「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!? 作:白拍子
【サクラ寮:外周/監視者】
サクラ寮。
外周には黒服とメイドが時折巡回し、監視カメラが過剰に配置されている。
そんな厳重な警戒の外側、入居者も少ない寂れたビルの屋上に、いじめグループの面々が陣取っていた。
双眼鏡、望遠鏡、三脚。
まるで本格的な監視装備だが───目的はただひとつ。
『サクラ寮の連中の弱みを探す』
「あいつらは何かある。それこそ、とんでもないものを隠してるはずだ」
「はあ~~それにしてもさぁ。時々メイドさん見えるんすけど? 着替えとか風呂とか覗けないっすかねぇ~おっ、かわいいドレスの子みっけ、うひょ~」
ゆるぎない自信を込めて言い切るライの横で、レンが望遠鏡を覗きながらニヤつく。
残念ながらメイド達など使用人の施設は地下で、ドレスの女の子はミナミ君でした。
「レン殿、そういう不埒な発言は慎むべきでありますぞ。こういう調査は地道な努力が肝要と小生思います」
「あ~ん、もうっ、ルリ退屈ぅ~~~な~んか面白いこと起きないの~?」
リョウがノートパソコンを触りながら実直に監視を続け、焦れたルリは、わがままを撒き散らす。
「みなさま、お食事をどうぞ。わらわの実家から取り寄せた品でございます」
「ありがとよ、ホノカ。交代で休憩を挟むぞ───嘘は好かん。自分で料理したのが丸わかりだ。照れ隠しとはいえ、くだらない嘘をつくな」
「───! 申し訳ありませんライ様」
ホノカは重箱を開き、優雅におにぎりと懐石料理を並べる。
ライは小休止を告げた。
「あ、ボク、おにぎりだけでいいっす」
「わらわの料理になにかご不満でも?」
「そうじゃなくでですね~まっ、おいしいって思えるおかずは、みんなが食べればいいってことっすよ」
「謙虚ですのね」
「ははは……」
確かに料理の味付けは濃い目だが、ごはんのみにしか手を付けないレンに、ホノカは不愉快を表す視線を投げるが。レンのさらりとした言葉で煙に巻かれて覆い隠してしまう。
「はむはむ、おいし~~」
「うむむ、小生を椅子代わりにするでないですぞ、ルリ殿。それにいただきますを端折るのはよくない事ですぞ」
「い~~じゃない、はやく食べたいし。おちんちんの上にお尻座ってるし、おっぱい揉んでもいいよ?」
「小生はまだ順番待ちでして、む? 屋上に男子が二名。アキラ殿とユウヤ殿でありますな」
胡坐をかきながら監視を継続するリョウの股間に、ぽふっと小さな体を沈ませお尻をくにくにと擦りつけながらおにぎりを食べるルリに対し、いつもの事レベルでの苦言をのべるが、当然のごとくルリは意に介さない。
そのまま監視を続けていると、屋上にアキラとユウヤの姿を捉える。
「でもよ~あいつらってさ、な~んか接点あったっけ? まっ正義の味方属性ってやつってですけどねえ」
「え~~あいつらってホモ?」
「女をはべらしてますから、両刀でなければそれはないと思われますぞ」
「ああ、不自然すぎる」
「ライ様、あのような者たちが和気あいあいと……わらわには理解できませぬ」
「以前から友という痕跡もない。なにか共通の目的ができた。何かあるな」
屋上の二人の会話は当然分かりかねるが、動きの様子から友好的なのは読み取れる。
しかし、いままで接点のない二人。
学校をお騒がせながら、明るく熱くエロく人気のあるタフガイ。
筋の通った不良で、事実上番長とみなされている氷の君。
悪事を働く噂が無いことや、逆に悪党を成敗している事とか、複数の女を取り巻きにしているのをやっかみ、人気と正義を煙たがる声が大きいのが共通点くらいで。
性格や立ち位置的に交流があった試しがないのに、同じ寮に入ったとたんまるで親友のごとくだ。
理不尽さと気に入らなさの中で───そうなったなにかがある。
いったい───なにが───
ライが思考に埋没した時。遠くから、かすかに警報音が響く。
食事を挟んでいた全員が、一瞬そちらに気を取られる。
「寮から……すっね。火事とかじゃないようですし……あれ? 屋上からいなくなってるっすよ?」
「むむ? むむむっ? いない、どこにですぞ?」
レンとリョウが慌てて望遠鏡を覗き直すが、二人の姿が屋上から不自然に消えている。
「ちょ、ちょちょちょっ!? あれ見てくださいよ!! なんだ? なにっすかあれはっ!?」
「貸せ」
レンのすっとんきょうな声に、ライは双眼鏡を受け取り信じがたいものを見る。
真っ赤な髪の黒と赤で彩られたタイツのヒーロー?が、壁を蹴りベランダの手すりを利用し、器用に屋上から降りている。
最後は火炎放射で速度を殺し着地する。
水色の髪の青いケープを羽織った魔法使いが、氷の足場を次々に足場を作りながら降りてゆく。
ヒーローかファンタジーの世界を見ているのかと凝視する。
「なんだ、あれは」
「小生の知識と理解の範囲を超えておりますぞ」
「すっご~い、なんかヒーローみたいだけど、キモッ!」
「ライ様……あれは一体……?」
「わからん───だが───あいつらは、ただ者ではない」
寮の地下駐車場から、二台の車両が地上へ飛び出し。赤いヒーローと水色の魔法使いはそれぞれに乗り込み。
一台は南へ。もう一台は北へ走り去る。
「追うぞ」
「マジっすか!? 面白くなってきたぁ~!」
「危険ではありますが……小生も賛成であります」
「ルリも行く~! ドライブ~!」
「ライ様とご一緒なら、どこへでも」
ライは大型バイクに跨り、ホノカを後ろに乗せる。
リョウはルリを乗せサイドカーへ。レンは違法改造の電動スケボーに乗り、モーターが甲高い唸りを響かせる。
「行くぞ。あいつらの秘密を暴く」
「おう!」「御意」「おっけ~」「仰せのままに」
彼らは知らぬ間に、気に入らない連中を追うつもりが、戦場へと足を踏み入れようとしていた。
【南側行き車中】
改造バンの車内は広く、揺れも少なくて快適なはずなのに───
アキラ、ケイ、ヒナタ、マリア
四人の間には、どうにも言葉にしづらい気まずさが漂っていた。
車内モニターには、黒服から送られている報告の情報を映し出している。
《倉庫街の廃倉庫にて、大量の触手とゾンビーを確認。内部は苗床化している可能性が高く、ピュアおよびヒーラーの対処を要請》
ケイは息を呑み、ヒナタは眉を寄せ、マリアは無言で画面を見つめる。
アキラも真剣な表情で情報を受け止めている。
「あ……あの……いまさらだけど……ヒーラーの交代って……やっぱり、無理……ですよね……?」
ケイがおそるおそる沈黙を破る。
控えめな声だが、胸の奥の不安が滲んでいた。
マリアは静かに佇み続けている。拒絶ではないが、ただ、強い戸惑いと緊張が見える。
「こうなったら腹くくるしかないだろ。アキラ、どうする?」
ヒナタは腕を組み、二人に落ち着けと見まわすと、アキラに水を向ける。
「間違いじゃないよな? 南側は俺で合ってるよな、俺」
スマホの表示を確認するが『目的地:南側ハラマセー拠点』となっているのは間違いない。
「だよな、よしっ───あらためてよろしく頼む!」
アキラの、ぎこちないが誠実な挨拶に、ケイ・ヒナタ・マリアはそれぞれ小さく頷いた。
【南側現場到着】
現場に到着すると既に日は暮れて蒼く闇が降りて来る時刻。
「こちらです! 廃倉庫の内部から触手とゾンビーが溢れています。この時間帯は周囲に人はいませんが、後続の黒服により規制を張って入り込まないよう対処します」
改造バンが停止しすると、発見者の黒服が駆け寄ってくる。
四人は車を降り、黒服に案内されて倉庫の前へゆくと、のっそりと聳え立つ柱が存在感を主張している。
「なつかしいな~リサが昔行方不明になって、この倉庫街に探しに来たっけ。おっあのクレーン、アームが撤去されてる。古かったもんな~あの時は、のっぽさんって指さしてったっけ」
「そうなんですか……またよければお話……聞かせてください……ほんとだ支柱だけになってますね……のっぽさんかわいい……」
「へーしかしアームが無いと、ただ突っ立ってるだけって感じだよなあ~のっぽさんかぁ……まっあたしにとっては、あんま好きになれるってかんじじゃねえなあ」
「ア……ソウデスネ……今ハゆらゆら揺レテ、ばたんきゅうシソウデス」
「そうですよね、そういう放置状態が危ないのは、以前から問題視されているようで。そろそろ目的地です」
「台座自体も相当古いみたいだしな。建築関係の本読みまくって、事故や事件の話とかで放置老朽化ってうわ恐って。と、どうやらここみたいだぜ、到着だ」
アキラの昔話にケイが興味を示し、昔と変わってしまった光景を見て、ほんの少しの和らぐ雑談を黒服も含めみんなで交えた後。目的地に到達して目の当たりにする。
廃倉庫の出入口シャッターが軋む悲鳴を上げながら開き、触手たちとゾンビー、そしてチルドレンズのゼロスリーが細く長い戦棒を手に姿を現す。
「あの野郎か……」
「アキラサン、ドウ戦イマス?」
ヒナタはゼロスリーとの再戦に目を細め、マリアの問いは、自然とユウヤの存在を思い出させるもので、ケイも同様にアキラの言葉を待っている。
いつもなら状況を観察し、ユウヤが戦術を組み立てていた。
アキラは少し考え───迷いなく言う。
「自分で考えて判断して決断して行動するって大事だよな」
「えっ? その…………うん……」
「あ~確かになあ~ユウヤに頼りっぱなしだったぜ、まったくよう」
「ソノトオリ、デス……」
アキラは明るい調子で続けてゆく。
「好き勝手に動くって意味じゃなくてさ。周りをよく見て、仲間が敵が、どう戦っているかを感じて考えてさ。自分で動くって大事だと思うんだ」
「俺たちも暴走して失敗した事もある、取り返しのつかない事にならなかったからいいようなものの。だけど……戦い方を一人に頼り切っているとさ、その人がいない時に脆くなってしまう」
三人のピュアは、胸を抉られ突き刺されたような表情になる。
触手城でユウヤの声が届かなくなったとたんの総崩れは記憶に新しすぎる。
「うん……痛い……強くならなきゃ……」
「はぁ~言われてみりゃそうだよなあ、まったくよ」
「ハイ……指示待ツバカリデシタ」
「だからよ、今日は一緒に考えて戦おう。そしてその時の判断、ひらめきを恐れないで決める。俺もみんなの動きを見て合わせてみせる!」
「あとヤバかったら引く。俺たちでは手が余るなら、きっちりみんな集まってってね。そのために無事に逃げるのだって大事じゃないか」
アキラの自主性と自己責任の戦い方の言葉に、ピュアの三人は少しだけ緊張がほぐれた。
「さあて、やるかっ!」
「まず……ゾンビーを減らす……」
「あの棒術使いは、まかせな!」
「警戒シナガラ、砲撃シマース」
四人は廃倉庫へと駆け出す。
ヒーラー交代という状況。
初めての組み合わせに、不安と緊張と少しの期待。
入寮して初めての戦いが、ここからはじまる。
【北側行き車中】
改造バンの車内は広く、揺れも少なくて快適なはずなのに───
ユウヤは頭を抱え、アヤは腕組みして眉間に皺を寄せ、アスカは困った笑みを浮かべ、リサだけが「あらあらまあまあ」と楽しげにしている。
車内モニターには、黒服から送られている報告の情報を映し出している。
《ハラマセーによる暴力・強姦事件を確認。被害者はスラム住民。犯人と思われる少年型ハラマセーはチルドレンズに酷似。その個体が廃ビルへ入るのを確認。内部にはゾンビーと触手が存在し、拠点と断定》
ユウヤは深く息を吸い、目に映る情報を整理し───口を開く。
「砦化してる拠点か、不確定要素が多すぎる。それに……いつものメンバーじゃない。まずは威力偵察に留めるべきだと思う。実戦でお互いができる事を確認しあい、得た情報で確実に攻略する手立てを構築すべきだ」
「はぁ!? 何言ってんのよ!! 拠点なんでしょ!? ゾンビーや触手が大量にいるなら、苗床にされてる女の子たちがいるはずじゃない! 助けるためにも強襲でしょっ!!」
ユウヤの判断に、アヤが瞬間湯沸かしで身を乗り出し、詰め寄って胸倉をつかむ。
彼女の方が背が高く、ねめつけ見下ろす。気の弱いものであれば、それで委縮させてしまうであろうが、ユウヤは冷ややかな瞳で冷静に言葉を返す。
「それで僕たちに大きな被害が出たらどうする。救助どころじゃなくなる。慎重に行くべきだ。もちろんいけると判断すればもちろん攻略する。だけどまだ不安定なチームの状態で繊細な行動は危険だ」
「そんな悠長な事言ってる場合じゃないでしょ!」
大きく焔のように揺れる紅いポニーテール。
静かな氷壁のように受け止める、水色の髪と瞳。
空気は一種即発に張り詰めてゆく。
「アヤ……まずは現場を見てからにしましょう? 焦っても良いことないし……怒りを向ける相手は別、でしょ?」
「……っ、わかってるわよ」
リサが激発寸前のアヤの肩に手を置き、席に引き戻して落ち着かせる。
「ウチはあんたの言ってる事わかる、でもさあ必要以上に刺激してケンカにするのって微妙じゃね? ちょいゆるめなよ」
アスカがユウヤの腕を取り、アヤとの距離を離して言い合いをクールダウンさせつつ釘をさす。
「僕は対立したいわけじゃない。ただ、ピュアを守るために最善を考えてるだけだけど」
「それさ責任感出すぎってやつ。今まであの子たちを率いていたから気持ち強くって、なんかわかるけどさあ、それ押し付けなっちうのはペケってやつだし、力抜きなよ。なんなら一発ヌイとく?」
「…………ありがとう、抜きは遠慮しておく」
ユウヤの主張もくみ取りながら、言いたいこと伝えたい事がこのままでは絡まわると、手で筒を作って扱く仕草を見せての品の無い冗談を交えつつ伝えると。ユウヤも落ち着きを取り戻し一呼吸を入れる。
「アヤ……前に出る前にひとつ考えようって言ってくれている……彼はないがしろにしているわけじゃないわ、いつもどおり対等、よ」
「……ん、ごめん、私ちょっと苛立ってた。遠慮無しだけど、確かに言いすぎてるから」
「僕も……少し硬くなってる。とりあえず現地の状況を見て相談したい。何を目標にすべきかそれを……みんなで決めよう」
空気が少し和らぎ───目的地へと車は近づいて行く。
【北側現場到着】
「け~けっけっけっ、到着だぜお客さん」
「こちらです、あちらの廃ビルです」
黒服5号の巧みな運転で、夕闇に落ちてゆく中、瓦礫がまだ色濃く残り撤去のための工事車両も見える道を、改造バンは巧みに滑り込むように目標近くに止まる。
四人は車を降り、黒服に案内されて廃ビルの前へ。
「なるほど砦だね、出入口は固く閉ざし要害とし、周囲の倒壊した建物を壁として利用───」
「───!!」
「逃げて」
「こりゃマズイって」
ユウヤがハラマセーの拠点とされる廃ビルを観察する、容易に侵入されないようにか、正面出入口はトーチカのように瓦礫を積み上げ覆い、既に何対かの体格のいいゾンビーが配置されている。
窓や崩れた開口部を鉄板や瓦礫で塞き、ところどころに隙間が見えている、なんの意図かと観察していると───
静寂を切り裂くような風切り音が飛ぶ。
アヤがユウヤの前に出て、彼の頭を狙った矢を叩き落とす。
ひゅんひゅんひゅんと剣呑な雨音があふれる。
矢の雨が降り注ぎ、リサとアスカが警告を発し一斉に物陰へ下がる。
「なんてことだ……ゾンビーに弓を使わせている」
「これって、近づけないじゃない!」
「まさに攻城戦……」
「いやあれってさ、近づいても中に入るの無理でしょ、あんなん無理ゲーって」
砦をよく見ようとすると、また狙撃の矢が襲う。
そして精度は高くなくとも、矢の雨が制圧としてピュアとヒーラーの動きを止める。
たとえ近寄れても、大型の白兵戦特化のゾンビーを配置した城門と言ってもいい防御拠点をどうにかしなければ、砦内に侵入は難しい。
南側とは違い、北側は意見の衝突からはじまった。
そのぶつかりあいの中で、どう戦うのか?
入寮しての初戦は、リサの言う通り攻城戦となった。
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