※この作品はR-18です。

「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!?   作:白拍子

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しばらく令嬢サイドが続きます


036「せんじん」

【父娘】

 

カオリは父との対話がこれほどに早く実現するとは思わなかった。

 

財閥の当主は多忙を極め、たとえ親子といえど、面会は困難。

幾重の予定が阻み、意志を伝える過程が時間を喰らってしまう。

 

パーティーの事件でも、自分の無事が確認できれば、さほど動揺はないはずと思っていたが。

その内容の詳細を説明したいと、駄目元で申請したら───即日で面会が叶ってしまった。

これは、異様だ。

カオリはそう感じつつも、己の思う所を正直に伝える覚悟を固めた。

 

屋敷の執務室。

重厚な扉の向こうで、父が待つ。

家に招き入れてこの部屋で父が会話するのは、よほどの要人ぐらいだ。

カオリもいままで必要がなかったため、この部屋で父と対面することなどなかった。

今は説得すべき人として、目の前の初老に差し掛かった男と向き合っている。

 

トキジロウ。

カオリの父、財閥の当主。

魑魅魍魎の政財界世界を戦い抜く男。

その威厳と鋭い眼光に委縮してしまいそうになる。

しかしカオリは気品を保ち対峙し、付き従うミナミは緊張で震え、コベニは影のように静かだがミナミ同様の震えがある。

 

 

「まずは、この場をおつくりいただき、ありがとう───」

「無駄な挨拶はよせ、今はただ親と娘として会っている。控えている者たちも楽にせよ」

 

カオリの挨拶は、広げた手を突き出される事で、中断させられる。

トキジロウはカオリと、それに付き従ったミナミとコベニにも席を促す。

 

この場にいる全員が席に座り一呼吸置くと、カオリはパーティーでの顛末を嘘偽りなく語った。

ハラマセーの襲撃、自分達のピュアとヒーラーとしての覚醒。子供たちを救った戦い。

 

ハラマセーの脅威を訴えかけ、対処するための経済的社会的な支援を、カオリは訴えかけた。

 

「荒唐無稽ではありますが、わたくしは現実に襲われそれに対処し、生き延びました」

「あれは報道などで表されているテロなどではありません。信じろというのも無理かもしれませぬが、これは人類の脅威です」

「詳しい資料等はいまからでも纏めますので、御一考を……」

 

「わかった、予算を組もう」

「は、はい?」

 

父、トキジロウはあっさりと返答し。

自分でもまぬけと思える声を、カオリは漏らす。

 

「あ、あの……父上?」

「なんだ? これから対策のために費用が必要なのであろう、私も吝嗇な事は言わないつもりだが?」

「いえその、ありがとうございます。信じていただけて嬉しくではありますが、その」

「納得いかない、そういう顔だな……まずは報告があった」

 

パーティー会場で暴れる、ゾンビーや触手の映像が、執務室の巨大なモニターに映し出される。

 

「運転手の黒服からの報告だ、その後お前たちを迎えに行ったが、未帰還行方不明となっている」

「それとこの襲撃直前に、警備センターが真っ先に破壊され、監視カメラの撮影と記録ができないようにされている……これがどういうことかわかるか?」

 

「それは……襲撃の記録が残らないように、ですね」

 

ミナミがやっと発言するが。

 

「ふむ、それではまだま足りぬな」

「化け物がパーティーを襲撃したのと、その証拠が不十分な状態で化け物が襲撃したと報告されたら、どう思うかね?」

「そっそれは、信じて、くれません、よ、ね? ああ、つまりその、ハラマセーが活動しているのが知れ渡るのは、彼らにとって都合が悪いことがあるがら……ではないでしょうか?」

 

トキジロウの問いに、ミナミはつっかえながらも。

トキジロウは、まだ満点には足りない答えに、これ以上はしょうがないと。

 

「ハラマセーの脅威が世間の周知となり、人類の脅威だと認識されたとする」

「拠点を探り出し、軍も動き強力な火器で殲滅するであろう」

 

「はい、わたくしは情報を開示し、脅威を訴えかけ備えるべきだと思います」

「さすればあのような化け物など……」

 

トキジロウは大きくため息を漏らす。

 

「社会を動かすというのは、理想論でしかない」

「脅威に備えるには冷静さが要るが、知ると怯えるは紙一重だ」

「奴らの脅威が広まれば、明日には隣人が化け物に見える。疑心は社会を壊す毒だ」

 

「ですが、信じて動くことこそが……」

 

「信じたくても信じられなくなるのが人間だ、そして己を信じるのも人間だ」

「魔女狩りが始まる───そして人は信じるであろう、異常を見つけた、変だと思う、それに妬み嫉み利己的という、主観的で身勝手な感情だけで排除を叫ぶ声が上がる」

「自分に都合の悪い存在を排除する手段に、自分の正義を行う免罪符となる」

「それこそ、敵が望んでいる混沌だ」

 

行い動くべきではないか。カオリは訴え、食い下がろうとするが、トキジロウは、娘の言葉を途中で遮り一蹴する。

 

「化け物が人間の社会構造に入り込むほど賢いなら、恐怖と混乱は最良の手札になる」

「残念ながら人類は、それに抗うほど成熟してなどいない」

「経済も治安も、思っているほど理想に耐えられるような強さや堅固はない」

「むしろその矛先が人に向かいかねない。理想を掲げる旗より、沈黙を守る壁のほうが社会を救うこともある」

 

「人はそこまで愚かではっ!」

 

カオリは父の言葉に、事なかれを感じてしまい。

立ち上がり詰め寄るのをミナミとコベニに止められる。

 

 

「愚かなのだよ」

 

 

モニターには古い記録が映し出される。

昭和の時代、街の広い区画が焼失した大火の記録。

焼け野原と黒焦げの遺体。

この街の歴史でも、悲惨な災害として記録されている。

 

「この災いは、私達が……いや、私が引き起こした」

「そう……当時のハラマセーとの戦い、私はヒーラーだった」

 

「そんな……お父様が?」

 

父が災害の当事者でヒーラーとして戦っていた事は、二重に驚きでしかなく。

カオリは絶句した。

 

 

【疑心群鬼】

 

かつて、カオリほどの年齢だったトキジロウは、今の都市で、また違った別の危機に身を投じた。

敵は異形で、社会はまだ情報も統制も脆弱。

 

にもかかわらず、トキジロウは数人の同志を集め、命を懸けて街を守った、守りきった。

 

そして犠牲も大きかった。

最後の戦いで二人のピュアが戦死。

ヒーラーのトキジロウと、後に妻となるピュアのカオル。

そしてトキジロウに仕えるメイドであり、コベニの母であるピュアのベニが、この戦いを生き残った。

 

最終決戦の直前、人々にハラマセーの脅威を訴えかけ、理解を求め。

直接戦えなくとも、警鐘を鳴らし、知恵と協力の網を張ろうとした。

確かに一部の市民の賛同を得た。

しかし、異常さや違和感という曖昧な主観を盾に、嫉妬や利己心が『正義』の皮を被って膨れ上がる。

 

「バケモノは隣にいるヤツかもしれない、ヤラれる前にやらなければ」

「あの金持ちは、バケモノだから金を稼げてるに違いない」

「あいつがモテるのは、バケモノの力で惑わしているからだ」

「バケモノを匿っているはずだ、どんなことをしてもいぶりだせばいい」

「バケモノを生み出してるって話だ、排除しなくては」

「あいつはオレに恨みを持っている、バケモノに違いない」

 

疑心暗鬼と群集心理。

そしてその『正義』がトキジロウの親友で、戦友でもあるヒーラーのゴロウの家族を襲う。

 

ゴロウの妹は、以前苗床にされていたのを救い出せた。

それがどう歪んで漏れ伝わったのか、バケモノを産む娘として暴徒が押し寄せ、家に火が放たれる。

その炎は広がり家を焼き、燃え広がり街を焼き、なにも関係ない人も巻き込んで、悲惨な事件として処理されてしまう。

 

 

黒焦げになった妹を抱きしめ、立ち尽くすゴロウ。

その姿が異形へと化してゆく。

それ見た事かと囃し立て、バケモノに石を投げつける民衆。

怒りと悲しみと、絶望がゴロウをハラマセーに変化させ。

暴徒たちを虐殺してゆき、火災の被害が広がってゆく。

 

「こんなことになるなんて、こんなことになるために、オレは……」

 

激しい火災に茫然自失のトキジロウは、ピュア達に引きずられ連れ出され。

なんとかその場を脱出した。

 

 

この災害は都市の記録にも残る大火となり、どの記録も『なぜ暴徒が暴発したか、原因は不明』と書き残したが、トキジロウは知っていた。

それは『正義に酔った社会の手と、自分の浅はかさ』によるものだったと。

 

 

【決心】

 

「あの日、私は人を信じた。力を持たないからこそ、心で抗いたかった」

「しかし人は、自分の都合と正義を満たすために他者を殺すこともある」

「今の社会は、何も変わっていない。いやもっと酷いかもしれないな」

「違うのは、私はもうあの日のように『人を信じていない』ことだ」

「仮に、この巨大都市がハラマセーに占拠されたことが公になる、さすればどうすると思う?」

 

「それはさすがに、国が動いて軍が対処を……!?」

 

カオリはその後を察する。

 

「大規模な都市ごと破壊するような攻撃を行うであろうな、必要であれば核攻撃も辞さないであろう」

「そ、そんな………いいえ、そうですわね、民衆ごと焼き払いますわ。疫病に浸りきった街は焼き捨てるしかありませんもの」

 

冷徹なトキジロウの言葉を、抗い否定しそうになるのを、押さえつけカオリは同意する。

 

「ならばどう戦う? 娘よ?」

 

父の言葉は冷たく鋭いが挑発ではない。

愛娘が理想を掲げるならば、社会の悪意とより大きな判断すら跳ね返す実践を。

理想だけで救う事の空虚を理解し、社会を都市の内側から救う力を持ち戦えるか。

持ち得るかを問うもの。

 

「焼かれる前に守ればいいのですわ」

「敵の侵食より早く、希望を示し胸を張りますわ」

「わたくしたちの中に、戦える意志があると、証明し続ければ、人は変わっていきます、そんな方々もいるはずですもの」

 

カオリは、父の冷徹な言葉に絶望を覚えるのではなく、むしろ背筋が伸びる感覚を覚える。

 

あれほど弱さにまみれていた大人たち。

悲鳴を上げて子供を押しのけ、逃げ惑った人々を目の当たりにして。

それでも、救いの余地がある限り、灯は消してはならないと感じている。

 

この言葉を聞いたミナミは、静かに拳を握る。

緊張と恐怖、だが男の子としてそれ以上の覚悟を込めて。

 

コベニは、視線を横に逸らす。

「また無茶をなさいますね」と、ぽそっと口にする。

だが、顔にはどこか笑みが浮かんでいた。

 

 

「先人として言っておこう、戦いは辛く厳しいものになる」

「手助けはできるが、覚悟するのだな」

 

トキジロウはカオリの決心を認め。

カオリは自身の胸に、父の過去と自身の使命が刻みこんだ。

 

そして遺影の母───

カオルが父娘を見守っていた。

 




「ところで父上、このワイルドでリーゼントの不良なイケメンは、どなたですの?」
「私だが」
「……!?」

【挿絵表示】

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