「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!? 作:白拍子
【登校】
朝の通学路。
ゆるやかで適度に腑抜けた空気が漂ういつもの風景。
今日の授業や部活、昨日の番組や趣味の感想で話を賑わせながら歩く生徒たちの流れ。
その一団が姿を見せた瞬間───
周囲の視線が一気に吸い寄せられた。
理由は単純。
サクラ寮に入寮した一行が、揃って歩いて登校してきたからだ。
確かに通学に利便を考えて作られるのが寮である。
しかしながら、一癖も二癖もあるという寮生たちが一堂に会して歩く姿は、異様に映る。
明るくて軽い軟派な大柄なアキラと、冷静冷酷で孤高の不良とされる小柄なユウヤ。
本来なら絶対に接点のない二人が、まるで刎頸の友がごとく当然のように肩を並べて歩いている。
アキラは笑いながら話し、ユウヤは静かに相槌を返す。
その光景だけで、周囲の生徒たちはざわついた。
アヤは背筋を伸ばし、ヒナタはポケットに手を突っ込み、二人とも歩くだけで威圧感と迫力を放っている。
ポニーテールのつよつよガールと、長身褐色金髪の雌豹のようなスケバン。
その圧にあっさり敗北し、周囲は道を開けてゆく。
一歩遅れて歩む女子たちも、それぞれに違う華やかさも目を引く。
リサの静かで知的な、少し近寄りがたいミステリアスな魅力。
アスカの派手で健康的なギャルと、相反する落ち着き。
ケイのふわりとした柔らかな雰囲気と、豊満に揺れる姿態。
マリアの圧倒的な巨体の神秘性と、心配になるほどの天然さと弱々しいメンタル。
アヤとヒナタを含め、全員が既にアキラとユウヤの女であるという噂は、勝手気ままに広がっていた。
【朝の噂話】
「おい見ろよ、サクラ寮の連中だぞ」
「うわ、全員そろってんじゃん。なんだよあの迫力」
「てかさ……アキラとユウヤ並んで歩いてんの、初めて見たんだけど」
「いやあれ普通にすげぇよな。性格真逆だろあの二人」
「ふぁぁ~なんか尊い~~どっちが攻めかしら~~」
「腐ってるのはほっておこう、もう手遅れだ。とにかくその二人が組むか……なにかあるな?」
「なにかってなんだよ?」
「オレが知るかよ? ていうか女の子達もよ~~あれ全員レベル高すぎじゃね?」
「リサさんとか下手に近づいたら、にこやかに刺されそうな美人だし、ヒナタの野性味は蹴られそうだし」
「怖えよ! それ!」
「それがまたいい……」
「アスカはギャルなのに品があるっていうか、ケイちゃんは……その……柔らかそうだしおっきいし。マリアさんはもう……なんかもう……規格外だし……」
「で、あれ全員アキラとユウヤの女なんだろ?」
「マジだよなあ~~の勝ち組すぎんだろ…………」
「ハーレムを取り仕切ってるのが、正妻であるアヤってわけだし。ヒナタとかも、あのフィジカルで彼氏も彼女守るタイプじゃん、レズだったけどたっぷり男を味あわせたってことだし」
「うおっ! 寮近いのに、黒塗り高級車で乗り付けてきてるぜ、カオリ様!」
「車で通学は変えねえのすげえよな、さすがお嬢様」
「なあ……寮に集められたやつらは、モニターとしてってのは表向きで。実は問題を起こさせないために監視対象って話だよな」
「ああ、裏事情ってやつだよな。公然の秘密ってやつだ」
「いや……さらにというか…………奥深いのがあるらしい……」
「え~~~なにそれ? 聞きた~~い」
「ようするにだな、学園内で表立って処理できない事件や事案。それを解決する裏の……いや、暗黒の生徒会」
「暗黒生徒会!?」
「そうカオリが会長として、難儀だが有能なやつらを手駒として私兵として寮に集めたってやつだ……」
「そぉ~~んな、ばっかなぁ~~~それよりもさあ~寮でバコバコしまくるために、あいつらカオリが集めたって噂もあるって」
「そんなインモラルに乱れた話、脳みそ金玉かよおめ~~は」
「第一男の方が少なすぎだろ? あれじゃもたねーぜ」
「エロゲみたいな妄想、おつかれ」
「てかさ……あいつらと同じ学校に通ってる俺ら、運良すぎじゃね?」
「いや、逆に自尊心削られてる気もする……」
「まっ退屈はしねえよな」
「たしかに!」
【日常⇔非日常】
周囲の視線と噂話を浴びつつ、アキラはそれを楽しむように肩を揺らし、ユウヤは逆に静かに無表情に歩む。
「おーユウヤ、見ろよ、なんか視線すげぇな。これ人気者ってやつじゃね?」
「必要以上に注目されるのは、あまり良いことじゃないと思うけどね。僕たちは目立つために存在するべきではないけど……」
アキラは軽く笑いながら、ひらひらと手を振り、ユウヤは軽くため息をつく。
ピュアとヒーラーの活動を考えれば、あまり注目を集めるのも考え物だと答えるが。
「いやいや、せっかくなら楽しもうぜ? どうせ隠れられねぇんだし」
「君は本当に前向きだな。確かに適度に名が知れるのも、必要な場合もあるだろうしね」
二人の温度差は、むしろ自然なバランスを作っている。
「ほら見ろよ、みんなをさ」
アキラが後ろを振り返り、ユウヤも視線を向けると。
アヤとヒナタは、周囲の視線をものともせず堂々としている。
逆にケイとマリアは、少し肩をすぼめ、視線を浴びるのが苦手そうに歩いているのは、二人の気質を考えると頑張れと祈る。
リサは、まったく動じず、自分のペースでいつものように静かに歩くのは彼女らしいと感嘆であり。
アスカが、周囲の視線に軽く挨拶し、ギャルらしい愛想の良さで受け流しているのがさすがだ。
「本当に個性の塊だね。このメンバーで歩けば、注目も集まってしまうか」
「だろ? 俺たち、なんかチームって感じじゃね?」
「確かに、これからだよね」
アキラの明るさに、ユウヤもつられるように小さく笑みを浮かべた。
「それとだ……昨日のハラマセーの件、ユウヤはどう思うんだ?」
「歓楽街での接触、あれは偶然じゃなく、コンビニの爆発火災も、ハラマセーの動きと関連してる可能性が高いと思える」
アキラが声を潜め、ユウヤも歩調を合わせつつ、同じく声を落とす。
間違っても一般生徒に聞かれてよい話ではない。
朝食も終盤、お茶の段階でようやくユウヤが切り出すことができた。
昨夜、歓楽街にマリアを迎えに行ったときの爆発事件と、それに連動したように出現したハラマセー。
ゾンビーや触手を制御しているモンスターは確認できず、無秩序に人を襲おうとしたり、逃げ散ろうとするおかしな動き。
「だよなあ、ただ話を聞くと、なんか不自然って言うか、逆に自然発生って考えると、爆発っておかしいよな?」
「それなんだよ……事故が重なったにしては奇妙だし。出てきたゾンビーや触手にしても数が少なかったし、積極的に人を襲うって感じでもなかった」
アキラの真剣な顔と事件の感想に、ユウヤは彼を明るいだけのバカではないと、少し失礼な評価をする。
「召喚しっぱなしってやつはどうだろう?」
「召喚したり、繁殖……したりするときには、強く感知できるから。その反応がなかったから、既にもうソンビーや触手はそこにいたとしか」
「意志を持っているモンスターてやつは、ある程度正体を隠せるみたいだから、そういうのを隠すのが得意ってやつもいるかもしれないよな」
「なるほど、この感知する力にだけ頼るのも、結構危ないかもだね」
ハラマセーの触手の大量召喚や、強姦等の生殖行為の行動を、ピュアとヒーラーは距離や範囲、感度に個人差はあるが感知する能力がある。
強い行動は、パッシブに感じられるため、ハラマセーの発見に利用でき。
精神を集中すれば、アクティブにハラマセーを発見することもできる。
いままで彼らが自主的にパトロールしていた時に、試行錯誤の中で能力を把握していったのは実践である。
「カオリさん、黒服たちを調査に回してくれるってさ。警察や消防からも情報取るって」
「財閥のネットワークは頼りになる。僕たちだけじゃ追いきれない部分を補ってくれる───これが組織という力か」
「ああ、そうだな。人に頼るって大事だよな」
「確かに───」
自分達がいかに、ただのヒーローごっこだったのを痛感してしまう。
ただ目の前の敵を潰してゆけば、全てを解決できるわけではない。
思い知るのが手遅れになる前に、手を取り合う事が出来たのは、大事な事だと。
「こういう話を、登校しながらできるってのがさ。なんか不思議だよな」
「それが寮に集まった意味だよ。日常の中で、非日常の戦いについて共有できる。それが僕たちの強みだ」
アキラは、空を見上げ、ユウヤも同じ方向を見る。
超常の力を得たとはいえ、自分達がまだまだ未熟な存在だと、奢りに浸る前に自覚できたのだ。
「だな! こうして歩いてるだけでさ、なんか仲間って感じがするし! 頑張ってやってやろうぜ、わが親友よ!」
「……ああ、僕もそう思うよ、親友」
アキラが明るく大きく笑い、ユウヤも応える。
通学路はいつもと同じ、制服姿の学生たちが行き交う。
だがその中で、ピュアとヒーラーたちは確かに別の世界を背負っていた。
それでも───彼らは笑いながら歩く。
日常の中で、非日常の戦いを語り合いながら。
寮生の一行を塞ぐように回り込む、黒塗りの高級車。
周囲のどよめきが支配する中、ピュアとヒーラーの一団は、そういえばみんな揃って寮を出るときにはいなかった事に気付いてしまう。
「失礼、身支度で遅れましたわ」
「なんで車で前を塞ぐのよっ! 危ないじゃないっ!!」
「あら、追いつくためには、止まってもらわなきゃですわ。お~ほっほっほっ!」
カオリが車から颯爽と降り立つのを、アヤが瞬間湯沸かしに突っ込み迫る。
高笑いに対し真っ赤に沸騰して、さらに追撃してゆく。
その騒ぎを周囲の生徒は、面白いもの見たさに遠巻きに鑑賞している。
「どうします、あれ」
「気が済むまで、ほっておいたほうがいい」
「そうですね」
【舌打ち】
ちっ
小さく、しかし確かに響く舌打ちの音。
学生たちの噂話に紛れ、寮から登校してくる連中を監視するように見据える、五人の男女の集まり。
かつてケイを虐め弄ぶを喜び、ユウヤとヒナタにより掣肘をくらった連中であり。
反省を取り繕いケイからは手を引いたが。より一層陰湿に、弱者をいじめ虐げ玩具にする遊びは止めてはいない。
リーダーの男はサクラ寮の一団を見て、大きく舌打ちしたのだ。
彼は知性も体も十分鍛え上げられている、人を惹きつけるカリスマも持っている。
しかし、心がない。
その力を助けるために振るうことはない。
弱いヤツを見下し、虐め嬲るのを楽しむ、歪んだ喜びのために得た力。
「なんだよ、あの威圧感は。ウゼエ」
「いやぁ~人気者ってやつすね? でもさな~んかムカつくってやつですよねぇ。ああいう正義の味方って雰囲気マシマシですしね~~ん~~ボク決まってる」
リーダーであるライの呟きに。取り巻きの一人、レンが櫛で髪を整え。鏡で自分の美しい顔を眺めながら、軽薄なへらへらとした笑みを浮かべつつ目は笑っていない。
「……あの二人、ユウヤとヒナタが睨んでるから、表立っては動けないだけですから。小生たちの楽しみが消えたわけじゃない、ですよね? ま、小生としてはこれから尻尾出さないようにってだけです」
取り巻きのもう一人、リョウは、大柄でデブった体を揺らし、ノートパソコンを触り続けている。
内容は学校内の裏の情報を集めての分析を、ニキビだらけのむさくるしい顔を汗塗れにして、眼鏡の奥で冷静に観察していた。
「ねぇねぇ、あの寮の子たちってさぁ~なんか特別あつかいされてるってかんじしない? ムカつくよねぇ~ルリはね、ああいうのキラい~」
「あの子たち、自分たちが選ばれた存在だとでも思っているのかしら。滑稽ですわ、ライ様の前では、ただの雑草ですのに」
リーダーのライに寄りそう、二人の女の子。
その一人、ルリは小柄というにはもっと低い背丈に童顔、それに不釣り合いな巨大な胸をあざとく押し付けながら、ガムを噛みつつ無邪気な声で笑う。
今一人、ホノカは長身痩躯に薄い胸元の前で腕を組み、流麗ながら酷薄そうな細い目で、高慢にサクラ寮の登校を見下ろし。カオリの姿を認めると、さらに睨みつけを強くする。
「雑草でもなんでもいい。ただ───俺様たちの遊び場を荒らすのは気に入らないよな」
ライは鼻で笑らう。
気に食わない、ただそれだけだ。
「なんかさぁ~~あいつらがいるだけで、弱い奴いじめんなよって空気になるっすよねえ?」
「そうそう~あたしたちのお楽しみがへっちゃうの、ルリはいゃ~~こまる~」
レンが軽さの中に毒の混じえると、ルリはケラケラ笑いながらガムをその辺に「ベッ」と吐き出す。
口調は明るく朗らかだが、相当苛立っている仕草だ。
「ま、学園内都市伝説ってやつですが、小生たちのおもちゃを取り上げたあの二人もいるし、他の奴らもコッチ側から遠いやつらです。あいつらは、小生たちの邪魔になる」
リョウが汗を拭いながら低く呟く。
弱者を弄ぶことを娯楽にしている彼らには、その噂が本能的に不愉快だった。
「ライ様、どうなさいますの?」
「一泡吹かせてやるさ。あいつらがどれだけ特別だろうが関係ない。俺様たちの楽しみを奪うなら───潰すだけだ」
ホノカの崇拝と期待を込めた眼差しに、ライはゆっくりと笑った。
その笑みは、人を傷つけ虐げ支配し搾取することを、力を持っている者の正義とした者の歪んだ笑みであった。
「そういや、フウカちゃんは~?」
「今日用事あるからさあ、サボるっていってたょ~~」
「まったく、付き合いが悪いですわね」
「限定コスメの購入ですな……」
この場にいないもう一人の女の子の仲間が話しに上がると。
「それじゃしょうがねえよな、欲しいものはよ……奪ってでも手に入れるってやつだ」
ライの強く傲慢な言葉に、みんなはそれぞれに笑みを浮かべて、大きく楽しそうに頷いた。
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