「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!? 作:白拍子
【引き払い/隣室の会話】
「ねえ、隣のガイジンさん、今日で引っ越したんだって」
「え、ホント~? なんかさ、あの大女、いっつも夜遅く帰ってきてたし、ほらさあ、そういう系のお仕事だったのよきっと~?」
「えぇ~風俗とかかなやっぱり? 疲れた感じからなんかそんな感じだったのかな?」
「だってさあ、最近あんま治安びみょってだし。男がボロ雑巾みたいに殺されて、周りに女の手足の千切れたの飛び散ってたって、猟奇事件もあったし。デカくて外国の人ってだけでこえ~し。言葉もよくわかんない独り言ブツブツってヤバいヤツだよ。しかもさ、前に男の人連れ込んでたよね? 激しくヤってたし、あれ絶対そういう関係でしょ」
「そうだよね、恐いよね。うん、あの時のエロイ声、凄いって言うかひどいっていうか。うわぁ~なんか不安だったから、いなくなってくれてちょっと安心したかも」
「だよねーこれで夜も静かになるし、変な心配しなくて済むわ。ほら〜アンタも内心ホッとしてんでしょ〜? 隠してもバレバレなんだけど〜」
【夕暮れ:マリア/バス】
入寮のため下宿を引き払う。
大家さんに丁寧に挨拶しにいき、アパートの鍵を返す。
そうすると大家さんに少し引き留められ。
「寂しくなるのぉ」
「寮暮らし、ちゃんとご飯食べなさいね」
お茶をしながらマリアの事を心配してくれ、入寮を喜んでくれたのは、マリアにとって異国の者を迎えてくれていた事に、染み入る感謝の気持ちがひろがる。
長い間ではなかったが、ここに住めてよかったと言葉を交わせた。
荷物を大型カートに積んで出発したのは、すでに夕方前。
「少シ遅クナリマシタネ、寮マデマズ、バス乗ッテ近寄ッテ、ソレカラ…………」
そう思っていた。
思っていたのだが──
マリアは入寮の不安で頭がいっぱいだった。
(アヤさんとアキラくん……そしてリサさんにアスカさん、うまくやっていけるかな……みなさん明るくて元気だけど、なにかこうペースが違うという感じが……ケイ、ヒナタ、そしてユウヤ……みんな優しいから迷惑かけないように…………カオリさんとも怖がらずにちゃんと話して……確かにまだまともに話を交わしていませんでしたよね、入寮するからにはまず挨拶からです。マリアも日本にきて学びましたもの、うん)
そんなことをぐるぐると考えていたら。
バスの進む方向が違う、流れてゆく風景が違う。
考えに没頭するマリアはそれに気づかない───
乗るバス路線を間違えた。
気づいた時には、見たこともない景色。
慌てて降りた場所は──
夕暮れの光が赤く染まり、街の影が長く伸びていく。
看板の色は派手で、人の声はざわざわと落ち着かない。
(え? ここは……どこですか~~~?)
マリアはカートを引きながら、周囲を見回す。
知らない言語の看板。
知らない店。
知らない人。
そして──
知らないいくつもの視線。
(あ、あの人たち……なんでこっちじろじろ見るですか?)
巨女、外国人、爆乳、巨尻。
ただ立っているだけで目立つ。
それがこの区域、飲み屋や風俗店が立ち並ぶ歓楽街では、興味の対象になってしまう。
(やだ、なんか怖いです。でも、戻るバス停どこ? 地図……地図が……あれ、今どこなのですか?)
方向音痴のマリアは、一度位置を見失うと完全に迷うタイプ。
スマホの地図を見ても、自分がどこにいるのか理解できないまま、くるくると地図を回している。
(え、えっと? こっち? いや違います? あれ、さっきもこの店見た? この看板もですよね? え、なんで? なんで同じ場所に戻ってくるの?)
夕暮れはさらに深まり、歓楽街の灯りが点き始め、極彩色のネオンが彩ってゆく。
夜の街に出勤する女たち、開店の準備をする店員や、早めの客などの遠慮ない視線が、マリアの巨体に集まり。
マリアが通りを歩くたび、すれ違う人たちがひそひそと声を落とす。
「あれ、今日から入る新人さん?」
「いや、見たことないよ。どこの店?」
「てかデカくね? あれでヒール履いたら天井ぶつかるだろ」
「外国の子ってああいう体型多いのかな?」
「てか胸……やば……でっか」
「おい、見るなって。ばれるぞ」
「でもさ、迷ってるっぽくね? 初出勤で場所わかんないとか?」
「あ~あるある。うちの店にもいたわ、最初の週ずっと迷ってた子」
「にしてもあの体格は、どこの店がスカウトしたんだ?」
「外人パブ? キャバクラ? ピンサロ? ヘルス? ソープ? どこにもひっかかんないなあ~」
「おいおい、どこ情報開いても、あんな娘いねーぞ。シークレットかよぉ」
「下手に声かけねえほうがいいぞ、ああいう外人系は、仲介したやつらがうるせえぞ」
(や、やだ、やです、なんか……なんかすっごく見られてます)
マリアの心臓は早鐘のように鳴る。
視線と集まる声で、圧倒的な孤独感が襲い、思考が纏まらない。
(こわい……こわいです……どうしよう……あ……そうだ、ユウヤ…………ユウヤなら……助けてくれる……)
頭の中にようやく浮かんだのは、頼れる助けてくれる人。
震える手でスマホを取り出し、連絡先を開こうとするが、指が震えてうまくアプリが開かず焦りが募る。
(お願い……出て……出て……!)
通話ボタンを押して、呼び出し音の永劫と思える時間、心細さがマリアを追い詰めてゆく。
「マリア……僕だ───」
静かに沈んだ、ユウヤの声。
マリアの声は限界を迎えた。
「ユウヤァァァァァァ!! タスケテクダサァイィ!!」
「マリア!? どこだ!? 何があった!?」
「迷子、ナリマシタ」
ユウヤの心配と焦りの声に、半泣きの掠れた声が訴えかける。
「──────はい?」
ユウヤのまぬけな声が、スマホから漏れた。
【黄昏:古アパートに到着】
ユウヤは軽く息を切らしながら、マリアが住んでいた古アパートに到着した。
とりあえず、ここが基準点となり。マリアの位置を聞けば、迎えに行ける……はずだ。
スマホを取り出し、通話中のマリアに声をかける。
「マリア、今どこにいる? 周りに何が見える?」
電話の向こうから、半泣きの声が返ってくる。
「エット、アノデスネ。ナンカ光ッテル看板ガイッパイアッテ、人イッパイデ、細カクお店イッパイデス」
「多分…………歓楽街だよな、もっと具体的に建物とか、店の名前とかは?」
「ア、コンビニあります。アト女ノ人ノ絵、描イテル看板トカ、カラオケトカ」
「コンビニは町中にあるよね?」
「エット……アッチノ方……ナンカ……ニギヤカデ……コッチノ方ハ……チョット静か……デモドッチモ怖クテ……」
「マリアの視点からでの方向の実況じゃ、方位がわからないけど……太陽の方向はって、もう沈んでしまっているか……」
「地図ミテモ、ワタシイマココドコナノカ、ワカリマセーン!」
迷う人の特徴、地図があっても現在地を把握できないので、あまり意味がない。
まずわかる基準となるスタート地点を自己に設定するのが大事だが、最初のそれがなかなか定まらず動き回ってしまうのは、迷う特徴の一つであろう。
ユウヤは思わず頭を抱えた。
落ち着こう、マリアは悪くない。
不案内な土地で、しかも重度な方向音痴なだけだ…………
ユウヤは自分に言い聞かせるように呟く。
このままマリアに周囲の情報を聞いても、混乱を招き不安にさせるばかりだ。
ユウヤはスマホを握り直し、覚悟を決める。
「マリア、そこから動くな。今から迎えに行くから絶対に動くなよ」
「ウン……ユウヤ……ハヤク……コワイ……」
「わかった、すぐ行く」
通話を切り、ユウヤは走り出す。
黄昏に染まり始めた歓楽街への最短ルートを構築しながら。
【黄昏:隣人たちは見ていた】
隣の部屋のドアが少し開いており、ユウヤが駆け付ける様子を、中から二人の女の子の声が、ひそひそと漏れる。
「ねぇ見て! あの人、隣の外人さんの部屋の前で電話してる!」
「お、なにあれ。まさか追ってきたとか? やばくない?」
「だってさ、隣の外人さん、夜遅く帰ってきてたし。なんかそういう仕事してるって噂あったじゃないの?」
「うわ~~じゃ、あの男、客だったりして?」
「───そこから動くな。今から迎えに行くから絶対に動くなよ」
「ほら! 声! この声聞いたことある! 前にさ隣からズコバコやっちゃってたとき聞こえてた男の声じゃん!」
「え、ほんとだ!? じゃあやっぱり、そういうのってなんだ!」
「てかさ、部屋引き払ったのって……この男から逃げるためじゃね?」
「うわぁ怖いよね、なんか事件の匂いするんだけど……」
「わかった、すぐ行く」
「ほらほらほら! 行くって言ってる! 完全にストーカーじゃん!」
「やだなあ、わたしたち今日バイトなんだけど、帰り道気をつけようよ」
「じゃ、行こっか。ちょっと別ルートで行って、絡まれたら全力で逃げよ! イケメンだけど、チビで女の子ッポイ顔だし、まっああいうの好み割れそうだけど?」
「もっとがっしりして、男らしいのがいいかな」
「はい、あいつハズレ~ざぁこ~~」
ユウヤが真剣にスマホに向かう姿は。
隣室の二人からすれば、部屋を引き払った外人の女を追う、謎の男にしか見えなかった。
【黄昏:染まる色町のまなざし】
「───そこから動くな。今から迎えに行くから絶対に動くなよ」
「───ハヤク……コワイ……」
巨大なカートを抱えたたずみ、半泣きでスマホにしがみつく巨女のガイジン。
その姿は、歓楽街のネオンの中でひときわ目立つ。
そして──
周囲の夜の街の人々は、通勤の足を止め、看板を出しながら、タバコを燻らせつつ、勝手に別の物語を読み取りはじめる。
「おい見ろよ、あの子。でっかい荷物持って泣いてるぞ」
「ねぇ見てあの子、めっちゃ泣きそうじゃん」
「うわ、通話かじりついてる。あれ絶対、別れ話だよ」
「いやいや、彼氏と揉めてケンカして、家を出たパターンだな。俺にはわかる」
「経験者は語るっすか?」
「外国の子って情熱的だからねぇ。ほらぁ、あ~んな体、そりゃ男も放っとかないでしょ」
「でもさ、あのすごい必死ぷり、見ててかわいそなってくるわ」
「───迎エニ来テ…………オ願い……」
「ほらぁ〜〜〜! 完全に戻ってきて彼氏! のやつじゃない、あれ!」
「青春よねぇ~~うちらにもあんな頃あったよね」
「いや、私はなかったけど?」
「モウ……歩ケナイ………………」
周囲一斉に「あ〜〜〜」と生暖かい目。
「ほら、完全に甘えてるじゃん」
「かわいいなぁ……」
「彼氏、早く迎えに来てやれよ〜」
「泣かせんなよ〜〜〜」
マリアは気づかない。
自分が、街のドラマの主人公になっていることに。
【黄昏:手がかりの連想】
ユウヤは歓楽街に辿り着くも範囲は広い。
闇雲に探すだけでは、どれだけ時間がかかるかわからない。
マリアが焦れて、移動していない事を祈って、再度通話を繋げる。
「マリア───近くまで来ているから安心して、周囲の……そうだね、店名とかわかるかな?」
「それが…………」
マリアが見まわし、目に入るお店の名前。
『バー・檸檬民』
『スナック・鰤娘』
『カラオケ・快楽展』
『キャバレー・呂利歩婦』
『ヘルス・圧倒~的』
『ソープ・獲雄』
「読メマセーーーン!!」
マリアには読めない、難解な当て字での漢字が並ぶ。
「ああっもう、ちくしょう───ほかに近くに特徴があった建物とか……」
「ウウ……ゴメンナサイ…………ソウイエバ、コンビニはアリマシタ」
都市であれば、どこにでもありそうな施設の存在を告げられ、ユウヤは落胆しかけるが……
「コンビニのついてだけど、店名やお店のカラーリング。シンボルやロゴの特徴とか」
「エット、コンビニノ名前ハワカンナイデスケド──────」
聞き出せた情報で、コンビニのブランドを特定し検索すると。
「よし、この地域には1店舗しか出店していない。場所は───」
断片的な情報から、大まかなマリアの場所を割り出していった。
【宵闇:ドラマのラストシーン】
「ウウ……ゴメンナサイ………………エット───ワカンナイデスケド──────」
既に日は落ちきり、闇が街を染めてゆき、ケバケバしい看板とネオンがそれに対抗するように灯し照らす。
今にも泣き崩れそうにスマホの通話にすがる、ガイジンの巨女。
すぐさまに展開が切り替わる番組とは違い、状況が進まない時間は、とても長く感じてしまう。
勝手に観客となっている夜の住人たちは、それでも次の展開を待つ。
その価値ががある。足を止め遠巻きに見守っている。
「ハヤク……タスケテ……」
「じれってぇ~~~」
「まって、まだ慌てるときじゃないわ」
「やっぱり、捨てられたんじゃね?」
「待たせるだけ待たせて、後は放置か……ひどいけどそれも現実だな」
「わたし賭けてもいい、ぜったいくるって」
項垂れ言葉を漏らすマリア。
見守る人々も苛立ちが募る
「ねぇねぇ、あの隣にいたガイジンだよね〜? やっぱさ〜あれってオトコ絡みのトラブルだったんじゃね? ほら〜そういうのに弱いザコって感じ〜? ぷっ」
「そんなこと言っちゃだめだよ! もしかしたらさ、ほんとはちょっと深刻な話だったのかもしれないし……ほら、誰かに追われてたとか、そういうのだってあるかもじゃない?」
「二人とも、仕事戻って。店長にバレたら本当にまずいから」
コンビニの制服姿の二人の女の子がマリアを鑑賞していたのを、同じコンビニ制服のメガネの男の子が迎えに来ていた。
小柄な姿が勢いよく角を曲がる。
色白で中性的に整っている男が、剣呑な雰囲気を纏いながら、道行く群衆を切り裂き進み。
途方に暮れるガイジンの巨女を視界に入れると。
「マリア──────ッ!!」
「アッ! アアッ! アアアッ!! ココデス!!」
ガイジン巨女は涙目で駆け寄り、男は息を切らしながら走り込み手を伸ばす。
その瞬間──
歓楽街の空気が変わった。
「「「うわぁ〜〜〜〜〜〜!!!」」」
「彼氏キターーー!!」
「走れ! 走れ! 走れ!!」
「幸せになれよ!!」
「きゃーーー!! 彼氏来た来た!!」
「見て見て! あの小柄なイケメン、絶対いい男じゃん!」
「外国の彼女に全力で走ってくるとか……ドラマかよ……」
「てかあの子、泣いてたよね? 絶対ケンカしてたやつじゃん、仲直りの瞬間見れたんだけどさ!」
「おいおいおい、あの身長差、絵になるなぁ」
「巨女と小柄イケメンのカップルって、なんか尊い」
「うわぁ……エモい……」
「泣いてる女を迎えに来るとか……俺も昔はああだったな……」
「いやお前は違うだろ」
「でもさ、あの子めっちゃ抱きついてね?」
「抱きつけ抱きつけ! 幸せになれ!!」
「てゆっか、あれ。おっぱいに埋まって持ち上げられてる……」
「はいはいはい……これはもう、爆発しろってやつよ」
「いや〜〜〜いいもん見たわ」
「幸せになれよ〜〜〜!!」
「彼氏くん、ちゃんと守ってあげなよ〜!」
「外国の彼女ちゃん、迷子にならないようにね〜!」
「若いっていいわねぇ~うちの店で祝杯あげていきなさいよ」
拍手、口笛、歓声。
歓楽街の人々は、勝手にエンディングを迎えていた。
【宵闇:やっと見つけた】
マリアは涙を流しながら、ユウヤを持ち上げ抱きしめ続ける。
「ユウヤ、ホント……来テクレタ……」
「当たり前だ。マリアが困ってたら、僕は迎えに行くに決まってる」
「「「うおおおおおおおお!!!」」」
(なにをこんなに盛り上がっているんだ?)
(イッタイナンデショネ?)
周囲の盛り上がりが、自分達が対象になっていることに二人は気づいていない。
よくある、酔っ払いの意味のない咆哮だと、勝手に聞き流す。
それよりも、ようやくやっと見つけ。やっと見つけてくれた。
達成感と、感情の高ぶり、軽い疲労と安堵が若い二人を包み、周囲に解釈の誤解を撒き散らしていた。
「アリガト、ワタシワタシ、心細クテ……」
「無事でよかった。初めて会った時のように、襲われていたらと思うと。気が気じゃなかったし」
「ハイ……心配カケマシタ」
「さ、寮にいこ───」
ドォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!
空気が震え、地面が揺れる、巨大な爆発音が響いた。
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