※この作品はR-18です。

「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!?   作:白拍子

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152「てーぶるはまわる」

【サクラ寮1F:食堂/北京のガチョウ】

 

フカヒレのスープが一時落ち着くと、メインの料理が続々と運ばれてくる。

テーブルに、黒酢酢豚の照り、大海老のクリーム煮の濃厚な芳醇、そして麻婆豆腐の赤い煮えたぎりという堂々たる構成が並ぶ。

 

そして何より目を引くのは───

円卓の中央に、堂々と鎮座する 北京ダック。

丸々と太ったガチョウが飴色に輝く皮をまとい、まるで「さあ食え」と言わんばかりの存在感を放っていた。

 

「こいつは……絶対美味いやつだ、うむ迫力が違う」

「皮がパリパリで、ジューシィーなお肉。ああんもう絶対、絶対そうでしょ!」

「丸焼きだ……うん、丸焼きだな……うん……」

 

アキラが納得の声を上げ、アヤはよだれがこぼれそうにうっとりと見つめ、ヒナタは語彙力を無くしている。

期待はいやでも急上昇し、三人の脳内は豪快な肉の塊に引きつけられていた。

 

円卓中央でのおひろめは終わったとばかりに、北京ダックはテーブル脇に控えていた寮の料理を取り仕切る黒服3号の元へと移される。

 

新兵のごとき薄餅が広げられ、銃と弾薬を配備されるがごとく、鮮やかにタレが塗られ白髪ねぎが乗せられ準備が整う。

 

そして───飴色に焼けた皮が、カリッ!と音を立て切り分けられる。

その皮を薄餅に乗せ、くるりと巻かれ、新品の軍服を絢爛に着こなすように完成させ、先ずカオリに、そして一人一人に丁寧に給仕してゆく。

 

「「「……皮?」」」

 

アキラもアヤもヒナタも疑問に思ったが、ひと口食べれば懸念は雲散霧消した。

甘くも辛くもある深い味わいのタレが口腔に広がり、白髪ねぎの爽やかなアクセントが歯に刻まれる。

香ばしくパリパリの皮が舌に触れ炸裂し、それらを薄餅の一体感が纏め包み込む。

 

「なんだこれは、なんだこれはっ!!」

「皮が、こんなにも美味しいなんて!」

「想像を超えているっていうか、考えに思いつかねえ!」

 

三人はそれぞれに未知の味覚と食感に驚き感動し。

 

「そろそろ本命だな……」

「くるよねくるよねっ!」

「丸焼きの肉ぅぅぅ!」

 

そして───本命である、皮を剥がれた本命の肉。

それはまさに衣装を剥いだ乙女が柔肌を晒すがごとくであり、三人の食欲の勃起は収まらず我慢汁を垂らしていた。

そしてその皮を剥がれた丸裸のガチョウという乙女は……ワゴンに乗ってしずしずと厨房へと退場していったのであった───

 

「なん……だと……」

「退場…………?」

「えっ?……えぇぇぇ!?」

 

裸の乙女(ガチョウ)がにこやかに手を振って厨房へ消えるのを幻視しながら、驚愕した三人は目で追い続けた。

 

「北京ダックとは、皮を主食材として扱う料理である。主題がどこにあるかを見誤らぬよう、気を付けたまえ」

「いま味わったのがメイン!?」

「私、前座だと思ってた……」

「ちっくしょう、ならもっとしっかり味わっていたのに」

 

黒服3号の説明に硬直の解けた三人は悔しがるのを、他の面々は生暖かく見守るのであった。

 

 

【回転する天板の罠】

 

メインの料理を味わいながら、戦いを反芻し今後に繋げてゆく会話に場はなってゆき、テーブルの料理は回り続ける。

 

「正直今回は二つの戦場を同時に勝ったとはいえ、性急ではなかったかとも思います」

「ん~~もし俺が砦攻めだったら、攻めきれなかったよなあ。もぐもぐ」

 

ユウヤはハラマセーの拠点発見と出動、情報がまだ不完全な状態での戦いに、アキラは自分が違う戦場であれば苦戦であったろうと意見を交わす。

 

「それでもさぁ~クレーンをぶっ倒すってアイディアも斬新っしょ」

「あれはケイちゃんが、しっかり考えを出してくれたってやつで、俺たちはそれに乗っかって利用して、勝ちに繋げたってやつだけどさあ、最後に油断しちまったぜちくしょう。もきゅ」

 

アスカの感心に、アキラの自分で考える戦いが、その場で綺麗にみんなに共有し勝利に導いたが。ダルゲソンの殿に阻まれ追撃できなかったことや、ケイとヒナタに被害が及んだのを悔しがる。

 

「確かにわたくしも逸りすぎてしまった所はありますわ。今後の戦いがあるからこそ、できうる限り情報を集め、みなさまと協議しどう戦うのかを考える必要は、常に勝つために必要ですわね」

 

「しかし……今回の強襲にて、速やかに救われた人達もいます。僕たちが陥落させた廃ビルには、もはや取り返しがつかない苗床となった方ばかりでしたし」

「そこんとこ難しいっしょ。こ~してごはん食べている間にも、どっかで犠牲者はでているかもしんないけどさ。でもウチらたちにはまだ手を出す事ができないんよね。手を伸ばせないとこは気持ち切り替えなきゃやっていけないって」

 

「黒服たちには、今も全力で働いていただいておりますわ。それでもなお、わたくしの中では足りないのではと不安がよぎってしまいますもの。けれど焦りや苛立ちに身を任せれば、判断を曇らせてしまうだけ。そう思えばこそ、鷹揚に構えて状況を見極めるのが、わたくしたちの務めでしてよ」

 

「人事を尽くして天命を待つってやつね、ぱく」

「それでも……散漫に戦っているより……救えるはず……ぱく」

「そのために、寮に集まってもらったのでしてよ、ぱく」

「それでも……全ての戦いを完勝は難しい……だけど……傷ついても頑張れる戦える癒してくれる……それができる仲間がいる……うれしいことだと思うの…………ぱくぱくもぐもぐ」

 

反省はある。それでもまだ勝ってみんな無事帰ってこれたからこそ、こうやって食事を楽しむこともできる。

 

ピュアもヒーラーも確かに超人ではあるが、神ではない。

救えなかった人々の存在や、これからも犠牲になり被害を受けることは避けられない。

出来る手をいっぱいに伸ばし、救えたのを喜ばなければやっていけない。

 

「まあ~~それに今回で色々お金も使ったっしょ、戦うたびに経費とか考えるってマジだるいだけどさあ、それで人を助けるの躊躇するのとかイヤじゃね? そこんとこは頭片隅置きつつも、やっていくしかないって話よね~」

「確かに、だが甘えてもいられないですが……営利のために戦っているわけではないですが、長い目で見ると人類社会維持のための戦いですしね。時に、財閥として、いえこの言い方は卑怯ですね。人に害を与えるような人は、見捨てるべきでしょうかね。そのために戦う必要が無いと」

 

アスカとユウヤは経済と倫理に触れる話を振ると、カオリは箸を止め目を閉じ黙考し、そして口を開く。

 

「お金も人も……まずは救って差し上げてから考えればよろしいのですわ。偽善であることくらい、わたくし自身がいちばん理解しておりますけれど、見殺しとするよりもはるかにましですもの」

「それに、結局のところハラマセーなどという悪が存在するからこそ、わたくしたちがこうして負担を背負わされているのでしてよ。本当にいけないのは、あちら側ですわ」

 

カオリの言葉は、傲慢さも上から目線もあるが根本的には善意である。

確かに考え方の差異はどうしてもあってしまうが。それは人間が寄り集まれば当然ある軋轢だ。

ユウヤもアスカもそれを承知の上で、カオリの意志を確認できたことに満足する。

 

「それにしてもハラマセーと化した相手とは、交渉はもしかしたら無駄かもしれませんね。いえまだ話を交わしたのはほんの一部ではありますが、投降を促しましたけど、結局僕もリサも窮地に立たされるような自爆の罠にかかってしまいましたし」

「安易に交渉するよりも、もしできるのであれば有無を言わせず捕縛がよいかもですけど……会話ができる知性の高いハラマセーはどれもこれも強敵です、安全の面から言ってもとても推奨できませんね…………ん?」

 

「あ〜それめっちゃ分かるわ。結局さ自分の欲望ガン出ししてくるタイプっているっしょ。人の話とか聞く気ゼロで、力でねじ伏せて言うこと聞かせよ〜としてくるし」

「弱いほうが悪いってノリなんよねハラマセーってさ。でなきゃ侵略者して繁殖しよ〜とか、そーゆー発想にならないってやつ…………あれ?」

 

ユウヤとアスカの手がテーブルの回転する天板を回し、酢豚と海老のクリーム煮を取ろうとすると……そこには空の皿。

 

二人は自分の失敗に驚愕した。

そう、この回転するテーブルでは、好きな料理を好きに引き寄せられる。

会話に比重が傾いていた二人は、油断とはいえ自分の取れる料理が少なくなってしまい、人気のあるものは先に食いつくされてしまう。

 

なお、話に応じていたカオリには、コベニが取り皿に必要量確保し料理を供給していた。

 

「オ、オウ~」

「むう、これは」

 

マリアが酢豚を、アキラは海老を。最後の一切れを箸に取っていたので小さく呻きを漏らし、それをユウヤとアスカに差し出そうとするが。

それは気まずいと二人は断ろうとする、そのもやついた雰囲気に───

 

パン!

 

カオリが手を叩き注目を集める。

 

「はい『あ~ん』ですわ」

 

この微妙な空気を払拭すべきと、にこやかな提案はもちろん善意ではあるが。

コベニは冷ややかに、どう見ても公開処刑ですよねと、カオリの背後からテーブルを見守った。

 

「ア~~ン、デス」「ほれ、あ~ん」

 

酢豚と海老を挟んだ箸を突き出され、逃れられないユウヤとアスカは、真っ赤になりながらその一口をいただくしかなかった。

 

 

【赤い悪魔】

 

しかしそのテーブルで、まだだれも手を付けていない料理があった。

 

麻婆豆腐

 

だがそれを麻婆豆腐といってよいものなのか?

 

「いや、こんな溶岩みたいに茹ってるの、危険じゃない!」

「ああ、まるでアヤの肉じゃがみたいだ」

 

ぐつぐつとまだ熱気と震えが火口で跳ねるごとく伝わり。

アキラは過去に食したアヤの手料理と等しいと語ると、アヤは間髪入れずに彼をぶん殴る。

 

「それに、麻婆豆腐ってこんなに赤かったっけ?」

「スゴクスゴクスゴーク、ソノ、刺激強ソウデス」

 

真っ赤に映える存在に、ヒナタの直感が警告を鳴らし続け、マリアの怯えが危険を物語っている。

 

細くしなやかな指が回る天板を巡らせる。

儚げな白く美しい顔に、麻婆豆腐の熱気と湯気が当たる。

取り皿に躊躇の一つも無く大きく掬い取り……正対する。

レンゲからの一匙を口にし───

 

「んっうっ………………」

 

リサは最初の一口に小さく悶絶し、その後。

 

「ふっ……はふっ……ほふっ……んんっ……ほっほふっはふはふっ……もふぅぅぅぅぅふっ」

「お、おい……大丈夫か?」

「私、あんなに頬張るリサを……見たことない」

 

アキラとアヤは心配と、リサが激しくガツガツとレンゲを運ぶという、優雅さの欠片も無い食べ方をするのを初めて見て目を丸くする。

 

「はぁ……はふうっ……はあ……」

 

顔は紅潮し、肌には玉のような汗が浮かび流れ、薄いとはいえ胸元を見られるのも構わず襟元を緩める。

 

「ふぅぅぅぅ~~~~~………………ごちそうさま」

 

取り皿の麻婆豆腐を完食し、大きく吐息を吐き。

口元に赤を残しながらあでやかな微笑みを浮かべるのを、まるで芳醇な血液を飲み干した吸血鬼のような妖艶さに、一人を除いて声もかけらず見惚れるばかりであった。

 

 

リサにみんなが注目している中、カオリは麻婆豆腐を自らの手でよそい、口にする。

 

「……………………んぎぉっおぉうぅぅぅぅぅっっ!! みずっみずぅぅぅぅぅぅぅ!!」

「主様、それはいけません」

 

カオリの口内は辛さで火炎放射器となり、コベニが止める間もなく水を求め、余裕をなくしピッチャーから直飲みする。

 

しかしそれは悪手である。

辛みの成分は水では溶けず、慌てて水を飲むと口の中で再度広がり辛みが増す。

カオリがしばらくの間悶絶する姿を、だれもが記憶しないようにと見守るしかなかった。

 

 

【黄金の満腹】

 

「美味しさも大事ですが、身体をつくり滋養を蓄えるのも大事ですわ。お~ほっほっほっ」

「ふああ……炭水化物が殴ってくる……」

 

コベニの持ってきた牛乳で、辛さから一息ついたカオリの高笑いは誇張ではなかった。

厨房から、湯気をまとった皿が運ばれてくる。

 

黄金色の米粒が、油の艶をまとってキラキラと輝き、卵・ネギ・チャーシューの香りがふわりと広がる。

まるで山のように盛られた炒飯は各人に置かれた瞬間、香りだけでご飯が食べられそうなほどの破壊力。

レンゲを入れれば、パラッとほぐれる音が心地よく、それでいて油っこくなく素直に食べられる。

 

「円卓が餃子で埋まっていく……餃子祭り……」

「うまっ! これ食べたら、戦闘の疲れが飛ぶぜ!」

「はあ~タレでもラー油でも酢でも柚子胡椒でも、なんでもあう~~」

「人類はこういう料理を作れるから強い……」

「円卓回す必要ないぐらい、作ってくれてるぜ、感謝」

 

続いて、餃子の大皿が次々と運ばれてくる。

焼き目はこんがりきつね色、皮はパリッと、端はもちっと。

湯気が立ちのぼり、肉汁の香りが鼻をくすぐり、一斉に箸が伸び消費されてゆく。

 

 

「ん……それに……この大蒜は…………まさか……まさか…………」

「ほう……見抜くとはさすが……」

 

ケイは感じていた、遠慮なく大蒜の効いた餃子を食べれるのは嬉しいことだが。

その味香り、他の具材を引き立てつつ、大蒜特有のコクと香りをしっかりとした主張をしながらも、エグさはなく活力に満ちた味わいだった。

 

ケイはいつものぽんやりとしたではなく鋭い視線を黒服3号に向ける。

彼は薄く笑いを浮かべ、品のある艶やかな黄色に輝く大蒜を手に取って見せる。

 

「これは……黄金大蒜」

「知っているのか! ケイ! とゆっか黄金大蒜っていったいなに?」

 

 

黄金大蒜を説明しよう

古代より「食材の中の王を覚醒させる香気と味」と呼ばれ、黄金大蒜を刻むと周囲の空気が一瞬震えると言われる。

黄金大蒜の香りと味は、素材の魂魄を揺り動かし、本来の旨味の王を引き出し覚醒させる。

落ちこぼれた料理人が、偶然手に入れた黄金大蒜で、名店の味を再現したという逸話が残っている。

 

黄金大蒜を加えた料理は、ただ美味しいだけではない。

黄金大蒜の料理は舌に雷鳴を宿し、食べた者の体内に活力の奔流を呼び起こす。

その力は、疲れ切った兵士を再び立ち上がらせ、倒れた武人を戦場へ戻したとの記録がある。

 

黄金大蒜は、古代では滋養強壮の薬として扱われた。

酷寒の山村で病にやせ細った少年が、黄金大蒜入りのスープを飲むと体内の活力が爆発し、村を襲った災害を退ける強者になったという。

 

民明書房刊『嫁を喜ばせる子宝繁栄料理』より抜粋

 

 

「へ~~そんな凄い大蒜なんだ、美味いはすだぜ」

「う…………うん……」

 

ヒナタの感心に、ケイは少しだけ言葉を濁す。

元気になった少年の話には、実は続きがあり。

強者になった少年は黄金大蒜の効用で精力が滾りまくり、村の娘たちどころか大人の女性たちも次々に孕ませる性豪となって、元気な子を産ませ続け。

 

「嫁を喜ばせ子孫繁栄には黄金を探せ」

 

という締めくくりである。

 

ケイは確かに自分達には必要な効用と思いつつも、その逸話を語るのはつい伏せてしまった。

 

 

【杏仁豆腐】

 

円卓の上に、白く透き通る杏仁豆腐が運ばれてきた。

ぷるりと揺れるその姿は、さっきまでの料理の熱気とは対照的で、まるで戦いの余韻をそっと包み込むような優しい甘味であった。

 

薄く香る杏仁の香り、舌の上でほどける柔らかさ、甘すぎず、疲れた身体に染みる静かな味。

その甘味を口に含んだ瞬間、ふわりと肩の力が抜けていった。

 

杏仁豆腐を食べ終えた頃には、戦いの話題もひと段落し、円卓にはゆるやかな会話が流れていた。

その緩みの中───

病院からの個別資料が、ピュアの女の子たちへ配られる。

 

「な~んで今なのよ」

「皆さんが揃っている時に渡すようにとの事ですので」

 

封筒を開く音が、やけに大きく響き。

 

アヤが目を見張り

リサは微笑を湛え

アスカが眉を寄せ

ケイがあわあわと慌て

ヒナタがおいおいと呆れ

マリアが静かに目を閉じる

 

「これより女子会としますわ。アキラさん、ユウヤさん───申し訳なく思われる必要はございませんの。退席なさって」

「そうね、丁度いいわ、うん」

 

カオリの有無を言わせない要請、そしてアヤも言葉を強く頷く。

 

「ああ、わかった。ちょうどいいしな」

「そうですね、よい区切りとなりましたし」

 

アキラとユウヤは、女子たちへの違和感よりも、別の用があるとばかりに立ち上がり、円卓を静かに離れていった。

 

 

「それではそうですね……ラウンジで落ち着きましょう。黒服、メイドは人払いを」

 

カオリの声にピュアたちは資料を胸に抱え、ラウンジへと歩いていく。

その歩みには、戦場の疲れとは違う種類の重みがあった。




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