!」

 

サクラ寮玄関周りには、篝火が焚かれ───

篝火?

とにかくも、原始的な照明。揺れる炎が、バーベーキューパーティーを照らしている。

少し早めの夕食が、既に始まっているようで。

カオリの性格性質、育った環境の自己顕示と金銭感覚が溢れ出ていた。

 

食事を進めながら、ケイとヒナタが迎え。

アキラたちも串を持った手を上げ、ユウヤを歓迎する。

 

だが──ユウヤはすぐに気づく。

マリアの姿がない。

マリアは距離的にも時間的にも、先に到着してるはずだ。

 

「マリア……まだ来てないの……」

「連絡もまだってやつだ、そろそろ入れてみるかって思ってたらその、さ」

「ごめんなさい…………食べるのに気を取られちゃって……」

 

ケイとヒナタも、どこか気まずそうに言葉を漏らす。

マリアは日本に残るか、国へ戻るかで揺れていた。

ユウヤはその葛藤を知っている。

寂しさはある、しかしその決断はマリアのものだ、誰のものでもない。

 

「ケイ、ヒナタ…………マリアは───」

 

その時だった。

ユウヤのスマホが震える。

画面には──

「マリア」 の文字。

 

ユウヤは深呼吸を一つし、静かに覚悟を決め───通話ボタンを押す。

ケイとヒナタも見守っている。

最後の連絡かもしれない───

 

 

「マリア……僕だ───」

「ユウヤァァァァァァ!! タスケテクダサァイィ!!」

 

スマホを通じて、マリアの泣き叫ぶ声が上がる。

なにかあったのか? 帰国前にトラブル? 事故? ハラマセー!?

さまざまなパターンが、ユウヤの思考を駆け巡る。

 

「マリア!? どこだ!? 何があった!?」

「迷子、ナリマシタ」

 

沈黙の天使が数秒間、横切っていった。

 

「──────はい?」

「寮ニ向カウタメ、バス乗リマシタ。コレカラノ事、考エテイタラ……景色オカシクテ。ドウヤラ違ウ路線乗ッチャッタミタイデ。アワテテ降リテ、戻ルバス探シテモワカンナクテ。気ヅイタラココドコデスカー!! タスケテクダサィィ!!」

「わかった、わかったから迎えに行く。来たばっかりだけどみんなごめん、マリアを迎えに行ってくる! 確かまだ───」

 

荷物を降ろし、ユウヤは走り出す。

マリアの下宿へのルートとして、表通りに出て利用できるバス停の時刻が迫っているのを、既に計算しながらいま走れば間に合うと、ユウヤは一目散に走る。

 

「あら……必要でしたら、車を回しますのに」

 

カオリはその背を見送りながら、独り言を漏らした。

 




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ユウヤのこと、マザコンとは言ってあげないでください(汗)
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