「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!? 作:白拍子
【モンスター/ゾンビーマネジメント:ソルトマン登場】
【触手城3F:アミューズメント・ビリヤード場/会見】
「ふぇっ~~~へっへっへっ、南側ファクトリー陥落。北側砦化廃ビル壊滅。中央部ファクトリー潰滅。三方面同時ってやつか……どうなってんだ?」
「私のマネジメントのミスです。事業を性急に広げ過ぎました」
「ほほ~~それで?」
触手城内のかつては遊技場としての賑やかさがあったのであろう、今では時代遅れのビリヤード台が並ぶだけの、妙に間延びした静けさに包まれていた。
流行り廃れはあるものの、どうにも旬を外したジャンルが選択されいるのが、ショッピングセンターとしての失敗が透けて見える。
ビリヤード台の一つに腰掛け、台の向かい側にいるスーツ姿のソルトマンに、爆発した風俗街のコンビニを含めると、四か所のファクトリーが消滅した事を問う。
「これは偶然ではありません、人類は組織的にハラマセーへの抵抗力を持ちはじめています。それを察知しきれなかったのは私の不覚であります。脅威に対し援軍を配置してもらったにもかかわらず……残念な結果になりご期待を裏切った事、申し訳ありません。消滅した同志に対しても責任は私にあります。御処分を……」
「あ~~つまんねえ、つまんねえなお前。いっそ逆切れして俺の寝首を掻くぐらいの事しねえのか? まったくよ……それに気配を広範囲隠蔽できるモンスターがいたから、ファクトリーの設置を許可したのも、援軍の規模と時期を決めたのも最終的には城主ってやつだ、それに確かにファクトリーによる触手量産で結構な量も確保は出来たしな……続き」
セキュリオンが指を鳴らすと、ビリヤードの玉とキューが舞い上がり、ソルトマンの周囲を掠めるように着弾するが、ソルトマンはスーツの襟を正しながら静かに頭を垂れる。
彼の声は落ち着いているが、その言葉には責任を背負う重さがあった。
事業拡大の判断、援軍の配置、隠蔽の見誤り───全てを自分の失策として受け止めている。
セキュリオンはその深刻さを、まるで退屈そうに指で台を叩きながら聞きつつ、彼にとっては怒りよりも、つまらなさが先に立つ。
「はい。人類を食い潰し我らのエナジーとする触手生殖の浸透。それはチェーン店を急速に展開しすぎて既存の業種である人類が連合し、異世界の侵略者という新規参入を潰しにかかります。現にピュアとヒーラーというハラマセーに対抗する手段が、散発的に抵抗してくる状態から。まとまった数となって、人類組織の支援を受けて戦いに臨む。今回は拠点の情報を探り当て、早急に戦力を送り込む決断。その速度に我々は後手を踏んでしまい差し向けた援軍では防ぎきれない結果となってしまいました。人類の中に我々を敵と認識し対抗する組織力を整えつつあるという事です」
「まあ本気で国を挙げて警察組織の捜索や、軍隊で叩き潰しに来られたら、さすがにひとたまりもないからな。まあその辺は他の都市や国もそうかわらんだろ」
異世界からの侵略。その異様さも別に圧倒しているわけではない。
それができるのであれば主要都市を一気に飲み込み、この星のエナジーを喰らいつくし、次の目標へと向かっているであろう。
かといって、人類にとって無視できるはずもない。ハラマセーを国家レベルで周知するのは、知るものにとっては悪手だ。
「ですので今は……潜伏の時です。確かに触手城の存在はピュアとヒーラーに知られていますし、人類の対抗組織もそれを知っているでしょう。ただ……」
「攻めあぐねてる、だろうな」
「はい……まだ現状の維持は可能という事ですが、守るだけではいけません。確かにスラムから狩れる人間は減り、廃墟に不用意に踏み込むピュアたちを撃退してはいますが」
ではなぜ? ハラマセーを知る人々は、国に世界に脅威を訴えかけないのか?
「全てを知り、人類がハラマセーを周知すれば、人類の方が被る被害が大きすぎる。そうだよなあ~ふぇっ~~~へっへっへっやれるものならやってみたまえだよ」
「インフラの大規模破壊に踏み切り、社会不安と同族不安を煽り隣人すら恐怖の対象になります。たとえハラマセーが殲滅となっても……人類社会に大きな瑕となり、再生は難しくなるでしょう」
それは規模は違えど過去の災害、桜市の大火。
ハラマセーの存在を認識した人々が、どれだけ混乱し疑い暴徒と化し、自らの都市を炎で焼いて大きな瑕を残したのか。
それが国家単位、星単位で再現すればどうなるのか。
最悪、人類は絶滅する。
人類はそれができる力を、自らを滅ぼす力を持ってしまっている。
「それによ、異なる国、組織、思想が、脅威に対して一致団結するなんて、夢のまた夢だぜ。自分がどう生き残りどう利益を上げどう邪魔なやつを蹴落としにいくか。いゃあ目に浮かぶぜ~そういうのも悪くねえがまだそれを楽しむ段階ってわけじゃない」
「……まだまだ、一つの都市も陥落させていません」
「そういうこった。まっ壮大な話をするにも、この箱庭の戦いをってやつさ。まっ向こうも組織的な構えを持ったから、これからって所もあるぜ、ふぇっ~~~へっへっへっ」
「は、さらなるプランを構築いたします」
人類は共通の脅威に結託しても、己が生き残り利益を得るのも当然としている。
感染症が流行した時、それを防ぐ手段や薬品を買い占め、高値に吊り上げる浅ましさ等、言い訳は出来まい。
むろん、そうではない善性も否定できない。
セキュリオンは歪んだ笑いを浮かべる、そういう連中が戦っている。
ビリヤード場の空気は、かつての娯楽の名残を残しながらも、今はただ二人の侵略者の会話だけが支配していた。
「プランもいいが、どうだ? ナインボールで勝負といかないか?」
「…………おつきあいいたします」
数時間後
「おめえ、強ええなっ!!」
「人間だった時、接待での付き合いがございましたので」
「それにしちゃ容赦ねえな、まったく」
「城主には必要ないかと」
「まっ、確かに面白くねえよなそういうのは。よし、もう一戦」
ビリヤード場に、二人のハラマセーによるナインボールはしばらく続いた。
【サクラ寮1F:食堂/円卓会食】
円卓の中央に鎮座するその円盤はただの飾りではなく、卓上における料理の巡礼を司る装置である。
まず、円卓そのものは重厚な木材で構成され、その下層、すなわち静止を宿す大地のような部分は、一切の動きを許さず、会食の基盤として揺るぎなく存在している。
しかし、その上にそっと重ねられた第二の円、まるで月が地球の周りを回るかのように、人の手によって滑らかに回転する可動の天体がある。
この上層は、料理を載せられることで初めてその真価を発揮し、皿を持ち上げることなくただ指先の軽い力だけで、卓上の料理を客人の前へと優雅に送り届ける。
つまり、円卓は一枚の板ではなく、静止する世界と回転する世界が二重に重なった構造であり、その回転する上層は料理を巡らせるためだけに存在する、選ばれし舞台なのだ。
「この卓は、わたくしたちの手を煩わせることなく、料理の方から礼儀正しく巡ってきてくださり。円卓の上層が静かに巡るたび、料理だけでなく場の空気をもわたくしの意を乗せてめぐるのですわ、お~ほっほっほっ」
コベニは食堂で入れ替えられたテーブルの出来に高笑いするカオリを見て。
『あ~またはじまったよ、この人はと思った』
思うだけなら使用人が主にどれだけ呆れるのも自由だ、それを表情や雰囲気に出さなければよい。
それにカオリの高揚も判らなくもない、ハラマセーの拠点を同時に二カ所も短期間のうちに攻略でき。こちらの被害は深刻なものはなかったのである。
病院での検査も異常を認めず、ほどなく彼らはサクラ寮に凱旋する。
「そのねぎらいを、感謝を、称えるのを。夕食を豪勢に共にし分かち合う。そうしなくてどうするのでしょうかしら!」
カオリは指先でテーブルの天板に触れると、つぅ~~と緩やかに回転するのを楽し気に邪気なく笑っているのを見ると、コベニも本当にこの人はと思いつつも、支えたい主殿ではあると認識する。
「高級料理は当然として……庶民の味も職人技が確かならば悪くありませんもの、さすが黒服3号ですわ。皆さまこれが、わたくし流の中華会食ですのよ、お~ほっほっほっ」
高笑いの上がる食堂で、先ずは点心がテーブルを彩り準備ができた所で、ピュアとヒーラーたちは病院から送迎バスで戻ってきた。
夕食と言うにはまだ早い時間ではあったが、戦勝会食のはじまりであった。
「堅苦しい拝察は抜きにしますわ。みなさま……本当にみんな無事帰ってきて……わたくし嬉しくですわ! どうぞまずはめしあがって楽しんでくださいな」
「よ~~しメシだメシだ! みんな! 勝ったのだし! 大いに食って飲もうぜ!」
「飲むっていっても、ソフトドリンクでしょ! まったくもう~」
「多少ならいいと思う……紹興酒とか……ふふ」
「お酒はダメっしょ」
「それに中華料理なら……やはりお茶だな」
「うん……お酒で繊細な味覚を鈍らせるより、味わいを優先したい……」
「お~~これが点心って、ちっさ!」
「香りモ見タ目モ、カワイイデス」
戦いと検査と学業の緊張がようやく抜け落ち、サクラ寮に帰還したピュアとヒーラーたちが円卓を囲み、カオリの労いの言葉で会食は開始となり、賑やかに勝利を祝う食事がはじまる。
目の前には、蒸籠からふわりと湯気が立ち、更に色とりどりに並ぶ高級点心の前菜。
「へえ~どれここれも、一口よりもちょっと小さいサイズって感じで、メインの邪魔にならないよう味わえるってやつだなあ」
「なんか最初観た時、物足りないって思ったけど。これって前菜なのね」
「海老や野菜を薄い皮で透き通らせた包み……一口でも味の強い蟹肉や叉焼を包んだりパイにしたり……細く巻いた春巻き等手の凝ったもの……ふふ」
「見た目も味も、高級品ってやつっしょ」
アキラたちが点心を楽しみつつ、ほんわかとした平和な食卓にようやく日常に戻ってきたという実感を噛みしめる。
「コラーゲンの旨味が立っていて、出汁の層が深い」
「とろとろで……口の中で解れ消える……それでいてしっかり……」
「スープなのに噛めるってなんかすげえな」
「ふかひれノ繊維ト、すーぷノばらんすガ絶妙デス」
フカヒレのスープが到着すると、ユウヤたちがその味わい深さに、落ち着きをもたらすほっとした空気が場を包む。
その穏やかな空気の中、巨大なモニターで報じられているニュース番組が襲い掛かる。
「続いて、北側スラム地区で発生した暴動についてです───」
「あら……暴動として処理されているのね……」
「もちろん、そのあたりはマスコミに隠蔽情報を被せていましてよ」
「まあ、ごまかせる所はごまかさなきゃってねえ。ハラマセーの事を大きく知られるようにできねえしよ」
アナウンサーが、スラム地区での砦化した廃ビルでの激戦を、スラム浄化政策への反発による暴動と報じていた。
スラムを利用している非合法組織が不安を煽り。暴力行為が暴発した結果、周辺の建築物や工事車両を破損させる被害が出て。コメンテーターが社会不安を煽り、行き過ぎた弱者救済への懸念の意見を述べている。
「工事車両? あ~~ブルドーザーのことねっ!」
「ブルドーザーは中古でも数百万。新品なら八百万〜一千万。修理費だけでも数百万円は妥当か無断使用だったし、戦術的に必要な経費として申請しないと」
「戦闘後に経費計算してるヒーローとか、マジでシュールなんだけど〜でもさ、番組のヒーローってそーゆー裏側ぜんっぜん見せないじゃん? リアルはほんと世知辛いとこ多いよね〜」
「勝ちをお金で買えるなら……必要な事……」
アヤの驚きの声に、南側で戦った面々が内容を聞くという会話を聞きつつ、ユウヤはスープのとろみを味わいながら静かに現実的な計算を行っているのを、アスカとリサが受ける答えもまた生々しくなってしまう。
「続いて、南側倉庫街で老朽化したクレーンが倒壊する事故で、解体予定だった倉庫も崩壊し、合わせて約二千万円以上の被害が出ています」
「に、にせんまん……? え、え、え……えええ?? どどどどど、どうしよう……さすがにこんな大金……」
ケイの血の気が一瞬で引き、スープをすくう手がゆっくりになる。
『さすがにこのような大金、ご自分の身でお払いなさいな、よい働き口もありましてよ。お~ほっほっほっ』
「……どうしよう……カオリさんに借金取り立てられて……ソープランドに沈められて……でも妊娠はしないから……まだマシ…………かなぁ?」
ケイは勝手に最悪の未来を想像して勝手に凹み、スープを飲み干す。
「あらまあ、とっても派手にやってくれまして、すばらしいですわ、お~ほっほっほっ」
「ひっ……カオリさん……あの……その…………クレーンの……被害額……」
カオリの楽し気なにこやかさに、ケイは怯え恐縮しながら、残ってる点心を取り皿に盛ってゆく。
「老朽化が予想以上に進んでいた事故として処理してもらうよう工作していますわ。倉庫自体も解体予定の物をハラマセーが不法占拠していましたし、所有者には保険も適用されますわ」
「そ、それだと……ほ、保険屋さんが……大損に…………」
「そうですわね……でも時にはこういう大きな事故がないと、もしものために誰も保険を掛けなくなりますわ。ですので保険会社もこういう事案があること自体は想定しているのが常ですわ」
「……じゃあ、わたし大丈夫?……沈まなくて……いい?」
「もちろんですわ~貴女はピュアなのですから、そんな心配する必要ありませんわ、お~ほっほっほっ! 沈むって何にですの?」
「よかったぁぁぁぁぁぁ~~~」
被害工作と保険の説明に、ケイは安心で感涙にむせびながら点心を食べてゆく。
カオリは何に何処に潜行してゆくのかわからず、首をひねるばかりであった。